NEXCO東日本東北支社 大規模更新、長大橋も含めた耐震補強が進捗
竜ヶ森トンネルなど、トンネルの大規模更新にも着手

東日本高速道路株式会社
東北支社
管理事業部
部付部長
【リニューアル担当】
新井 恵一氏
NEXCO東日本東北支社は、約1160橋、130チューブの構造物の維持管理を担当している。橋梁は供用後40年以上では約450橋、トンネルは同30チューブとなっている。管内では床版取替が進むほか、トンネルの盤膨れ対策、PCグラウトの充填不足対策なども進めており、またホロー桁上面の切削および増厚補強なども行っている。1wayの耐震補強対策やASRに冒された橋梁の架替えなど多種多様なリニューアル工事が進められている管内の状況を新井恵一・リニューアル担当部長に聞いた。(井手迫瑞樹)
全体で1160橋ほどの橋梁を維持管理、トンネルは、全体で約130チューブ
全体で1160橋ほどの橋梁を維持管理、トンネルは、全体で約130チューブ
鋼橋で約450橋、PC橋で約510橋、RC橋で約200橋
――現在の管内の橋梁・トンネルの内訳は
新井 東北支社では、全体で1160橋ほどの橋梁を維持管理しており、うち鋼橋で約450橋、PC橋で約510橋、RC橋で約200橋となっています。供用年次別では、20年未満で約130橋、20年以上30年未満で約290橋、30年以上40年未満で約290橋、40年以上では約450橋となっています。
路線別では、東北道(白河~青森)が約26km、常磐道(いわき勿来~亘理)が約20km、磐越道(いわきJCT~津川)が約16kmなどで、合計約127kmとなっています。
トンネルは、全体で約130チューブを維持管理しており、うち在来工法のものが約30チューブ、NATM工法で建設されたものが、約100チューブあります。
供用年次別では20年未満が10チューブ、20~30年未満で約50チューブ、30年以上40年未満で約40チューブ、40年以上で約30チューブとなっています。在来工法は40年以上の約30チューブが該当します。
路線別では東北道(白河~青森)で約32km、磐越道(いわきJCT~津川)で約33kmなどで他の路線も含めると管内合計で合計128kmとなっています。
凍結防止剤の散布量が年約6.7万t
塩分の浸透が劣化の大きな要因
――管内の所感地域の構造物の管理状況について、点検を進めてみての管内各路線の劣化状況について詳しくお答えください
新井 東北支社管内は、凍結防止剤の散布量が年約6.7万t(R4~R6平均使用量)と多く、路面から供給された水分と凍結防止剤に含まれる塩分の浸透が劣化の大きな要因と推察され、供用年数が概ね40年以上となる東北道において塩害による劣化が多い状況です。
健全性Ⅲの橋梁では、床版上面からの塩分を含む水の浸透による床版下面におけるひび割れ、浮き、剥離や、伸縮装置からの漏水による主桁端部に浮き、剥離といった劣化が多く発生しています。供用開始から30年を経過すると、健全性Ⅲの割合が1割を超え、40年を経過すると同3割を超えています。健全性Ⅲが多い路線は特に凍結防止剤散布量が多い東北道、磐越道、八戸道となります。


床版下面におけるひび割れ損傷状況 / 主桁端部の浮きや剥離
凍結防止剤の影響により、橋梁の各部位に塩害が発生しており、特に伸縮装置からの漏水による桁端部のコンクリートのうきや剥離、鋼桁の腐食などの劣化が多く、伸縮装置の止水材や桶の再施工の他、構造物へ影響が無いよう導水が必要となります。橋脚においても、伸縮装置からの漏水の他、橋梁排水管の接続不良や破損に伴う漏水による塩害も発生しており、橋梁排水管の補修が必要となります。


伸縮装置からの漏水(左) / 橋梁排水管の接続不良や破損(中、右)
塩害により劣化したコンクリートは塩分量調査を行い、WJ工法などにより、塩分を含むコンクリートを取り除き、適宜、亜硝酸リチウムや塩分吸着材を断面修復材に混ぜて補修を行っています。
また、床版上面からの塩分を含む水の浸透による床版上面のコンクリート剥離や、これに起因した舗装のポットホールも発生しています。床版下面にひび割れや遊離石灰が発生していなくても、上面から床版劣化が進行している場合があります。これらの劣化は、舗装面から電磁波レーダーなどによる非破壊調査により、床版上面の劣化状況を把握し、舗装開削後の目視・打音調査・塩分量調査を行い、適宜、床版上面の補修とセットで行う床版防水工や、床版取替などを検討・実施しています。
凍害 八戸道や東北道の安代JCT以北で発生
PC桁も塩害で剥落などが生じている
――凍害による損傷はありませんか
新井 概ね八戸道や東北道の安代JCT以北で生じています。やはり冬季に非常に気温が下がる箇所ではそうした損傷も起こっています。
――主損傷は桁や床版ということですが、他の損傷部位は
新井 漏水がかかる支承部及びその周辺、さらには排水管なども塩害あるいは凍害による損傷が見られます。壁高欄についてはポップアウトなどの症状が卓越しています。


凍害による損傷状況
――PC桁の損傷はありませんか
新井 塩害等で桁が損傷しており、剥落なども生じています。

PC桁の塩害による損傷状況
――PC桁の上縁定着部における損傷はありませんか
新井 グラウト充填が十分でない橋はありますが、上縁定着の端部の充填性は、比較的しっかりしているので、損傷が生じている箇所はありません。
トンネルの健全性Ⅲの割合は全体の3割超に インバート未設置のトンネルでは路面隆起などの変状が発生
盤膨れが生じているトンネルは8箇所
――トンネルの健全性は
新井 トンネルの健全性Ⅲも全体の3割を超えています。健全性Ⅲが多い路線としては、東北道、山形道、磐越道となります。
劣化については、経年劣化による覆工目地の劣化、覆工コンクリートのひび割れや剥離などが発生しています。


覆工目地の劣化、覆工コンクリートのひび割れや剥離状況写真
また、地山が長期的に強度低下を示す岩種や膨張性を有する岩種である1998年以前に建設されたインバート未設置のトンネルでは路面隆起などの変状が発生しています。これらの対応として、炭素繊維シートによるトンネル覆工の補強やインバート設置などの対策を進めています。

路面隆起による変状
――トンネルのひび割れ状況は
新井 基本は目地に沿った損傷で、道路軸方向のひび割れは出ていません。
――背面空洞箇所などはありませんか
新井 あります。ただ、背面空洞はそれほど管内では生じていません。空洞箇所については範囲などの調査をした上でグラウト充填を行っています。
――盤膨れが生じているトンネルはどれほどありますか
新井 地山の地滑りが大きな要因になっている山形道の1トンネル(風明山トンネル)。他には、秋田道で4トンネル(黒沢トンネル、山内トンネル、土渕トンネル、横手トンネル)や磐越道で3トンネル(鳥屋山トンネル、黒森山トンネル、龍ヶ嶽トンネル)あります。
秋田道、磐越道は4車線化が絡んでいるトンネルもあり、事業調整をうまくやらないとスムーズに施工できません。
耐震補強 1way確保に必要となる64橋を最優先に事業を進める
長大特殊橋耐震 新名取川橋といわき中央橋で実施
――橋梁等耐震補強の進捗状況、および落橋防止装置の設置状況、2026年度の設置予定についてお答えください
新井 高速道路の耐震補強実施計画に則り、大規模地震発生確率26%以上の区域の1way確保に必要となる64橋を最優先に事業を進めており、2025年度までに約40%(26橋)を完了しており、2030年度までに対象橋梁全て(64橋)の耐震補強を終える予定です。落橋防止装置は耐震補強に合わせて設置しているため同様の進捗になっています。2026年度は7橋の耐震補強完了(計約50%を完了)を予定しており、3工事(いわき管理事務所管内1件、仙台東管理事務所管内2件)にて合計19基の橋脚を補強予定です。




橋脚の耐震補強状況写真
――長大特殊橋の耐震補強の進捗状況についても教えてください
新井 大規模地震発生確率26%以上の区域にある特殊橋梁は、仙台東管理事務所管内の新名取川橋(上下線)といわき管理事務所管内のいわき中央橋(上下線)の合計4橋です。
新名取橋川橋は現在工事中で、いわき中央橋は令和7年度内に工事発注公告を行ったところです。
新名取川橋は橋長527.3mの鋼2 径間連続箱桁+鋼単弦ローゼ橋+鋼3 径間連続箱桁です。下部工は逆T式橋台、RC壁式橋脚、基礎工は杭基礎となっています。昭和55年示方書に基づき設計された橋で1994年3月に供用されました。

新名取川橋

新名取川橋一般および断面図
いわき中央橋は橋長683mの鋼3径間連続箱桁+鋼3径間連続鈑桁@2+鋼3径間連続箱桁です。下部工はP1~P6 は鋼製橋脚、P1~P5 は橋脚上の鋼製梁を介して橋脚に荷重を伝達する構造となっています。設計示方書は平成2年および6年です。非常に複雑な構造となっています。

いわき中央橋

同橋一般図

同橋下部工や上部工断面図の一部
――橋梁の長寿命化に基づいた対策の進捗状況と、具体的な損傷状況と補修補強内容についてお答えください
新井 1巡目の点検(2014~18年度)で判定区分ⅢまたはⅣと診断された橋梁について2024年度末時点で修繕などの措置に着手した割合は100%、措置の完了率は83%となっています。2巡目の点検(2019~23年度)の点検で判定区分ⅢまたはⅣと診断された橋梁について、2024年度末時点で修繕などの措置に着手した割合は73%、措置の完了率は28%となっています。
具体的な損傷については、塩害などによるRC構造の損傷が多く、多くは断面修復で対応しています。





