Interview

溶融亜鉛めっき鉄筋座談会 防食性能と施工性が高い防食鉄筋

2026.04.13

防食層に傷がつきにくく、施工時の補修手間が少ない

Tag
PC 防食 塩害
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>審良 善和氏

鹿児島大学
准教授

審良 善和

>菊川 美仁氏

日本溶融亜鉛鍍金協会
理事長

菊川 美仁

>古川 耕平氏

大成建設株式会社
土木本部 土木技術部 高速道路リニューアル技術室
課長

古川 耕平

 溶融亜鉛めっき鉄筋が、防食鉄筋の新たな選択肢として注目を集めている。防食層に傷がつきにくく、施工時の補修手間が少ないことが大きな特徴だ。全国51工場で製造可能な供給体制も整い、実績も着実に増加している。今回、溶融亜鉛めっき鉄筋を推進している識者である審良善和准教授(鹿児島大学)・菊川美仁理事長(日本溶融亜鉛鍍金協会)と、実際に溶融亜鉛めっき鉄筋を使用した大成建設を代表して古川耕平氏が一同に会し溶融亜鉛めっき鉄筋の特徴と今後の展望について語り合った。

溶融亜鉛めっき 資源を大切に活かす エコZめっき

傷がついても犠牲防食作用で保護

金属被覆による確実な防食性能

傷がついても犠牲防食作用で保護

 ――溶融亜鉛めっき鉄筋とは何か、その特徴について教えてください

 審良 亜鉛めっきは古くからある表面処理技術の一つです。鉄筋コンクリート用の補強筋として、鉄筋にめっきを施したものが溶融亜鉛めっき鉄筋です。製造技術は普通のめっき製品と同じような形で、鉄筋の凹凸のある形状でも均一なめっき被膜の形成が可能です。

 亜鉛めっきの特徴として、亜鉛が鉄の上に単に乗るだけではなく、その間に合金層ができることで付着を保ち、しっかり固定化した金属被覆材料になることが特徴です。金属被覆していますので、腐食の因子である酸素や水を100%遮断できます。かつ耐候性に強い亜鉛が表面を保護する防食鉄筋となります。


亜鉛めっき被膜の構造



溶融亜鉛めっきの防食メカニズム / 溶融亜鉛めっき鉄筋(いずれも日本溶融亜鉛鍍金協会HPより抜粋)


 さらに、亜鉛めっきには犠牲防食作用があります。施工時に万が一表面に傷が入ったとしても、犠牲防食作用でカバーできます。めっきの良さをそのまま鉄筋に寄せているのが一つの特徴です。

 菊川 製造工程も、一般の溶融亜鉛めっきと同じようなラインで、バッチ式でロットをまとめて釜の中につける形でめっきを施していくことで、従来の技術を持ってそのままできます。非常に歴史のある技術をそのまま適用できるという点も大きなメリットです。


バッチ式でロットをまとめて釜の中につける形で鉄筋にめっきを施していく / 出来上がったプレート定着型せん断補強鉄筋(Head-barジョイント®工法)
(審良准教授提供)

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樹脂塗装鉄筋との違い

取り扱いの容易さで優位性

 ――樹脂塗装鉄筋やステンレス鉄筋など、他の防食鉄筋と防食性能や付着性能はどのように異なるのですか

 審良 エポキシ樹脂塗装鉄筋、ステンレス鉄筋、溶融亜鉛めっき鉄筋、いずれも防食鉄筋として非常に優れた鉄筋です。

 ステンレス鉄筋の場合は、表面に不動態皮膜を作ることによって防食させますが、孔食ができたり、あるいは脆化の問題もあったりと、なかなか難しい面もあるかと思います。

 エポキシ樹脂塗装鉄筋と溶融亜鉛めっき鉄筋は、いずれも遮断型の防食鉄筋ですが、大きく違うのは皮膜の強度、硬度です。その違いが取り扱いのところで大きな差として出てきます。


溶融亜鉛めっきの使用例①(当サイト既掲載)


 めっきの場合は、傷がついたときに犠牲防食作用によって保護することが可能です。一方、エポキシ樹脂の場合は、樹脂での被覆になりますので、割れたところは必ず防水処理や補修を施す必要があります。

 ただし、溶融亜鉛めっきの場合は金属皮膜ですから、亜鉛めっきが徐々に消耗するため、最終的には防食層がなくなってしまいます。逆に言うと、どれくらいで防食層が無くなるのかを予測する必要があり、設計上は必要なところだと思います。エポキシ樹脂塗装鉄筋の場合は、鉄筋とコンクリートとの付着や施工時の傷への対応などの必要があるかと思います。

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付着性能は裸鉄筋と同等

亜鉛浴での加熱が鉄筋強度に影響は与えない

 ――コンクリートとの付着性能について教えてください

 審良 付着性能については、溶融亜鉛めっき鉄筋の場合、普通鉄筋とほぼ同等の付着性を有するということが指針でも書かれており、特に問題ありません。鉄筋周辺のコンクリートがしっかりと養生されて、強度が増進していけば、通常の鉄筋と同等で,亜鉛めっき鉄筋のめっき被膜層があっても付着が弱く滑るということは生じません。28日の付着強度を試験すると性能は裸鉄筋を上回る場合もあります。

 菊川 付着性能に関しては、日本溶融亜鉛鍍金協会の会員12社が建築センターの評定を取得しています。

 ――溶融亜鉛めっき製造時の温度が鉄筋の機械的性質に影響を与えることはありませんか

 審良 通常の製造工程でのめっきのつけ方であれば、機械的性質に影響はありません。ただし、ずっと高温状態に置いておくなど、あり得ないようなめっきのつけ方をしたときは、影響が出てくる可能性があります。

 塩害環境では、膜厚150μmが最大と考えて設計・施工しています。その程度であれば、全く機械的性質に影響はありません。


塩害環境では、膜厚140μmをミニマムと考えて設計・施工(審良准教授提供)


 菊川 溶融亜鉛めっき鉄筋製造時のめっきの浴槽の温度は約450℃です。国交省の告示で500℃度以下であれば建築材に関しては機械的性質の変化はないとされています。

 評定のときに付着力と同時に機械的性質を確認しており、全て問題ないことが確認されています。

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大成建設の現場で採用

曲げ加工時しか損傷しない

 ――大成建設が溶融亜鉛めっき鉄筋を採用した理由と、使用感について教えてください

 古川 元々、当社のプレキャストPC床版の接合技術に使用する『Head-barジョイント®工法』の形状が、大量に、かつ効率よくエポキシ防錆加工できる形状ではないという問題がありました。「簡単に防錆できるものは何か」を考えたのが亜鉛めっき鉄筋を採用しようとしたきっかけです。


溶融亜鉛めっき鉄筋の使用例②(井手迫瑞樹撮影)


 今、当社のプレキャストPC床版の接合技術Head-barジョイント®工法において、お客様の承認が得られれば全て亜鉛めっき防錆としています。一番のメリットは、運搬から組立て、現場作業で最後にコンクリート打設するまで、傷がつかず補修をするという手間が圧倒的に少ないことです。また、めっき加工できるJIS工場が多く、全国どこでもめっき加工ができ、安定供給できるところも魅力です。


溶融亜鉛めっき鉄筋の使用例③(ともに大成建設提供)


 鉄筋加工は亜鉛めっき加工後に実施することと土木学会の指針で定められているため、曲げ加工すれば亜鉛めっき被膜に傷や剥がれが発生します。しかし、曲げ加工をしたところだけに傷が入るので、補修をするターゲットは見つけやすく、容易に補修ができるというメリットになります。通常の組み立て、運搬などでは傷が入らないというのは、実際にプレキャスト部材を作ってもらっているプレキャスト工場へのヒアリングにおいても、同様の回答をいただいています。


プレキャストPC床版の配筋状況(審良准教授提供)



曲げ加工時の溶融亜鉛めっき鉄筋状況と補修状況(右写真)


 審良 曲げ加工時に傷ついた際の補修用材料は、エポキシ系のジンクリッチペイント(亜鉛粉末顔料92%以上、(エポローバルとスーパージンクの2回塗りを採用))のものを使って直します。


補修用塗料材料も決めている


 古川 日本溶融亜鉛鍍金協会にめっき被膜補修の手順書も作ってもらいました。鍍金協会の関係者にプレキャスト工場に出向いていただいて、施工から膜厚の確認までしてもらっています。当社が製作を依頼している全てのプレキャスト工場については、最低1回は鍍金協会に立会っていただき、補修方法や品質確認方法を指導していただいています。土木構造物への採用事例がこれまでほとんどなく、当社でも採用は初めてでもあったので、品質管理にはかなり細かいところまで神経を使って対応しました。


傷部の補修

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100年の耐久性を目指して

海外事例では70年近く供用された橋梁でめっきが残存

 ――溶融亜鉛めっき鉄筋は橋梁で求められる設計耐用年数100年もちますか

 審良 溶融亜鉛めっきはアルカリ雰囲気の中では、泡を吹いて溶解していきます。亜鉛めっき鉄筋が使われなくなったのも、アルカリ雰囲気下でのそうした弱点が一番の原因であったと思います。しかしそれは研究の過程でコンクリートの中であれば、カルシウムと亜鉛との錆の生成物によって不働態被膜が生成し、腐食を抑制することが分かりました。打設した直後の生コンの状態だと電解液と同等と考えられるため、亜鉛の溶解反応は非常に速いのですが、コンクリートが硬化していくにつれて、急激に腐食性は低下していきます。これまでの研究で、コンクリート中の亜鉛めっきの消耗速度は指針で示された値と概ね同等であることを確認しています。
設計指針では,その溶解して消耗することを取り入れた性能照査型設計法を採用しています。

 現状、140μmという膜厚が、一般的な塩害環境において100年程度の設計耐用年数が可能な膜厚として設定されています。ですから、50年でなくなるということはほぼありません。ただ、あくまで平均的な管理になりますので前後はあるかもしれませんが、おおむね100年近くは供用できる状態で構造物を検討することができると考えています。

 亜鉛めっき鉄筋の防食性能が限界に達したときは、亜鉛被膜は消耗してしまうため、鉄素地が露出することになります。ただ、設計では最小膜厚を限界値としておりますので、すべての鉄筋が同時に消耗してしまうわけではありません。また、一部のめっきが消耗してしまった場合においても犠牲防食作用が働く可能性があり、腐食発生までは若干の猶予があると考えています。また、めっきの防食性能が消失した後は普通の鉄筋コンクリートに戻ります。それが逆にメリットだと思っています。電気化学的防食工法を含め現在の補修対策が適用可能です。有機被膜がある場合は、点検診断から補修まで通常の方法では難しいこともあるかと思います。

 ただし、長期供用後のコンクリート中には非常に高濃度の塩化物イオンが内在する環境になります。したがって、腐食発生から腐食速度は高い状態になると予想できますので、しっかりと対応できるような維持管理対策を計画しておく必要があると考えます。

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40年前に精煉所の煙突で採用

1950年に架けられたロングバード橋でも防食性能を維持

 ――溶融亜鉛めっき鉄筋を使うことで、コンクリートのかぶり厚を薄くし、軽量化を図ることなどでイニシャルコストをダウンさせることはできませんか

 審良 設計指針でも必要かぶりが定められています。かぶりは腐食を防ぐだけの問題ではなく、やはり構造物をしっかりと一体化させるという意味合いもあると思います。そのため、最低限のかぶりを取った設計で製造・施工してもらうことがベストと考えます。

 ただし、めっき鉄筋を使うわけですから、必ずしも塩害対策上必要なかぶり厚は要らないと言えることもできるかもしれません。

 どういう状況であれば、かぶり厚を薄くすることができるか、その方法を我々は持っておかないといけませんし、必要であれば検討することができます。

 ――主な実績は

 菊川 国内で一番古いのは、約50年に作られた竹原市の竹原精煉所の高煙突です。協会から三井金属に働きかけてコア抜きをさせていただいて、現物を取って調査しましたが、全く健全でした。


竹原製煉所の高煙突


 また、海外では溶融亜鉛めっき鉄筋は、1950年代から使われています。日本では1980年代から使われ始めました。


国内でも高速道路のトラス橋や跨道橋などで使われている(同協会HPより抜粋)


 審良 1950年代に架設されたロングバード橋という橋梁があります。台風で壊れて撤去されたのですが、解体するときに溶融亜鉛めっきがどれぐらい残っているのかというレポートが残っています。

 2020年度の調査では、平均のめっき膜厚として152μm残っていたとの報告があります。供用67年ですから70年近く供用された沿岸域の橋梁で、鉄筋位置の塩化物イオン量も6kg/m3程度となる過酷な状態でしたが、150μmも残っていることが実構造物でも確認されています。ASTM規格で規定されている膜厚は149μmです。ロングバード橋の亜鉛めっき鉄筋の膜厚はこれとほぼ同じです。また、ロングバード橋で行われたこれ以前の調査で、平均膜厚が180μmとの報告もあり、仮にすべての鉄筋が180μmのめっき膜厚であったと仮定しても、供用67年で30μm程度の消耗となり、年平均の消耗速度は0.5μm程度となります。土木学会の指針では、めっきの消耗速度は、0.7μm/年から1.4μm/年と設定されています。

 我々は、この事例から、土木学会指針で示した耐久性設計は安全側の照査になっていると考えています。引き続き、海外のめっき協会とも連携して、古い橋梁等の構造物の調査等を実施していく計画です。

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