高専発、インフラメンテナンス人材育成・KOSEN-REIM(高専レイム)の挑戦

高専発、インフラメンテナンス人材育成・KOSEN-REIM(高専レイム)の挑戦
2026.06.01

第21回 教育の質をどう担保するか ―実務能力を客観化する資格制度の設計―

Tag
高専発、インフラメンテナンス人材育成・KOSEN-REIM(高専レイム)の挑戦
Share
X Facebook LINE
JFEスチール 鋼管 ノアの橋梁。 鋼構造物の再生と環境の調和 循環式ブラスト工法、循環式ショットピーニング工法
>林 和彦氏

香川高等専門学校
社会基盤メンテナンス教育センター センター長

林 和彦

>嶋田 知子氏

舞鶴工業高等専門学校
社会基盤メンテナンス教育センター
特命准教授

嶋田 知子

はじめに

 これまで17回に渡り、高等専門学校(高専)が実施しているインフラメンテナンスの取組み「KOSEN-REIM(高専レイム)」について紹介してきました(リンク:バックナンバー)。各回では個別の講習や制度の詳細を解説してきましたが、連載開始から1年半が経過した今、改めて私たちの活動の全体像と、その制度設計の考え方について、5回にわたり整理したいと思います。

わたしたちは 橋梁・コンクリート構造の専門家です! 陥没対策に最適 充填工法の切り札 インフラを技術で守る

本連載の構成(全5回)

 1.KOSEN-REIMの教育はなぜステップアップ型なのか ―橋梁点検(基礎編)講習会の制度設計―(2026年3月)

 2.応用編と専門講習群の役割 ―中核技術者をどう育てるか―(2026年4月)

 3.実務家教員という挑戦 ―教える技術と継続教育の設計―(2026年5月)

 4.教育の質をどう担保するか ―実務能力を客観化する資格制度の設計―(2026年6月)

 5.制度を回し続けるということ ―協議会・財団・継続性の設計―(2026年7月)

 本連載の内容は、2026年2月発刊の日本コンクリート工学会 会誌「コンクリート工学」掲載のテクニカルレポート【参考文献1】を基礎としつつ、講習会の実際や制度設計の意図について、テーマごとに再構成して紹介するものです。

わたしたちは 橋梁・コンクリート構造の専門家です! 陥没対策に最適 充填工法の切り札 インフラを技術で守る

1.KOSEN-REIMとは何か

 KOSEN-REIM(高専レイム)とは、舞鶴高専福島高専長岡高専福井高専香川高専の5高専が連携して構築した、インフラメンテナンス分野の人材育成体系です。本体系は、橋梁点検(基礎編)から応用編、橋梁診断へと段階的に接続するステップアップ型の育成構造と、それを支える専門講習群から構成されています。

 KOSEN-REIMの特徴は、実務に直結した教育内容を持ちながら、それを資格制度として体系化している点にあります。学修内容、到達目標、評価方法、合格基準を明示し、複数の高専で共通の水準を維持する構造を採っています。

 ここでいう「教育の質」とは、単に講習会の満足度や雰囲気の良さを指すものではありません。受講者が何を理解し、何ができるようになったのかを、共通の基準で確認できることを意味します。本稿では、その「実務の体系化」をどのように実現しているのか、資格制度の設計という観点から整理します。

わたしたちは 橋梁・コンクリート構造の専門家です! 陥没対策に最適 充填工法の切り札 インフラを技術で守る

2.高専に根付く質保証の考え方

 KOSEN-REIMにおける質保証の考え方は、突然生まれたものではありません。国立高等専門学校機構は、約20年前から教育の質保証に体系的に取り組んできました。その象徴が、モデルコアカリキュラム(MCC)です。

 MCCは、全国の高専が共通して到達すべき学習目標を明示し、教育内容と評価を構造化する枠組みです。重要なのは、単に教える内容を揃えることではありません。何を学び、どの水準まで到達するのかを明確にし、その到達をどう確認するかまでを含めて教育を設計する点にあります。

 KOSEN-REIMにも、この高専全体で共有する質保証の理念がインストールされています。対象は高専生ではなく社会人技術者ですが、「良い内容だった」で終わらせるのではなく、「どの水準に到達したのか」を確認できる設計を採っています。

 実務は本来、現場経験の蓄積によって培われるものです。しかし、その経験が客観的に体系化されなければ、再現性を持ちません。特定の個人の力量に依存する状態では、制度としての持続性も担保できません。そこでKOSEN-REIMでは、実務で求められる知識と技能を整理・構造化し、到達すべき水準を段階的に設定して評価することで、リカレント教育としての質を保証することを重視しています。

わたしたちは 橋梁・コンクリート構造の専門家です! 陥没対策に最適 充填工法の切り札 インフラを技術で守る

3.実務能力をどう測るか

 橋梁点検・診断を担う技術者には、現場での経験年数だけでなく、何をどのように記録するか、判断のエビデンス(根拠となる事象)は何かを明確に理解し、他者に結果の要点を説明して対応や措置を提示できる総合的な実務能力が求められます。社会的な技術資格制度として成立させるためには、求める実務能力を定義し、それを確認できる評価方法を設計する必要があります。

 KOSEN-REIMでは、実務能力を大きく「知識」「技能」「判断力」に分けて考えています。基礎編では、橋梁工学、コンクリート構造物・鋼構造物の損傷、点検要領など、橋梁メンテナンスの基礎的素養を確認します。学習到達度確認試験では、選択式問題により、事前のeラーニングと対面講習で扱った内容の理解度を確認します。ここで認定されるのが「准橋梁点検技術者」です。

 一方、応用編では、実橋梁を対象とした現地調査、損傷図の作成、点検調書の作成、プレゼンテーションなどを通じて、より実務に近い力を確認します。単に知識を持っているだけでなく、現地で観察し、損傷を記録し、判断の根拠を整理し、他者に説明できるかが問われます。ここで認定されるのが「橋梁点検技術者」です。

 さらに橋梁診断講座では、鋼橋およびコンクリート橋の診断演習、記述式問題、演習レポートなどを通じて、点検結果を踏まえた診断や措置方針の検討に必要な力を確認します。ここでは、複数の専門分野の知識を統合し、構造物の状態を総合的に判断する力が求められます。

 このように、KOSEN-REIMの評価は、単一の試験だけで完結するものではありません。基礎編では知識の土台を確認し、応用編では実務に近い成果品を確認し、診断では判断の妥当性を確認します。実務能力を一つの尺度で測るのではなく、段階に応じて確認すべき力を分けている点に特徴があります。


図 講習会の様子(香川高専 基礎編)

わたしたちは 橋梁・コンクリート構造の専門家です! 陥没対策に最適 充填工法の切り札 インフラを技術で守る

pageTop