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第4回 予算管理(予算の策定と進捗管理)

こんにちは、Yamaguchi@TKCです。
今回は税理士・公認会計士の川崎要介先生によるコラムをお届けします。

当コラムでは新しく経理部に配属になられた方や改めて学びたい方向けの「ここからはじめる」シリーズ第1弾の第4回目です。

今回は「予算管理」について解説いただきました。


1.予算の本質について


今回のコラムからは、予算とその管理方法について取り上げていきます。

管理会計における予算の意義は、将来の経営目標を数値化し、戦略の実行を支える点にあります。
この点において、予算は、過去の事実を記録する財務会計とは明確に役割が異なります。

予算は、目標設定や業績管理、経営資源の配分の最適化を通じて、企業の成長と競争力強化を促進します。
不確実な未来を予測し、計画的に経営を進めるための羅針盤として、予算は管理会計の中心的な役割を担い、経営の成功を後押しするための不可欠なツールとして機能しています。

予算には、損益予算、投資予算、資金繰り予算など、その目的に応じて様々な種類の予算がありますが、このコラムでは、予算の策定方法から進捗管理に至るまで、管理会計の領域に最も近い損益予算を中心に見ていくことにしましょう。

2.予算の策定方法

(1)目標設定と目的の明確化

予算編成の第一歩は、企業全体の戦略目標を明確に定義することです。
経営者は中期・長期計画に基づく方針を提示し、予算の方向性を決定します。

また、戦略の立案には外部環境の分析が欠かせません。
PESTEL分析(政治、経済、社会、技術、環境、法規制)やSWOT分析等の手法を活用し、市場や競合の動向、経済情勢を評価することで、予算に影響を与える要因を事前に把握します。

(2)データ収集と分析

予算編成の基盤となるのは、正確なデータです。

まず、前事業年度の財務データ(売上高、費用、利益率など)を分析し、過去の実績を基準として設定します。
たとえば、売上高が低迷した商品や地域を特定し、その原因を深掘りすることで、予算の優先順位を明確にすることが可能となります。

次に、会社の各部門から必要なデータや予測情報を収集します。
あわせて、為替レートの変動、原材料価格の上昇、環境規制の変更など、外部環境の変化が予算に与える影響についても、定量的に評価を行うことが効果的です。

(3)予算案の作成

予算案の作成には、トップダウンとボトムアップの2つのアプローチが用いられます。

トップダウン・アプローチでは、経営層が全体の予算枠を設定し、これを各部門に割り当てます。
これにより、企業全体の戦略との整合性が確保されます。

一方、ボトムアップ・アプローチでは、各部門が現場のニーズに基づいて具体的な予算案を作成し、経営層が各部門の予算案を統合して集約、調整することにより全体の予算を構築していきます。

(4)予算の調整と承認

予算案が完成したら、部門間の調整を行います。
各部門の予算案を統合する際、矛盾や過剰な要求を調整し、全体のバランスを図ります。このプロセスでは、部門間のコミュニケーションが鍵となり、優先順位のすり合わせが求められます。

次に、経営層によるレビューが行われます。
予算案を詳細に検討し、戦略目標との整合性や実現可能性を評価します。必要に応じて修正を加えたうえで、最終的に取締役会などの経営の最高意思決定機関による最終承認を経て、予算が正式に決定されます。

この段階で、全社的なコミットメントが確保され、実行フェーズへ移行することとなります。

3.予算の進捗管理

予算が策定されたら、その予算に沿って実際に会社の活動が遂行されていくかを、継続的にモニタリングをしていくことが重要です。
これを予算の進捗管理といいます。

予算の進捗管理は、管理会計における中心的なプロセスであり、企業が設定した経営目標の達成に向けて、計画と実績を照らし合わせ、必要に応じて軌道修正を行うための仕組みです。

(1)予算目標を達成するためのモニタリング

予算は企業の経営戦略を数値化した計画であり、進捗管理は計画が意図した方向に沿って進んでいるかを確認するための手段です。
売上高、費用、利益などの実績が予算と一致しているかを比較・評価することで、目標達成の可能性を高め、実績が目標からの逸脱している場合には、早期に発見し、対処することが可能となります。

進捗管理の基本は、予算と実績の差異を定量的に分析することです。
たとえば、売上高や費用が、予算からどの程度乖離しているかを計算し、その原因を特定します。
差異は「有利差異」(実績が予算を上回る場合)と「不利差異」(実績が予算を下回る場合)に分類され、原因を「数量差異」(数量の変動による影響)や「価格差異」(単価の変動による影響)に分解して分析します。
この手法は、問題の根本原因を特定し、具体的な改善策を検討するうえで有効です。

予算の進捗を効果的に管理するため、売上高、利益率、生産効率、在庫回転率などのKPIを設定し、定期的にモニタリングしていくことも非常に効果的です。
KPIは予算目標を具体的な指標に落とし込んだもので、予算の進捗状況をよりリアルタイムで把握するのに役立ちます。
たとえば、販売部門では「月次売上達成率」を、製造部門では「単位当たりの生産コスト」をKPIとして設定し、週次や月次で進捗を確認します。

(2)月次決算の重要性

財務会計の観点からすれば月次決算は必ずしも必須ではありません。

財務会計は外部の利害関係者への報告を目的として、企業活動を一定の期間(多くの場合、一年や四半期単位)で区切って、法令や契約等で定められた報告形式・報告時期を遵守することが最も大事なことであるとされるためです。

しかしながら、予算の進捗管理においては、定期的なモニタリングを実施するという観点から、月次決算が大きな意味をもってきます。
月次決算を導入するにあたり、意識すべきポイントは「迅速性」と「正確性」のバランスです。
年度末や四半期ごとに正確な経理計算が求められる財務会計とは異なり、早期に短期的な業績の可視化と戦略の軌道修正を可能にするため、月次決算にはスピード感も求められます。
月次決算とは、企業が毎月行う財務実績の集計と分析であり、管理会計においては、経営者の迅速な意思決定を支える基盤となります。
月次決算を行うことにより、経営者にタイムリーな情報を提供することで、戦略の実行の加速を促すことができます。
市場の変化や競合の動向、為替変動など、外部環境の変化の影響を毎月の財務データから読み取り、経営者の意思決定に即座に反映することが可能となります。

次回は、いよいよ最終回です。変動損益計算書と損益分岐点売上高について見ていくこととしましょう。

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