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海外で最も売れているmeijiのお菓子。「ハローパンダ」が世界各国で愛されるワケ

世界30カ国以上で販売され、meijiブランドにおいて海外で最も売り上げ個数の多いお菓子でありながら、日本ではほとんど知られていない商品があります。それが、パンダの見た目が愛らしいチョコレートスナック「ハローパンダ」です。

実はこの「ハローパンダ」、今でこそ各国で親しまれるブランドですが、もともとは1987年に日本で誕生したものの、2年半で終売したという過去を持っています。では、そんな歴史を持つ「ハローパンダ」は、なぜ海を渡り、世界中で愛されるようになったのでしょうか。

今回は、株式会社 明治にてカカオマーケティング部グローバルブランドマネージャーを務める加納 麻衣さんと、メイジ・アメリカのマーケティングディレクターを務めるGeoffreyさんに、その秘密を聞きました。

「ハローパンダ」は、“暑い国だったから”売れた?

──まずは、「ハローパンダ」がどのような商品なのか教えていただけますか?
 
加納:ハローパンダは、中空のビスケットの中にチョコレートクリームが入ったお菓子です。二層のビスケット生地が独特のサクサク感を生み出しており、ビスケットとチョコレートクリームの両方を余すことなく楽しめるmeijiらしい商品なんです。

加納麻衣
プロフィール株式会社明治のグローバルカカオ事業本部のグローバルブランドマネージャー。消費財メーカーでのブランドマーケティングを経験し、24年に中途入社。ハローパンダブランドのブランドマネジメントを担う。

1個1個のビスケットには、さまざまな表情やアクションをしたパンダがプリントされています。当時から、海外のビスケットはシンプルなものが主流で、装飾があるとしてもチョコレートチップが乗っているくらい。
 
そうしたなか、ビスケットを中空に膨らませて、その中にクリームを入れるという技術を活用し、日本らしい手間をかけて生まれたお菓子が「ハローパンダ」です。プリントされたパンダのかわいらしさも後押しとなり、今では子どもたちや、子どもを持つ家庭などで広く愛される商品になりました。
 
── 実は、meijiが海外展開する商品のなかでも、屈指の売上を誇ると伺いました。どれほどの規模にまで成長しているのでしょうか……?
 
加納:出荷額としては200億円程度で、海外展開しているmeijiの各商品を凌ぐほどです。世界30カ国以上で販売されており、そのエリアも多種多様。現在、販売額が最も大きいのはアメリカ、その次がインドネシア、シンガポールなどのアジアになります。ヨーロッパではイギリスでも人気があります。
 
── もともとは、日本国内で販売されていたお菓子だったのですよね。

加納:そうなんです。「ハローパンダ」は、「こんにちはパンダ」という名前で、1987年に発売された商品です。1986年に上野動物園に「トントン」というパンダがやってきたことで、国内にはパンダブームが到来。その波を受けて、翌年から発売を開始しました。その後、2年半ほど販売していましたが、国内ではなかなか根付かなくて……。
 
── ところが、1991年にシンガポールで発売されることに。どういった背景があったのでしょう?
 
加納:シンガポールにmeijiの生産工場の拠点が作られていたこともあり、他の国々への輸出を視野に入れるならベストだったんです。シンガポールを中心として、そこから生産したものをマレーシア、中東、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドなどに広げながら、海外需要を模索していきました。
 
── その結果、東南アジアを中心とした需要が見込まれた、ということでしょうか……?
 
加納:はい、91年にシンガポールで販売したところ、暑くても溶けないチョコスナックで、可愛らしい見た目や手が汚れない手軽さなどがきっかけで人気に火がつき、多くの子どもたちに親しまれる定番商品へと成長しました。ビスケットの中にチョコレートクリームが入っているタイプのお菓子は、当時の東南アジア諸国にはなかなか存在しなかったんですよね。

世界中で愛されるために、変えてきたこと

左から アメリカ、インドネシア、シンガポール、中国 製造品

── 現在では、世界各国で愛されているハローパンダ。今回、各国の商品をお持ちいただきましたが、なんだか同じ商品であるのに少しずつデザインが違いますね。
 
加納:「ハローパンダ」は、それぞれの国の担当者が中心となって、その国に根づくように提案しながら成長してきたブランドなんです。そのチューニングがあるからこそ、今もいろいろな国で愛されている。あえてブランドとしての世界観を固めすぎず、ちょっとずつ違っているというのも、「ハローパンダ」らしさかなと思っています。
 
── 具体的な「違い」は、どのあたりに表現されているのでしょう?
 
加納:たとえば、東南アジアや中東には、イスラム教を信仰する方がたくさんいらっしゃいますよね。なので、安心して買っていただける商品の証であるハラル認証を取得し、そのマークをパッケージにも表示しています。
 
また、アメリカで販売しているものは、プリントされているパンダに動きをつけているんです。アジア圏では100種類のパンダをビスケットにプリントしているんですけど、アメリカはあえて32種類に絞って、スポーツをしているパンダのプリントのみに。活動的な子どもたちがワクワクできるものを目指した結果です。
 
── お目当てを見つけるのも楽しそうですね。 具体的には、どんなスポーツをモチーフにしましたか?
 
加納:カーリング、サッカー、フェンシングなど、メジャーなスポーツからちょっとマイナーなものまで、いろいろです。アメリカで家庭訪問に行かせてもらった際には、子どもたちがプリントを見ながらおままごとをして楽しんでいると言っていたのが印象的で。自分に馴染みのあるスポーツを探しながら、ハローパンダを食べる……みたいな楽しみ方でした。

── 家庭訪問なども実施されているんですね。ハローパンダには複数のフレーバーがあると思いますが、国ごとの好みにも差はあるのでしょうか?
 
加納:全然違いますよ。たとえばアメリカのラインナップは、チョコレート、ストロベリー、バニラ、キャラメルなどのフレーバーが販売されていますし、シンガポールでは、ダブルチョコレートというビスケット生地にもチョコを練り込んだフレーバーが人気です。
 
また、中国に唯一あるのがコーヒー味。現地に暮らす、ローカルの担当者の声によって生まれたものです。そうした各国の違いについては、現地でマーケティングを担当しているメンバーとの連携がなにより大切になってきます。各国には心強いメンバーが「ハローパンダ」を支えてくれています。そんなメンバーと共に「ハローパンダ」を盛り上げていきたいですね。

アメリカという大市場で愛されるための小さな戦略

各国に広がる「ハローパンダ」の魅力をもう少しだけ深堀りするべく、この10年でグッとハローパンダの売上を伸ばしているというアメリカ市場について、メイジ・アメリカのマーケティングディレクターを務める、Geoffreyさんにお話を伺いました。

Geoffrey Guilfoile
メイジ・アメリカ  マーケティングディレクター。「ハローパンダ」をはじめとする、メイジ・アメリカで展開される商品のマーケティング戦略構築・実行を担う。

──アメリカでは2017年頃を起点に、「ハローパンダ」の売上が拡大したと聞いています。アメリカでは、どういった経緯で広がりを見せたのでしょう?
 
Geoffrey:私がメイジ・アメリカに入社したのは2012年なんですが、その当時暮らしていたペンシルベニア州では、「『ハローパンダ』ってどこに置いてあるのだろうか?」と思ってしまうほど、流通していない状態でした。そんななか、大きな転機となったのが、2017年に正式発売した「パウチ」という形態です。
 
── 袋の上部にファスナーが付いているタイプの包装、ということですね。
 
Geoffrey:はい、2012年から2016年の間に、アメリカでパウチのお菓子需要がグッと伸びたんです。ファスナーが付いているため、自分の好きな時に、好きな量を食べられる。その利便性が消費者に受け入れられました。
 
それまでのハローパンダは六角形の箱が主流で、アメリカ市場の売り場にはなかなか合わない包装形態だったんですよね。商品棚に無理やり陳列してもらうような感じになってしまっていて。そこで、トレンドに乗れるようパウチ包装の開発に取り組んだところ、販路拡大につながっていきました。

── 市場に合わせて変化を生み出す。地域に根付いたマーケティングを行うmeijiらしさが出ていますね。
 
Geoffrey:そうですね。その後も、コンビニエンスストアのような小さな店舗でも販売してもらえるようにと、小袋の商品を開発したり、フック陳列に対応できるようその袋に穴を開けたり……ささいな変化ですが、販路に合わせて一つひとつの改善を重ねています。
 
── アメリカ国内で、ハローパンダはどのように楽しまれているのでしょうか?
 
Geoffrey:スポーツイベントや学校行事に持参されるケースが非常に多いです。車社会なので、車中スナックとして、学校からの帰りに楽しまれることも多いですね。「バスケットボールの試合に持っていくと子どもたちが喜んでくれるんだ」というレビューをもらったこともありました。
 
── 子どもたちの定番のお菓子になっているのは嬉しいですね。特に人気のフレーバーはありますか?
 
Geoffrey:今は、チョコレートが圧倒的に人気です。ただ、アメリカは、他の国々と異なり、人種の多様性がある国。食文化や地域によって味の好みも異なるので、各々のニーズに合わせた販路拡大を目指したいなと思っています。
 
アメリカには、ヒスパニック系、アジア系、ユダヤ系など、多種多様なスーパーがあって、それぞれのカルチャーが独自の文化を形成している。そういった方々の好みもしっかりと理解し、愛されるフレーバーを考えていきたいですね。
 
── たしかに、アメリカでマーケティングに取り組むGeoffreyさんならではの観点ですね。では、最後に今後の展望について教えてください。
 
Geoffrey:最終的な目標は、「ハローパンダ」がどの家庭にもある定番スナックになることです。そのために、日々商品開発やマーケティングに取り組んでいます。ただ、その過程でも忘れたくないのは「ハローパンダ」らしい遊び心。
 
競合他社からは似たような商品が海外進出することも珍しくありませんが、「ハローパンダ」のユニークさは、なんといってもパンダのキャラクターそのものと、プリント技術。他社にはない強みなので、失わずに活かしていきたいです。
 
また、アメリカではオムニチャネル※マーケティングの重要性も強く語られるようになりました。Walmart(ウォルマート)やTarget(ターゲット)などのオンラインストアでハローパンダの楽しみ方を伝えたり、ソーシャルメディアで顧客とのコミュニケーションを取るなど、日々の暮らしに「ハローパンダ」があるような世界観を目指して、前向きに向き合っていきたいですね。
 
※オムニチャネル:企業と顧客の各接点を統合的に連携させて、顧客にアプローチする販売戦略
 
── 「ハローパンダ」が今よりももっと日常に浸透する。そんな日が待ち遠しいですね。Geoffreyさん、ありがとうございました!

世代を超えて愛されるスナックになりたい。「ハローパンダ」に込めた願い

── Geoffreyさんにお話を伺っていて感じたことなのですが、ハローパンダは国民性に合わせてチューニングをしながら販売されていますよね。世界展開ならではの魅力のようにも思うのですが、いかがでしょう?
 
加納:そうなんです! 国々で異なるフレーバー品が存在したり、空港や観光地に置かれたお土産用のオリジナルパックがあったり。また、その国で販売されているフレーバーを集めたアソート品があったり。全部が一緒というわけではなくて、それぞれ少しだけ違う、みたいなところが面白いポイントかなと思います。
 
── 世界に広がる「ハローパンダ」ならではですね。一方で、よりシェアを拡大するために、世界観を統一していきたいという思いもあるのでしょうか?
 
加納:これまで、それぞれの国々の方たちに愛されるように改良を続けてきたので、その国々においてのベストは今だと思っています。
 
ただ、旅行先でも「あっ『ハローパンダ』だ!」と思ってもらえるような統一感は必要かもしれないな、ということは考えています。主にパッケージの話になりますが、今は各国のスタイルに合わせて多種多様なので、少しだけ工夫していく必要があるのかもしれないなと考えています。
 
── 守りと攻め……そのバランスは難しそうですね。
 
加納:すごく難しいと思います。「ハローパンダ」は、緩やかにちょっとずつ違うのが良いところですし、その違いも楽しんじゃうような、大らかさがあるブランドだと思うんですよね。けれども、せっかく拡大しているからこそ、世界中のお客さまに愛されるために、整えることも必要。一人一人のお客さまが「私のハローパンダ」だって思えるようにしていきたいんです。
 
── 広がりを創ってきた今までと、これから。構想はさまざまあると思いますが、加納さんの考える「ハローパンダ」の展望を教えてください。
 
加納:今の「ハローパンダ」は、お子さんを持つご家庭に愛されるお菓子に成長しているなと感じています。なので、お子さんが初めて食べるチョコレート菓子の選択肢として、「ハローパンダ」と思って頂けるくらい世界の各家庭に浸透しているブランドを目指したいですね。
 
もっと言うと、今「ハローパンダ」を食べてくれている子どもたちが大人になって、自分の子どもたちにハローパンダを買ってくれるようになったらいいなと。そのくらい、魅力的で、愛されるブランドになるよう頑張っていきたいです。
 
── 日本での再販の可能性はあるのでしょうか……?
 
加納:可能性はゼロではないと思います! 日本人にもパンダは愛されるキャラクターですし、なにより、それを願って日本国内で生まれているので。日本にはインバウンドで海外から多くの観光客もいらっしゃいますし、ハローパンダが日本発のブランドであることを届けていきたい思いはあります。