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今年で「きのこの山」発売50周年! きのたけ論争からひもとく「きのこの山」「たけのこの里」が愛され続けるワケ|meijiらしさって何だろう?

meijiは国内外あわせて約17,000人もの社員がいる会社。チョコレートやグミなどのお菓子や、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品だけではなく、医療用医薬品も扱っています。そのため“meijiらしさ”を一言で表現するのは難しく、編集部員の私たちも知らない人や取り組みがまだまだたくさんあるのではないか、と思っています。
 
そこで、連載企画「meijiらしさって何だろう?」では、meijiにゆかりのある社内外の方へのインタビューや対談などを通じて、皆さんとともに“meijiらしさ”について考えていきます。
 
第2回目となる今回は、「きのこの山」「たけのこの里」など海外にも展開するグローバルブランドのマーケティングを担当している吉田 伊織さん。今年50周年を迎える「きのこの山」にまつわる「ある論争」の歴史を振り返りながら、“meijiらしさ”をひもといていきます。

「どっちでもいいこと」だからこそ、楽しい論争になる

プロフィール
吉田 伊織 (株)明治 グローバルカカオ事業本部 カカオマーケティング部 カカオニュービジネスG 
2005年に入社し、中四国エリアで営業を7年担当。その後、「きのこの山」「たけのこの里」をはじめとした数々のお菓子の商品企画・商品開発に6年携わる。2018年に関東で7年の営業経験を積み、2025年4月より「きのこの山」「たけのこの里」のマーケティング担当者に就任。

――吉田さんは、「きのこの山」「たけのこの里」の両方を担当しているんですよね。この両ブランドと言えば「きのこたけのこ論争」が有名ですが、この論争はいつから始まったものなのでしょうか?

吉田:さかのぼると、1990年代に入った頃から、その論争自体はあったと言われています。インターネットの普及後、ネット掲示板の『2ちゃんねる』を中心に、さらに大きく広がっていきました。

meijiとしては、ファンの間でこんなに盛り上がりを見せているのなら、公式としても何かできないか? と考え、2001年に第1回目の「きのこ・たけのこ総選挙」を開催した、という経緯です。ちなみに、そのときはたけのこ派が勝利を収めたんですよ。

――「きのこたけのこ論争」は、meijiが仕掛けたのではなく、自然発生的に生まれたものだったということですね。

吉田:実はそうなんです。公式が総選挙を開催する前から、日本中のいろんな場所で、老若男女問わず「どっち派?」という会話が繰り広げられていたんです。

また、世間では「きのこたけのこ“戦争”」と言われることが多いですが、meijiが発信するときは「きのこたけのこ“論争”」と言うようにしています。

――それはどうしてでしょう?

吉田:たとえば、スポーツの世界の場合、ライバルチームのファン同士が出会うと議論が白熱し、ののしり合いになることもあるかもしれません。でも、「きのこ・たけのこ」の場合は、争いと言いながらじゃれ合っているだけというか。むしろ、きのこ派とたけのこ派で意見が別れた方が、おもしろい可能性まであります(笑)。究極的には「どっちでもいいこと」だからこそ、平和で楽しい論争になる。だからmeijiでは、「戦争」ではなく「論争」という言葉にこだわっています。

――これまでに4回開催された「きのこ・たけのこ総選挙」。歴代の総選挙で、印象的だった出来事はありますか?

吉田:2018年以降に導入した「マニフェスト」ですかね。単に「どっちが勝つか」だけではなく、「勝ったらファンのために何をするか」を約束しました。具体的には、「勝った派閥が食べたい味を商品化します」や「ファンが参加できる体験会を開催します」といった内容です。実際に、「たけのこ派」として総選挙を盛り上げてくれた元レスリング選手の吉田 沙保里さんと一緒に、商品開発をする企画も実現したんですよ。

このブランドらしい「おもしろさ」を伝えるには、どうしたらいいか。どうしたらみんなに“クスッ”としてもらえるか。そんな企画を心掛けてきましたね。

目指したのは、自然とコミュニケーションが生まれるお菓子

――ここまでお聞きして、「きのこの山」「たけのこの里」は単なる“おいしいお菓子”ではなく、コミュニケーションを生み出すブランドなんだな、と感じました。

吉田:まさにそうなんです。実は「みんなに、おいしく、おもしろく」というブランドコンセプトを作ったとき、特にこだわったのが「おもしろく」の部分でした。

――「おいしく」ではなく「おもしろく」ですか?

吉田:もちろん、おいしいのは大前提です。味の改良も、何度も試みてきました。しかし、それ以上に僕らが追求し続けてきたのは、「どうしたらもっとおもしろくなるか」「どうしたらみんなに笑ってもらえるか」ということ。きのこたけのこ論争も、その延長線上にあります。
そもそも、きのこやたけのこの形をしたチョコレートって、それだけでおもしろいじゃないですか。

――たしかに、そこにあるだけで、“クスッ”としてしまいますよね。

吉田:初対面の相手でも、このお菓子があれば「ねぇ、あなたはどっち派?」と会話が始まる。それって、他のお菓子にはない魅力だと思うんです。

meijiは基本的に真面目な社風です。ただ、「きのこの山」「たけのこの里」に関しては「おもしろいことを追求しようよ」と言える雰囲気があります。それは、50年以上かけて築いてきた「このブランドなら大丈夫」という信頼感がなせる技かもしれません。

――「みんなに、おいしく、おもしろく」というブランドコンセプトは、どのように生まれたのでしょうか?

吉田:ブランドコンセプトをつくったのは、第2回目の総選挙が始まる2018年頃です。「きのこの山」「たけのこの里」の歴史を調べたり、過去の資料を何冊も読んだり、開発当時を知る方に話を聞いたり、お客さまにご協力いただいてイメージ調査も行ったり……。とにかくいろんな角度から調査して分かったことを、ブランドイメージに落とし込んでいきました。

その際、言葉選びにはものすごく苦労しましたね。「うれしい」や「楽しい」という言葉も候補にあがったのですが、「これを食べるとうれしいですよね?」「楽しい気持ちになってくださいね?」と、気持ちを押し付けたいわけじゃない。

でも、「おいしい」なら、誰もが自然に使う言葉だと思ったんです。そして「おもしろい」も、説明なしで感じてもらえる言葉。この2つの言葉に「みんなに」を組み合わせることで、押し付けではなく、自然に多くの人を巻き込んでいけるブランドを目指しました。

「きのこの山」「たけのこの里」が愛され続けるわけ

――実は吉田さんが「きのこの山」「たけのこの里」を担当するのは2回目だと、お聞きしました。1度目のときはどのような関わり方をされていたのでしょうか?

吉田:以前は「きのこの山」「たけのこの里」の商品開発担当として関わっていました。当時は総選挙の企画を考えるほか、先ほどお話ししたブランドのコンセプト作成にも携わっていました。残念ながら、2018年の総選挙がスタートする前に部署異動をしてしまったのですが、それから7年後の今年、2025年4月に再び「きのこの山」「たけのこの里」マーケティング担当として戻ってきました。7年経った今も、当時つくったコンセプト「みんなに、おいしく、おもしろく」がまったく変わっていなくて、うれしかったですね。

真面目においしさを追求しながら、お菓子が持つ「おもしろさ」という力も素直に発信していく。ただコンセプトを作っただけでなく、コンセプト通りに「きのこの山らしさ」「たけのこの里らしさ」を探求し続けてきたから、環境や時代が変化しても愛されているのだと思います。

――50周年の企画も、吉田さんが中心となって進められていると聞きました。

吉田:50周年のテーマは「どっち派は変わる」です。これまでずっと片方しか食べてこなかった人に、もう一方も試してもらうきっかけを作りたいと思っていて、それが実現できる企画をいろいろと考えているところです。

――すでに決まっているものはありますか?

吉田:山の日(8月11日)に合わせて、「きのこの山・たけのこの里 どっち派判定AI 『MOTHER』」を公開しました。これは顔写真を解析することで、潜在的などっち派を客観的に判定してくれる最新AIです。会場に来られない方も、スマートフォンで特設サイトにアクセスすれば、AI診断に参加できるようになっています。

このAI、実は明治グループの社員のデータを使って開発していまして。事前に社員に「あなたはどっち派ですか?」とアンケートを取って、その回答と顔写真をセットで学習させました。そのアルゴリズムを使って、顔の特徴から「きのこ派」か「たけのこ派」かを判定する仕組みです。

――つまり、自分が思っている派閥と違う結果が出ることもあるんですね?

吉田:そうなんです。長年「自分はきのこ派だ」と思い込んでいた人が、AIに「あなたはたけのこ派です」と言われたら、どう思うでしょうか?

――気になって食べてみたくなるかもしれません。

吉田:そうですよね。 「え、本当?」と思って、久しぶりにもう一方を食べてみる。そんなきっかけを作りたかったんです。ポジティブな気持ちで、新しい派閥にチャレンジしてもらえる。そのチャレンジがまた、誰かとのコミュニケーションにつながると思っています。

「関わる人みんなが喜ぶか?」を真面目に議論するのがmeijiらしさ

――最後に、吉田さんが思う「meijiらしさ」について教えてください。

吉田:とにかく「真面目」なところですかね。「きのこの山」「たけのこの里」もそうです。おもしろさを追求するのももちろん大事ですが、最終的には「お客さまが喜ぶか」という視点を大切にしています。

――たとえば、それはどんなところに表れていますか?

吉田:世間で「青いチョコレート」が流行ったときに、「きのこの山」でも作ろうとしたことがあったんです。社内でも「それおもしろい!」と話題になり、商品化に向けていいところまでいったのですが、「食欲をそそらない」という理由でボツになりました。いくらおもしろくても、お客さまが「おいしそう」とならない可能性があるものは、「きのこの山」のブランドコンセプトとも反しますからね。

――「お客様と真面目に向き合う」ことが根底にあるのですね。

吉田:言い換えると、内輪だけで「おもしろい」と盛り上がるのは違うなと。お客さまはもちろん、社内の他部署のメンバーなど、商品に関わるすべての人が喜ぶものを目指すべきだと思っていて、そのための「論争」は惜しみません。

meijiは、老若男女に愛される商品を作っています。だからこそ、いろんな立場からの意見が大事になってきます。部署はもちろん、年齢や肩書きも関係なく、良いものを作るために真面目にみんなで議論する。そんな文化が根付いているから、「きのこの山」や「たけのこの里」のような、半世紀に渡って愛される商品が生まれるのかもしれませんね。