冒険者組織の1番長い日 第2話 -いつもの光景-
2025年5月9日(金) AM8:00-AM9:00
【県道337号線:前田 法重・前田 綺羅・前田 梨奈・中島 一州・大塚 仁・大塚 瀬奈・大塚 大吾・富田 剛・桑野 絵梨花】
階段を降りて県道337号線に出ると、今までに何度も目にした光景が目の前に広がっている。ゲーム&喫茶『AXIS』。このビルも築30年ほど過ぎており、以前と比べるとかなり古びた感じを受ける。もちろん新築時から毎日眺めているので、意識しないとその老朽化には気づかないかもしれない。また、振り返ると居酒屋『道』があり、同じく築30年のビルが時の流れを感じさせるのである。
「懐かしいな」
本日は決戦日だからであろうか何故か昔のことを思い出す。今ある『道』の前身である『道』は今よりもこじんまりとしており、アットホーム感が漂っていた。今の『道』ももちろん大好きであるが、昔の『道』は前田にとって青春であり、思い出を語る際には無くてはならないものである。そう考えていると一瞬昔の『道』の外観が思い出され、店内には“道のおばちゃん”と、若い頃の仲間たちと一緒に酒を酌み交わす自分がイメージ出来るのである。そして再度前方を見ると、現在『AXIS』がある場所に存在した“一夜塘公園”が目に浮かぶ。まだ若かった頃の黒髪が頭に蘇り、前田は感慨深い表情になるのである。
「お父さんどうしたの?」
しばらく不可解な動きをしているのを見て綺羅が声をかけると、我に帰ったような表情をする。そして軽く口を開いた。
「いや、昔・・・30年ぐらいを思い出してた。何か懐かしくてな」
「それって走馬灯ってやつじゃ・・・」
頭に浮かんだ単語を梨奈が口にしたが、縁起の良い言葉ではなかったので、言葉にしたことを少し後悔する。ただ、走馬灯というのは一般的に亡くなる直前に見るものであり、もし今日の亜獣王戦で前田がそうなったととても走馬灯を見るにはあまりにも早すぎると言える。
「あ、前田くんも今からー?」
今自分が降りてきた階段から中島 一州が降りてきて声をかけてくる。中島はここの3階に住んでいるので、この階段を利用するのだ。
「一州さん。おはようございます。今からです」
丁寧に返事を返した前田の横で、綺羅と梨奈もペコリと頭を下げて挨拶をする。それに対して中島も右手を軽く上げることで返事を返した。
「あれ?富田と桑野さんだ」
目の前の『AXIS』ゲーセン部の扉が開き、そこから富田 剛と桑野 絵梨花が姿を現す。2人はこちらに向かって軽く合図をし、県道337号線を渡って合流してくる。
「桑野さんはわかるけど、富田は何しに来たの?」
本日の亜獣王との決戦に桑野の能力は必要となるが、富田は正直今日の戦いには全く関係がない。なので、今ここに合流する理由がないのだ。
「前田さん、つれないですねー。元々同じ部隊で冒険者始めた仲間じゃないですかー」
ここに来た理由を口にしたが、それは全く理由になっていないことをここにいる全員が理解する。ただ、富田は一緒に行く気満々のようなので、これ以上突っ込むのはやめたのである。この後は『AXIS』があるビルの3階から大塚 仁と大塚 瀬奈、大塚 大吾が降りてくる。そして結構な人数になったメンバーたちは気合を入れ直して、冒険者組織本館に向かうべく県道337号戦を冒険者らしく2列整列で歩いて行くのであった。
