人生が変わる仁義論 01 | 1万円が中庭の焼き肉になった「不器用な恩送り」の法則
青春の「退屈」と、突きつけられた「留年リーチ」

「卒業できれば良い」って程度の考えで、高校3年を過ごしていた。
俺の退屈に、冷たいリアリティが風穴を開けた。
俺は相変わらず学校には行く。 だが、出席を取った後は、ビリヤード場かボウリング場に直行だ。
たまり場にはいつものメンツが集まる。 タバコをふかし、缶ビールを飲み、バイト先の店員と他愛のない会話をする。 そんな「あてのない」一日を繰り返していた。

進路だ、受験だ、って騒ぐ周りの奴ら。 「いい大学に入れば偉い」っていう、俺には理解できねぇ価値観に縛られてるように見えた。
当時の俺は、「レールに乗るのが安全」って奴らを、どこか冷めた目線で見ていたのかもしれねぇな。
そんなある日。 学校から「平均点を取れなければ留年」というリーチを突きつけられた。 まあ、そりゃそうだ。俺は半ば諦めていた。

見知らぬアイツが差し出した「時間と心」のノート

期末テストの1週間前だ。 ビリヤードのキューを磨いていた俺の前に、同じクラスの真面目な男女が一人ずつ立っていた。
俺とは、まともに接点なんてねぇ二人だ。
「はい」と手渡されたのは、一冊のノート。 「なんだこれ?」と尋ねると、男が言った。 「これできっと点数はとれるから」。
続いて女が言った。 「一緒に卒業したいじゃん」。
その瞬間、身体中に鳥肌が立ったのを今でも覚えてる。 戸惑いながら「ありがとな」と返すのが精一杯だった。

なぜ、繋がりもねぇ奴らが、俺のためにここまでしてくれた? その疑問を抱えたまま、バイト後の居酒屋で缶ビールを飲みながら、そっとノートを開いた。
表紙の裏には「ファイト!」の二文字。 中は教科ごとにまとめられた、すげぇ量の文字と蛍光ペンの線。
あれは、当時の俺がバイトで稼いだ金をつぎ込んでも買えねぇ、「あいつらの時間」と「心」そのものだった。 ブランド物の時計なんかより、遥かに良質で重いブツだ。 飲んでいたせいもあったかもしれねぇが、俺は泣けてきそうになった。

そこからはもう、二人の恩を返すしかねぇ。 みんながいる場所では恥ずかしくてできねぇから、ビリヤード場の片隅で。 ボウリング場の暗いフロアで。 とにかく丸暗記した。

「恩返し」か、「プライド」か? テスト中の葛藤

そして試験当日。 日頃から勉強しねぇ俺にはやっぱり難しい内容だった。 だが、絶対に恩を返してやるって思いで問題を読んだ。
その時だ。 俺の前に座る、ノートをくれた女が、スーッと体をズラしやがった。 回答が見えるように、だ。

俺は、意地でも実力でいくしかねぇと腹を括った。 人の優しさに甘えるんじゃねぇ。 恩を返すってのは、こういうことじゃねぇはずだ。
時間ぎりぎりまで解答を書き続けた。

恐る恐る点数を見る。 数学、化学、歴史、英語……今まで見たことのねぇ点数がデカデカと右上に書いてあった。「これ、俺のか?」ってぐらいだ。
特に英語の点数の横には、奇跡の点数に添えられた「頑張ったな」の赤文字。 なんだ? 俺、死ぬのか? そう思ったぐらいだ。

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