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いつか一緒に叫ぶ日のために─母のちいさな夢

日曜日の昼。ワールドカップ、日本対チュニジア戦。

本来なら、「よっしゃー!」だの「今の入った!?」だの、
それなりに感情がダダ漏れになるはずの時間です。
むしろ、多少うるさくて正常。
テレビ越しに国民全員でうるさくする、年に何度もない貴重な機会です。

……なのに。

我が家のリビングは、なぜか“音を出したら負け”みたいな空気でした。

ゴールが決まっても、ガッツポーズはするものの、声は出てない。
思わず出かかった声は、各自で飲み込む。
ハイタッチすら、ほぼ無音。
手と手は合わせるけれど、音は立てない。
新しい武道かと思うくらい、静かな所作でした。

もはやスポーツ観戦というより、
“集中力を試される競技”に近い状態です。
応援しているのか、修行しているのか、
自分でもよく分からなくなってきます。

理由はひとつ。
息子が、もうすぐ大事な試験を控えているからです。

息子も、試合は気になるようで、
勉強の合間にふらっとリビングに降りてきて、
テレビをちらっと見てひと言。

「よっしゃ!勝ってる。すご。」

それだけ言って、また自分の部屋に戻っていきました。
滞在時間、約5秒。
スポーツ観戦としては、世界一短い視聴記録かもしれません。

試合は4対0で日本の勝利。
本当なら大騒ぎしてもいいような展開です。

けれど、試合終了のあとも、
リビングはそのまま静かなままでした。

いつもなら「飲みに行こう」と言い出す主人も、
今日はただ静かにチャンネルを変えるだけ。
声を出す代わりに、心の中だけで全力ガッツポーズをしていたのだと思います。
たぶん。

きっと今、同じような家庭がたくさんあるのだと思います。
受験期という、少しだけ特別な時間の中で、
それぞれのやり方で、静かに応援している。
声を出さない応援も、ちゃんと応援です。
たぶん、サッカーの神様にも伝わっています。

そんな中で、ふと思いました。

いつか、息子の試験が終わって、
何も気にせずのんびりできる日が来たら──

その時は、一緒にワールドカップを見ながら、
思いきり声を出して喜びたい。
ゴールの瞬間に、遠慮なく叫んで、
思いきりハイタッチして、
「やったー!」って笑い合えたらいいな、と。

近所迷惑にならない程度には、
本気で叫びたいと思っています。

それが、今の私の、ちいさな夢です。

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