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まずやってみる、そこから循環がはじまる──山脈・丸山僚介に聞く、〈資源循環〉と〈まち〉

「街づくり」はとても複雑なものです。 そこに住む住民はもちろん、商いを営んでいる人、デベロッパー、行政……などさまざまな主体による活動の上に成り立っています。各々の活動はお互いに何らかの影響を与え、結果的にまちという姿で現れます。そう考えると、それらの主体が街づくりを意識することから、本当の街づくりがはじまるのではないでしょうか。

近年、世界的に資源循環や持続可能性への関心が高まり、地域に根ざした循環型社会の実践が求められるようになりました。とくに建築や街づくりにおいては、開発にともなう資源の消費だけでなく、施工・解体時の廃棄物による環境負荷が社会的な問題になっています。

資源の循環とは、単に廃棄物を減らすだけでなく、人びとの暮らしや地域コミュニティのつながりを再構築する可能性をもっているのではないか。資源が循環する暮らしは、私たち一人ひとりが自らのまちに主体的に関わり、持続的に地域を育てていく仕組みでもあるのではないか。そう考えると、資源循環が単純な社会課題としてだけでなく、私たちが街づくりに深く関わるための入口や基盤のようにも思えます。

そこで今回は、神戸市有馬口を拠点に、暮らしのなかで資源循環を実践し、全国規模での地域資源循環のためのネットワーク構築をめざしながら、地域社会の新たな可能性を探求している山脈の丸山僚介さんに、資源循環が地域コミュニティに与える影響とその可能性についてお話をうかがいます。

資源循環という視点から「まち」を考えることで、これからの地域づくりの新たなヒントが垣間見えたインタビューとなりました。

丸山僚介
山脈 店主。合同会社廃屋 BIVOUARCプロジェクト担当。神戸市北区の裏六甲を望む有馬の入り口にて、地域資源の循環拠点「山脈」を営み、循環型社会をめざしたプロダクト・空間の設計を起点に、リサーチ、企画、編集、デザイン、制作を担う。地域の資源と人々の暮らしのあいだに立ち、“手もとにある豊かさ”に出会うための場と仕組みをつくることをめざす。


資源循環の拠点「山脈」


──丸山さんの活動拠点であり古道具・古材のショップでもある「
山脈」にはじめてうかがいました。線路沿いにある古民家を丸山さんがご自身で改装されたんですよね。まずはこちらをご案内いただけますか?

そうですね、屋根が落ちていたような古い民家を借りて、ホームセンターで売っているものやレスキューした古材などを使って改装しています。もともと、資源循環を実践するお店をつくりたいと思ったところからのスタートなのですが、資源循環を実現しようとすると、レスキューした資材をストックしておく倉庫が必要になります。だからぼくも、倉庫がほしい倉庫がほしいってずっと言いつづけていたのですが、おかげでここに出会うことができました。

写真左側奥にすこしだけ顔を出しているのが山脈の店舗兼丸山さんの自宅。神戸電鉄の線路沿い、もとは線路敷設の際に必要だった変電所があったといわれる土地に建っていた古民家を改修している。
山脈の店舗側正面。1階の手前部分が店舗とギャラリー。手前の庭はオフグリッド体験ができるキャンプベースにもなる。写真右側にはワークショップでつくった石窯も見える。
庭は倉庫代わりにもなっていて、ストックされた古材も置かれている。木材をレスキュー(引き取り)する際の判断基準のひとつに「自身で廃棄処理できるもの」というのがあると話してくれた。たとえば、合板は接着剤を使っていて、廃棄するときは高温で焼却しないと有害ガスが発生してしまうから、自分で燃やして廃棄することができない、だから引き取らない。

──なかにおじゃますると、床も壁も天井も、古民家って感じでも新築でもない、独特の雰囲気があってすてきです。

ありがとうございます。ほとんどが古材を再利用したものですが、古材をそのまま使うというより、加工しているものも多いので、そんな印象を持ってもらえるのかもしれません。たとえば、瓦の下にあった土はふるいにかけて壁の左官として使ったり、木材への塗装は建物から出てきた釘をお酢に漬け込んでつくった酸化鉄液みたいなものを塗ったり。できるだけものを捨てずに済む方法を選択しています。

山脈の店舗部分。ところ狭しと古道具や古家具、古材をリメイクしたプロダクトなどが置かれている。
店舗部分の奥にあるご自宅のダイニングスペースに招いていただき、インタビューがおこなわれた。

──さきほど古材をレスキューするというお話がありましたが、丸山さんが山脈で実践されている「資源循環」とはどういうものなのでしょうか?

解体が決まった建物や空き家から、古材や古道具を引き取りにいくことを「レスキュー」と呼んでいます。たとえば、地域にある空き家が解体されることになったとします。すると家主さんとかから連絡が入って、空き家から出る資材をレスキューしに行くんです。床板、梁、柱、建具などですね。山脈ではそれらをレスキューして、ストックしておいて、加工し、販売しています。

日本ではいま空き家が社会問題になっていますよね。空き家によって発生する問題は多岐にわたりますが、なかでも環境面への負荷が大きな課題になっています。相続などの問題もあり、どうしても空き家を解体する必要が出てくるのですが、その際に発生する大量の廃材が焼却処分されてしまうことで、環境に大きな影響を与えてしまう。だからこそ、空き家から出るものをできるだけ有効活用し、焼却する量を減らしていく──そのための資源循環の仕組みづくりがこれからの地域社会には欠かせないと思って、こうした活動をしています。

20年近く空き家として放置されていた当時の山脈の写真。(写真提供:山脈)
(左)古道具の前でお話されている丸山さん。(右)丸山さんがもっているものは、古材の柱を旋盤で加工して制作したテーブルの脚。柱に残った釘や欠けがある部分をあえて旋盤加工せず残し、脚の意匠にしてしまうチャレンジ。丸山さんが山脈オープンのために実施したクラウドファンディングのリターンとして制作された。

消費行動を問いなおすための価値転換


──丸山さんが資源循環を実践するにいたった経緯をうかがいたいです。

大学では家具のデザインを学んだのですが、卒業がちょうど東日本大震災が起きたタイミングで、ただかっこいいものをつくっているだけでいいのか、と漠然としたモヤモヤを抱えていました。ものづくりのなかになにを込めるかを考えないといけない、ということにすごい興味が湧いてきたんですよね。そうした流れで、神戸市にあるデザイン・クリエイティブセンター神戸、通称・KIITO(キート)の企画スタッフとして勤めることになりました。

KIITOは、市民とともにさまざまなアクションを実践してきた、社会課題解決型のデザインセンターです。そこでぼくは、職人から直接指導を受けながら、素材そのものの加工からプロダクトの完成までを体験するものづくりワークショップ「〇〇さんと、〇〇をつくる。」シリーズや、コーヒーがどこからやってきて、どのように加工されぼくたちの食卓に届くかを学びながら実際に飲む機会をつくる「神戸珈琲学」などを企画していました。

──じつはぼく(編集部・春口)も元KIITOのスタッフで、丸山さんの同僚でした。丸山さんの企画は、どれも社会一般に流通しているプロダクトをプリミティブに見つめなおすような視点があって、実際に参加してみるとハッとするものが多かった印象があります。

実際に自分の手を使ってやってみるとなったときに、プリミティブな理解が深まることによって、消費行動に変化が起こせるんじゃないかと思って、当時は企画していましたね。そんなKIITOでの実践のなかで、ぼく自身の興味関心が 「消費行動」や「環境問題」に集約されていきます。

そうしたなか、2017年に企画した「ReBuild New Culture スクラップ&ビルドからレスキュー&ビルドへ」というトークイベントが、ぼくがものづくりの現場にもどるきっかけをつくります。その1年前、長野県諏訪市でReBuilding Center JAPANを設立した東野唯史さんをゲストに、その実践について話してもらうものでした。

ReBuilding Center(通称・リビセン)は、アメリカ・オレゴン州ポートランドにある施設で、建材や設備をストック・販売し、地域内での再利用を促進させる、資源循環のカルチャーを世に知らしめた存在です。東野さんたちがその日本版として立ち上げたのがReBuilding Center JAPANです。

──リビセンの理念に、丸山さんも共感されたんですね。

その2017年の時点で「ぼくもリビセンをこっちでやりたい」と彼らには伝えていましたね(笑)。彼らは、地域の資源循環という社会課題を、そもそも課題としてとらえないような価値転換を実践していて、なによりとても楽しそうなんです。そうしたスタンスと、それを実際にビジネスとしても成立させるアクションに、とても共感しました。

とはいえ、リビセンとまったく同じことをしてもしょうがないので、自分の生活圏内で地域の資源の循環を生み出すならばどんな組織で、どんな仕組みかといろいろ考えていました。そうすると、建築について学ばなくてはいけないと思うにいたります。そこでKIITOを退職し、建築にまつわる仕事にシフトするため、大阪の工務店に勤めることにしました。在職中は、リノベーションなどの現場だけでなく、街づくりに関わるさまざまなプロジェクトに携わることができました。

丸山さんが工務店勤務時に改修し、自身もさまざまなプログラムを実施したシェアショップの「モトタバコヤ」(写真提供:山脈)

そして3年間の現場での経験を経て、実際にプロジェクトを立ちあげるために、独立。同時に、合同会社廃屋(通称・廃屋グループ)の活動にも加わることになりました。合同会社廃屋は、「廃屋ジャンキー」として有名な西村周治さんが代表の会社で、朽ちてしまった廃屋を買い取り、自分たちで直して使えるようにする人たちが集まっています。じつはこの山脈も、廃屋グループが買い取った物件で、ぼくはそれを借りている状態です。

廃屋グループの取り組みを紹介したドキュメンタリー番組「廃屋REBORN」の動画。山脈オープンまでの取り組みについても紹介されている。

問題を解決するのではなく、問題でなくする


──さきほどリビセンについてご紹介いただいたときに「価値転換」という言葉が出てきましたが、丸山さんがめざそうとしている価値転換はどのようなものなのでしょうか? ぼくたちは空き家が問題になっていることも知っているし、資源循環の重要性もなんとなく理解している。けれど実際にどうしたらいいんだろう、という人たちが多いような気がしていて、そのときなにかしらの価値転換が必要なのではないかという気がします。

そうですよね。価値転換といっても、がらっと変わるのはむずかしいので、じわっと寄せていくようなアプローチが重要なんじゃないかと思っています。

たとえば廃屋グループでは、廃屋を直すために地域で発生した廃材を利活用してきました。そうすることで、建築現場で日々大量に発生している廃棄物をできるだけ減らしながら、資源・資材としての可能性をふくらませることができると思っています。こうした取り組みがすこしずつ広まって、家の解体の前に連絡をもらえたり、不用品の活用について相談をもらう機会も増えてきましたが、やはりどうしても、それを活用し切れる現場は少ない。新しい材料と比べると割高だし、新材と比べると曲がっていたりサイズがバラバラだったりするし、欲しいときに欲しいだけの材料があるわけでもないから、選ぶにも知識や技術、そしていまあるものでつくる柔軟性が必要なんです。だからこそ、古材や古道具を利活用する担い手を増やすことと、使い道そのものの開発・周知がいま求められています。

リビセンは課題を課題としてとらえない価値転換をしたとお話しましたが、それはつまり、空き家問題や環境問題のような社会課題を「解決する」のではなく、「そもそも問題でなくする」ようなスタンスです。さきほどのふたつの課題、古材を利活用する担い手を増やし、古材の使い道を開発する必要がある状態を「問題でなくする」にはどうすればいいか。それを「お店」として実践するのが、山脈の目的なんです。

──問題を解決するのではなく、問題でなくする……。もうすこし詳しくうかがえますか?

ぼくは山脈での活動をとおして、「社会的価値」と「文化的価値」というふたつの価値を切り分けて考えながら、資源循環におけるそれぞれの価値を高めていきたいと思っています。

「社会的価値」とは、文字どおり社会に対する価値です。資源循環でいえば、古材や古家具を利活用することで焼却処分することなくCO2を固定する──結果として自然環境に与える負荷を軽減することにつながれば、社会的な価値が高いことになりますよね。この社会的価値をわかりやすくするためには、古材をレスキューすることによる炭素の固定量を可視化したりして、自然環境や社会にとってどんなメリットがあるかを見いだして、社会に伝える必要があると思っています。

神戸市から補助金をもらって、廃屋グループが資源循環の取り組みでどれくらい炭素を固定できたかを算出したのですが、1年間で約40トンという数字になりました。廃棄して焼却処分していたら、これだけの炭素をCO2に変換して排出していたことになります。もちろんこの数字がどれだけ社会にとって意味のあることかをさらに検証する必要はあると思うのですが、なんとなく漠然と自然によさそうと思っていることが、こうして目に見えるかたちにすることも重要なのだと意識しながら活動しています。

──たしかに、資源循環は行政などとも連携しながら進める必要があるでしょうから、そうした社会的価値の可視化は非常に重要ですね。

もうひとつの「文化的価値」は、「まだ使えるものを生かす暮らし」という文化自体を広めるための価値です。つまり、資源循環の実践を自分たちの暮らしに取りいれることの魅力を引きだすこと──もっと簡単に言えば、資源循環することが「楽しい!」と多くの人に思ってもらう。そのための価値を高めていきたい。

資源循環って、いまの経済合理が優位な社会から見たら、とても面倒なんですよね。新しいものを買ってきたほうが便利だし、安い可能性もある。でも、そうした経済合理的な消費行動が自分の暮らしのなかにあることに、どこか居心地の悪さを感じている人も少なくないはずです。その居心地の悪さに対して、こんな消費のルートもあって、資源が循環する暮らしもできるんだという選択肢を示すことが、文化的価値を高めるための重要な手段になるのではないかと思っています。

山脈が育むふたつの価値「社会的価値」「文化的価値」(写真提供:山脈)

──社会的価値にはすこしむずかしい印象をもつ人たちにも、文化的価値は間口が広く伝わりそうですね。

文化的価値を入口にすると、気がついたら生活に資源循環を取り組めていた、というような状況も生まれると思うんです。そうすると、資源循環が実践されることで社会的価値も自ずと高まることにつながるわけです。

──楽しいことをやっていたら、じつは社会のためになることをやっていた、ということですね。

そうです。そうしたら、「社会問題をそもそも問題でなくする」ことができるんじゃないかと思うんですよね。もったいないから資源循環に取り組む、のではなくて、かっこいい・楽しいと思って遊んでいたらじつは資源循環に取り組んでいた、という状況の方が、精神衛生的にも健康的だし、起点がポジティブなので、持続性が高いんです。

これもまたそもそもの話なのですが、資源を循環させたい、というニーズはめっちゃあるんです。空き家はたくさんあって、解体のタイミングで古材をレスキューし、活用してほしい人もたくさんいる。さらに驚くことに古材を使いたいというニーズも、実は潜在的に多いんです。でも、手に入れられる場所が極端に少なく、加工ノウハウや仕上がりの特徴は一般的な木材とは異なるので、古材が選択肢に入ることは稀で、なかなか活用量が増えていかない。こんなにも身近にある素材なのに。それがつまり、資源循環の文化的価値がまだ広まっていないということだと思います。資源循環の楽しさが伝わっていないわけです。

だから、社会的価値を大きく語りすぎると説教臭くなってしまうし、社会問題が際立ってしまう可能性があるので、本当は文化的価値を語ることでこのお店を成り立たせたいんですが、実践を進めるための資金を集めるには社会的価値を語る必要もあるので、いまは並行して伝えようとしているところです。

経済合理性の外側にある原理


──資源循環が一般化しないことの理由として、いまお話いただいたような価値が伝わっていないということ以外に、どんな要因があると思いますか?

「儲からない」からですね(笑)。

「経済合理曲線」[*1]というグラフがあるのですが、経済合理性と社会ニーズの関係を示した図で、たとえば難病の治療法開発はすごくコストがかかるうえ、患者数が少ないので儲からないと判断されて開発が進まない。あるいはリニアモーターカーもコストは高いけれど利用者数が見込まれるので開発が進む。要はある問題がこの曲線の内側にあれば儲かるし、外側にあれば儲からないから問題に着手されない、ということです。この曲線を越えるか超えないかという狭間に、資源循環はあるように思います。

*1 経済合理曲線: 正式には「経済合理性限界曲線」。山口周氏が著書『ビジネスの未来』(プレジデント社、2020年)で提唱した、社会の課題解決において「解決コスト」と「得られる利益(市場規模)」が均衡するラインのこと。普遍性が高く難易度が低い問題は曲線内側で市場解決され、曲線外側の高難度・小規模な問題は手つかずになるという市場原理を説明する概念。参考:山口周氏のnote記事「なぜ市場原理だけではダメなのか?」 https://note.com/shu_yamaguchi/n/nd295fd60fba0

丸山さん作成の経済合理曲線の図(作成:山脈)

リビセンは、経済活動の一部に資源循環を位置づけることで経済合理曲線の内側にひっぱり込んで課題解決につなげている、と言えると思います。リビセンが開催したリビセンの運営方法について学ぶスクール「リビセンみたいなおみせやるぞスクール」に参加して、彼らが資源循環の活動をどのように成立させているかを学んできたのですが、あらためて彼らにしかできないビジネスモデルだと再認識しました。

でも、資源循環を経済合理曲線の内側に位置づけるために、経済活動でないところで解決するルートもあるはずだ、という気づきも得たんです。そのルートを探すために、これから体当たりで研究していかなければいけないと思っています。

──経済性の外側から資源循環の価値を引きだすことで、あとから経済性がついてくる、というようなルートですね。資源循環が単純に儲からないのではなくて、「いまのやり方のままでは」儲からないだけなのかなと感じました。

そうだと思います。みんな資本主義社会のなかで暮らしているので、どうしても経済合理性を優位に考えてしまって、資源循環に取り組もうとしても足踏みしてしまう人もいると思うんです。現状では経済合理性はないですと言うしかないし、ぼくも家族がいるので経済的にもお店を成立させる必要がある。でも、未来のことを考えれば、経済性の外側になんらかの解決手段が必要なんです。

──資源循環が経済合理曲線の内側に位置づけられるためには、社会の側の認識も変えていく必要があるのですね。丸山さんが社会的価値と文化的価値を両輪で高めようとしているのは、このためなのだと思いました。経済性の外側からの解決手段として、どのようなことが考えられるのでしょうか?

「コミュニティ」がとても重要になると思っています。

コミュニティのなかでは、課題が解決しやすくなることがありますよね。コミュニティ内にいろんな職能をもつ人たちが集まっていると、役割分担ができて、サポートしあえる関係性をつくることができる。昔の集落だと、今年は〇〇さんの家の屋根を葺き替えて、次の年は〇〇さんの家で……というように、困ったことを相互にサポートしあっていたりしました。これはかつての話なので、現代の、とくに都市部にどう展開するかは考える必要がありますが、それぞれの地域のなかで課題を分担するようなコミュニティができれば、経済性の外側でも課題解決はできると思うんです。

──単に役割を分担するだけでなく、「課題を分担する」という考え方は新鮮です。

そのとき、課題を解決するための技術や人材が自分たちの目の届くところにいることが、とても大事だと思っています。問題が起きたときに、どこか遠くから技術や資源を調達しないと解決できない状況にあったとしたら、仮にそれが調達できなくなってしまったら、とつぜんぼくたちの生活がストップしてしまう。だからこそ、技術や資源が地域で循環するようなコミュニティづくりが重要だと思いますし、それって便利でなくなると思う人もいるかもしれないけれど、そんな生活のほうがおもしろいとぼくは思うから、同じように思える人を増やしていきたいですね。

──「資源循環とまち」というテーマで記事を企画するにあたって、たとえば自宅でコンポストをつくって生ゴミを処分するような、個人で資源循環を実践する人はたくさんいても、それが社会やまちに面的に広がらないのはなぜだろうと考えていたのですが、その理由やコミュニティをとおした実践の方法についてもうかがえた気がします。丸山さんはすでに地域資源循環のためのネットワークづくりに取り組んでいるんですよね。

さきほどお話したリビセンのスクールの卒業生を中心に、すでに全国規模でネットワークが広がっていて、100人近いメンバーとオンライン上で連絡を取りあえるようになっています。資源循環のためのノウハウを交換しあうこともあれば、どこかで空き家が解体される情報が入ってきてレスキューに行ける人が声をあげたり。だれかが専売特許で活動しようとするのではなく、みんなで資源循環に取り組もうというカルチャーが広がってきています。

こうしたネットワークを起点にして、より多くの資源がぼくたちの暮らしにもどっていくコミュニティや社会ができていくといいなと思います。

茨木市にあった築120年の古民家の解体現場でレスキューする資源循環ネットワークのメンバー。建築家、デザイナー、材木屋、木工作家、カメラマン、アーティスト、研究者、様々な職種のメンバーが集まり、各々の視点で活かすことができるものをレスキューした。(写真提供:山脈 photo by Akihiro Yasui)
山脈の改修工事の一部は、廃屋グループが実施する「半人前大工育成講座」の教材にも使われた。コミュニティ内で課題を解決するための技術を育成する取り組みとも解釈できる。(写真提供:山脈)

地域全体で資源循環に取り組むことがあたりまえのまちへ


──丸山さんが資源循環の活動をつづけた先に、まちや社会の未来はどうなっていくと思いますか?

5年後には、いまはお金を払って受けているサービスのなかから、自分でできることをすこしずつ取り戻していくような動きが広がってくると思います。本来だれもができていたことをアウトソーシングで効率化してきたことはすごく大事で、だからこそいまの経済が守られ、近代的な暮らしが育まれてきたわけですが、とはいえみんな知識も技術も手放しすぎです。自分で味噌をつくれるようになるでもいいし、棚をつくれるようになるでもいい。そうしたことを手元にもどして、そんな暮らしをおもしろいと思える人が、まちに増えると思います。

もっと長いスパンで考えると、すこしずつまちの制度が変わってくるでしょうね。ポートランドでは、築100年を超えた建物は重機を使って解体してはいけないというルールができました。加えてその地域には古材を持ち込めるリビセンのような施設があちこちにあるので、地域全体で資源循環に取り組むことが前提のまちになっています。

──ニューヨークでも生ゴミのコンポスト処理の義務化がはじまりましたね。日本でもそうした動きはあるのでしょうか?

法改正まで進めるようなところはまだないと思いますが、時間の問題のようにも思います。これまでいろんな人たちが資源循環の社会的価値を高めてきたことで、具体的な数字を見て、行政も動けるようになってきていると感じます。

山脈がある神戸市では、「エコノバ」という資源回収ステーションが各地に設置されて、プラスチック資源を細かく分類して回収し、再利用する仕組みがはじまっています。200箇所設置するのを目標に、いま30箇所。そのうちのひとつがここ山脈にもあります。 

山脈にあるエコノバの資源回収ステーション。このステーションも半人前大工育成講座の一環でつくられた。

もうひとつ、「BIVOUARC(ビバーク)」という古材を回収・ストックする施設が、神戸市長田区にあるクリーンセンター内に新しくできます。ここの運営事業者として廃屋グループが公募型プロポーザルで選定してもらっていて、主にぼくが運営に携わることになっています[編注:詳細について後述します]。 

──神戸市は資源循環についてかなり先進的な取り組みを進めているのですね。

こうしたことが神戸市で成功したら、日本各地でも取り組みが進むと思いますし、そうなると資源循環の歩みは意外と早いかもしれませんね。とはいえ、まだまだこれからです。

──山脈としては、これからどんなことをしていきたいですか?

神戸市がそうやって資源循環に取り組んでいるからかはわかりませんが、ぼくのまわりだけでも資源循環に関する事業を最近はじめた人が何人かいます。そのうちのひとりが、福祉事業所とグラフィックデザインを兼業でされている方なんですが、福祉事業の延長で、古材から釘を抜く作業を障害者就労支援に取りいれようとされていて、とても可能性を感じます。それも経済性の外側から、まちのひとつの機能として資源が循環する仕組みを生みだそうとする試みだと思うんです。

同じように、山脈も、まちや地域の機能になるためにどうすればいいか、いろんな手段を講じているところです。たとえば、NPO法人にするのはどうか、と考えていて、いろいろ調べています。認定NPO法人には寄附金控除という制度が適応されるので、NPO法人に寄付をすると所得税や住民税の控除を受けることができます。ポートランドのリビセンはNPO法人なんですが、古材や古道具を引き取るときに査定をして金額を出して、そのうち一定の割合を寄付として受けとることで、古材を持ち込んだ人の税金を控除できます、という仕組みを導入しているんです。簡単に言えば、お金ではなく古材を寄付することで税制優遇を受けられる、ということです。日本でも物品寄付ができて、時価評価で査定されて、特定の要件を満たせば非課税対象になります。それを古材でできないか、チャレンジしてみたいです。

それができれば、仕入れの費用を税金で賄えるので、維持コストが下げられます。そうなると、いまよりもっと資源を循環させられる状況をつくれるし、資源循環に関わる人たちみんなが利益を上げやすい状態にもできるかもしれない。そんな未来を思い描いています。

──そうなるといま以上に行政との連携も生まれて、よりまちの機能として資源循環が位置づけられるでしょうし、いろんな人に資源循環の社会的・文化的価値が広がるきっかけにもなりそうです。企画した当初は、資源循環という社会から要請される課題をいかに実践するかという視点で考えていたのですが、今回お話をうかがって、私たちがこれからの社会を生きていくための基礎として資源循環があるんじゃないかと思うようになりました。丸山さんをはじめ、その先陣を切っている人たちと肩を並べて、たとえばNTTグループのような企業も同じように実践することが重要なのだと、思いをあらたにしました。今日はありがとうございました。

(収録日:2025年6月16日)

後日談レポート:古材ストックヤードBIVOUARCオープン


インタビュー後、お話いただいた神戸市の古材ストックヤード「BIVOUARC(ビバーク)」がオープンし、オープニングのプレス内覧会におじゃましました。

BIVOUARCは、効率や合理性のもとで捨てられてきた古材や家具などの建築資源を一度立ち止まって受け止め、その価値を問いなおすためのリサーチとストックの拠点です。場所は神戸市長田区の苅藻島。兵庫運河工事で埋め立てられた人工島で、工場やクリーンセンターがある産業エリア。そのクリーンセンター(ゴミ中継施設)の一角にある倉庫をリノベーションするかたちで開設されていました。

BIVOUARC(ビバーク)の正面。クリーンセンター内の倉庫が活用されている。
BIVOUARCの内部。クリーンセンターには、持ち込まれたゴミの重量を車と一緒に計測する重量計があり、その重量計を活用してBIVOUARCに持ち込まれる資材の重量も計測している。

なかには、棚に古材が並べられています。「未処理」のものから「釘抜済」「洗浄済」と段階ごとに置かれ、また「床板」や「床間板」「柱・梁」など部材ごとにも整理されていました。また製材・加工するスペースも用意されていて、DIY教室などのワークショップも実施されるそうです。

壁面には黒板塗装がされていて、チョークで資源循環に関するリサーチの内容が書かれていました。リサーチチーム、現場チーム、編集チームが構成され、定性・定量調査と現場での実践を積み重ね、その集積を可視化して周知し、次のリサーチにつなげる仕組みがつくられています。この黒板の内容も、都度更新されていくと、丸山さんが説明されていました。

壁面のリサーチボード。随時更新される。

とはいえ、まだいろんな課題もあります。神戸市のウェブサイトに書かれた施設概要には、BIVOUARCは「空き家を改修、解体する際に発生する廃材を価値ある「古材」として、活用事例とともに魅力的に展示」する施設だと書かれています。BIVOUARCは神戸市の施設であることから、ここで実際に古材の売買ができない(利益を生めない)ため、あくまで展示されている状態だとのこと。

ただストックされるだけでは、資源循環にとって価値が生まれにくいのではないかと思いましたが、そんなことはありません。神戸市の担当者の方にお話をうかがうと、「もしBIVOUARCの取り組みが失敗に終わったとしても、その失敗を糧にして、どんなことが必要だったのかと検証することができる」という旨の回答をいただきました。丸山さんがインタビューでお話されていたように、こうした先進的な取り組みがひとつの事例として生まれることで、各地で同じような取り組みを実践するきっかけになるでしょうし、資源循環の社会的・文化的価値を広める大きな可能性をもっていると感じました。

解説する丸山さん。写真右奥がワークショップなども実施される製材・加工スペース。

最後に、黒板に書かれていたリサーチの目的が印象的だったのでご紹介します。

「古材を、ひいては空き家を「廃棄物」ではなく「地域の資源」と捉え直すために」

リサーチボードに書かれたリサーチの目的。

その循環の環のなかに、私たちを含め多くの人が巻き込まれることを切に願います。


編集後記
少し古いデータだが、2023年時点の総務省「住宅・土地統計調査」によると、全国で空き家総数は900万戸に達し、空き家率は13.8%と過去最高である。そのなかで、居住目的のない「その他空き家」(約385万戸)のうち、一戸建ては約73.9%を占め、その大部分が木造住宅であるため、老朽化した木造住宅は空き家問題の中心となっている。
ビジネスとしては、売れるものと売れないものがバランスよく集まるわけではなく、その後のリメイクや持ち寄ってくださる周辺の方々との関係性などが大変にもかかわらず、時間をかけ、この地に根付き、オフグリッドを体験してもらえる拠点づくりをにこやかに、楽しみながら夢として語れる丸山さんの力強い信念に、圧倒された約2時間のインタビューだった。
バイオマス発電、植林、早生樹などの木材・森林資源保護活動、CO₂の固定化維持も大切だが、山脈の丸山さんの活動である廃棄物減量、新材使用の削減による環境負荷の低減、希少資源の有効活用、Regenerative、サーキュラーエコノミー社会の実現にとても大切な視点だと感じた。
また、拠点づくりが進んだら、キャンプ体験に来てみたい。(今中)

資源循環の社会的価値と文化的価値はとても興味深い内容で、丸山さんが語られていたとおり「社会のためにやろう」なんて言われてもなかなか継続できないと思う。そこを「楽しいからやりましょう」に置き換えようとするのはすごく良いと思う。価値観が変わるのは時間がかかると思うけど、やらなければはじまらないのも事実。それに価値観の変容は、すでに若い人たちから徐々に進んできていると思う。そのうち古材も古着と同じくらい当たり前になるんだろうなと思い、その時(老人になっている)自分も気負うことなく受け入れられるようにしなければ。そんな思いを強く持った。がんばらねば。(齊藤)

聞き手:小野寺諒朔、春口滉平、今中啓太・齊藤達郎(NTTアーバンソリューションズ総合研究所)
構成・編集:春口滉平
写真:小野寺諒朔(本編・特記のない限り)、春口滉平(後日談レポート)
編集補助:小野寺諒朔、福田晃司
デザイン:綱島卓也