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【掌編小説】桜まつりの日の結婚式
桜の季節だった。
新郎と新婦はこの日を迎えた。
結婚式場の裏には小さな公園があり、その日はちょうど「桜まつり」が開かれていた。
満開の桜の下では屋台とカラオケ大会。
その音が、式場の部屋までよく聞こえてくる。
新婦と新郎は、三々九度の最中だった。
親族が静かに見守る中、盃がゆっくりと回される。
厳かな空気が流れる。
そのとき、公園のマイクの声が響いた。
「次の方! 山田太郎さんで
『さくら』!」
拍手。
そして、
「🌸さくら〜〜〜〜♪」🌸
.........見事な音痴だった。
音程は桜の花びらのようにふらふらと散っていくのが見えるようだ。
厳かな部屋に、その歌声だけが妙にはっきり届く。
新婦は必死にこらえた。
笑ってはいけない。
絶対に。
でも肩が震える。
ぷっ。
吹いてしまった。
新婦は慌てて口を押さえる。
親族の何人かがちらりと見る。
しかし三々九度は、何事もないように厳かに続いていく。
外ではまだ、
「🌸🌸さくら〜〜〜〜♪」
音痴のおじさんは気持ちよさそうに歌っている。
やがて三々九度が終わった。
ほっとして顔を上げたとき、新郎が小さく言った。
「笑ってたね」
新婦は赤くなってうつむいた。
「ごめん……」
すると新郎は、少し笑ってこう言った。
「山田太郎に持っていかれたよな」
新婦は笑った。
「ホントに!」
新郎は静かに答えた。
「忘れられない結婚式になったよな」
新婦は思った。
この結婚、毎年この歌と一緒に記念日が来る。
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