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あの子、流産したらしいよ

年賀状やLINEが来ると
ドキッと、ザラっとする友人が一人いる

彼女とはもう二度と会わないだろうと決めているからだ



彼女は中学時代の部活のメンバーの一人だ

私の所属していた部活は私ともう1人の同級生が1期生として創った部

例の彼女は同級生だが、実は最も新顔
あとから入ってきたメンバーだった

全員女子、ぜんぶで10人にも満たないこぢんまりした部活。歴史のない部活、

でも、大会ではそれなりの成績をおさめるほどで
私は部活に全力投球していた
教室がくだらないと思っていた私にとって、唯一の居場所だった

例の彼女とは中学の2、3年と同じクラスで仲良くしてもらった
部活がある日もない日も
家が近いので帰りが一緒になることも多かった。

しかし

私にとって良い友人だったかというと、そうでもない



寒そうにしていたのでジャージを貸したことがある

彼女はそのまま着て帰り、数日後 洗わずに返してきた
でもわざわざディズニーランドの袋に入れて 返してきた彼女が不思議だった

交際中の先輩が修学旅行に行っているからと、
1つ下の後輩と一緒に帰宅する彼女が理解できなかった

大事な大会の時にみんなの足を引っ張る
彼女の人間性の低さを軽蔑していた

彼女は経験者だったので途中から入部できた
しかし、彼女の実力も私は訝しんでいた

彼女はSNSが好きだった
当時、私の中学ではSNSは禁止されていた
彼女のSNSが見つかる度、部員全員が怒られるので迷惑だと思っていた




中学三年生
彼女にはネット上で仲の良いグループがあったらしい
そのひとり、ひとつ年上の男性が気になるようだった

彼女は毎日その彼と電話やメッセージのやり取りをし、「彼に会ってみたい」と毎日話してきた

正直他人の惚気話ほど聞きたくないものは無いが、とにかく良識のある友人として

中学生の女の子がリアルで年上の男性と会うのはやめておけ

と忠告はした


しかし、卒業までの半年間、毎日毎日彼に会ってみたいと話す彼女

とうとう堪忍袋の尾が切れて

「そんなに会いたいなら会ってくれば良いじゃない。(そして身をもって後悔すれば良いのよ)」

と伝えた

卒業の数日前だったと思う



彼女は高校で入りたい部活があると云い、推薦入試で私立の高校へ入った
部活の話をする彼女が楽しそうで、
「彼女に没頭できるものがあるのは安心だな」
と同い年ながらババアのようなことを考えていた

私は私自身のやりたいことを叶えるため、ふたつの私立高校を受けた(公立はもとより考えてなかった)

1つは少し偏差値は上だが、校則が緩いため学園生活を謳歌できる高校

もう1つは厳しいが充実したカリキュラムがあり、私なら特待生として入学できる高校

結局、受験期に偏差値が伸びることはなく、
特待生として充実した日々を送った

偏差値はあとから伸びるので、
受験期に猛勉強した事は高校に入ってからとても役に立った

生徒会、留学、刺激的な勉強、素敵なお友達との出会い

初めて学校がとても楽しいと思えた


高校に入ってからも部活のメンバーでのやり取りは続いた
頻繁にグループLINEをし、よく遊びに行った
部活にもよく顔を出しに行っては後輩と部室の掃除をしたり、大会の手伝いをしたりしていた。


結局、会いたがっていたネットで知り合った彼とは付き合い始めたらしい

私は今まで通り、あえば好意的な態度は示した…
いやむしろ、今まで以上に彼女のことをおせっかいに心配するようになった

同じ釜の飯を食ったものの中から、道をはずれた奴を出しちゃいけない。

過剰な正義感に燃えていた

もう、彼女の生き方が変わっているとも知らずに

高校一年生の冬、3ヶ月ぶりに会った彼女の手首にはたくさんの傷跡があった

どうやらあれほど楽しみにしていた高校の部活でトラブルがあったらしく、学校には行ってないらしい

ネットの世界の中で生きる彼女
アルバイトをする彼女
メイクをする彼女
彼氏の手の中に収まる彼女

健全な優等生の私とは生き方が変わってしまっていた

心配になった私は覚えたてのSNSで彼女と繋がり
彼女がいわゆる「闇ツイート」をするごとに心配のLINEを入れた
おせっかいに自分の高校に転校ができるかどうか教務に聞いたりもした

でも、それは偽善だと気がついた

彼女には彼女の幸せがある
彼女は彼女の生き方をしている
道をはずれたんじゃなくて、道が別れただけ
悔しいけど、これ以上関わらない

連絡を積極的に取らなくなった5ヶ月後のことだった

高校2年生になった私は、晴れて高校生になった一つ下の部活の後輩の勉強の面倒を見ていた
ある日の晩、その後輩からあるTwitterの URLとともにLINEが送られてきた

「これ〇〇先輩(彼女)ですよね?ヤバくないですか?
妊娠したらしいですよ?しかも“ストレスで流産して良かった”って言ってます」

え?


送られたリンクを辿ると、
「実はストレスで流産しました
めっちゃ体はしんどかったけど良かったです⭐️
この写真は昨日行ったゲーセンでとったよ〜」
というようなツイートがあった

間違いない、この男と一緒にプリクラをとっている女は彼女だ

咀嚼できない…全てが飲み込めない…理解ができない

しかし、これで彼女の心配をしないことへの決心がついた


思うところは色々あるけど、お互いの生き方が変わったんだ


そう思うことにした

これはもう終わった友情

彼女とお揃いで買った修学旅行のお土産のキーホルダーは、
毎日高校で使っている電子辞書につけていた

引き抜いて外して、ゴミ箱に捨てた

二条城のキーホルダー
値段は660円
買う時に「彼女とお揃いにするには高すぎるな」と心の底で思ったことを思い出した


それからの私の日々は、高校と家との往復ばかり

クラス委員のため朝早く登校しなくてはいけなかったり、
成績が良いからと放課後の特別授業を先生が開催してくれたり、
肉体的にはかなりきつかったが
精神的に私は充実した日々を送っていた

私は通学に山手線を使っていた

夕方に帰る頃、駅のホームに可愛い服をひらひらさせて降りていく
自分とそう年の変わらない女の子たち

駅のホームでリポビタンDを買う自分

あの子たちはこれから遊びに行くのかな…


…彼女もこんな感じなのかな

勉強もしないで羨ましいな…いいな…むかつくな…いいな…私もあんなふうに…



彼女とは、私から一方的に距離をとっただけなので、
今も年賀状は来るし、あけおめLINE もくる

その度に、「なんで来るのよ」とザラっとする

成人式の同窓会も、
彼女が来ると思って中学の会には顔を出さなかった

でもね、彼女に非はあれど
私は彼女の生き方が羨ましかっただけなんだと思う

必死に「いい子」であろうとして
優等生として毎日神経すり減らしている自分と
自分の好きな人、楽しいことに毎日勤しむ彼女

けれど、私は彼女にはなれないし 彼女の生き方をしたところで私はつまらないと思うだろう

それでいいんだ

私と彼女は別の生き方でそれぞれの幸せを掴みたいだけだもの