【Syncable Journal Club】寄付型クラウドファンディング成功の条件
寄付のことを考える海外のブログ・学術論文を翻訳して、それぞれに論考を深めるSyncable Journal Club。今回はこの記事から「寄付型クラウドファンディング成功の条件」について考えたいと思います。
寄付型クラウドファンディング研究92件についてのシステマティックレビュー
慈善目的のために金銭的寄付を募る寄付型クラウドファンディング (DCF) に関する学術研究の分野における主な調査結果をまとめたこの論文。体系的な文献レビューが行われ、この分野の研究で初めて分析された 92 の科学出版物が得られたとのことです。

寄付型クラウドファンディングに関する初期の文献は、2015 年以降の出版物の大半が定量的方法論を使用した経験的記事の形式だったのですが、 .しかし寄付型クラウドファンディングが関係する利害関係者 (特に受益者や社会一般) に与える影響は、依然としてほとんど明らかになっていないそうです。
この分析に基づいて、寄付型クラウドファンディングに関する統合された概念フレームワークを設計・寄付型クラウドファンディングを明確で新しいタイプの慈善資金調達モデルとして特徴付けることができると筆者らは主張しています
寄付型クラウドファンディング成功に貢献する要因(抜粋)
筆者らは、寄付型クラウドファンディング成功に貢献する要因を、下記の3つに分類しました。
1)ファンドレイザーの能力とプロモーション投資、透明性あるガバナンス
2)オンラインチャネルの視点
3)寄付キャンペーンの視点
これらをひとつひとつ、さらに深掘りしてみると、様々な研究と論文が引用され、その意義が分かってきました。
ファンドレイザーの能力とプロモーション投資、透明性あるガバナンス
❏潜在的なドナーを行動に移す能力
- 寄付依頼活動への投資と、情動的な寄付メッセージの使用による効果的なアクションプランの組み立て
- 志を同じくする共同体感覚(共感)を惹き起こす
- (早期の)寄付を奨励する
- 適切なマーケティング戦略と管理の適用
- 過去のクラウドファンディング経験とクラウドファンディング機能の知識
❏コミュニティをつくり、寄付者をエンパワー(激励)する能力
- 寄付者の志向性・価値観との整合性を高める寄付プロダクト設計をする
- 寄付の条件を指定できるようにすることで、寄付者に権限を与える
- 必要となる寄付者人数・寄付額を募ることについて寄付者にも依頼する
❏寄付の使い道の透明性を確保し、誠実に行動すること/組織的なガバナンス
- 慈善団体と (潜在的な) 寄付者の間の情報の非対称性の無きよう開示された情報の量
- 資金使途の効率的なパフォーマンスと透明性の有る情報発信(特に、特定の医療や希少疾患の研究への資金提供など、医療・保健関連のテーマのファンドレイジングを目的としている場合)
他には、「説明のための画像の使用を通じて共感を生み出す能力」というものもありました。データジャーナリズムなどの領域ではビジュアライゼーション(視覚化)の手法としてのインフォグラフィックが注目をあつめています。
このような手法を取り入れていくことで、寄付のアウトカム・インパクトの表現がより伝わりやすく、共感を生み出しやすくなっていくものと考えられます。
オンラインチャネルの視点
❏ソーシャルメディアリテラシー
- ソーシャルメディアフォローのプロファイルを構築するための長期的な投資
- ソーシャルネットワーキングのサイズの大きさ
- 「ソーシャルメディア世代」の理解を深める
❏チャネルの選択とチャネル戦略の立案
- ブログやソーシャルメディアは、寄付型クラウドファンディングプラットフォームを人間味のあるものにし、ファンドレイザーとコミュニティの対話を促進する
- 寄付型クラウドファンディングのプラットフォーム、オンライン署名サイト、寄付者から非営利団体への (D2N) オンラインマーケットプレイスの利用
モバイルデバイスに合わせたテキストメッセージの最適化
- パーソナライズされた寄付者コミュニケーションは潜在的な寄付者の意思決定プロセスに影響を与える(オンライン対話など)
これらをまとめてオフラインでオンラインを統合および調整する能力も求められていると筆者らは述べます。このCOVID-19下において、よりオンライン・オフラインの体験の繋がりや連なりについての経験値をファンドレイザーは積んでこられたのではないでしょうか。

今後も、より気軽に、より効果的に寄付者との接点を持ち続けることが大切な営みになると思われます。
寄付キャンペーンの視点
❏情報発信
- キャンペーン固有の情報を開示・適切な言語の使用してキャンペーンの認知度・信頼性を高め、成功のチャンスを最大化する
- 受益者のメリットを視覚化する
- 助成金・補助金取得の履歴と第三者機関からの評価に関する情報
- ファンドレイザー・受益者組織の開示
- 個人的なコメント、著名人の推薦
- 定期的な更新(活動報告/新着情報のアップデート)
- 最終的な資金調達の用途
- 感情的な訴えを含める
- 他人の寄付の可視化
❏目標設定
- 小さな金銭的な目標に焦点を当てる
- 寄付キャンペーン開催日数は40日未満の長さとする
❏その他
- 価値観や信念の種類(ある政治・社会思想に基づいたキャンペーンの場合、オフラインでの寄付が多い信仰関連のキャンペーンと比較して、オンラインでの寄付が優先される傾向にある。オンラインのソーシャルメディアやネットワークを介して共有および拡散できる能力に関連しており、その潜在的な効果を拡大させる)
最後に、寄付キャンペーンを開催するにあたってのHow toが語られます。個人的には既知のものもあれば、気付きや発見のあるものもありました。今後のクラウドファンディングなどの寄付キャンペーンのプラン立案に活かしていきたいところです。
特に印象的だったのは、"寄付キャンペーン開催日数は40日未満の長さとする"という箇所。中だるみをせずに継続して情報発信をし続けられるのであれば、寄付キャンペーン期間は長ければ長いほど良いのでは?と考えていたところもあったのですが、研究からはそうではないという示唆が得られたそうです。

寄付型クラウドファンディング成功のために求められることとは
準備フェーズ、実施フェーズでそれぞれ考えることがありそうです。また、団体種別や事業内容、ステークホルダーの内訳によって、さらに留意すべきポイントが増えたり減ったりすることもありそうです。
この記事でご紹介した論文は、あくまで調査対象となった団体や研究者のバイアスが含まれた内容ではあります。したがって、何もかも「そのとおり」であると言い切れないところもあろうかと思われます。
ですので、まずはこのようなデータ・事実を出発点として、団体内やファンドレイザーとのディスカッションに活かしていくべきではないかと思われます。"では、自分たちはどうだろう?"という問いを、自らに向ける必要性を感じます。
成功経験、失敗体験を含め、ファンドレイジングの成長に活かせるように、適切なふりかえりと今後に向けたロードマップを継続することが求められているのではないでしょうか。

