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    <title>鏡野夕陽</title>
    <description>自分の好きな音楽やプレイヤーを紹介しつつ、みんなが経験しているありきたりな日常を面白おかしく描いています。
良かった覗いてみて下さい。</description>
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      <title>須藤薫 —— 優しい透明感、都会の夜を彩る女性シンガーの系譜</title>
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      <description><![CDATA[<p name="C57C6EB7-FAD9-40F9-BBEB-869E7501A257" id="C57C6EB7-FAD9-40F9-BBEB-869E7501A257">『シティポップの肖像』 第1部「夜と哀愁の肖像」 第9回<br><br><b>須藤薫 —— 優しい透明感、都会の夜を彩る女性シンガーの系譜<br></b><br>編集長コメント：第8回で「軽やかさの革命」EPOを描いた。第9回は、同じRCA三人娘の一人でありながら、まったく別のベクトルで「夜」を描いた女性シンガー——須藤薫。竹内まりやの「強がり」でも、大貫妙子の「知性」でも、EPOの「遊び心」でもない。彼女が持つのは「優しい透明感」——どこか懐かしく、どこか切ない、ガラス越しの風景のような歌声。そして、杉真理との深い共鳴。<br><br><b>プロローグ —— ガラス越しに見る「都会」という風景<br></b><br>須藤薫のデビュー曲は「やさしい都会」というタイトルだった。1979年、作詞は荒井由実（松任谷由実）、作曲は筒美京平——シティポップ以前から日本のポップス史を築いてきた二人の大物が手がけたこの曲で、彼女はデビューした。<br><br>「やさしい都会」。このタイトルには、シティポップというジャンルの核心が凝縮されている。都会は「やさしい」のか？ 実際には冷たく、無機質で、孤独な場所かもしれない。しかし、それを「やさしい」と歌うことで、かえってその裏にある寂しさが浮かび上がる。<br><br>須藤薫の歌声は、その「二重性」を体現していた。優しく、透明で、どこか儚い。しかしその奥に、しっかりとした芯がある。<br><br>彼女はシティポップの「女性シンガー」というカテゴリーの中で、最も「優しい」表現者だった。竹内まりやの「強がり」でも、大貫妙子の「知性」でも、EPOの「遊び心」でもない——ただ、優しく、そっと寄り添うような歌声。それが須藤薫の描く「夜」だった。<br><br><b>人物キャラクター —— 遅咲きのシンガー、そして「都会」との対話</b><br><br>デビューまでの道のり<br><br>須藤薫は1954年5月1日、東京都生まれ。デビューしたのは1979年、なんと25歳のときだった。当時のアイドル全盛期からすれば「遅咲き」のデビューである。<br><br>彼女は獨協大学経済学部経営学科を卒業している。大学在学中から歌手活動を始めていたというから、学生時代から「歌うこと」への想いは強かったのだろう。<br><br>デビュー曲「やさしい都会」——作詞を手がけた荒井由実は、当時すでに「ひこうき雲」や「あの日にかえりたい」などのヒットで知られる存在だった。その荒井が、新人のデビュー曲に詞を書いたこと自体が、須藤薫への期待の大きさを物語っている。<br><br><b>松任谷由実との出会い——『SURF&amp;SNOW』への参加</b><br><br>須藤薫の名前を広く知らしめたきっかけの一つが、松任谷由実の1980年のアルバム『SURF&amp;SNOW』へのコーラス参加である。このアルバムは「シティポップの源流の一つ」と評価される作品であり、そのレコーディングに参加したことは、須藤にとって大きな経験となった。<br><br>また、1982年から1983年にかけては、松任谷由実、杉真理とのジョイントコンサート「Wonderful Moon」を開催している。ユーミンという「女王」と、杉真理という「ミスター・メロディ」と肩を並べる——新人としては異例の抜擢だった。<br><br><b>杉真理との深い共鳴——楽曲提供からユニット結成へ</b><br><br>須藤薫のキャリアにおいて、最も重要なパートナーが杉真理である。杉は須藤の作品に多くの楽曲を提供し、彼女の音楽世界を形作った。<br><br>特に、「RAINY DAY HELLO」「土曜の夜はパラダイス」「くちびるにジェラシー」など、杉真理が作詞作曲を手がけた楽曲群は、須藤薫の代表曲として今日まで語り継がれている。シティポップ情歌の中でも屈指の名曲とされる「RAINY DAY HELLO」は、杉真理の作曲力を最もよく示す一曲であり、須藤薫の透明な歌声によって完成された。<br><br>しかし、須藤は結婚や出産などの影響もあり、1993年に音楽活動を停止してしまう。表舞台から姿を消した彼女を、杉真理は忘れなかった。<br><br><b>再起 —— 「須藤薫&amp;杉真理」という奇跡</b><br><br>須藤薫が再び音楽の世界に戻ってきたのは、1998年のことだった。<br><br>杉真理のデビュー20周年記念ライブにゲスト出演したのをきっかけに、1998年6月4日の「杉真理パワステ最後の日」で再びステージに上がる。杉に誘われてステージに立ったその日、須藤薫の心境に変化が現れたという。<br><br>当初は「杉真理とのデュエットの形で1回だけ」という条件だった。しかし、1998年8月29日に横浜ランドマークタワーで開催されたライブ「Late Night Live」が大好評だったことから、須藤薫&amp;杉真理としての活動が本格化していく。<br><br>このユニットの音楽性を表す言葉として生まれたのが「ポップンロール（POP'N ROLL）」——ポップスとロックンロールが絶妙なバランスで融合している様子を指す。<br><br>須藤薫&amp;杉真理は毎年12月のクリスマスライブを恒例とし、ミニアルバム『ロマンティック天国』『ポップンロール・パラダイス』『ポップンロール・プラネット』などをリリースした。<br><br><b>終焉 —— 2013年、突然の別れ</b><br><br>2013年3月3日、須藤薫は骨髄異形成症候群のため58歳で逝去した。デビューから34年、活動停止期間を挟みながらも、最後まで「歌うこと」を手放さなかった女性シンガーの静かな幕切れだった。<br><br>彼女の死後、「須藤薫&amp;杉真理」としての活動は終了したが、その残した作品群は今もなお、シティポップファンに愛され続けている。<br><br><b>本人歌唱の代表曲 —— 優しさの中にある哀しみ<br></b><br>須藤薫の音楽の核心を理解するには、まず彼女自身が歌った曲を聴くべきだ。ここでは、ソロ時代の代表作と、杉真理とのデュエット作品を中心に紹介する。<br><br><b>「あなただけ I LOVE YOU」（1981年）</b><br><br>作詞・作曲は大滝詠一。大滝の「遊び心」と須藤の「優しさ」が融合した、シティポップ史に残る一曲である。<br><br>タイトルこそストレートな愛の告白だが、その表現は決してベタではない。どこか淡々と、しかし確かに、相手への想いを伝える。大滝のメロディが持つ「哀しみの予感」を、須藤の透明な歌声が包み込む。<br><br><b>「涙のステップ」（1982年）</b><br></p><figure data-align="center" name="006310AD-7F6D-4DB8-869A-3C46F49F9A23" id="006310AD-7F6D-4DB8-869A-3C46F49F9A23"><img src="https://assets.st-note.com/img/1781253223-ZhtzQaiGLE9kW3eKXYn2dpSm.png" width="300" height="300" id="image-006310AD-7F6D-4DB8-869A-3C46F49F9A23"><figcaption></figcaption></figure><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n4fae569477b9'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 26 Jun 2026 06:09:50 +0900</pubDate>
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      <title>「小さな背中」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="A031C88F-A55F-4CA0-8131-7DCB305ECC46" id="A031C88F-A55F-4CA0-8131-7DCB305ECC46">お盆で実家に帰った。<br><br>父が亡くなってから、三年が過ぎている。母は一人で、この家に住み続けている。電話では「元気にしとるよ」と話すけれど、実際に会ってみなければ本当のところはわからない。<br><br><b>盆の月 帰りし我が家 父はなく 母の声だけ 明るく響く</b><br><br>駅から歩いて十五分。見慣れた道。角の郵便屋さんはもう閉まっていた。空き地だった場所にはコンビニができている。変わるものと、変わらないもの。<br><br>玄関を開けると、母がいた。<br><br>「おお、来たか」<br><br>口調は昔のまま。でも――小さい。一回り、いや、もっと小さくなったように見えた。昔はもっと大きく見えた母が、今は私の肩の高さもない。いや、正確には昔からそうだったのかもしれない。ただ、私が大きくなっただけ。<br><br><b>母の背 見上げしあの日 思い出し 今は見下ろす 時の流れよ</b><br><br>小学生の娘が「おばあちゃん！」と飛びついた。母はよろけて、一歩後ろに下がった。それでも笑顔で娘の頭を撫でる。<br><br>「大きくなったなあ」<br><br>「そう？ まだまだこれから大きくなるよ！」<br><br>娘は無邪気に跳ね回る。母はその姿を、目を細めて見ている。<br><br>私はふと、自分の子供の頃を思い出した。遠足で疲れて帰ってきた日、母が私をおぶってくれた。寝てしまった私を、背中に乗せて家まで運んでくれた。<br><br>あの頃の母の背中は、大きくて、広くて、温かかった。<br><br>今、目の前にいる母の背中は、小さくて、細くて、頼りない。こんな背中に、よく私はおぶさっていたものだ。<br><br><b>おぶさった 母の背中の 温かさ 今も覚えて いるけれども</b><br><br>夜、みんなが寝た後、縁側で母と二人、スイカを食べた。<br><br>「最近、腰が痛くてな」<br><br>「無理しちゃダメだよ」<br><br>「してないよ。でも、畑の草取りくらいはせんと」<br><br>「やめなよ」<br><br>「やめられん。やることがないと、ボケてしまう」<br><br>母はそう言って笑った。その笑顔の奥に、父のいない寂しさが見えた気がした。<br><br>次の日、墓参りに行った。<br><br>娘が線香をあげて「おじいちゃん、また来るね」と言った。母はその後ろで、手を合わせている。<br><br>風が吹いた。線香の煙が、ゆらゆらと空に消えていく。<br><br><b>線香の 煙たなびく 墓の前 母の背中は 小さく細く</b><br><br>母は私たちを駅まで送った。<br><br>「また来いよ」<br><br>「うん、来るよ」<br><br>娘が「ばいばい！」と手を振る。母も手を振り返す。<br><br>電車に乗って、窓の外を見ると、母はまだそこに立っていた。手を振っている。小さくなっていく。見えなくなるまで、ずっと。<br><br>私は母の背中を思い出していた。子供の頃、あの背中におぶさった日のこと。あの頃の母は、大きかった。何でもできると思っていた。でも、本当はこんなに小さな背中だったのか。<br><br><b>母の背に おぶさりし日々 遠くなり 今は見送る こちらが大きく</b><br><br>帰りの電車の中で、娘が言った。<br><br>「ママ、おばあちゃん、小さかったね」<br><br>「うん、そうだね」<br><br>「でも、背中は温かかったよ」<br><br>娘はそう言って、私の腕に抱きついた。<br><br>私はその小さな体を抱きしめながら、思った。<br><br>私もいつか、この子にとって、「小さくなった」と思われる背中になるのだろう。<br><br>それは少し寂しいけれど、それでいい。そうやって、命は続いていくのだから。<br><br><b>母の背の 小さくなれる その日まで 私は母の 背中を見ている</b></p><p name="244DDE86-7B20-44E0-B631-FE13BF1B0639" id="244DDE86-7B20-44E0-B631-FE13BF1B0639">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n445b497d8398'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 26 Jun 2026 06:07:06 +0900</pubDate>
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      <title>「3月11日」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="C184061E-0844-4283-BBF0-8D5507DB5E89" id="C184061E-0844-4283-BBF0-8D5507DB5E89">あの日、私は池袋にいた。<br><br>家電量販店で新しい炊飯器を眺めていたとき、世界が歪んだ。立っていられないほどの横揺れ。都内でこれほどの地震を経験したことはなかった。周りの人たちも、何が起きたのか一瞬わからず、ただ立ち尽くしていた。<br><br><b>大地震 池袋の街 揺れにけり <br>炊飯器抱く 間もなくて</b><br><br>店からは「閉店しますので、外に出てください」と告げられた。三月の空気はまだ冷たく、小雪まで舞っている。外に出ろと言われても、どこへ行けばいいのか。<br><br>駅の地下街へ避難しようと思った。ところがそこからも「地下街は封鎖します。出て行ってください」と追い出された。<br><br>寒い外に、たくさんの人が放り出された。<br><br>電車は止まっている。いつ動くかわからない。今日中に動くことはないだろう。素人目にも明らかだった。<br><br><b>止まりたる 電車の見上げ 帰れども <br>我が家の方角 知らぬ土地柄</b><br><br>私はまだ越してきたばかりだった。所沢に住んでいたが、池袋からの道順など知る由もない。歩いて帰ろうにも、どちらに向かって歩けばいいのかさえわからない。今のようにスマホで地図が見られる時代ではない。携帯電話すら、不安定だった。<br><br>ビルの隅っこにしゃがみ込む。見知らぬ人たちが、同じように身を寄せ合っていた。誰も何も言わない。ただ、次の揺れに備えて、小さくなっている。<br><br>一部の人は「歩いて帰る」と決断し、凍える街へと消えていった。<br><br>私は動けなかった。<br><br>大きな余震が来た。また街が揺れる。周りの人たちの顔に、緊張が走る。<br><br>その時、隣にいたおばあさんがぽつりと言った。<br><br>「こわいねえ」<br><br><b>見知らぬ人 同士肩寄せ 余震待つ <br>凍る三月 池袋の空<br></b><br>私は勇気を出して、話しかけた。<br><br>「今の余震も、大きかったですね」<br><br>おばあさんはこちらを見て、少しだけ笑った。<br><br>「そうねえ。情報がわからないから、余計に怖いわ」<br><br>「おばあさんは、ご家族と連絡は取れました？」<br><br>「さっき、公衆電話でね。みんな無事だって。安心したよ」<br><br>「それは良かったです」<br><br>ほっとした瞬間、おばあさんが私に尋ねた。<br><br>「お兄さんは、これから歩いて帰れるの？」<br><br>「いや……実は、土地勘がなくて。家の方角もわからないんです」<br><br>「どこに住んでるの？」<br><br>「所沢です」<br><br>おばあさんの目が優しく細まった。<br><br>「あら、うちは東久留米。同じ方角よ。おじいさんがこれから迎えに来てくれることになってるの。よかったら、乗って行かない？」<br><br>「えっ……いいんですか？」<br><br>「東久留米まで送ってもらえたら、そこから妻に迎えに来てもらいますので。お言葉に甘えてもいいですか？」<br><br>「困った時はお互い様だよ」<br><br><b>見ず知らず その言葉の 温もりに<br> 涙出そうに なりし夕暮れ<br></b><br>それから、おじいさんが来るまで、三時間ほど待った。道がひどく混んでいたらしい。その間も、何度も余震は続いた。おばあさんは時々「大丈夫だからね」と声をかけてくれた。<br><br>やっとおじいさんの車が見えた。おばあさんが手を振って呼び寄せる。<br><br>「おじいさん、この人も乗せてあげて。家が所沢なんだって」<br><br>運転席のおじいさんは、何のためらいもなく言った。<br><br>「いいよ、いいよ。乗りな」<br><br>車の中は暖かかった。震えが止まらなかった私の体に、じんわりと熱が広がる。<br><br>帰りの道も、やはり混んでいた。おばあさんの家に着くまで、また三時間ほどかかった。その間、車内でいろんな話をした。仕事のこと、家族のこと、これからのこと。初対面の人に、こんなに自分のことを話したのは初めてだった。<br><br><b>走らざる 車の中の ぬくもりと <br>初めて語る 自分のこと</b><br><br>おばあさんの自宅に着いた。おばあさんが降りる。<br><br>「お兄さん、気をつけてね」<br><br>そう言って手を振ってくれた。<br><br>おばあさんが家に入ったのを見届けて、おじいさんが言った。<br><br>「お兄さんのうちまで、送ってやるよ」<br><br>さすがにそこまでは申し訳ない。私は断った。<br><br>「いえ、大丈夫です。ここから妻に迎えに来てもらうので」<br><br>「いいからいいから。気にしないの。こんな時はお互いさまなんだから」<br><br>押し切られる形で、私は再び車に乗った。<br><br>家の玄関まで、さらに一時間ほどかかった。おじいさんは途中、何度も「寒かったろ。もうすぐ着くからな」と声をかけてくれた。<br><br><b>自宅まで 送らんとする おじいさん <br>断る言葉 飲み込みながら</b><br><br>ようやく家に着いた。私は深く頭を下げた。<br><br>「ありがとうございました。本当に、助かりました」<br><br>おじいさんはにこにこと笑っている。<br><br>「いいからいいから」<br><br>私はどうしてもお礼がしたかった。なにか形にしないと、自分の気持ちが収まらなかった。<br><br>「おじいさん、よろしければ、住所とお名前を教えていただけませんか。」<br><br>その瞬間、おじいさんの顔つきが変わった。優しく、しかし断固とした表情で言った。<br><br>「嫌だ。絶対に教えない」<br><br>「えっ……」<br><br>「お礼をしようと考えたんだろう。困った時に助け合うのは、当たり前なんだからね。絶対に教えない」<br><br>「絶対に 教えない」と おじいさん その言葉の 重み胸に刺さる<br><br>私は何も言えなかった。ただ、「ありがとうございました」と繰り返すだけだった。<br><br>おじいさんの車が見えなくなるまで、私はその場で頭を下げ続けた。それが、私にできる精一杯の感謝だった。<br><br>冷たい風が頬を刺す。それでも私は、頭を上げられなかった。<br><br>おじいさん、カッコ良すぎるよ。<br><br>僕はあなたのように年を取りたい。<br>困った人がいたら、当たり前のように手を差し伸べられる。お礼を求めない。それが「優しさ」の形なんだと、あなたが教えてくれた。<br><br><b>見えなくなる まで頭下げ 続けたり <br>おじいさん おばあさん ありがとう</b><br><br>あれから何年経っただろう。<br><br>今でも、困っている人を見かけると、あの日のことを思い出す。自分はあの二人ほど強くはないけれど、せめて少しでも、誰かの「お互い様」になれたらいい。<br><br>そう思うのだ。</p><p name="428A8BE2-B19E-48E3-BFE4-2FE252C04744" id="428A8BE2-B19E-48E3-BFE4-2FE252C04744">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常#震災</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/na397a712a527'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 25 Jun 2026 05:24:00 +0900</pubDate>
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      <title>「ハインリッヒの法則」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="B1A551CC-0B7A-4443-96DD-45EB2406CF35" id="B1A551CC-0B7A-4443-96DD-45EB2406CF35">彼女に振られた。<br><br>正確に言えば、私から「別れよう」と言った。<br><br>理由は価値観の違い。<br><br>そう言えば大人だし、納得感もある。誰かに説明する時にも便利な言葉だった。<br><br>でも今思えば、そんな立派な理由じゃなかった。<br><br>終わりはもっと小さなところから始まっていた。<br><br>最初はLINEの返信だった。<br><br>昔は来ていた「家着いたよ」がなくなった。<br>私も気づいていた。でも別にいいかと思った。<br><br>次は会話だった。<br><br>「何食べたい？」<br>「なんでもいい」<br><br>便利な言葉だ。<br><br>相手に委ねているようで、実は何も渡していない。<br><br>映画を見た帰り道。<br><br>彼女が「最後のシーンどう思った？」と聞いた。<br><br>私は「良かったね」と答えた。<br><br>でも本当はよくわかっていなかった。<br><br>彼女が聞きたかったのは映画の感想じゃなくて、隣にいる私の気持ちだった。<br><br><b>すれ違ひ 大きくないと 思ひつつ <br>小さき違和 積み重なりぬ</b><br><br>ありがとうが減った。<br><br>ごめんも減った。<br><br>代わりに増えたのは「別に」と「あとで」。<br><br>不思議なもので、喧嘩は減っていた。<br><br>でも仲が良かったわけじゃない。<br><br>話さなくても成立してしまう関係になっていただけだった。<br><br>ある日、私が言った。<br><br>「別れようか」<br><br>彼女は少し黙ってから言った。<br><br>「うん」<br><br>驚くくらい静かな返事だった。<br><br>泣かれもしなかった。<br><br>引き止められもしなかった。<br><br>その時、終わったんじゃない。<br><br>たぶん終わっていたことを知った。<br><br><b>別れとは 一日のみに 起きずして <br>積もりしものの 名を変えしだけ</b><br><br>仕事で安全教育を受けた時、ふと思い出した。<br><br>ハインリッヒの法則。<br><br>重大事故の裏には、多くの小さな異常がある。<br><br>事故だけの話じゃないんだなと思った。<br><br>別れも同じだった。<br><br>急に終わったんじゃない。<br><br>気づかなかっただけだ。<br><br>見ていたのに、見ないふりをしただけだった。<br><br><b>法則は 防ぐためこそ あるものを <br>終わりて初め 意味を知りたり</b><br><br>次の恋では。<br><br>大きな約束より、小さな違和感を大事にしたい。<br><br>返信が遅いこと。<br><br>ありがとうが減ること。<br><br>笑うタイミングがずれること。<br><br>そんな些細なことを、今度は見逃さない</p><p name="08B6D23C-79EE-4FA3-A0D0-F68CC519417D" id="08B6D23C-79EE-4FA3-A0D0-F68CC519417D">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n2750d19627f2'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 24 Jun 2026 07:18:27 +0900</pubDate>
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      <title>「答え」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="65C254F2-B87B-4144-BB29-4418EE66E1E0" id="65C254F2-B87B-4144-BB29-4418EE66E1E0">子供が小さい頃、私は「失敗させないこと」が親の役目だと思っていた。<br><br>転びそうになったら手を引く。<br><br>迷っていたら答えを教える。<br><br>困っていたら代わりに考える。<br><br>子供の頃に失敗すると、その経験がずっと残るような気がしていた。だから、なるべく傷つかないように、遠回りしないように、大人である私が先回りしていた。<br><br>それが優しさだと思っていた。<br><br>ある日、子供が学校から帰ってきて言った。<br><br>「これ、どうしたらいいと思う？」<br><br>話を聞くと、友達とのことで悩んでいるらしかった。<br><br>内容はもう覚えていない。<br><br>でも、その時の自分の返事は覚えている。<br><br>私は最後まで話を聞かずに答えた。<br><br>「こうしたらいいんじゃない？」<br><br>子供は「わかった」と言って部屋へ戻っていった。<br><br>その時は何も思わなかった。<br><br>親として当然のことをしたと思っていた。<br><br>でも夜になって、ふと気づいた。<br><br>私は相談されたのではなく、考える機会を渡されていたのではないか。<br><br>本当は、<br>どうしたいのか。<br>どう思ったのか。<br>何を怖いと感じたのか。<br><br>そういう話をしたかったのかもしれない。<br><br>それなのに私は、<br>答えだけ渡して終わらせてしまった。<br><br>子供が転ばないように道を整えていたつもりだった。<br><br>でも、歩き方そのものは教えていなかった。<br><br><b>答えとは教えるほどに軽くなり<br>考えるほど自分のものに</b><br><br>それから少しだけ変えた。<br><br>子供が聞いてきても、すぐに答えを言わない。<br><br>「どう思う？」<br><br>「自分ならどうしたい？」<br><br>そんな返事をするようにした。<br><br>最初は嫌がられた。<br><br>聞いているのに教えてくれない。<br><br>そんな顔をされた。<br><br>少し申し訳なかった。<br><br>以前の方が楽だった。<br><br>教えれば終わる。<br><br>正解も早い。<br><br>失敗も減る。<br><br>でも、それを続けた先にあるものを想像すると怖くなった。<br><br>親のいない場所で、<br>親の答えを探す大人になってしまう気がした。<br><br>自分で決めるということは、<br>間違える可能性を引き受けることでもある。<br><br>だから苦しい。<br><br>だから迷う。<br><br>でも、その苦しさを経験しないまま大人になる方が、きっともっと苦しい。<br><br>失敗させる勇気というより、<br>失敗しても見守る覚悟なのかもしれない。<br><br>親ができるのは、<br>転ばせないことではなく、<br>転んだ時に帰って来られる場所でいることなのだと思う。<br><br><b>手を出さず待つというのは冷たさか<br>親も迷って育てられゆ</b></p><p name="70AA2113-B63F-4C9E-904A-12D422C0C1AE" id="70AA2113-B63F-4C9E-904A-12D422C0C1AE">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/nad74c58cdd19'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 23 Jun 2026 06:53:47 +0900</pubDate>
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      <title>「トライポフォビア」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="0FB3AEBB-C36C-4430-A48E-5F4B2A51D914" id="0FB3AEBB-C36C-4430-A48E-5F4B2A51D914">最近になって知った。<br><br>自分が子供の頃から感じていたあの気持ち悪さには、ちゃんと名前が付いていたらしい。<br><br>トライポフォビア。<br><br>集合体恐怖とか、集合体が苦手とか、そんな呼ばれ方をするらしい。<br><br>名前を知った時、少し安心した。<br><br>ああ、自分だけじゃなかったんだなと思った。<br><br>幼稚園の頃、粘土遊びがあった。<br><br>粘土自体は好きだった。<br><br>丸めたり、伸ばしたり、変な動物を作ったりするのは楽しかった。<br><br>でも、理解できない遊びがひとつだけあった。<br><br>みんな、粘土に穴を開け始めるのだ。<br><br>最初は一本。<br><br>そのうち二本。<br><br>気づくと、鉛筆や指で何十個も穴を開けている。<br><br>しかも楽しそう。<br><br>先生まで一緒になって、<br><br>「わあ、レンコンみたい！」<br><br>と言っている。<br><br>いや、何が楽しいんだ。<br><br>私は本気でわからなかった。<br><br>穴なんて一個開けば十分じゃないか。<br><br>なぜ増やす。<br><br>しかも集める。<br><br>隣の子が自慢げに見せてくる。<br><br>「見て！」<br><br>私は見た。<br><br>見てしまった。<br><br>もうその日の粘土は終わりだった。<br><br>気持ち悪くなってしまって、少し離れた。<br><br>今思えば大げさだけど、その頃の私は本当にダメだった。<br><br>先生には、<br><br>「みんなと仲良く遊びなさい」<br><br>と言われた。<br><br>違う。<br><br>そういう話ではない。<br><br>私は誰とも喧嘩していない。<br><br>穴が無理なのだ。<br><br><b>粘土とは形を作るものなのに<br>穴を増やして何が楽しい<br></b><br>家に帰って母に話した。<br><br>「みんな変なんだよ」<br><br>母は笑った。<br><br>「そういう遊びなんじゃない？」<br><br>違う。<br><br>誰もわかってくれない。<br><br>それから私は防衛策を覚えた。<br><br>自分の粘土は徹底的につるつるにする。<br><br>穴を作らない。<br><br>近づけない。<br><br>完成したら守る。<br><br>すると、だいたい誰かが聞いてくる。<br><br>「穴開けてもいい？」<br><br>絶対によくない。<br><br>今思うと、幼稚園児にしては妙な執着だった。<br><br>でも大人になってわかった。<br><br>ブツブツした葉っぱも苦手。<br><br>小さい穴がたくさん並んだものも苦手。<br><br>ネットで調べたら全部出てきた。<br><br>名前まであった。<br><br>トライポフォビア。<br><br>あの日の私は、世界がおかしいと思っていた。<br><br>でも違った。<br><br>みんな普通に遊んでいた。<br><br>私だけ、粘土に開いた穴を見て静かに戦っていたのである。<br><br>今でも苦手だ。<br><br>でも名前を知って少し安心した。<br><br>あの頃の私は変だったわけじゃない。<br><br>ただ、幼稚園児にしては少しだけ、穴への感受性が高かっただけなのだ。<br><br><b>大人になり名前を知って思い知る<br>世界は普通私が違った</b></p><p name="B39ECC32-BC25-4F56-B359-1438EC06468A" id="B39ECC32-BC25-4F56-B359-1438EC06468A"><b>【今回のエッセイの挿絵は自主規制としました（気持ち悪いんで）】</b></p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n7e2dc822ed77'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/218098635/profile_ea2449b8886d2dc3e77c9009232de1ae.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 22 Jun 2026 07:06:36 +0900</pubDate>
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      <title>「俺の点数」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="D9E26A84-0E9A-4C7C-AEE7-240E6F9DF8DE" id="D9E26A84-0E9A-4C7C-AEE7-240E6F9DF8DE">妻に先立たれたのは、娘が中学に入る直前のことだった。<br><br>あの日から、私は「父」であり「母」であることを自分に課した。娘のために弁当を作り、学校行事に参加し、思春期の娘とぶつかりながらも、毎日を積み重ねた。<br><br>出世は捨てた。その代わりに、娘の成長を選んだ。寂しさを感じる夜もあった。「いいお父さん」でいようとすることが、時には重荷だった。<br><br>仕事も上手くいかなくなり、一度は辞めた。娘には迷惑をかけた。<br><br>それでも、娘は少しずつ心を開いてくれた。社会人になり、恋人ができ、やがて結婚することになった。<br><br>結婚式の日。<br><br>白いドレスを着た娘が、ヴェール越しに微笑んだ。誰かに似ている——そう思ったら、妻の姿が重なった。<br><br>「綺麗だな……」<br><br>思わず声が出た。隣に座っていた親戚が「お父さん、泣いてるんですか？」と聞く。私は「違う」と首を振った。違わなかったけれど。<br><br>娘が私の前に立った。<br><br>「お父さん、今までありがとう」<br><br>その一言で、胸の奥が熱くなった。何を言えばいいのかわからなくて、ただ「おめでとう」とだけ言った。<br><br><b>白いドレス お前に似合うよ ありがとう <br>代わりに言った 妻の言葉も</b><br><br>帰りの車の中、私はハンドルを握りながら呟いた。<br><br>「あいつ、今日は凄く綺麗だったよ。お前に似て、美人だからな。当たり前か」<br><br>誰もいない助手席。でも、そこに妻がいるような気がした。<br><br>「お前との結婚式、思い出したよ。あの時も、こんなに緊張したっけな」<br><br>ぽつりぽつりと話す。返事はない。でも、それでいい。<br><br>自宅に帰ると娘がいなくなったこの家は随分と広く感じた。<br><br>今、私は一人になった事を初めて現実として受け止め、そして大きな仕事を終えた事を実感した。<br><br>妻の写真がある。リビングの棚に、笑っている妻がいる。<br><br>私は写真の前で立ち止まった。<br><br>「なあ……」<br><br>声が掠れた。<br><br>「ちゃんとあの子を送り出したよ。これまで沢山寂しい思いもさせたし、俺はダメな父親だったと思うけど、なんとか一人前に育てたつもりだ」<br><br>そこまで言って、言葉が詰まった。<br><br>「お前に心配かけないように、自分なりに頑張ってきたつもりだ。お前に採点してもらいたんだ」<br><br>涙が、一粒、写真のフレームに落ちた。<br><br>「なぁ、俺って何点だった？」<br><br>返事はない。でも、写真の中の妻は笑っている。あの日のまま、優しく。<br><br>「今日の娘、すごく綺麗だった。お前にそっくりでさ。お前との結婚式、思い出したよ」<br><br>私はもう一度呟いた。<br><br>「なあ、教えてくれよ。何点だったんだよ……」<br><br>静かな部屋に、風が吹いた。カーテンが揺れる。<br><br>娘からもらった花が、机の上で色鮮やかに咲いている。<br><br><b>あなたのいない 静けさの中 <br>娘からの花束が机の上で ひっそりと咲く</b><br><br>写真の中の妻は、やっぱり笑っていた。</p><p name="9347F35C-3A67-409B-8DF1-914DF5A6996C" id="9347F35C-3A67-409B-8DF1-914DF5A6996C">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n2e2bfe9c62bf'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/218098635/profile_ea2449b8886d2dc3e77c9009232de1ae.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Sun, 21 Jun 2026 09:12:15 +0900</pubDate>
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      <title>「セレンディピティ」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="32512A3E-665D-41AA-81E2-FA5B36684B06" id="32512A3E-665D-41AA-81E2-FA5B36684B06">私は昔から、自分の結婚相手に条件をつけていた。<br><br>高学歴、高年収、高身長。<br><br>この三つを満たしていない男とは、絶対に付き合わないと決めていた。周りからは「現実的」と言われ、自分でも「これが私の基準」と胸を張っていた。<br><br>だから、彼に出会った時、私は内心で「対象外」のレッテルを貼った。<br><br>学歴は専門学校止まり。年収は私より少し上程度。身長は私がヒールを履いたら追い越してしまう。まさに「三拍子揃ってない」男だった。<br><br><b>三つの 条件を書いた メモ帳を <br>見返しながら また首を振る</b><br><br>最初はただの同僚だった。彼とは部署が違うけれど、たまに会議で一緒になる。挨拶を交わし、仕事の話をする。それだけ。彼が私の基準に引っかからないことを確認して、安心した。<br><br>ところが、だ。<br><br>彼が話す仕事への真摯な姿勢。誰に対しても分け隔てない態度。困っている人がいれば、さりげなく手を差し伸べる優しさ。それらは、条件の欄には書けない「人間としての魅力」だった。<br><br>気づけば、私は彼を目で追っていた。会議の時の発言。昼休みの過ごし方。誰とどんな話をしているのか。<br><br>「何かあった？」と同僚に聞かれるほど、私は彼に意識を向けていた。<br><br><b>条件に ないものを見つけ 惹かれてく <br>初めての感覚 戸惑いながら</b><br><br>ある日、彼と二人きりで資料を届けることになった。車の中。沈黙が怖くて、私は話題を探した。<br><br>「趣味とかあるんですか？」<br><br>「休みの日は、ボランティアで子供たちに勉強教えてます」<br><br>「え？」<br><br>「資格ないから、ただの宿題サポートですけど。子どもたちが『わかった！』って顔すると、嬉しくて」<br><br>私は心の中で、自分の条件リストを開いた。「ボランティア」の文字は、どこにもなかった。<br><br>その時、初めて気づいた。私が探していた「条件」は、誰かのために使うものではない。自分のためだけの、見せかけのリストだった。<br><br><b>価値観が 変わっていくのが わかる瞬間 <br>彼の横顔 眩しすぎて</b><br><br>それから、私は彼を食事に誘った。映画にも行った。デートと認めるのが恥ずかしくて、毎回「同僚として」を強調したけれど、多分、周りにはバレバレだった。<br><br>彼のことを知るたびに、新しい発見があった。学歴ではない知識。年収ではない豊かさ。身長ではない大きさ。条件では測れないものが、そこにはたくさんあった。<br><br>「好きだ」<br><br>そう言ったのは、彼の方だった。<br><br>「ずっと前から、気になってた」<br><br>私は震える声で答えた。<br><br>「私も」<br><br><b>条件が 崩れた先に あったもの <br>それが「好き」だと 気づく時間</b><br><br>あれから数年。私たちは結婚した。<br><br>彼の学歴は専門学校のまま。年収も大きくは変わっていない。身長も、私がヒールを履けば追い越す。<br><br>でも、それでいい。<br><br>子どもの頃に書いた条件リストは、もう捨てた。代わりに、新しいリストを作った。「一緒に笑える人」「困った時に頼れる人」「自分の弱さを見せられる人」。どれも数値化できないものばかりだ。<br><br>これが、私のセレンディピティ。<br><br>探していたものとは違った。でも、もっといいものを見つけた。<br><br><b>探してた ものとは違う 宝物 <br>セレンディピティ それがあなたです</b></p><p name="B04B6E4B-314E-4035-803F-114943B46017" id="B04B6E4B-314E-4035-803F-114943B46017">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n389c2feaea9a'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Sat, 20 Jun 2026 13:33:22 +0900</pubDate>
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      <title>EPO —— 軽やかさの革命、遊び心と都会のセンス</title>
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      <description><![CDATA[<p name="049C38B8-3BBB-461C-B107-8CF30EF84C3B" id="049C38B8-3BBB-461C-B107-8CF30EF84C3B">『シティポップの肖像』 第1部「夜と哀愁の肖像」 第8回<br><br>EPO —— 軽やかさの革命、遊び心と都会のセンス<br><br>編集長コメント：これまで山下達郎の孤高、竹内まりやの覚醒、大滝詠一の魔法、角松敏生の美学、井上鑑の職人技、寺尾聡の大衆性、稲垣潤一の哀愁、杉真理の王道メロディを描いてきた。第8回は、そのどれとも違う「軽やかさ」でシティポップに新たな風を吹き込んだ女性シンガーソングライター——EPO。遊び心と都会的センス、そして卓越したポップセンス。彼女の音楽は、なぜ40年経っても色褪せないのか。<br><br><b>プロローグ —— 「う、ふ、ふ、ふ、」から始まる物語</b><br><br>1983年、EPOはシングル「う、ふ、ふ、ふ、」をリリースした。資生堂の春のキャンペーンソングに起用されたこの曲は、タイトルそのものの軽やかさと、キャッチーでありながらどこか複雑なメロディで、多くの人の耳に残った。<br><br>しかし、EPOの音楽はこの一曲だけでは語れない。彼女はデビューアルバム『DOWN TOWN』（1980年）で、山下達郎の名曲をカバーしながらも、独自の世界を築き上げた。その音楽は「軽やか」でありながら「決して浅くない」。遊び心にあふれつつ、計算されつくしたポップス。<br><br>大貫妙子、竹内まりやと並び「RCA三人娘」と称されたEPO。彼女の描く「夜」は、これまで取り上げたアーティストたちとは一味違う——もっと明るく、もっと遊び心があり、でもその奥には確かな哀しみが潜んでいる。<br><br><b>人物キャラクター —— 体育大生からシティポップのアイコンへ<br></b><br>「エポ」という名前の由来<br><br>EPOの本名は佐藤栄子。芸名の「EPO」は、子供時代のあだ名に由来する。人が「えーこちゃん」と呼ぼうとしたとき、舌がもつれて「えーぽちゃん」となったことから、「エポ」と呼ばれるようになったという。<br><br>1960年5月12日、東京都世田谷区生まれ。3歳でピアノを習い始め、クラシックやCMソングなど、テレビから流れる音楽を聴いて育った。<br><br>高校時代——バンド活動とコンテスト優勝<br><br>都立松原高校に進学したEPOは、校内でバンド活動が禁止されているにもかかわらず、放課後に仲間と集まって音楽を楽しんでいた。同級生には後にキーボーディスト／アレンジャーとして活躍する清水信之、後輩にはギタリストの佐橋佳幸がいた。<br><br>高校在学中、「Laugh」というバンドを組んでピアノとコーラスを担当。ニッポン放送のコンテスト番組『ライオン・フォーク・ビレッジ』に出場し、東北・関東・甲信越の代表に選ばれた。この時、彼女はリードボーカルではなく、ピアノとコーラス、楽曲提供という役割だったにもかかわらず、レコード会社から「プロになりませんか」と声がかかった。<br><br>しかし、当時のEPOは大学進学を希望していたため、その話はいったん断っている。<br><br>大学時代——体育大に通いながらのスタジオワーク<br><br>東京女子体育大学に進学したEPOは、アルバイト感覚でスタジオワークを始める。竹内まりやのシングル「SEPTEMBER」（1979年）のコーラスを担当したほか、大貫妙子のレコーディングにも参加した。<br><br>また、サントリー「サントリーレモン」のCMソングとして作られた「大きいのが好き」（作詞：伊藤アキラ、作曲：大滝詠一）のボーカルも担当している。コーラスはシャネルズ（後のラッツ＆スター）が務め、後に『大瀧詠一 Song Book』に収録された。<br><br><b>山下達郎との出会い——デビュー曲「DOWN TOWN」の奇跡</b><br><br>EPOのデビューは、彼女自身の行動力から生まれた。<br><br>RCAレコードのスタジオで、EPOは山下達郎が目の前を通りかかるのを見て、直接声をかけた。「達郎さん初めまして。私、今度デビューするEPOっていうんですけど、中学の頃からシュガー・ベイブの『DOWN TOWN』が大好きで、デビューにあたってあの曲をシングルとしてレコーディングさせてもらえないでしょうか」<br><br>山下達郎は「歌いたかったらどうぞ」と快諾。こうして1980年3月21日、シュガー・ベイブのカバーシングル「DOWN TOWN」でEPOはデビューした。<br><br>このエピソードは、EPOの「自分から動く」性格を如実に表している。彼女は決して「待つ」側の人間ではない。自分が欲しいものは自分で掴みに行く——その姿勢が、その後のキャリアを形作っていく。<br><br><b>『オレたちひょうきん族』との出会い——ブレイクのきっかけ<br></b><br>1981年5月、フジテレビのバラエティ番組『オレたちひょうきん族』が放送を開始。EPOの「DOWN TOWN」がエンディングテーマとして採用された。<br><br>同番組は視聴率20％を超える人気番組となり、それに伴いEPOの知名度も急上昇。続いて「土曜の夜はパラダイス」も同番組のエンディングテーマとして使用された。<br><br>さらに、ビートたけしが演じた「タケちゃんマン」のコーナーテーマ曲「THE TAKECHANマン（タケちゃんマンの歌）」の作曲も担当（佐藤エポ子名義）。お笑い番組とシティポップ——一見すると畑違いの組み合わせだが、この「遊び心」を理解し、笑いと音楽を融合させたEPOのセンスが、彼女の独自性を物語っている。<br><br>「RCA三人娘」という位置づけ<br><br>EPOは大貫妙子、竹内まりやと並び「RCA三人娘」と称された。同じレコード会社に所属し、それぞれが異なる個性を持ちながら、シティポップという大きな流れを形成した。<br><br><b>· 竹内まりや：覚醒した女性のリアルな感情。強がりと脆さの同居。<br>· 大貫妙子：ヨーロッパ的洗練と知性。少し距離のある美しさ。<br>· EPO：軽やかさと遊び心。しかしその奥にある確かな哀しみ。</b><br><br>この三者の存在が、シティポップの女性シンガー表現を大きく広げた。EPOのポジションは「一番明るい」ように見えて、実は一番複雑かもしれない。笑顔の裏にある諦念——それを彼女は「う、ふ、ふ、ふ、」という擬音だけで表現してみせたからだ。<br><br><b>本人歌唱の代表曲 —— 軽やかさの裏にある計算<br></b><br>EPOの音楽の核心を理解するには、まず彼女自身が歌った曲を聴くべきだ。彼女は数多くの楽曲を他アーティストに提供してもいるが、ここでは本人歌唱の代表作を中心に紹介する。<br><br><b>「DOWN TOWN」（1980年）</b></p><figure data-align="center" name="4B6A2825-9931-4D39-84AB-E361DA426F2D" id="4B6A2825-9931-4D39-84AB-E361DA426F2D"><img src="https://assets.st-note.com/img/1780821691-X0yz8OYMGgJVDkquN4xlritQ.png" width="620" height="621" id="image-4B6A2825-9931-4D39-84AB-E361DA426F2D"><figcaption></figcaption></figure><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n2f8ecce4b52e'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/218098635/profile_ea2449b8886d2dc3e77c9009232de1ae.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 19 Jun 2026 06:52:15 +0900</pubDate>
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      <title>「明日の最終便であなたは」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="119073DB-9321-453C-8745-9DE06702CB18" id="119073DB-9321-453C-8745-9DE06702CB18">明日の最終便であなたはこの街を出る。<br><br>その知らせは、不思議なくらい静かだった。<br><br>駅前の喫茶店。<br>夕方五時。<br>窓ガラスの向こうで、信号が赤から青へ変わる。<br><br>あなたは向かいに座って、いつものようにコーヒーを飲んでいた。<br><br>「急だったんだ」<br><br>そう言って笑った。<br><br>私は頷いた。<br><br>言葉はそれだけだった。<br><br>驚いたわけじゃない。<br><br>いつかそんな日が来るような気がしていた。<br><br>ずっと前から。<br><br>それなのに、実際に明日だと言われると、時間の輪郭だけが急にくっきり見えた。<br><br><b>最終便 明日と聞いて 頷いた 心ばかりが 置いていかれる<br></b><br>あなたと初めて会った日のことは覚えていない。<br><br>でも、何度も一緒に帰ったことは覚えている。<br><br>夕焼けの道。<br><br>コンビニの肉まん。<br><br>意味のない話。<br><br>笑ったこと。<br><br>沈黙したこと。<br><br>そういうものばかり残っている。<br><br>思い出というのは不思議だ。<br><br>特別な日より、<br>何でもない日が先に浮かぶ。<br><br>窓の外を見る。<br><br>空港へ向かうバスが通っていった。<br><br>あの中に乗れば、あなたは遠くへ行く。<br><br>そう考えた瞬間、<br>初めて実感した。<br><br>明日から、この街にあなたはいない。<br><br>離陸前 伝えぬままの 言葉たち 滑走路より 長く伸びゆく<br><br>あなたは言った。<br><br>「今度帰ってきたら連絡するよ」<br><br>私は笑った。<br><br>「うん」<br><br>たぶん、その約束が守られるかなんて、どちらも考えていなかった。<br><br>約束というより、<br>今日を終わらせるための優しい言葉だった。<br><br>店を出る。<br><br>風が少し冷たかった。<br><br>あなたは駅の方へ歩いた。<br><br>私は反対方向だった。<br><br>立ち止まる理由も、<br>振り返る理由もなかった。<br><br>でも十歩くらい進んだところで、<br>なんとなく空を見上げた。<br><br>飛行機雲はなかった。<br><br>明日は晴れるのだろう。<br><br>あなたは空を飛ぶ。<br><br>私はここに残る。<br><br>ただ、それだけのこと。<br><br>なのに胸の奥で何かが静かに動いていた。<br><br><b>見送らず 空を見上げる 帰り道 行かないことで 守る別れを</b><br><br>家に帰る。<br><br>窓を開ける。<br><br>夜の匂いがした。<br><br>スマートフォンには何も届いていない。<br><br>届かないことが少し安心だった。<br><br>明日になれば、あなたは行く。<br><br>私は普段通り起きて、<br>普段通り仕事をして、<br>普段通り帰ってくる。<br><br>そしてどこかの空に、<br>見えない飛行機が飛んでいる。<br><br>きっとそれでいい。<br><br>思い出は追いかけるためではなく、<br>時々、思い出すためにある。<br><br>明日の最終便であなたはこの街を出る。<br><br>だから今日は、<br>少しだけ昔を思い出して眠ろう。<br><br>空港へ向かう夢ではなく。<br><br>まだ何も知らず、<br>同じ帰り道を歩いていた頃の夢を。</p><p name="8F6CECB5-95A8-4F2F-A12D-B7C7FF525198" id="8F6CECB5-95A8-4F2F-A12D-B7C7FF525198">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/nd5e3a84cf35f'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/218098635/profile_ea2449b8886d2dc3e77c9009232de1ae.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 19 Jun 2026 06:51:35 +0900</pubDate>
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      <title>「青木まりこ現象」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="EA9C3491-AC4E-4763-8D5D-469B20538826" id="EA9C3491-AC4E-4763-8D5D-469B20538826">小さな頃から、私は不思議な体質だった。<br><br>風邪はひかない。熱も出したことがない。怪我もすぐ治る。母は「たくましい子」と感心していた。が、一つだけ弱点があった。お腹だけが、やけに弱いのだ。<br><br>緊張した時。食べ過ぎた時。飲み過ぎた時。決まってトイレが近くなる。特に困るのは、車の渋滞に巻き込まれた時だ。「この先、コンビニあるかな」「次のサービスエリア、まだ？」と考えるだけで、お腹の調子が悪くなる。まだ実際にトイレに行きたくなっているわけではないのに、だ。<br><br><b>鉄の体 なれど一か所 弱点が <br>緊張すると トイレが近い<br></b><br>そして、もう一つ。<br><br>本屋さんに行くと、なぜかトイレに行きたくなる。<br><br>子供の頃からそうだった。漫画を立ち読みしていると、突然、襲われる。決まって「これはやばい」というタイミングで。本を閉じて、急いでトイレに駆け込む。戻ってきて、また読み始める。また襲われる。この繰り返しだった。<br><br>「なんで本屋でトイレに行きたくなるんだろう」<br><br>不思議で仕方なかった。<br><br><b>本屋さん 立ち読みしてる その時に <br>なぜか襲われる トイレの誘惑</b><br><br>大人になっても、それは続いた。<br><br>仕事帰りに書店に寄る。新刊コーナーを眺めていると、やってくる。あの感覚。<br><br>「またか」<br><br>心の中で呟き、レジに並ぶ前にトイレへ向かう。店員さんに「トイレ貸してください」と言うのが毎回気まずい。でも、もう慣れた。<br><br>友達に話したら「それ、おかしいよ」と笑われた。確かに、おかしい。本屋とトイレに、一体どんな関係があるというのか。<br><br><b>「おかしいよ」 笑われたって 仕方ない <br>だって事実 本屋でトイレ<br></b><br>ネットで何でも調べられる世の中になった。ふと思い出して、検索してみた。<br><br>「本屋 トイレ 行きたくなる」<br><br>すると、出てきた。<br><br>「青木まりこ現象」<br><br>正式には「青木まりこ現象」というらしい。1985年に青木まりこさんが「本屋に行くとトイレに行きたくなる」という投稿をしたことがきっかけで名付けられた。その後、同じ症状を持つ人が多数いることが判明。原因は「本のインクの匂い」「紙の感触」「集中による緊張」など諸説あるが、まだ明確には解明されていないという。<br><br>私は、叫びそうになった。<br><br>「これだ！ まさにこれだ！」<br><br><b>「青木まりこ現象」 その名を 知った時<br>込み上げてくるのは感動と 安堵</b><br><br>三十年以上の謎が、ようやく解けた。<br><br>そして、不思議な気持ちになった。青木まりこさん。私はその人のことを何も知らない。年齢も、顔も、今どこに住んでいるのかも。でも、彼女の投稿がなければ、この現象は名前すら持たなかった。私は今でも「自分だけの変な癖」だと思って、一人で悩んでいたかもしれない。<br><br>彼女は、私にとってはもう「同志」だ。会ったことのない、話したことのない、完全な他人なのに。<br><br>なぜか、それがとても温かい。<br><br><b>知らぬ人 されど同志と 呼べる奇跡 <br>青木まりこ ありがとう<br></b><br>私は一人じゃなかった。同じ悩みを持つ人が、たくさんいた。<br><br>あの日、本屋でトイレに駆け込んだ自分を、責めなくていいんだ。<br><br>それは「現象」だったのだから。<br><br>ネットはすごい。検索一つで、人生の謎が解け、そして見知らぬ誰かと繋がれる。私は感動して、そのままトイレに行った。<br><br>もちろん、本屋ではない。自宅のトイレだ。<br><br><b>謎が解け 心軽くなり トイレ行く <br>今日もどこかで 誰かも行くかも<br></b><br>青木まりこさん、もしもこのエッセイを読む機会がありましたら――あなたのおかげで、私は少しだけ楽になりました。ありがとう。そして、お互い、本屋でのトイレには気をつけましょう。　</p><p name="7DE260C6-5B34-4B8D-BEE0-D90828177059" id="7DE260C6-5B34-4B8D-BEE0-D90828177059">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/nbda79be7b9d4'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 18 Jun 2026 07:59:11 +0900</pubDate>
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      <title>「新婦の父」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="F57BC9AC-E242-49A0-AD1E-3EA07160D76A" id="F57BC9AC-E242-49A0-AD1E-3EA07160D76A">娘の結婚式。晴れの日だ。嬉しい。嬉しいはずだ。<br><br>でも、正直なところ、嫌だ。<br><br><b>嬉しさと 寂しさと怒り 入り混じり 今日という日の 朝を迎える</b><br><br>会場に着いた。娘の白いドレスは、想像以上に美しかった。誰かに似ていると思ったら、妻の若い頃にそっくりだ。その隣に立つ新郎、透くん。感じのいい青年だ。男前だとも思う。<br><br>でも、嫌いだ。<br><br>スピーチの時間が来た。私は壇上に立つ。新婦の父親がスピーチをするのは珍しいようだが、どうしても伝えたい事があったので、無理を言って時間をもらった。<br>そうは言ってもマイクを握る手が震えている。<br><br>「皆さん、こんばんは。新婦の父です」<br><br>ざわつく会場が静まり返る。<br><br>「まず、透くん。君に一つ言いたい。一発殴らせてもらってもいいだろうか」<br><br>会場がどよめく。透くんはびくっとした。娘は「お父さん！」と止めに入ろうとする。<br><br>「冗談だ。半分は」<br><br>苦笑いが漏れる。<br><br>「さて、今日まで娘がどう育ったか、少し話をさせてほしい」<br><br>私はスピーチ用の紙を一度置いた。<br><br>「娘が産まれた時、私は感動した。小さな手。小さな足。こんなに小さな命を、これから育てていくのかと思うと、怖くもあった」<br><br>「娘が初めて『パパ』と言った時。私は仕事中だったのに、その電話を聞いて泣いた。同僚に笑われた」<br><br>「自慢の娘だ。幼稚園の発表会で、娘が役を間違えて違うセリフを言った時、私は笑った。いや、笑ったというより、泣き笑いだ。それでも、精一杯の拍手を送った」<br><br>「小学校の運動会。かけっこでビリだった娘は、ゴールした瞬間に私を見上げて『パパ、最後だった』と泣いた。私は『でも最後まで走ったじゃないか』と、その涙を拭った」<br><br>「中学生になると、娘は急に口数が減った。反抗期だ。『パパなんか知らない』と言われた時は、心臓をえぐられた気分だった。でも、それでいい。親から離れていくことが、成長なんだと知った」<br><br>「パパ知らない」 言われた日々も 今思えば 愛おしいだけ 宝物の日々<br><br>「高校生になると、少しずつ戻ってきた。『パパ、これ見て』『パパ、これどう思う？』。まだ頼りにされている。それが嬉しかった」<br><br>「大学生で家を出た時。私は寂しくて、妻と二人で娘の部屋を掃除しながら、忘れ物がないか探した。見つからなかったけれど、たくさんの思い出が見つかった」<br><br>私は少し間を置いた。<br><br>「娘は、宝物だった。今も宝物だ。でも、この宝物をずっと私の手元に置いておくわけにはいかない」<br><br>私は透くんを見た。<br><br>「透くん。君は、そんな娘が選んだ人だ。私は最初、『この人で大丈夫か』と疑った。今も疑っている。」<br><br>会場が笑う。<br><br>「でもな。娘が君を見る目は、嘘じゃなかった。娘を信じるなら、君も信じるしかない。それが親ってものだ。そんなに大切な娘が選んだ相手を、私が否定するわけにはいかない。娘の選択を、私が疑うはずがない」<br><br><b>この娘を 選んだ君の その手を 信じると決めた 今日この日に</b><br><br>「もし、娘に一度でも嫌な思いをさせるなら、許さない。いつでも迎えに行く。空手五段の私が、君を――」<br><br>そこで一呼吸置いて、にやっと笑った。<br><br>「叩き潰すからな」<br><br>会場がどっと沸いた。<br><br>「ただし、絶対に幸せにしろよ。君にしかできない約束だ。いいな」<br><br>透くんは真っ赤な顔で、何度もうなずいた。<br><br>私は最後に、柔らかい声で言った。<br><br>「透くん。娘を頼む。そして君も、娘と一緒に幸せになれ」<br><br>拍手が起こった。娘は泣いている。妻も泣いている。私は泣かなかった。泣くもんか。<br><br>壇上を降りるとき、娘が「お父さん…」と言った。私は「うるさい」とだけ言って、彼女の頭をポンポンと叩いた。<br><br><b>「叩き潰す」 笑いと涙の スピーチに 会場中が 一つになる<br></b><br>結婚式が終わり、帰りの車の中。<br><br>妻が言った。<br><br>「あんた、よく言ったね」<br><br>「うるさい」<br><br>「でも、透くん、喜んでたよ」<br><br>「……そうか」<br><br>私は窓の外を見た。空がやけに青い。<br><br>この日を境に、私はもう一人、大切な家族が増えたのだ。素直になれない自分が、少し悔しい。<br><br>でも、これでいい。<br><br>娘が選んだ人。娘が愛した人。それは、きっと間違っていない。<br><br><b>「幸せに しろよ」それだけ 言いたくて あとは全部 照れ隠しだ</b><br><br>娘よ、おめでとう。<br><br>そして、ありがとう。<br><br>君がいてくれて、私は父になれた。<br><br>これからも、君の幸せを祈っている。<br><br><b>宝もの それはいつでも 変わらない ただその手が 誰かの手に渡る</b></p><p name="E4C80EB4-0338-4AFC-9C25-9A200CEFC8D4" id="E4C80EB4-0338-4AFC-9C25-9A200CEFC8D4">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/ndf068a3a02fe'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 17 Jun 2026 06:45:21 +0900</pubDate>
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      <title>「初心者ドライバー」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="9D2B7668-8843-40FB-AF54-F8AD463E674C" id="9D2B7668-8843-40FB-AF54-F8AD463E674C">免許を取って三年になる。<br><br>毎日通勤で車を運転している。<br><br>最初は怖かった道も、今ではほとんど考えなくても走れるようになった。<br><br>慣れとは不思議なものだ。<br><br>先週、友人が免許を取った。<br><br>嬉しそうに報告してきたので、「おめでとう」と返した。<br><br>その一週間後。<br><br>夜にLINEが来た。<br><br>「ねえ、ちょっと聞いてくれる？」<br><br>電話すると、声が沈んでいた。<br><br><b>免許取り 立ての友から 届く声 「運転向いてない」 夜の電話に<br></b><br>「昨日、親の車で練習したんだけど」<br><br>「うん」<br><br>「クラクション鳴らされた」<br><br>少し黙る。<br><br>「怖くなっちゃって」<br><br>私は少し笑った。<br><br>「何したの？」<br><br>「交差点で止まってた」<br><br>「危なかった？」<br><br>「いや……先に行かせようと思って」<br><br>「ああ」<br><br>なんとなく分かった。<br><br>「ありがとうだったかもしれないね」<br><br>「え？」<br><br>「譲ってくれてありがとうって」<br><br>彼女は少し黙った。<br><br>「そんなことある？」<br><br>「あるよ」<br><br>「怒られたと思ってた」<br><br>「まあ、分からないけどね」<br><br><b>車の音 一つ一つに 意味探し 不安は勝手に 大きくなる</b><br><br>彼女は続けた。<br><br>「信号待ちでも鳴らされた」<br><br>「青だった？」<br><br>「うん」<br><br>「それは急かされたかも」<br><br>「難しい……」<br><br>少し笑った。<br><br>「結局さ、何考えて鳴らしたかなんて分からないんだよ」<br><br>「……」<br><br>「だから初心者の頃は、考えなくていい」<br><br>「いいの？」<br><br>「うん。鳴らされた理由を考えるより、ちゃんと前を見る方が大事」<br><br>彼女は静かになった。<br><br>少しして言った。<br><br>「なんか、それ聞いたら楽になった」<br><br>私は昔を思い出した。<br><br>初心者マークをつけて走っていた頃。<br><br>後ろに車が並ぶだけで焦った。<br><br>右折が怖かった。<br><br>車線変更なんて無理だった。<br><br>みんな最初はそうだった。<br><br><b>初心者の 頃の自分を 思い出す 怖かったのは 運転じゃなく<br></b><br>「自信ない」<br><br>彼女が小さく言う。<br><br>「自信ある人なんて最初はいないよ」<br><br>「そうかな」<br><br>「そうだよ」<br><br>「……ありがとう」<br><br>電話を切る。<br><br>少し安心した声だった。<br><br>運転が上手くなる方法は知らない。<br><br>でも、一つだけ分かる。<br><br>最初から平気だった人なんて、多分いない。<br><br>怖いと思いながら走って、<br>少しずつ慣れていく。<br><br>それで十分だ。<br><br><b>焦らずに 行けばいいんだ 今日よりも 少し遠くへ 行ける日が来る</b></p><p name="07FB7035-A00F-4473-8452-43F0ADA09E3F" id="07FB7035-A00F-4473-8452-43F0ADA09E3F">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n3c02fb2831eb'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 16 Jun 2026 06:40:53 +0900</pubDate>
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      <title>「日曜日」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="A2062424-7D26-418D-95D5-D2A06E31E776" id="A2062424-7D26-418D-95D5-D2A06E31E776">日曜日<br><br>日曜日だけ、目覚ましをかけない。<br><br>それが大人になった証拠だと思っていた。<br><br>学生の頃は、<br>目覚ましなしで起きるなんて夢だった。<br><br>なのに今は違う。<br><br>目覚ましをかけない日曜日ほど、<br>早く目が覚める。<br><br>朝六時十二分。<br><br>平日なら絶対起きられない時間。<br><br>なのに日曜日だけ身体は律儀だ。<br><br>起きる。<br><br>二度寝する。<br><br>起きる。<br><br>時計を見る。<br><br>まだ七時。<br><br>少し得した気分になる。<br><br>でも何もすることがない。<br><br>冷蔵庫を見る。<br><br>卵一個。<br><br>麦茶。<br><br>賞味期限の近い納豆。<br><br>買い物には早い。<br><br>散歩には寒い。<br><br>掃除するほど汚れていない。<br><br>日曜日というのは、<br>自由な時間ではなく、<br>自由にしていいと言われた時間なのかもしれない。<br><br>日曜日 やること無くて 起きてみる 平日よりも 忙しくない<br><br>結局、<br>コーヒーを淹れて、<br>洗濯して、<br>少し昼寝して、<br>動画を見て、<br>夕方になる。<br><br>不思議だ。<br><br>何もしてないのに、<br>ちゃんと日曜日は終わる。<br><br>夕方。<br><br>外から子どもの声。<br><br>遠くで救急車。<br><br>スーパーの袋。<br><br>ああ、終わる。<br><br>また終わる。<br><br>私は少しだけ寂しくなる。<br><br>明日から仕事だからじゃない。<br><br>今日がちゃんと日曜日だったからだ。<br><br>夜。<br><br>目覚ましをセットする。<br><br>六時三十分。<br><br>その瞬間、<br>来週の日曜日が少し待ち遠しくなる。<br><br>日曜日 何もないのに 愛おしい 明日が来ると 知っているから</p><p name="30F034CF-2177-4607-A2B9-40977333E6C1" id="30F034CF-2177-4607-A2B9-40977333E6C1">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n2b68f3dc5be1'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/218098635/profile_ea2449b8886d2dc3e77c9009232de1ae.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 15 Jun 2026 04:59:50 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/sunset7/n/n2b68f3dc5be1</link>
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      <title>「鏡よ鏡」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="309D625A-7B54-4A96-9353-156AD4F3F800" id="309D625A-7B54-4A96-9353-156AD4F3F800">朝、目が覚める。最初の勝負は、鏡の前で始まっている。<br><br>「今日の私、いけるんじゃない？」<br><br>そう自分に言い聞かせる。これが日課だ。だって、自分に自信を持たなきゃ、一日が始まらないから。<br><br><b>鏡よ鏡 今日も一番 可愛いのは 誰ですか？ 答えはもちろん「私」</b><br><br>制服に着替えて、髪を整える。前髪は眉毛が見えるくらいの長さがちょうどいい。横から見て、寝癖がついていないか確認する。<br><br>「よし、完璧」<br><br>しかし、電車に乗って五分。窓ガラスに映る自分を見て、思い直す。<br><br>「……なんか、違う」<br><br>気のせいだ。気のせいにしよう。必死に自分を納得させる。<br><br>教室に着く。友人たちが集まっている。<br><br>「おはよう」<br><br>「おはよう。あ、それ昨日のストーリー見た？」<br><br>「見た見た！ 超面白かった！」<br><br>会話に加わりながらも、心の中で別の声がする。<br><br><b>「今の笑顔、変じゃなかった？」 「大丈夫、可愛かった」 心の中での 問答は続く</b><br><br>授業中、隣の席の男子がこっちを見た気がした。<br><br>「もしかして、私の顔、何かついてる？」<br><br>こっそりスマホのカメラで自分の顔をチェック。何もついていない。ただの気のせいだった。その時、先生に注意される。<br><br>「○○さん、スマホしまってください」<br><br>「は、はい」<br><br>クラスの視線が一斉に集まる。顔が赤くなるのがわかった。心の中で、もう一人の自分が叫ぶ。<br><br><b>「しまった！」 「大丈夫、気にしない」 二つの声が 頭の中で 喧嘩を始める</b><br><br>昼休み。友人とランチを食べている時、話題が恋愛に移った。<br><br>「ねえ、好きな人っている？」<br><br>「い、いないよ！」<br><br>慌てて否定するが、心の中では「いるけど」と呟く。同じクラスの、あの静かな男子。名前は言えない。まだ自分の中で整理がついていないから。<br><br>「そうなんだー。私はさ、最近……」<br><br>友人の話を聞きながら、心の中で自分を励ます。<br><br><b>好きな人 できる前に やるべきこと それは自分を 好きになること</b><br><br>放課後、鏡の前でまた自分と対話する。<br><br>「今日は、どうだった？」<br><br>「うーん、まあまあかな」<br><br>「明日は、もっと頑張ろう」<br><br>「そうする」<br><br>自分と約束して、帰り支度を始める。<br><br>家に帰って、また鏡の前。<br><br>「ただいま」<br><br>「おかえり」<br><br>自分で自分に言う。ちょっと寂しいけど、これが習慣だ。<br><br><b>鏡よ鏡 教えてほしい 彼の心 でもその前に 自分を知りたい</b><br><br>夜、ベッドの中で考える。<br><br>「私は私でいい。それでいいんだ」<br><br>そう結論を出して、目を閉じる。明日もまた、鏡の前で自分と対話するだろう。それが私の、自分を好きになるための第一歩だから。<br><br>自分に自信を持つのは、難しい。でも、頑張ってる。それでいい。少しずつでいい。<br><br><b>鏡よ鏡 答えはもう わかってる 世界で一番 私が好きよ</b></p><p name="2A6C17F6-CDF2-4586-B877-3D5C2F2751C2" id="2A6C17F6-CDF2-4586-B877-3D5C2F2751C2">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n612b5f28b0d9'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Sun, 14 Jun 2026 08:04:00 +0900</pubDate>
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      <title>「あなたとの距離」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="0FB297F8-1094-49A9-98EE-219DE576AC73" id="0FB297F8-1094-49A9-98EE-219DE576AC73">あの人と初めて出会った頃、私は本当の自分を出していなかった。<br><br>よく見られたい。気に入ってもらいたい。それだけを考えて、言葉を選び、笑顔を作った。デートの前には何を着ていくか一時間以上悩み、彼の好きなバンドを調べて、話題を暗記した。<br><br>「この服、似合う？」<br>「すごく似合ってる」<br><br>彼の言葉が嬉しかった。でも、鏡の中の自分を見るたび、違和感があった。これ、本当に私の好きな服？ そう思っても、彼が褒めてくれるから、それを着続けた。<br><br><b>初めての デートの前の 鏡見て 「これで大丈夫？」 誰に聞くともなく</b><br><br>付き合い始めてからは、さらにその思いは強くなった。「いい彼女」でいなければ。彼の友達に「良い子だね」と言われたい。彼の両親に「よくできたお嬢さん」と思われたい。料理も、振る舞いも、喋り方も、すべて「平均以上の彼女」というテンプレートに当てはめた。<br><br>結婚した。そして、私は「いい奥さん」を演じ続けた。家事は完璧に。彼の帰りを笑顔で迎え、愚痴を聞き、義母とも円満に。周りから「素敵な夫婦ね」と言われるたび、胸の奥で小さな違和感を感じていた。でも、その声を無視した。<br><br>無理は、ちょっとしたことの積み重ねだった。本当は違う服が好きなのに「それいいね」と彼の選ぶ服を着たこと。本当は映画が見たいのに「そうだね」と彼の好きなスポーツ中継に付き合ったこと。本当は疲れているのに「大丈夫」と笑って家事をしたこと。一つ一つは小さな無理。でも、それが積もり積もった。<br><br>ある日の夕方。彼が「今日、何が食べたい？」と聞いてきた。それだけのことだった。なのに、私は突然怒りがこみ上げた。<br><br>「いつも私ばかりが決めてる！ たまにはあなたが決めてよ！」<br><br>彼は何も悪くなかった。ただ、優しく聞いてくれただけなのに。<br><br><b>積もりたる 無理の数々 爆発し 何も悪くなき 君にあたる<br></b><br>彼は黙って、床に落ちた私の言葉を受け止めていた。<br><br>その日から、私たちの夫婦のスタイルは変わっていった。私はもう「いい奥さん」を演じるのをやめた。代わりに、出来るだけ思ったことを口にした。最初はぎこちなかった。喧嘩も増えた。でも、喧嘩の後は必ず話し合った。<br><br>何かあっても翌朝には変わらず「おはよう」と言ってくれた。そのひと言が、どれだけ私を救ったか。<br><br>時間がかかった。少しずつ、少しずつ、お互いの素を出せるようになった。<br><br>「初めからこうすれば良かったね」<br>「でも、初めは無理だったかもね」<br><br>彼は笑った。「そうかもな」<br><br>子供たちが巣立った後、私たちは再び二人きりになった。若い頃のような情熱はないけれど、穏やかな時間が流れていた。<br><br>あなたはある朝、私の隣で、静かに息を引き取った。前日の夜まで普通に話していたのに。普通に笑っていたのに。<br><br><b>朝の光 差し込む部屋で 君はもう いないと知るも 隣にいる気がして</b><br><br>私は一人残された。でも、不思議と寂しくなかった。冷蔵庫を開ければ、あなたが買ってきた調味料。本棚には、あなたが読んでいた小説。リビングのソファには、あなたがいつも座っていた窪み。<br><br>あなたは私の一部になって、まだそこにいる。<br><br>「さようなら」は言わない。言う必要がない。だって、今もあなたは隣にいるから。<br><br>そういうものなんだと、あなたが教えてくれた。<br><br><b>空っぽの 隣に感じる あなたから 教わったんだ 「ひとりじゃない」と</b><br><br>---<br>#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常<br><br></p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/na23ab5d3de5b'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Sat, 13 Jun 2026 08:21:45 +0900</pubDate>
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      <title>杉真理 —— ミスター・メロディ、時代を超えるポップスの職人</title>
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      <description><![CDATA[<p name="1D8A440D-FA74-4932-8C4C-8EF6E70FEF6E" id="1D8A440D-FA74-4932-8C4C-8EF6E70FEF6E">『シティポップの肖像』 第1部「夜と哀愁の肖像」 第7回<br><br><b>杉真理 —— ミスター・メロディ、時代を超えるポップスの職人</b><br><br>編集長コメント：これまで山下達郎の孤高、竹内まりやの覚醒、大滝詠一の魔法、角松敏生の美学、井上鑑の職人技、寺尾聡の大衆性、稲垣潤一の哀愁を描いてきた。第7回は、そのどれとも違う「メロディそのもの」で勝負する男——杉真理。「ミスター・メロディ」の異名を持つ彼の音楽は、なぜ40年経っても色褪せないのか。<br><br><b>プロローグ —— 「売れない名曲」が愛され続ける理由<br></b><br>1982年、杉真理はシングル「バカンスはいつも雨」をリリースした。グリコチョコレートのCMソングに起用され、オリコン最高23位・売上10.3万枚——彼のシングルとしては唯一の10万枚超えを記録した。<br><br>しかし、それ以外の彼のシングルは、ほとんどチャートにランクインしなかった。「いとしのテラ」はオリコン圏外。商業的な成功という観点では、杉真理は「売れた」アーティストではない。<br><br>それでもなお、彼の名前はシティポップファンの間で語り継がれている。なぜか。<br><br>そこにあるのは、「メロディの王道を行くことの勇気」と「時代に迎合しない美学」だ。彼の音楽は決して派手ではない。しかし、聴いた人の心に確かに残る。それが「ミスター・メロディ」の真髄である。<br><br><b>人物キャラクター —— ビートルズから始まった音楽人生</b><br><br>ビートルズとの出会い<br><br>杉真理の音楽的原体験は、1964年に遡る。小学5年生の時、ビートルズの「のっぽのサリー」を聴いて衝撃を受ける。その日から彼はビートルズの大ファンとなり、自分もあんな音楽を作りたいと強く思うようになった。<br><br>この「ビートルズ以降のポップス」への愛情が、彼の音楽の根底を貫いている。彼はかつて「大切なことは全てビートルズが教えてくれた」と語っている。ビートルズの曲には、誰でも歌えるキャッチーなサビと、マニアしかわからない複雑なAメロが共存している。この「わかりやすさ」と「マニアックさ」の絶妙なバランス——杉真理が追い求めたのは、まさにそれだった。<br><br><b>竹内まりやとの出会い——早稲田の音楽サークル</b><br><br>大学入学後、杉は軽音楽サークルでバンド「ピープル」を結成。後に竹内まりやもこのバンドに参加する。ここで杉は、後にシティポップシーンを代表するシンガーとなる竹内と、青春時代を共に過ごした。<br><br>この「ピープル」での経験が、杉の音楽観を大きく形成した。メンバー同士で曲を持ち寄り、アレンジを議論し、ライブで披露する——それはまさに「音楽を楽しむこと」そのものだった。<br><br><b>大滝詠一との出会い——ナイアガラ・ファミリー</b><br><br>1981年、杉真理の運命を変える出来事が起きた。大滝詠一が、佐野元春と杉を「NIAGARA TRIANGLE Vol.2」のメンバーに指名したのである。大滝は渋谷公会堂のステージ上で突然この発表をしたという。<br><br>この「ナイアガラ・ファミリー」への加入は、杉にとって単なるコラボレーション以上の意味を持った。大滝の「ポップスは遊び心を持って作るべき」という姿勢は、杉の音楽観に大きな影響を与えた。後に杉は大滝プロデュースのもと「A面で恋をして」を発表。この曲は、杉の代表作の一つとして今日まで語り継がれている。<br><br><b>本人歌唱の代表曲 —— メロディが語る「夜」の情景<br></b><br>杉真理の音楽の核心を理解するには、まず彼自身が歌った曲を聴くべきだ。提供曲は「補足」として扱い、ここでは本人歌唱の代表作を中心に紹介する。<br><br><b>「バカンスはいつも雨」（1982年）</b><br><br>この曲は1982年10月1日にリリースされ、グリコチョコレートのCMソングに起用された。オリコン最高23位、売上10.3万枚を記録し、杉のシングルとしては最大のヒット曲となっている。<br><br>聴きどころはイントロのギターカッティング。軽快でありながらどこか切ないこのリズムが、曲全体のトーンを決定づける。タイトルは「バカンス」という明るいイメージだが、実際に描かれているのは「雨」——つまり、どこか物悲しい夏の情景だ。<br><br>堀ちえみがセーラー服で赤い傘を差すCM映像は、当時の多くの人の記憶に残っている。「赤いカサぬらす雨」という歌詞とCMのビジュアルが完璧にシンクロし、一つの「夏の記憶」として焼き付いた。この曲の主題は「青春の終わり」である。バカンスが終わり、夏が終わり、そして何かが終わる。その切なさを、杉は決して重たくならず、軽やかなメロディで包み込む。<br></p><figure data-align="center" name="67584251-6533-49E7-9A90-A1FDEECF758E" id="67584251-6533-49E7-9A90-A1FDEECF758E"><img src="https://assets.st-note.com/img/1779433039-rSN1sbHGdRmOX8E7n2LtvQDZ.png" width="620" height="620" id="image-67584251-6533-49E7-9A90-A1FDEECF758E"><figcaption></figcaption></figure><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n71a9ae4d3317'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/218098635/profile_ea2449b8886d2dc3e77c9009232de1ae.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 12 Jun 2026 06:59:43 +0900</pubDate>
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      <title>「食パン」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="DF467556-66EB-4AC1-B2FF-2367E638A357" id="DF467556-66EB-4AC1-B2FF-2367E638A357">妻に「帰りに食パン買ってきて」と頼まれたのは、昼休みの終わりだった。<br><br>食パン。<br><br>簡単だと思った。<br><br>パンである。<br><br>むしろパン界の代表選手だ。<br><br>間違える要素など何一つない。<br><br>私は軽く了承し、仕事を終え、そのままスーパーへ向かった。<br><br>青果売場のレタス以来、買い物には少し慎重になっている。<br><br>だから今日は余裕だった。<br><br>食パンだけだから。<br><br>売場へ着いた。<br><br>そして私は立ち尽くした。<br><br>六枚切り。<br><br>八枚切り。<br><br>五枚切り。<br><br>超熟。<br><br>ふんわり。<br><br>耳までやわらかい。<br><br>低糖質。<br><br>ホテル仕様。<br><br>国産小麦。<br><br>どういうことだ。<br><br>食パンとは白くて四角いだけの存在ではなかったのか。<br><br>こんなにも思想があるとは聞いていない。<br><br>私は棚の前を二往復した。<br><br>持ち上げる。<br><br>戻す。<br><br>裏を見る。<br><br>戻す。<br><br>賞味期限を見る。<br><br>何もわからない。<br><br>わからない時は、良さそうなものを買えばいい。<br><br>私は一番美味しそうな袋を選んだ。<br><br>少し高かった。<br><br>でもパンで失敗はない。<br><br>そう信じた。<br><br><b>食パンの厚さ選びに立ち尽くす<br>知らぬ世界の深さ知る夕</b><br><br>帰宅する。<br><br>少し誇らしかった。<br><br>今日は迷った。<br><br>考えた。<br><br>選んだ。<br><br>成長した気がした。<br><br>「買ってきたよ」<br><br>妻は袋を見る。<br><br>一秒。<br><br>二秒。<br><br>そして言った。<br><br>「……八枚切り？」<br><br>しまった。<br><br>何か違った。<br><br>「うちは六枚切りだよ」<br><br>うちは。<br><br>派閥だった。<br><br>私はその瞬間に理解した。<br><br>食パンは食べ物ではない。<br><br>文化だった。<br><br>家庭だった。<br><br>厚みの問題ではなかった。<br><br>生活の積み重ねだった。<br><br>「八枚だと薄いんだよ」<br><br>そうなのか。<br><br>私は知らなかった。<br><br>食パンとは、薄いとか厚いとかを語る食べ物だったのだ。<br><br>私は言い返せない。<br><br>だって、私はこれまで食パンを選んだことがなかった。<br><br>毎朝、出されたものを焼いて食べていただけだった。<br><br>その事実を、パン売場で初めて知った。<br><br><b>何枚が正解なのかわからない<br>パンより厚い家庭のルール</b><br><br>翌朝。<br><br>少し申し訳ない気持ちで食卓につく。<br><br>妻は普通にパンを焼いていた。<br><br>バターを塗る。<br><br>半分に切る。<br><br>皿に置く。<br><br>食べる。<br><br>普通に美味しい。<br><br>むしろ食べやすい。<br><br>私がそう言うと、妻は少し笑った。<br><br>「まあ、たまには八枚もいいね」<br><br>私は少し安心した。<br><br>その夜。<br><br>冷蔵庫を見る。<br><br>紙が一枚貼ってあった。<br><br>買い物メモ。<br><br>牛乳。<br><br>卵。<br><br>納豆。<br><br>そして最後に。<br><br>食パン（六枚切り・写真付き）<br><br>私は少し笑った。<br><br>これで次は迷わない。<br><br>……いや、次はきっとヨーグルト売場で立ち尽くすのだろう。</p><p name="D6ADA221-75C2-4D77-87FB-E813E9C98F96" id="D6ADA221-75C2-4D77-87FB-E813E9C98F96">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n18f5828d1388'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 12 Jun 2026 06:58:29 +0900</pubDate>
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      <title>「居酒屋」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="0CBFE3E3-4641-4F32-8921-D823D68FD116" id="0CBFE3E3-4641-4F32-8921-D823D68FD116"><br>後輩から、初めて飲みに誘われた。<br><br>「先輩、今日、よかったら一杯どうですか」<br><br>社交辞令ではない、本気の目だった。何か相談があるのか？ それとも仕事の悩み？ はたまた恋愛？ いろんな可能性が頭をよぎる。<br><br>「いいよ」<br><br>そう答えたものの、心の中は「なんの相談だ？」でいっぱいだった。<br><br><b>初めての 後輩からの 飲み誘い これはもしや 人生相談</b><br><br>駅前の居酒屋。生ビールと枝豆を注文する。乾杯の音と同時に、私は探りを入れた。<br><br>「最近、仕事どう？」<br><br>「まあ、なんとか」<br><br>「悩みとかある？」<br><br>「え？ いや、特に」<br><br>返事がそっけない。むしろ、そっちこそどうなんだ、という顔をしている。<br><br>二杯目。焼き鳥が来た。私はさらに切り出す。<br><br>「何か話したいことあるなら、遠慮なく」<br><br>「いや、別に」<br><br>後輩は淡々と焼き鳥を食べている。相談があるから誘ったんじゃないのか？ 私は焦り始めた。<br><br><b>「相談なら 聞くよ」と言えど 塩対応 こっちが聞き手 のはずなのに</b><br><br>三杯目。私はとうとうストレートに聞いた。<br><br>「なあ、今日の飲みの目的って何？」<br><br>「え、だって」<br><br>後輩はきょとんとした顔で言った。<br><br>「先輩が最近、元気ないから。愚痴でも聞いてほしいのかなって」<br><br>「は？」<br><br>「仕事も忙しそうだし、奥さんとも喧嘩したって聞いたし。それで、飲みに誘ったんですよ」<br><br>私は一瞬、言葉を失った。<br><br>つまり、相談したいのは彼ではなく、私だったのか。<br><br><b>後輩が 心配してた その事実 逆の立場に 呆れと感動<br></b><br>「いや、確かにちょっと疲れてたけど……でも、そんなに顔に出てた？」<br><br>「出てましたよ。今日なんて、ため息ばっかり」<br><br>「ごめん」<br><br>「いいですよ。どうせなら、ここで話してスッキリしてください」<br><br>私は苦笑いした。結局、自分が愚痴るハメになった。<br><br>仕事の愚痴、家庭のこと、将来の不安。ぽつぽつと話すうちに、あっという間に時間が過ぎた。<br><br>「ありがとな。気を使わせて」<br><br>「いえいえ。また飲みましょう」<br><br>その言葉に、私は少しだけ救われた気がした。<br><br><b>相談は あったのは 私の方 後輩の優しさ 染みる居酒屋</b><br><br>結論。<br><br>後輩は頼もしく成長していた。そして私は、まだまだ未熟だった。<br><br>帰り道、夜空を見上げて、ちょっと笑った。<br><br><b>人のこと 心配してた つもりが 気づけば自分が 救われていた</b></p><p name="293A3485-F549-4957-9F0D-E140A6B0090F" id="293A3485-F549-4957-9F0D-E140A6B0090F">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/nd8a33e7ed2c7'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/218098635/profile_ea2449b8886d2dc3e77c9009232de1ae.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 11 Jun 2026 07:19:38 +0900</pubDate>
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      <title>「白い息」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="AFC3593C-CE5B-46E7-B34F-92F72910C5C9" id="AFC3593C-CE5B-46E7-B34F-92F72910C5C9">その冬は、例年より寒かった。<br><br>そう誰かが言っていた気がする。<br><br>けれど私が覚えているのは気温じゃない。<br><br>あなたの吐いた白い息だけだ。<br><br>学校へ向かう坂道。<br><br>朝はまだ暗くて、手袋をしていても指先が痛かった。<br><br>私たちはいつも少し早めに家を出た。<br><br>理由なんてなかったと思う。<br><br>ただ、一緒に歩く時間が長くなるから。<br><br>坂を登りながら、あなたは白い息を吐いて言った。<br><br>「寒いね」<br><br>私は頷いた。<br><br>寒かった。<br><br>でも嫌じゃなかった。<br><br>今思えば、あの頃の冬は全部同じ色だった。<br><br>曇った空。<br><br>吐く息。<br><br>赤くなる耳。<br><br>制服のポケット。<br><br>何でもない毎日。<br><br>でも、何でもないものほど先に失くなる。<br><br><b>白い息 混ざって消えた 帰り道 どちらのものか わからぬままで<br></b><br>冬が終わる頃。<br><br>あなたは急に部活が忙しくなった。<br><br>帰る時間も合わなくなった。<br><br>一緒に歩いた坂道を、一人で登ることが増えた。<br><br>理由なんて、今ならわかる。<br><br>変わったのは季節じゃない。<br><br>時間だった。<br><br>それでも私は、<br>次の日になればまた会えると思っていた。<br><br>春が来るまで。<br><br>卒業の日。<br><br>空は青かった。<br><br>もう白い息は出なかった。<br><br>みんな笑っていた。<br><br>写真を撮っていた。<br><br>あなたも笑っていた。<br><br>その顔を見て、<br>もう同じ帰り道はないのだと知った。<br><br>何も言わなかった。<br><br>言えなかった。<br><br>別れというのは、<br>案外静かに来る。<br><br><b>言葉より 消えていくのは 冬の日の 白い息ほど さりげなくして</b><br><br>大人になって冬を迎えるたびに、<br>時々あの坂道を思い出す。<br><br>今は通る人も少ない。<br><br>道も綺麗になった。<br><br>コンビニもできた。<br><br>でも冬の朝だけは変わらない。<br><br>息を吐く。<br><br>白くなる。<br><br>空へ消える。<br><br>私は少しだけ立ち止まる。<br><br>あの日の私たちも、<br>こんなふうに空へ消えていったのだろうか。<br><br>覚えていなくてもいい。<br><br>忘れていてもいい。<br><br>ただ冬になると、<br>どうしても思い出す。<br><br>あなたの隣で歩いた帰り道を。<br><br>そして、<br>白い息が消える速さで、<br>私たちは大人になったことを。<br><br><b>冬空に 吐いた記憶は 消えたけど 心の中に 今も白くて</b><br><br>今日は少し寒い。<br><br>窓を開ける。<br><br>息を吐く。<br><br>白くはならなかった。<br><br>冬はまだ来ていない。<br><br>でもきっと、<br>思い出は季節より先にやってくる。</p><p name="A6CA3CC4-8136-45F6-8656-39119C0E6A39" id="A6CA3CC4-8136-45F6-8656-39119C0E6A39">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n838b03c2c7e9'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/218098635/profile_ea2449b8886d2dc3e77c9009232de1ae.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 09 Jun 2026 07:23:27 +0900</pubDate>
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      <title>「牛乳」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="18D8220E-F747-4DFA-982C-C477CB2398AC" id="18D8220E-F747-4DFA-982C-C477CB2398AC">妻に「帰りに牛乳買ってきて」と頼まれた。<br><br>簡単だと思った。<br><br>牛乳である。<br><br>白い飲み物だ。<br><br>冷蔵庫にいつも入っている。<br><br>買い間違える要素など、一つもない。<br><br>私は自信を持ってスーパーへ向かった。<br><br>牛乳売場へ着く。<br><br>立ち止まる。<br><br>……白い。<br><br>全部白い。<br><br>しかも種類が多い。<br><br>牛乳。<br><br>低脂肪。<br><br>特濃。<br><br>乳飲料。<br><br>成分無調整。<br><br>カルシウム強化。<br><br>おいしい牛乳。<br><br>いや待ってほしい。<br><br>おいしくない牛乳があるみたいな言い方はやめてほしい。<br><br>私は棚の前を行ったり来たりした。<br><br>横を見る。<br><br>隣の人は迷わない。<br><br>迷う素振りもない。<br><br>取る。<br><br>入れる。<br><br>終わり。<br><br>何故だ。<br><br>どうしてみんな知っている。<br><br>私は知らない。<br><br>牛乳の世界にこんな序列があるとは。<br><br>悩んだ末、<br>私は一番堂々としているパッケージを選んだ。<br><br>濃そうだった。<br><br>栄養もありそうだった。<br><br>少し高かった。<br><br>でも牛乳なのだから、<br>濃い方が良いに決まっている。<br><br><b>牛乳の違ひも知らず手に取れば<br>白き世界の深さ知る夜</b><br><br>帰宅する。<br><br>少し満足だった。<br><br>今日は考えた。<br><br>比較した。<br><br>選んだ。<br><br>成長した気がした。<br><br>「買ってきたよ」<br><br>妻は袋を見る。<br><br>止まる。<br><br>一秒。<br><br>二秒。<br><br>「……これ、特濃？」<br><br>嫌な予感がした。<br><br>「牛乳って言ったよね？」<br><br>「うん」<br><br>「うちは普通のやつなんだよ」<br><br>普通。<br><br>そんな概念があったのか。<br><br>私は初めて知った。<br><br>牛乳は白ければいいわけではなかった。<br><br>味。<br><br>脂肪。<br><br>用途。<br><br>生活。<br><br>全部決まっていた。<br><br>妻は少し笑った。<br><br>「コーヒーに入れると重いんだよね」<br><br>なるほど。<br><br>私はまた一つ賢くなった。<br><br>その夜。<br><br>食後に妻が言った。<br><br>「せっかくだから飲んでみよう」<br><br>二人で飲む。<br><br>確かに濃い。<br><br>美味しい。<br><br>少し贅沢な味がした。<br><br>妻が言った。<br><br>「たまにはいいかもね」<br><br>私は安心した。<br><br>次の日。<br><br>冷蔵庫を見る。<br><br>買い物メモ。<br><br>卵。<br><br>納豆。<br><br>ヨーグルト。<br><br>そして最後に。<br><br>牛乳（いつもの・青いやつ）<br><br>私は笑った。<br><br>白いのに、<br>ちゃんと青かった。<br><br><b>牛乳は同じに見えて違うもの<br>家庭の味は意外と細かい</b></p><p name="684472B0-E51C-4981-9026-1F98D3E417F2" id="684472B0-E51C-4981-9026-1F98D3E417F2">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n09bb41e0e0f7'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Sun, 07 Jun 2026 09:10:25 +0900</pubDate>
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      <title>寺尾聡 —— 大衆の星、シティポップを国民現象に変えた男</title>
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      <description><![CDATA[<p name="317B637A-E810-4465-B585-6387B19C2445" id="317B637A-E810-4465-B585-6387B19C2445">『シティポップの肖像』 第1部「夜と哀愁の肖像」 第6回<br><br>寺尾聡 —— 大衆の星、シティポップを国民現象に変えた男<br><br>編集長コメント：第5回で「影の建築家」井上鑑を描いた。第6回は、その井上と共に歴史的ヒットを生み出した男——寺尾聡。彼の登場によって、シティポップは一部の通の音楽から「国民的な現象」へと変貌した。その一瞬の輝きと、その後の静寂を描く。<br><br>---<br><br><b>プロローグ —— 1981年、日本中が聴いた音<br></b><br>1981年、日本の音楽シーンに異変が起きた。<br><br>俳優としてすでにトップスターだった寺尾聡が、アルバム『Reflections』を発表。そのサウンドは、それまでの歌謡曲とは一線を画す、都会的で洗練されたものだった。<br><br>シングルカットされた「ルビーの指環」は、オリコンチャートで7週連続1位を記録。アルバムは160万枚以上を売り上げ、年間チャートのトップに立った。<br><br>この年に発売された大滝詠一の『A LONG VACATION』とともに、シティポップというジャンルは「一部の通の音楽」から「日本中が聴く大衆音楽」へと変貌したのである。<br><br><b>寺尾聡。彼はその中心に立っていた。</b><br><br>しかし、その成功はあまりにも特異で、あまりにも一瞬だった。彼はなぜシティポップの「大衆の星」となり得たのか。そして、その後なぜその座を降りたのか。<br><br>---<br><br><b>人物キャラクター —— クールなスターの内側</b><br><br>俳優としての確固たる地位<br><br>寺尾聡は、デビュー以前から「寺尾聰」として俳優活動を行っていた。黒澤明監督の『影武者』『乱』などに出演し、確かな演技力で評価されていた。<br><br>しかし、彼にはもう一つの顔があった。音楽への情熱である。<br><br>多くの俳優が「歌手もやります」と安易にシングルを出す例は珍しくない。しかし、寺尾の場合は違った。彼の音楽への向き合い方は、真剣そのものだった。2年以上の制作期間をかけ、膨大なデモテープから厳選された楽曲だけを収録したアルバム——それが『Reflections』である。<br><br><b>寡黙でクールなイメージ</b><br><br>テレビでほとんど喋らない。笑顔もあまり見せない。ミステリアスで、少し近寄りがたい——これが当時の寺尾聡のパブリックイメージだった。<br><br>しかし、その「クールさ」が、かえって都会的で洗練された印象を強めた。彼は「喋らないからこそ語る」スタイルで、シティポップの「夜の男」を体現したのである。<br><br><b>井上鑑という「影の相棒」</b><br><br>『Reflections』の編曲を一手に引き受けたのは、井上鑑だった。<br><br>井上は、寺尾のクールでハスキーなボーカルを最大限活かすために、過剰な装飾を一切排した編曲を施した。シンセサイザーを駆使した「テクノ歌謡」的なサウンド——それは、それまでの歌謡曲にはなかった新しい響きだった。<br><br>井上にとって、寺尾聡との仕事はキャリアの転機となった。この成功が、井上を「アレンジャー」から「ヒットメーカー」の領域に押し上げたのである。<br><br>一方の寺尾にとって、井上は「自分の声を一番理解してくれた」存在だった。二人は、クールなスターと寡黙な職人——完璧なバランスで並走した。<br><br><b>松本隆という「言葉の建築家」</b><br><br>作詞を担当したのは松本隆。彼は「ルビーの指環」で、都会に生きる男の孤独と、それでも放てない強がりを詩にした。<br><br>「あなたは私に ルビーの指環をくれた」——単純なフレーズだが、その奥にあるのは「偽りの愛への気づき」であり、「それでもその指環を手放せない弱さ」である。<br><br>松本の詞と、井上の編曲、そして寺尾の歌唱——この三者の完璧な融合が、『Reflections』という奇跡を生み出した。<br><br>---<br><br><b>代表作から読む —— 三つの「夜の情景」<br><br>1. ルビーの指環 (1981 / アルバム『Reflections』)</b><br><br>編曲の魔術：イントロのシンセベース。無機質でありながら、どこか温かみのあるこの音が、曲全体のトーンを決定づける。<br><br>井上鑑は、この曲であえて「隙間」を作った。音が鳴っていない瞬間——その「間」が、寺尾のボーカルに緊張感を与えている。歌詞の一節一節が、まるでドラマの台詞のように際立つ。<br><br>歌詞の世界：「ルビーの指環」——一見すると愛の証。しかし、松本隆はその裏に「偽り」を忍ばせた。「あなた」という存在は、もしかしたら最初からいなかったのではないか。あるいは、すでに去ってしまったのではないか。<br><br>この「不在の愛」を歌う寺尾のボーカルは、どこまでもクールで、どこまでも哀しい。泣かない。叫ばない。ただ静かに、指環を見つめる。<br><br>これこそが、シティポップの「夜の美学」の到達点の一つである。<br></p><figure data-align="center" name="C253F5CD-E7A7-4A6F-802D-DD9A3C518ADB" id="C253F5CD-E7A7-4A6F-802D-DD9A3C518ADB"><img src="https://assets.st-note.com/img/1778724925-UpxELitANgrGCZzdw20WoFSe.png" width="620" height="618" id="image-C253F5CD-E7A7-4A6F-802D-DD9A3C518ADB"><figcaption></figcaption></figure><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n4bdddc54b66f'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/218098635/profile_ea2449b8886d2dc3e77c9009232de1ae.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 05 Jun 2026 07:44:37 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/sunset7/n/n4bdddc54b66f</link>
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      <title>「気まずい空間」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="22931F62-C61E-45F3-A3CF-892209903183" id="22931F62-C61E-45F3-A3CF-892209903183">エレベーターに急いで乗り込んだ。ギリギリ間に合った。<br><br>ドアが閉まる直前、私は迷った。中には女性が一人。できれば面識のない女性と二人きりにならないよう、普段は一本見送ることにしている。でも、今日は遅刻しそうだった。仕方なく乗り込む。<br><br>彼女の斜め後ろ。なるべく距離を取って立つ。彼女は前に向いたまま、こちらを見ようとしない。無音。エレベーターが上昇する。三階、四階、五階。<br><br><b>見知らぬと 二人きりには ならぬよう いつも心がけ ているけれど<br></b><br>気まずい。何か話すべきか。いや、話しかけたら逆に不審がられるか。咳一つするのもためらわれる。彼女も同じらしく、微動だにしない。<br><br>そんな時だった。エレベーターがガクンと止まった。表示は「七階」のまま。ドアは開かない。<br><br>――故障だ。<br><br>私は非常ボタンを押した。インターホンが繋がる。<br><br>「もしもし、こちら管理室です」<br>「エレベーターが止まりました。○○ビルの七階です」<br>「かしこまりました。すぐに業者を手配します。今は何時ですか？」<br>「午前八時四十分です」<br>「わかりました。少々お待ちください」<br><br>プツッと通話が切れた。<br><br>あとは待つだけ。<br><br><b>非常用 インターホンで 連絡し 終わった途端に また訪れる沈黙<br></b><br>そう、待つだけ。ただ、待つだけ。この二人きりの箱の中で。<br><br>私は壁に寄りかかる。彼女は反対側の壁に寄りかかっている。できるだけ距離を取って。<br><br>一分。二分。三分。<br><br>誰も喋らない。喋るべき話題が見つからない。窓もない。外の景色も見えない。ただ、無機質な壁と、お互いの気配だけがある。<br><br>五分経った。<br><br>彼女が小さくため息をついた。私はそれに反応して、つい彼女の方を見てしまう。彼女も私を見た。<br><br>目が合った。<br><br>すぐにそらす。また沈黙。<br><br>ああ、これが噂に聞く「地獄のエレベーター」というやつか。<br><br><b>気まずさに 耐えきれず つい 見てしまう 見てはいけない ものを見るよう</b><br><br>十分経った。<br><br>私は勇気を振り絞って言った。<br><br>「……慣れないですね、知らない人と二人きりだと」<br><br>彼女は少し驚いた顔をして、小さくうなずいた。<br><br>「そうですね。私も、できれば避けたいタイプで」<br><br>「あ、僕もです。だから普段は、誰か乗ってるときは一本見送るんですけど、今日は遅刻しそうで」<br><br>「私も同じこと考えてました」<br><br>そこで初めて、彼女が少しだけ笑った。その笑顔に、私もなぜかほっとした。<br><br><b>「実は僕も」 その一言で 少しだけ 距離が縮まる エレベーター<br></b><br>「……実は、最初、ちょっと怖かったんです」<br><br>彼女がぽつりと言った。<br><br>「知らない男性と二人きり。それに閉じ込められて。もしものことがあったらって」<br><br>「そうですよね。すみません。正直、僕も逆の立場なら少し身構えると思います。」<br><br>「謝らないでください。あなたが悪いわけじゃないですから」<br><br>彼女は続けた。<br><br>「でも、もし一人で閉じ込められてたら、もっと怖かったと思います。一人だと、余計なことばかり考えちゃうから」<br><br>「それは、お互い様かもしれません。僕も一人じゃなかったから、あんまりパニックにならずに済みました」<br><br>「ですよね」<br><br>それからは、少しずつ会話が弾んだ。仕事の話、趣味の話、どうでもいい天気の話。気づけば、最初の気まずさはどこかへ消えていた。<br><br>業者が到着したのは、それから十分後だった。ドアが開いた瞬間、思わず「助かった！」と声が出た。彼女も「ありがとうございます！」と叫んでいた。<br><br>外に出る。二人で顔を見合わせて、軽く頭を下げた。<br><br>「お騒がせしました」<br>「こちらこそ」<br><br>別れ際、彼女が振り返って言った。<br><br>「あの、もしまたこんなことがあったら――」<br>「……嫌ですね」<br>「ええ。でも、もしもの時は、またよろしくお願いしますね。次は、もっと気軽に話せると思いますから」<br><br>彼女は笑って手を振った。私も笑って手を振り返す。<br><br>それ以来、あの女性を見かけても、わざわざ避けなくなった。たまに会釈する程度だけど、それでいい。それがあの日、エレベーターの中で築いた、ちょうどいい距離感だ。<br><br><b>故障には なれど悪くない 思い出に 変わることもある エレベーターの中<br></b><br>結論。気まずい空間も、時と場合による。そして、人間は一人より二人の方が、少しだけ強くなれるらしい。</p><p name="92CF2213-4B97-484D-9DBA-94CF9809E89B" id="92CF2213-4B97-484D-9DBA-94CF9809E89B">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/nd9dd8d2cec70'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/218098635/profile_ea2449b8886d2dc3e77c9009232de1ae.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 05 Jun 2026 07:44:12 +0900</pubDate>
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    <item>
      <title>「通勤電車」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="C6BC564E-218C-48FD-90EC-082730834135" id="C6BC564E-218C-48FD-90EC-082730834135">毎朝、同じ時間の同じ電車に乗っている。<br><br>決めているわけではない。ただ、なんとなくそうなっただけだ。いつも同じ車両の、同じドアの近く。窓にもたれて、スマホを眺める。これが私の朝のルーティーン。<br><br>気づけば、周りも同じ顔ぶれだ。<br><br><b>通勤の 電車の中は 小さな社会 顔ぶれ同じ 朝の風景</b><br><br>まず、私の斜め前に立つスーツの男性。彼は毎朝、駅前のコンビニで購入したであろうおにぎりを食べている。海苔の香ばしい匂いが車内に漂う。彼はいつも次の駅で降りる。急ぎ足でホームを歩き、階段を駆け上がっていく。その背中は、いつも同じだ。<br><br>その隣に立つ女性。彼女は毎日、スマホで動画を見ている。イヤホンから漏れる音は、おそらく韓国ドラマ。時折、笑いをこらえているようで肩が震える。彼女は同じく次の駅で降りる。<br><br>そして、その空いたスペースに、誰が入ってくるのかも決まっている。<br><br>ドア近くの席に座っているおばあさん。彼女もまた次の駅で降りる。彼女が立ち上がると同時に、一人の女性がさっと移動する。黒いスーツの、髪を一つにまとめた中年女性。彼女は毎日、そのタイミングを見計らって、おばあさんの席を奪う。<br><br>まるで申し合わせたかのように、スムーズだ。<br><br><b>席の争奪戦 ルーティーンは 既に決まり 争うことなく</b><br><br>私はただそれを眺めている。毎朝、繰り返される光景。<br><br>誰もルールを破らない。誰も順番を乱さない。まるで小さな演劇のようだ。登場人物は決まっていて、役割も決まっている。<br><br>ある時、遅刻してしまい、一本遅い電車に乗った。同じ車両の同じ位置。しかし、顔ぶれが違う。<br><br>「あれ？」<br><br>おにぎりの男性はいない。韓国ドラマの女性もいない。おばあさんも、黒いスーツの女性もいない。<br><br>いつも通りの朝のはずなのに、なんだか落ち着かなかった。<br><br><b>一本 遅らせるだけで 異世界の ようで落ち着かない 慣れとは怖し<br></b><br>次の日から、私はまたいつもの時間に乗る。おにぎりの男性。韓国ドラマの女性。おばあさん。黒いスーツの女性。<br><br>「おはようございます」<br><br>心の中で、彼らに挨拶をする。声に出せないけれど、私はもう、彼らの存在を待っている。<br><br>おにぎりの男性が降りる。韓国ドラマの女性も降りる。おばあさんが立ち上がる。その隙間に、黒いスーツの女性が座る。<br><br>いつも通り。<br><br>ルーティーンは、今日も守られた。<br><br><b>知らないけれど よく知った他人たち 今日も同じ 朝を刻む 電車の中</b></p><p name="E5720701-635B-4B8F-8F11-77A1214FA307" id="E5720701-635B-4B8F-8F11-77A1214FA307">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n30308536fb2d'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/218098635/profile_ea2449b8886d2dc3e77c9009232de1ae.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 03 Jun 2026 07:02:12 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/sunset7/n/n30308536fb2d</link>
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      <title>「手紙」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="E92CC2C8-A64C-4C80-85DD-55FE588121D4" id="E92CC2C8-A64C-4C80-85DD-55FE588121D4">久しぶりに実家に帰った。<br><br>母が言う。「家の整理をしてるんだけど、あんたの物がいろいろ残ってるの。要らないなら捨てたいから、見てくれない？」<br><br>面倒だったけれど、母の手前、押入れの奥を漁る。古い教科書、使わなくなったゲームソフト、中学の時の卒業アルバム。そんな中から、一通の手紙が出てきた。<br><br><b>押入れの 奥から出てきた 封筒に 見覚えがない 差出人の名</b><br><br>差出人は、幼馴染の女性。今でも年賀状のやり取りをしている、あの子だ。でも、その手紙に全く記憶がない。<br><br>開けてみる。中に入っていたのは便箋一枚。日付は中学三年生の二月。バレンタインの時期だ。<br><br>そういえば、彼女から義理チョコをもらったことがあった気がする。その時に一緒に、この手紙も入れられていたらしい。でも、私は覚えていない。チョコは食べた記憶があるが、手紙は読まずにしまい込んだのだろう。だから今、初めて読んでいる。<br><br><b>バレンタイン 義理チョコもらい そのままに しまい込まれた 手紙を開く<br></b><br>「義理であげているんだから、勘違いすんなよ」<br><br>冒頭からこれである。<br><br>上から目線でお説教が始まる。<br><br>「来年こそはちゃんと彼女を作って、その子からもらえるように頑張るんだぞ」<br>「あなたのこういう所が悪い」<br>「こういう所が足りないからモテないんだ」<br><br>とにかく、手厳しい。ページのほとんどが、私への叱咤激励に費やされている。<br><br>正直、当時の私はどう思ったのだろう。もしこれを読んでいたら、傷ついていたかもしれない。でも、それ以上に「うるさいな」と思ったかもしれない。<br><br>いや、もしかしたら――少しだけ勇気をもらっていたのかもしれない。<br><br><b>お説教 満載の手紙 読んでいて タイムリープして 自分を抱く</b><br><br>当時、私に意中の女子がいたかどうか。いたとしても、チョコをもらえたことはない。それが現実だった。でもこの手紙を書いた幼馴染は、そんな私をからかいながらも、応援していたのだろう。<br><br>もしも今、あの中学生の私に会えるなら、こう言ってあげたい。<br><br>「未来の君は、大丈夫だよ」<br><br>そう伝えて、ぎゅっと抱きしめてあげたい。<br><br>手紙の最後の最後まで、お叱りと励ましの言葉がびっしり。私は少し切ない気持ちで読み終えた。<br><br>すると、封筒の中からもう一つ、何かが出てきた。<br><br>写真だ。<br><br>そこには、一人の少女が写っていた。中学校の体操着を着て、満面の笑顔。ピースサイン。<br><br>「……！」<br><br>私は息を飲んだ。その少女は、幼馴染ではなく――当時、私が密かに憧れていた同級生の女子だった。<br><br>幼馴染が、こっそり写真を同封してくれていたのだ。<br><br>これには参った。<br><br>「グッドジョブ」 心の中で つぶやいて 写真を見つめ 笑みがこぼれる<br><br>どうやら彼女は、ただお説教したかっただけではない。私の背中を、そっと押してくれていたのだ。<br><br>今となっては、それが何よりの励ましだった。<br><br>その写真を、そっと机の引き出しにしまった。今度こそ、なくさないように。<br><br>ありがとう。そして、少しだけ――当時の私の代わりに、言わせてほしい。<br><br>「ちゃんと、頑張ります」</p><p name="3B412496-2B5A-497A-8A39-6E8871744E69" id="3B412496-2B5A-497A-8A39-6E8871744E69">#創作大賞2026 #エッセイ部門#エッセイ #日常</p><br/><a href='https://note.com/sunset7/n/n4a03495dfea7'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>鏡野夕陽</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 01 Jun 2026 07:19:21 +0900</pubDate>
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