打球の「質」を紐解く #1打球角度
「iPhone一台で、プロレベルのトラッキングデータの計測が可能」
プロレベルの「トラッキングデータ」となると、基本的にピッチャーのほうがイメージは強いです。実際SmartScoutでもそちら側の機能をフォーカスしてしまいがちですが、バッティングにおける計測も行うことができます。
SmartScoutで計測できるバッティング指標は2つ。
・打球速度
・打球角度
少ないと思われるかもしれませんが、実際MLBではこの2つの掛け算で打球の質を評価しているように思います。
2010年代半ば、MLBを中心に「フライボール革命」という言葉が広がりました。
日本でも、「打球を上げろ」という合言葉はそれまでの「打球を転がせ!」「バットは上から下へ」という従来の指導の反動として瞬く間に浸透し、打球角度という概念は多くの打者の指標となりました。
しかし、それが「角度さえつければ結果が出る」という単純な信仰に変わったとき、革命は本来の意味を失い始めたように思います。
「打球の『質』」を前提に、今回は打球角度について解釈しなおそうと思います。
①なんで打球角度が重要なの?~セイバー的観点から
なぜ旧来の指導者は打球を転がすように指示したのか。逆になぜその反動として打球を上げることが注目されるようになったのか。
大元を辿っていけば、それは「そのためにいい結果を残す/残させるため」「いいバッターになる/育てるため」です。
では「いい結果」「いいバッター」とは何でしょうか?
「いいバッター」を例にとれば、「ヒットをたくさん打つ、打率が高いバッター」「ホームランをたくさん打てるバッター」など色々あるとは思いますが、そもそも、なぜヒット/ホームランが重要なのでしょうか…?
野球(というよりスポーツ全般)で一番求められる「いい結果」は「勝利」です。そして勝利するには、当然相手より少しでも多くの点を獲る必要があります。チームが勝利するために得点する必要がある。試合に出場しているバッターは、得点するためにそれぞれ役割を果たします。
各々のバッターが得点を創出するために、最も直接的で有効な行為は2つあります。
それが「出塁」と「長打」です。
まとめると、
最大の目的である「勝利」のために、バッターは得点を創出する必要がある。得点を創出するには、「出塁」と「長打」が重要である。
OPSを始めとするセイバーメトリクスの指標たちは、基本的にこの考えのもとに生まれています。
ではどうやって「出塁/長打」を打つのか。
それは打球の「質」を高めること。
では打球の質を高めるには?打球の質とは何か?
この文脈でようやくトラッキングデータが、特に今回は打球角度の話が出てくるわけです。
②出塁と打球角度
まず「出塁」という行為を分解してみましょう。
言うまでもなく、それはヒットを打つことと四死球で成り立ちます。
今回は「出塁」の最大要素であるヒットを打つためにはどうすればよいのか、打球角度の側面から見ていきましょう。

の相関図
こちらは打球角度と打率の相関図になります。
ご覧いただければわかる通り、10-15度近辺が最も打率が高まりやすいことが分かると思います。
巨人が打球角度14度を目指すアプローチを今年行ったことは記憶に新しいのではないでしょうか?
③長打と打球角度
「長打」を代表するものはホームランです。
その他、二塁打・三塁打も長打に含まれます。
今回はISOというセイバーメトリクスにおける指標と打球角度の相関を見ていきます。
そもそもISOって何?なぜ長打率を使わないの?と疑問に思われるかもしれません。
まずISOというのは、長打率から打率を引いた数字です。
この指標がよりそのバッターの純粋な長打力を表しているわけですが、
例
・100打数100安打、全て単打の打者A
・100打数25安打、全てホームランの打者B
この2人の長打率を計算すると、同じ10割になってしまいます。
そこで、長打率から打率を引くことで純粋なそのバッターの長打力を測ろうとするのがISOです。

の相関図
そんなISOですが。
上のグラフを見て頂ければわかる通り、打球角度25-30度のゾーンが最もISOが高まりやすいことが見て取れます。
④「打球の『質』」は複合的関係
先述の章から、ヒットになりやすい打球角度は10-15度、長打になりやすいのは25-30度となることはお分かりになったかと思います。
しかし打球角度を追い求めることだけがよいのかというと、話は変わってきます。
バレルゾーンという概念をご存じの方は多いかもしれません。
これは、簡単に言うと長打になりやすい打球速度×打球角度の組み合わせ。
そして打球速度が高まれば高まるほど、バレルに入る打球角度のゾーンは広がります。これはヒット/打率に関しても同様の傾向があります。
今回は、そもそもどうしてバッティングにおけるトラッキングデータが必要なのかをセイバーメトリクス的観点から紐解き、「いい結果を求める」ために「打球の『質』」を高めるべきという前提のもと、特に打球角度にフォーカスして記事を展開していきました。
次回は打球速度を念頭に、「打球の『質』」というものが複合的な関係、つまり掛け算であることについて触れていきます。
