「創薬ベンチャーって意外と面白い」を目指して連載を始めます
この記事は連載開始時に書いたものです。
連載後6か月後に、同じテーマで書いた記事がこちらです。→半年間、創薬スタートアップについて書いてみてわかったこととこれから|新生キャピタルパートナーズ株式会社
革新的な技術で社会に貢献する創薬ベンチャー
はじめまして。創薬ベンチャーを中心に投資を行う「新生キャピタルパートナーズ」代表の中村学といいます。
みなさん、「創薬ベンチャー」ってご存じですか?
バイオベンチャーとか、ディープテック・スタートアップとか、英語では、単にBiotechとか、関連するワードはいろいろあるのですが、薬を作って患者さんに届けようとしているベンチャー企業を創薬ベンチャーといいます。
そもそも、大昔は、切り傷にアロエを塗ったり、ショウガで体を温めたり、はちみつを抗菌薬として使ったり、植物、鉱物、動物など天然のもので病気に効くものが薬として使われていました。
それが、科学技術の発展によって、病気の仕組みがどんどんわかってきて、病気を治す物質も化学的に作ることができるようになって、たくさんの薬ができるようになってきています。
1800年代からは、薬を大量生産して多くの人々に届ける「製薬会社」が登場しはじめました。1876年に設立されたイーライリリーは、現在では時価総額100兆円以上に成長しています。
日本でも1943年に設立された中外製薬は12兆円の時価総額、武田薬品工業は7兆円の時価総額と、日本企業の時価総額ランキングの上位に製薬会社がランクインしています。
1980年代からは、製薬会社に加えて新しい医薬品を開発する創薬ベンチャーが米国で登場しはじめました。それ以降、成功する創薬ベンチャーが増えてきて、2000年代に入ると、医薬品を生み出すキープレイヤーは創薬ベンチャーだと言われるまでになっています。
しかし、こうした革新的な薬づくりには、気の遠くなるような時間と莫大な資金が必要です。その挑戦を支え、未来への可能性を見出す投資家の存在が欠かせません。
病のない明日を全ての人に。創薬ベンチャーと実現したい未来
私は、これまで創薬以外もインターネット関連などさまざまなベンチャー企業に投資をしてきました。上場した投資先も多いのですが、なかなか海外展開となると言葉の壁もあり、成功しているところは多くありません。
その点、創薬ベンチャーは、他の産業よりも容易に国境を超えることができます。それに、日本の創薬シーズはグローバルでも高い評価を受けています。
創薬エコシステムはまだまだ未成熟ですが、多くの人々が創薬エコシステムの成熟化に努めていて、今後、環境がもっと良くなってくると思います。
そうなれば、グローバルで戦える創薬ベンチャーが生まれて、さらに多くの人々が創薬ベンチャーに関与するようになって、また、次の成功者が出て、次々にこれまでに治療法のなかった病で苦しんでいる人が救われていくような未来が実現することを願っています。
創薬ベンチャーに関わる数多くの人々から「自分が携わった研究、自社が開発した薬を多くの人に届けたい」という言葉を聞きました。
「bench to bedside」(基礎研究がおこなわれている実験室から患者さんのいるベッドサイドへ)という言葉がありますが、実験室で行われている研究を患者さんの元に届けようと思って努力しているすべての人を応援したいと思います。
なぜ、文系出身の金融マンが創薬のベンチャー投資をしているのか
私の父は大学の理系の先生でした。毎日、遅くまで研究室にいて帰りは遅く、土日も実験をするために大学にいっていました。子供のころ一緒に遊んでもらった思い出は、ほとんど、ありません。
それでも、母親からは、「お父さんは世の中をよくするために、一生懸命研究しているんだ。」と聞かされていたので、知らないうちに尊敬する人は父、なりたい職業は研究者になっていました。
「将来は父のような研究者になりたい」と夢見ていましたが、中学から進学校に入学、周りの人の勉強熱心さと頭の良さに研究者の道は諦め、文系に進み、金融マンになりました。
金融マンとして、「いかにお金を稼ぐか?」を考えて仕事をしてきたのですが、50も超えて老い先短くなってきたので、自分のスキルや経験で研究者の方々の地位向上に貢献したいと思います。
また、私は、中高時代は部活に熱中していて授業中は寝てばかりで、試験前によくノートを借りていました。親切にノートを貸してくれたのは、医学部志望や「京大にいってノーベル賞を取るんだ!」といった理系のまじめで優秀な同級生でした。
私が創薬分野に投資をして成功事例を作ることができれば、結果として研究者の地位向上に貢献して、間接的にその人たちへの恩返しになるんじゃないかなと思ったりもしています。
この連載で伝えたいこと
創薬ベンチャーに少し興味はあるものの、難しそうとこれまで敬遠していた人が、このnoteを読んで、「創薬ベンチャーって、とっつきにくそうだと思っていたけど、意外とおもしろそう」と思ってもらえるようなnoteを書いていきたいと思います。
みなさん、多かれ少なかれ病気になったことはあると思いますし、年を重ねていくと、周りの人の病気の話も増えてくると思います。薬は病気と紐づいています。このnoteを読んで、人に話したくなるような薬の話が見つけられるかもしれません。
ベンチャーには興味があるものの、創薬ベンチャーについてはあまり知らないという人には、他の業界のベンチャーと創薬ベンチャーがどう違うかもお伝えしていきたいと思います。
私は、オールドエコノミーのベンチャー、ITベンチャーなど、時代によって移り変わってきたさまざまなベンチャーへ投資をしてきました。他の業界と創薬ベンチャーがどう違うのか、感じるところをお伝えできると思います。
「創薬×金融」も一つの大きなテーマです。ファイナンスには興味があるが創薬ベンチャーはあまり知らない、という人も興味を持てるような、金融面から創薬ベンチャーのビジネスモデル、株式市場での評価、M&Aの事例紹介、キャッシュフローなど分析してみたいと思います。
もちろん、創薬ベンチャーの経営者や社員のみなさん、大学や研究所の研究者のみなさん、患者さんを治療されている医師のみなさん、医薬品開発や医薬品販売にかかるすべてのみなさん、薬学部や化学を学ぶ学生のみなさんなど、創薬ベンチャーに関わるステークホルダーの方々にも、「金融やビジネスの切り口で創薬ベンチャーをみるとこういう風に見えるんだ」と感じていただけるとうれしく思います。
日本の創薬ベンチャーが発展していくには、どうしたらいいのか、米国のように大きなバイオテック企業に成長できるのか?noteを通じて、みなさんに創薬ベンチャーの話を伝えていく中で、我々も答えを見つけていきたいと思っています。
これから、どうぞよろしくお願いします!
これから1年間、以下の3人で、毎月、2つのnoteを書いていきます。
栗原哲也
元製薬会社、元新生キャピタルパートナーズで、今はベンチャーなどを立ち上げるアントレプレナー。胃腸が弱く、生物学の道に入った。2023年に『創薬の課題と未来を考える バイオベンチャーがこれから成長するために必要な8つの話』(PHPエディターズ・グループ)を執筆。
note https://note.com/new_life_science/
藤波亮
新生キャピタルパートナーズ パートナー。医者、歯医者の家系の関西人。製薬会社からベンチャー投資へ。ミラバイオロジクス株式会社、ルクサナ・バイオテク株式会社の社外取締役
中村学
新生キャピタルパートナーズ マネージングパートナー。株式会社FREST、Chordia Therapeutics株式会社、Alphanavi Pharma株式会社の社外取締役
どうぞよろしくお願いします!
編集協力/コルクラボギルド(金子千鶴代・頼母木俊輔)
