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創薬ベンチャーのパートナリングは世界市場で評価されて決まる

BIO-Europeの展示会ブース

投資先の創薬ベンチャーのパートナー探しのため、2025年11月3日から5日にオーストリア・ウィーンで開催されたBIO-Europeに参加してきました。

創薬カンファレンスの全体像、BIO-Europeについて、ウィーンでの現地レポート、創薬ベンチャーのパートナリングのリアルについてお伝えしたいと思います。


中村学
新生キャピタルパートナーズ マネージングパートナー
株式会社FREST、Chordia Therapeutics株式会社、Alphanavi Pharma株式会社の社外取締役

創薬ベンチャーのグローバル・カンファレンスとは

創薬関連のグローバルなカンファレンスは、①学会関連と②パートナリングイベント関連に大別されます。

学会関連は、医師・研究者が学術・臨床情報の取得を目的に参加するカンファレンスで、4万人が参加するといわれる癌領域の学会であるAmerican Society of Clinical Oncology (ASCO) Annual Meetingなどがあります。
 
②のパートナー探し、いわゆるパートナリングを目的とした大規模なカンファレンスとしては、BIO International、BIO-Europe に加え、毎年1月に行われる BIO Partnering @ JPM の3つが代表的なイベントです。BIO Internationalについては、こちらのnoteもご参照ください。

毎年1月にサンフランシスコでJPモルガンが開催するJ.P. Morgan Healthcare Conferenceは、大手製薬会社、大手バイオテック、創薬ベンチャー、機関投資家、VCなどが一堂に会する招待制のカンファレンスです。このイベントのために、創薬関連のキーパーソンや経営幹部がサンフランシスコに集まります。

この週はJPモルガンウィークと呼ばれ、サテライトイベントとして、BIO Partnering、Biotech Showcase(ピッチイベント)、RESI JPM(投資イベント)など数多くのイベントが開催され、さらに多くの関係者が集まります。

サンフランシスコ中心部のほぼすべての大規模ホテルでは、創薬関連のレセプションやミーティングが行われます。
 
創薬ベンチャーのパートナリングの観点からは、
 
BIOインターナショナルで初めて面談
→webで面談を重ねる
→サンフランシスコでチームで直接面談
→契約締結
 
というのが1つの成功パターンです。
 
日本のVC関係者は、この3つのカンファレンスだと、サンフランシスコ>BIO International>BIO-Europeの順番に参加者が多い印象です。

約3,000社が参加するBIO-Europe

BIO-Europeは、春(3月)と秋(11月)にヨーロッパ各地で開催されます。

開催される都市は、春はバルセロナ、ウィーン、アムステルダムなどヨーロッパ主要都市、秋は、昨年のスウェーデンのストックホルムのほかは、ミュンヘン、ベルリン、ケルンなどドイツ語圏の都市がほとんどです。
 
春よりも秋のほうが大規模になのですが、秋の開催地が主にドイツの都市なのは、ドイツが欧州最大の医薬品・バイオクラスターであること、運営会社であるEBDグループがドイツの会社であること、ドイツは大規模な展示場が多いことなどが理由です。
 
今回のBIO-Europeは、以下の通り、開催されました。
 
11月3日から5日までの3日間
参加企業数約3,000社
参加者約6,000人
面談件数 3万件超(6月のボストンのBIO Internationalのほぼ半分)
 
3,000社の参加企業の内訳は、以下の通りです。
 
創薬ベンチャー/バイオテック 40%
製薬会社 20%
CROなど創薬支援会社 25%
投資家 10%
その他 5%
 
パイプラインや技術を導入したいと考えているのは製薬会社(20%)や資金力のある創薬ベンチャー/バイオテックの一部(40%の一部)、導出したいと考えているのは、創薬ベンチャー/バイオテックの大部分(40%の大部分)です。
 
したがって、今回のBIO-Europeでは、
 
買い手(導入したいプレイヤー)< 売り手(導出したいプレイヤー)
 
で買い手市場になっています。

ウィーンに到着

羽田空港から直行便で14時間。日曜日の早朝6時にウィーン国際空港に到着しました。気温は、最高気温13度、最低気温7度と日本と比べて3-5度低く、1か月ほど季節が進んだ感じで、スーツだけでは寒くコートは必須です。

空港到着後、鉄道を使って20分ほどで市内に移動。地下鉄の駅を出ると、シュテファン大聖堂の鐘が鳴り響いていました。

ウィーンの中心にあるシュテファン大聖堂

ホテルに向かい、荷物を預けて投資先の社長と打ち合わせをしようと場所を探すも、日曜日の早朝はどこも空いていません。ヨーロッパ全体に共通する『日曜休業(Sunday closing laws)』の影響で、ほとんどの店舗が閉まっていました。
 
ネットで探していると、ザッハトルテで有名なザッハー・カフェが朝の7時から空いていることを発見。早速、移動します。

店内は朝の7時過ぎというのに、ほぼ満員でほとんどのお客さんが日本人でした。多くは女性一人や男女数名のグループだったので、BIO-Europe参加者というよりはヨーロッパ旅行でウィーンに来た方のようでした。

ザッハトルテ

せっかくなので、ザッハトルテとコーヒーを注文。ザッハトルテとは、「ザッハー氏のケーキ」で、チョコレートスポンジ、アプリコットジャム、チョコレートコーティングで構成されています。

横に添えられているのはメレンゲです。このケーキ本体はかなり甘みが強いので、比較的甘さ控えめのメレンゲと一緒に食べることによってちょうどよい甘さになります。
 
我々以外の日本人のお客さんは、ザッハトルテを食べて、結構早めに出て行かれるのですが、我々の目的はビジネスミーティング。

白髪交じりのおじさん2人は、ザッハトルテを前に、ノートPCを開いて翌日以降のミーティング先の情報共有やプレゼンするストーリーの確認など長時間滞在させていただきました。

ウィーンの街並み

ウィーンは、オーストリアの首都で人口200万人の都市です。言語はドイツ語で、音楽の都、治安も非常によく、美しい街並みの都市です。まさに音楽の街といった印象で、街のそこかしこで楽器を弾く人、オペラを歌う人が見られました。

バイオリンを弾く人
オペラを歌う人
アコーディオンを弾く人

BIO-Europeの会場へ

BIO-Europeの会場に向かいます。
 
ウィーンは、コンパクトな上に、地下鉄、トラムなど鉄道網が整備されていて治安もいいので、どこでも公共交通機関で移動できます。
 
ホテルから地下鉄の駅に向かいます。

地下鉄の入り口
地下鉄の乗換駅

乗り換えて会場近くの駅に到着。ウィーン市内の地下鉄は、どこまで乗っても同じ料金で改札もありません。時々、車内でチケットチェックの人が来て、チケットを持っていない場合は罰金(105ユーロ)を払うというシステム。

会場のコンベンションセンター

会場内には、2つの講演会場や展示場もありますが、メインは1,200のブースがあるパートナリング会場です。


パートナリング会場の入り口です
展示もあります
ラブブもいます

パートナリングの仕組みはBIO Internationalとほぼ同じです。事前にネット上のマッチングシステムで面談のアレンジを行い、マッチングが成立した時間に指定された番号のブースに向かいます。

面談時間は30分。最初の10分程度で、スモールトークと自己紹介+会社のプレゼン(ノートPCで10枚弱のスライドを利用)、残り20分弱でディスカッションとネクストステップの確認を行います。

面談ブースが続きます
面談ブースはBIO Internationalとほぼ同じ

ヨーロッパの大手製薬会社、米国の大手製薬会社のヨーロッパチーム、ヨーロッパの中堅製薬や創薬ベンチャーなどがきてるほか、米国の創薬ベンチャーも来ていました。

ランチ会場
ビュッフェ形式です
この日の私のランチ

オーストリア料理は、肉(カツレツ、ゆで肉、加工肉)、ジャガイモ、甘いデザート推しで、葉物野菜などはほとんど見かけませんでした。
 
BIO Internationalと同様、BIO-Europeでもミーティング終了後は、製薬会社などのレセプション、ジャパン・ナイト、コリア・ナイトなど様々な催しがあります。特に、コリア・ナイトはアジア以外の世界各国からも数多くの人が参加していました。

ジャパン・ナイト
コリア・ナイト

創薬ベンチャーのパートナリングについて思うこと

私は1990年代に2年ほど長銀(現在のSBI新生銀行)のM&Aチームに所属していました。

M&Aの世界では、買い手は自らの買収ニーズを比較的オープンにする一方、売り手は売却の意向をなかなか表に出しません。そのため、「いかに良質な売り情報をつかむか」が成功の鍵でした。
 
一方、創薬の世界では構造が少し異なります。
 
まず「売り手」である創薬ベンチャーは、自らのパイプラインや技術を戦略的に製薬会社へバトンとして渡したいという意図は明確です。
 
そして「買い手」である製薬会社や大手バイオテックも、導入・買収ニーズを公開しながらパートナーを探します。
 
こうした背景から、創薬のパートナリング市場は、通常のM&Aよりも売り手・買い手のニーズがオープンに共有されやすく、情報の非対称性が小さいという特徴があります。

その結果、良い技術やパイプラインはそのまま評価されやすいという性質がある一方で、技術の良し悪しよりも、わかりやすい開発ステージなどが重視される傾向があります。
 
また、評価されるかどうかは技術そのものの優劣だけでは決まりません。製薬会社のポートフォリオ戦略との整合性、疾患領域や作用機序のフィット感、既存パイプラインとのシナジーなど、買い手が「なぜこの技術が欲しいのか」を説明できる状態を作っていくことが必要だと感じます。
 
今回も、6月のボストンと同様に、投資先である創薬ベンチャーのBD(Business Development:パートナー探索)活動の一環としてBIO-Europeに参加しました。

ベンチャーキャピタルとして参加する場合、多くの創薬ベンチャーから面談申し込みが届き、そこから投資候補になりそうな先と順次会っていきます。しかし創薬ベンチャー側としては、数多くの企業に申し込んでも、実際に面談まで進めるのは1割程度です。
 
今回のウィーンでも、なかなかアポイントが増えず冷や汗をかいたり、期待して臨んだ面談でニーズが合わなかったりする場面もありました。「ベンチャーは断られるのが仕事」と頭では理解していても、実際には落ち込むことも多いものです。
 
それでも「次行きましょう!」と前を向く投資先の社長の背中に、何度救われたかわかりません。創薬というビジネスは、不確実性が高く、結果がでるまでに長い期間がかかります。

こうした世界でやっていくには、「何をやるか」だけでなく、「誰とやるか」がとても重要なんだなと改めて強く感じたウィーン出張でした。


編集協力/コルクラボギルド(金子千鶴代・頼母木俊輔)

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