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【「挑む」軽量級食品スーパーと「迫る」食品強化型ドラッグストア】食品スーパーの歴史と曲がり角に差しかかった現況

いよいよ流通業界の再編が始まった。大手チェーン、長い間、時代をつくってきた総合スーパー(GMS)が新興勢力に取って代わられ、またローカル中心に食品主体のスーパーマーケット(SM)が買収される例も多くなっている。食品分野を主戦場にした栄枯盛衰に、ドラッグストア(DgS)はどんな影響を与えていくのか。

経済産業省の最新の2024年商業動態統計によればDgSにおける食品の売上構成比は33%超、3分の1に達する。食分野の“主役”であったGMS、SMなどの“スーパー”勢力の隆盛の歴史と、衰退しつつある現状を公的数値、協会団体の統計などを用い解き明かしていく。
(エイジスリテイルサポート研究所 所長 三浦 美浩)


部門や品揃え、投資、人手 「足し算」続けたSMの歴史

▲[図表1]2024年スーパーの類型別店舗数

全国スーパーマーケット協会が公表した最新の『2025年版スーパーマーケット白書』(以下『白書』)によれば、2024年の食料品を扱うSMは全国に2万3,039店舗、企業数は856社で総販売額25.4兆円、総従業員数は109万人である(図表1)。

売上規模はDgSの8.9兆円(総店舗数1万9,664店舗)、コンビニの12.2兆円(5万5,988店舗)よりも大きい(経済産業省「商業動態統計」2024年)。SMはDgSの販売額の2.9倍、まさに食品を中心に扱う“最大フォーマット”である。

SMの多くは戦前からの青果商、鮮魚商、精肉商、乾物商などの「業種店」が出発点で経営の特徴は“軽投資・低価格・高回転”だ。店は数坪で戸板一枚を売場にしレジもなく、金銭は吊り下げたかごでのやりとりだった。冷蔵設備もなく低価格で当日売り切り、売り切れごめんのため、当然に商品回転率は高かった。

戦後の1953年、アメリカのPX(軍の購買部)を参考に、紀ノ國屋がはじめてレジスターを導入したSMを開店、さらに1957年から始まった主婦の店運動で各地にSMが広がった。そのSMの歴史は、かつての業種店の“不”を解消する取組みだ。

①部門を加え続けて総合化

SMになると専業の業種店から加工食品、菓子、雑貨などを加えた総合型へと転化した。1990年代に入ると即食商品へのニーズが高まり、店の側も高い値入れ率が確保できる総菜部門の強化を進めた。

②セルフサービス方式を採用

業種店の対面販売では商品は店の側が選ぶので、例えば精肉なら脂や筋が思った以上に多いケースもある。しかしセルフサービスではお客は希望の品質の商品を、欲しい量だけ、欲しい価格で買うことができた。

精肉は薄切り加工され個々に包装、計量、値付けされたリテールパックで陳列、価格も明示されていて買う自由も、買わない自由も保証される。

③衛生管理と鮮度管理を徹底

衛生管理のために売場と後方に冷蔵設備が設置された。市場仕入れでコールドチェーンが未確立だった青果は低温で加湿して蘇生を実施、鮮魚は品温を下げ鮮度を維持する冷塩水処理で衛生管理と鮮度維持を進めた。

④インストア加工とカンバン方式、SKUを拡大

生鮮部門はインストア加工と“カンバン方式”で運営。スタッフは店頭に商品がなくなりそうになれば随時、後方で製造し品切れをなくした。1尾単位で売っていた鮮魚は家族の人数に合わせて“2切れ・3切れ入り”のパックで買えるよう多くのSKU(最小単位)が製造され、水道光熱費もトレーなど包材代も当然に増えていった。

⑤多品目品揃えと少量・多頻度の配送、品出し

加工食品などは多い品目で顧客ニーズに応える品揃えを目指した。結果として配送は少量・多頻度になり、店内作業も品切れを防ぐよう少量・多頻度の品出しとなった。

⑥決済方法多様化、ポイントカード

クレジットカードなどが広く普及すると、お客の決済方法の多様化が進められた。販促手段として新聞折り込みチラシに加えて、ポイントカードも導入された。こうして業種店から近代化、現代化しSMは革新を続けた。店は新しい価値を提供し続け、お客はこうした提供された付加価値を当たり前に受け入れてきたのである。

この革新は、経営的には人手、設備、手段の“足し算の歴史”であった。設備に投資、人手を加えることで当然にコストは上昇し“安く売ることが難しく”なり、結果として商品回転率は低下していった。“軽投資・低価格・高回転”が出発点だったスーパーは付加価値を高め続けたことで“高投資・中程度の価格・中回転”の商売へと転化していったのである。

投資、人手がかさむスーパー クレジットなどで資金繰り

“足し算型の歴史”の結果としてSMの経営構造はどうなっているのか。SMの最大手・ライフコーポレーション(ライフ)の決算数値と、DgSのウエルシアホールディングス(ウエルシア)の対比で確認する。業態が異なり利益構造も異なるので、チェーンストアの経営分析の原則どおり、1店舗、1坪、1人当りなど“単位当りの数値”で検証する。

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