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ある一時期における週刊少年ジャンプの主人公像の変遷 あるいは「ワールドトリガー」の推薦文

X上で「僕のヒーローアカデミア」の主人公像についての議論がもりあがりました。それを読んで「これはワールドトリガーを薦めるしかない」と思い、ある時期の週刊少年ジャンプの主人公像の変遷の覚書とともにまとめておきます。


私は週刊少年ジャンプの冒険物語における主人公像は「ONEPIECE」を境に分けられるのではという仮説を持っています。もちろん創刊からのすべての作品を熟読しているわけではないのでまだ仮説で、みなさんのご意見もお伺いしたいのですが、分けるポイントは「主人公たる力=パワーをいかにして手に入れるか」にあります。


もちろんほぼすべての主人公が「努力」していることは大前提として、その設定された社会、世界を勝ち抜きヒーローになるためのパワーを「血筋から得たか」「血筋以外から得たか」に分けられます。

「ドラゴンボール」の孫悟空、「幽遊白書」の浦飯幽助、「NARUTO」のうずまきナルトなどが血筋系です。「北斗の拳」は北斗神拳の「後継者」という位置づけです。「ドラゴンクエストーダイの大冒険」のダイも血筋系です。

これが1997年に「ONEPIECE」の連載が始まったとき、主人公のモンキー・D・ルフィは当初血筋がなく、悪魔の実という外部の力で主人公たるパワーの元を手に入れます。これが「パワーを外部から得られるとは努力が足りない」とも指摘されました。(ただし物語の進展で、「Dの意思」という血筋が示唆されるのでハイブリッド型に。血筋型はあとから「実は」と加えることが可能なのが強い)

実は「ONEPIECE」の成功後、一時期週刊少年ジャンプでは「主人公が偶然外から超自然的な力を手に入れ、社会や世界を救う存在になる」という物語がぽつぽつと生まれてきます。「BLEACH」や「家庭教師ヒットマンREBORN!」もこの系譜。(のちに血筋系へ)

さらに主人公に「持たざる者」という要素が加わるのが「僕のヒーローアカデミア」です。

実は、ヒロアカの連載が始まった2014年に「ハイファクラスタ」という漫画の連載が始まりました。私はすごく個人的に好きで楽しく読んでいました。2045年の東京を舞台にしたSFで、才能がアプリ化され、ダウンロードが可能になった近未来で、一切その才能が適合せずに落ちこぼれだった少年が主人公です。


ちなみにその前年の2013年には「ワールドトリガー」の週刊少年ジャンプでの連載開始。あえてまとめるとほぼ同時期に「持たざる少年」の物語が立ち上がっていたわけです。2015年には同じく「持たざる少年」のアスタが主人公の「ブラッククローバー」が始まります。

私は「文化は時代を映す鏡」という説にはあまり与しないのですが、カルチャーの中でも漫画、特に週刊少年ジャンプの掲載作品はある程度読者の共感を得なければ続かないという点で、ある程度時代の求めるキャラクター像を感じ取れるのではないかという仮説を持っています。

その点から、このONEPIECEの「国民的漫画化」とその後のフォロワーから、一部では「週刊少年ジャンプは”持たざる者”の成長譚が増えている」とも指摘されました。

※なおこれはちょうど2011年の東日本大震災後で「人間は自然の力には勝てないという無力感が『若者』の間で広がり、漫画のキャラクターも努力型ではなく才能を外部から与えられるタイプが増えた」とう言説もあったのですが、それは違うだろう?と思っていました。


ただ、ヒロアカの緑谷出久が精神の力の強さを見込まれてパワーを得たように、この「持たざる者」は物語の途中でどうしても物語全体の冒険譚や主人公の思いを実現するための力を手に入れていくことになります。(とはいえヒロアカは最後、緑谷出久が得た力を消失し、最終的に財力と経験だけでヒーローをやることになったの、力は泡沫の夢になりましたが)

ブラッククローバーのアスタも力を手に入れすっかり「主人公」になりました。

そこで「ワールドトリガー」(WT)の三雲修ですよ。


WTは公式には三雲修、空閑遊真、雨取千佳、迅悠一という4人の主人公が設定されています。ただ第一話のサブタイトルは「三雲修」です。

でこの三雲修はほぼ同期といえる緑谷出久やアスタ、ハイファクラスタのペーたと比べて本当に作中における「能力がない」の描き方がいい意味ですごい。まずポテンシャルがなさ過ぎてWT作中の戦力である防衛組織ボーダーに正式ルートでは入れてもらえない。(このあたりはオールマイトにヒーローたるポテンシャルを認められた緑谷出久よりもさらに厳しい環境に置かれていた)

さすがにボーダー所属後、師匠を得て緑谷出久やアスタのように作中における超自然的力を入手できるのかと思っていたらできない。本当に何も与えられない。むしろその役割は空閑遊真や雨取千佳に振られており、2人はボーダーに所属することでポテンシャルを開化させていく。

ただ三雲修が「成長」しないのかといわれるとそれも違う。散々X上などでファンが主張しているのですが頭脳戦含め戦術・戦略では作中でもぴか一の才能を発揮していく。これは本当です。あとルールをかいくぐったり心理戦は得意。でもそれは先天的な力というよりは学習で身につけることが可能なもの。(とはいえ15歳の三雲修が身につけるものではない)

私は正直、そこが面白くて読み続けていられる(後世界観の設定の開示が楽しい)のだが、たぶん週刊少年ジャンプでは連載競争を勝ち抜けなかっただろう。体調の問題もあるとはいえ「SQ」に移れたのはファンにとっても幸運だったと考えている。


ということで血筋とか超自然力とかに頼らず勝ち抜くキャラクターが好きな人はワールドトリガーを読もう。アニメもあります!


4/1追加

私はいま週刊少年ジャンプを本誌で読んでいるのですが、冒険譚・アドベンチャー物語が始まるたびに「血筋系か否か」をチェックしています。ジャンプ以外はフォローしきれていないのですが、週刊少年ジャンプはとにかく「ヒーローが実は勇者の血を引いていた」という血筋重視、血族系が一時期まで好きでした。

系譜はまだ遡れていないのですが、前述のように「北斗の拳」は北斗神拳の後継者が主人公。「聖闘士星矢」も原作ではみな異母兄弟なので血族の物語を分類しています。その最たるものが「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズです。

前述の「ドラゴンボール」もそうですし、「DRAGON QUEST -ダイの大冒険-」や「NARUTO」も同様。「幽☆遊☆白書」や「HUNTER×HUNTER」もそう。もちろんこれらの作品に「その世界の一般人代表」が出てこないわけではなく、主人公のそばに常にいるキャラクターとして登場します。

これはファンタジー物語を作る上で「主人公を主人公たらしめるほかと卓越したパワーをどのように説明するか」と考えたとき、「特殊な家系に生まれたから」としたほうがわかりやすいのだろうなと思います。(もちろんみな、それなりにトレーニングをしなくてはいけない)

私は別に説得力があればどのような設定でも楽しいし、若い頃は楽しんでいたのですが、ファンタジー物語をいろいろ読みすぎていると力の理由を血筋や血族に帰結させるのはよほどうまくやらないと物語に入り込めないというか冷めてしまうようになりました。これは読み過ぎたのと年をとったからなので、きっと若い人には血筋系は楽しいのだと思います。

もちろんこの「血筋」「天賦の才系」とは別ルートを行く作品もあります。「魁!!男塾」のキャラクターたちはみな別に著名人の血筋でなくても強いですし、「銀魂」も結局主人公の強さの理由は明らかにならずに連載終わりました。ヒロアカも血筋ではなくヒットさせて終わったので血筋系は後退するのかなと思っていたところに「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」です。呪術とかなのでやっぱり血筋と相性がいいのだなと思いました。鬼滅の刃はアウトサイダーの成り上がりと、代々の家業のいいとこ取りをしたと思っています。





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