都市の中でも農と親しむ体験を残していきたい|神奈川県・野菜だいすきファーム 松下さん LFC ファーマー紹介
堆肥が完成しても、畑がなかったりプランターだけでは使いきれなかったり、ご自宅に使いきれない堆肥はありませんか?お手元にある堆肥を農家さんに送って野菜を育ててもらい、できた野菜が食卓に届くという栄養循環の仕組みが「My LFC ファーマー」です。
今回ご紹介するLFC ファーマーは「野菜だいすきファーム」さん。神奈川県川崎市で2008年から農地を借り、有志のメンバーで農薬を使わない野菜づくりを行っています。
そんな「野菜だいすきファーム」代表の松下長子(まつしたながこ)さんに、野菜づくりのお話を聞きました。

農家さんから自由にしていいと言われた農地で
ー松下さんが野菜づくりを始めたきっかけを教えてください。
私は長野県と新潟県の県境の、農が身近にある環境で育ちました。東京に出てきて都会での暮らしが長くなるにつれて、都市のなかでも野菜を作ったり農と親しむ機会があったらいいなと考えるようになりました。
野菜を購入していた生協が企画していた、農家さんと買い手である私たちが交流するイベントへの参加をきっかけに、農家さんのところへお手伝いに行くようになりました。その後、自由に使っていいという場所を5〜6人のグループで借り受けることになったのが2008年ごろのこと。今はもう一つ農地を借りて、二つの場所で仲間たちと野菜づくりを行っています。それ以来、失敗しながらではありますが、野菜のことを勉強したり技術を身につけたり、数年かけて作りたいものを一通り作れるようになりました。
私には3人の子どもがいて、末っ子はジャガイモが好きなんです。うちの畑で採れたジャガイモを夕食に出した時、「買ってきたジャガイモよりもおいしい」と言ってくれたことがあって、少し自信がつきました。家族はお世辞を言わないですからね(笑)。気付けば15年以上野菜づくりを続けています。

ーLFCコンポストとはどういったご縁で知り合ったのでしょうか。
畑を借りた時、メンバーの希望もあって無農薬で野菜を育てることに決めました。当初は鶏ふんや牛ふん堆肥を購入して使っていましたが、とあるご縁で知ったのが、NPO法人循環生活研究所(※LFCコンポストの前身)のダンボールコンポストでした。
環境問題にもアプローチできることに加えて、生ごみ堆肥は地域とつながるきっかけになるし、何より堆肥を自分たちで作ることができる点も魅力に感じました。初めから上手くできたわけではないですが、作っているうちにだんだんと生ごみ堆肥づくりも上手になってきたかなと思います。ダンボールコンポストを続けていたご縁で、My LFCファーマーの取り組みに声をかけていただきました。
昨年、LFCコンポスト設立5周年のイベントで福岡に招かれ、LFCコンポストのオフィスと畑を見せてもらう機会がありました。本当に何でも堆肥にできるんだなと学んで、有機堆肥をもうちょっと突き詰めていきたいなと今は思っています。奥が深いし、面白いですよね。

My LFC ファーマーを入り口に、農に触れてもらえたら
ーLFCファーマーになって、印象的なエピソードはありますか。
たくさんの生ごみを入れたんだなとか、丁寧に愛おしんで作られたんだなとか、送っていただいた堆肥からは不思議と人柄が伝わってきます。以前、黒くてずっしりと重みがあって理想的な堆肥を送っていただいたことがありました。それは全部使ってしまわずに少し取ってあって、畑に来ていただいた方に堆肥のお手本としてお見せしたりしています。
農薬を使っていないので、野菜の食べられるところは全部食べてもらえたらと思って、大根やカブも葉つきで送っています。皆さんの反応をハガキで知れることも嬉しいですし、LFCファーマーのご縁でつながった方が畑にお手伝いに来てくださっていたりしているんですよ。

ーそういったご縁につながっていると聞いて、私たちも嬉しいです。「野菜だいすきファーム」さんが大切にしていることは何ですか。
今はメンバーが9人います。メンバーとは定期的なミーティングもしていて、それぞれが野菜だいすきファームの全体を把握していることも心強いですね。ほかにも、農ボランティアとして、東京都や川崎市にお住まいの方がお手伝いに来てくださっています。
大切にしているのは、みんなが楽しめることとコミュニティであること。楽しむという点では、メンバーがやりたいと思うことを実践できたり、畑で一緒にお茶を飲みながらお話する時間を意識して作っています。コミュニティとしては色々な人を受け入れられる団体でありたいなと思っています。
最近では、川崎市の緑化プロジェクトの一環で、高津区にある橘公園で木枠プランターで野菜を育てる活動をしています。ここは、町で暮らす人たちが何気なく循環の仕組みに触れられる場所だと捉えています。そういった活動が、川崎という一つの都市のなかに畑を残すことにつながっていったらいいなと思っています。

ーありがとうございます。最後に、LFCコンポストのユーザーさんへメッセージをお願いします。
近年の天候は、長く野菜を作っているプロの農家さんたちでも野菜づくりができないほど、厳しさを増しています。私たちも、LFCファーマーとしてお送りする野菜セットのために5〜6種類の野菜を同じ時期に収穫すること自体がとても難しくなっていて、苗を植える時期、種をまく時期にも頭を悩ませています。
野菜の値段が上がっていても、作り手である農家の儲けになっているわけではないんですよね。少し値段が上がっても野菜を手に取ったり、農に関するイベントに参加することで作り手と時間を共有する機会を持ってもらえたら嬉しいですね。

売られているものを買うことから一歩進んで、プランターで野菜を育ててみることもおすすめしたいです。失敗からも学ぶことがありますし、逆にたくさん収穫できたら食べ方を工夫したり、見た目が悪くても愛おしんで食べたり、食に対する感じ方や当たり前だと思っていたことの見え方が変わる貴重な体験だと思います。
そうやって食のこれからを考えていく人が増えたり、日本の農業を残していきたいという気持ちで農家さんを応援する人が増えてくれたら嬉しいなと思っています。

My LFC ファーマーとは

「My LFCファーマー」とは、LFCコンポストのユーザーの皆さまのご自宅にある堆肥を、連携先の農家さんのもとへ送り、育ててもらった野菜が食卓に届く仕組みです。半径2kmの循環を全国に広げるまでのプロジェクトとして用意しているこの仕組みによって、自宅や近隣で堆肥を活用できない方も、堆肥で育った野菜をおいしく食べる循環生活の実践ができます。
栄養循環の連携先である「LFCファーマー」は、LFCコンポストの取り組みに共感し、無農薬で大切に野菜を育てている全国の農家さん。近くに畑がない方、回収会にはなかなか参加できない方はぜひ、農家さんとつながり堆肥で育った栄養満点のおいしい野菜たちをぜひ味わってみてください。
一定期間、堆肥を送る「半年コース」「年間コース」のほか、1回参加の「体験コース」もあります。現在募集中のMy LFCファーマーはこちらから。
