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なぜDifyで「全国公益AIナビ」を開発したのか ── データから見えた顧客ニーズとAIの可能性


顧客が本当に求めていたものは何か

私たちは長年、公益法人向けの相談サービスを提供してきました。事務局担当者の目線に寄り添った課題解決への提案力こそが、サービスの価値だと信じていました。

しかし、社内のデータドリブン委員会による調査で、意外な事実が明らかになりました。公益法人向け相談サービスのNPS(顧客推奨度)を分析したところ、最も相関関係が強かったのは「回答の早さ」だったのです。

顧客が本当に求めていたのは、寄り添った回答よりも、まず「早く答えが欲しい」ということ。この発見は、私たちのサービス観を大きく変えるきっかけとなりました。

AIの可能性への気づき

Windows95開発者として知られる中島聡さんのメルマガ「週刊 Life is beautiful」を購読していた私は、早い段階からAIの有用性に注目していました。すでに社内では業務効率化のためにChatGPTやGeminiなどのAIを導入しており、そのノウハウが蓄積されていました。

「このAI活用のノウハウを、相談サービスの回答スピード向上に活かせるのではないか」データから見えた顧客ニーズと、AIという新しい技術。この2つが結びついた瞬間でした。

Difyとの出会い

AIチャットボットの開発を検討する中で出会ったのが、Difyでした。

Difyの魅力は次の点にありました。

  • 無料で始められる手軽さ

  • オープンソースで、世界中の開発者が自由に開発している拡張性

  • RAG(検索拡張生成)やワークフローなど、必要な機能が統合されている

特にオープンソースという点は大きな魅力でした。コミュニティの力を借りながら、継続的に改善していける環境があることは、長期的な開発において重要な要素だと考えました。

DifyのWebサイト

誰のためのAIなのか

開発を進めるにあたり、ターゲットを明確にする必要がありました。

既存の公益法人や一般法人は、すでに充実した相談サービスを受けられる環境にあります。一方で、これから公益法人を目指そうとする人たちは、手付かずのまま取り残されていました。

「公益法人になりたいけど、どこから手をつければいいかわからない」
「認定基準について気軽に質問できる場所がない」

そんな声に応えるため、私たちは公益法人を目指す人を主なターゲットとしてAI開発に着手しました。

知識ベースの構築

AIに公益法人に関する正確な知識を持たせるため、以下の資料をRAG(検索拡張生成)に組み込みました:

  • 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

  • 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律

  • 公益認定等ガイドライン

  • 内閣府FAQ

  • 公益法人会計基準

法律や制度に関する質問に対して、根拠となる条文やガイドラインを示しながら回答できる仕組みを目指しました。

技術的な壁との戦い

開発で最も苦労したのが、公益法人会計基準などの表形式データの扱いでした。

当初、これらの資料は単にPDFをテキスト化しただけのバラバラのデータとしてRAGに組み込まれており、AIは表の構造を理解できませんでした。これでは正確な回答ができません。

そこで活用したのがLlama Parseです。Llama Parseを使ってマークダウン形式に変換することで、表の構造を保ったまま、構造化されたデータとしてRAGに組み込むことに成功しました。この改善により、会計基準に関する質問への回答精度が大きく向上しました。

Llama ParseのWebサイト

リリース後の発見

こうして日本初の公益法人設立支援AI「全国公益AIナビ」をリリースすることができました。実際にリリースしてみると、想定外の反響がありました。

ターゲットは「これから公益法人を目指す人」としていましたが、既存の公益法人からの利用も予想以上に多かったのです。

「ちょっとした疑問をすぐに確認したい」
「担当者が変わったばかりで、基本的なことを聞きたい」

既存の公益法人にも、気軽に質問できるAIのニーズがあることがわかりました。今後は、こうした既存法人のニーズにも応えられるよう、機能を拡充していきたいと考えています。

全国公益AIナビのチャット画面

目指す未来

私たちが「全国公益AIナビ」で実現したいのは、公益認定申請のハードルを下げることです。

手軽に公益認定の申請ができるようになれば、これまで諦めていた人も公益法人になることができます。その結果、日本の民間公益活動がより盛んになるはず。

AIという技術を使って、社会課題の解決に挑戦する人たちを支える。それが私たちの使命だと考えています。


Difyというオープンソースのプラットフォームを選んだことで、柔軟かつスピーディーな開発が実現できました。これからも、ユーザーの声を聞きながら、より使いやすく、より正確なAIサービスへと進化させていきます。

公益法人の設立を考えている方、既存の公益法人で業務効率化を検討されている方、ぜひ「全国公益AIナビ」をお試しください。

[全国公益AIナビ URL https://koueki.or.jp/ai-navi.html


執筆者略歴
桑波田直人(くわはた・なおと) (一財)全国公益支援財団専務理事
全国非営利法人協会専務取締役。『公益・一般法人』創刊編集長等を経て現職。財団ではAI開発や支援を担当。公益社団法人非営利法人研究学会では常任理事・事務局長として公益認定取得に従事。編著に『非営利用語辞典』、他担当編集書籍多数。


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