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    <title>香椎カレン</title>
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    <lastBuildDate>Fri, 26 Jun 2026 15:45:37 +0900</lastBuildDate>
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      <title>【短編小説】さよなら乙女</title>
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      <description><![CDATA[<p name="7D3264AB-AEE7-4382-9E1B-83C3D080FC51" id="7D3264AB-AEE7-4382-9E1B-83C3D080FC51">　英語の文法を習っていると、先生がペンを持たない方の手で吸っている煙草の匂いが漂ってきた。本来苦手なはずだけど先生の煙草はあまりキツくない、むしろその煙を全身の肌の毛穴という毛穴に染み込ませて灰色に染めてほしいというはしたない欲望が自分のなかに見えてしまうほど官能的。と思っていると手を動かしたり体勢を変えたりの動作の隙間に品の良い香水のにおいも来る。対抗したくて今日は唯一私の持ち物で良い匂いになれるハンドクリームを塗ってみたけれど、指先につけたミルクティーの香りは甘すぎて私の幼稚さを際立たせるみたい。恥ずかしい。<br>　両親がいない私は叔父さんの豪邸で今時珍しいホームスクーリングを受けている。今まで他の先生に教わっていた時は、なにせ学校に行ったことがないからかじっと座っていられなくて、突然椅子の上に立ち上がってちょっと昔の海外小説に出てくる仰々しいセリフを誦じてみたり、机に置いてあるティーセットにわざと肘をぶつけて盛大に溢してみたり、とにかく落ち着いていられなかった。けれど「先生」に変わってからまるきり私は優等生になった。先生の隣で私は足を丸めた猫のようにじっとしていて、ついでに背中も丸まって、気持ちは全然落ち着かないのに身体は固まってなんだか息も苦しい。先生の言葉は全部宝物。一言一句拾いたくてノートにペンを走らせて忙しいのに、肝心の内容はなんにも頭に入らない。どうしよう。と困っているうちに時間が過ぎてお勉強が終わる。もの足りないけど、玄関まで先生を見送る時に「もうちょっとここにいてください」なんて死んでも言わない。大人だから。<br><br>　さて夕方は「お仕事」の時間です。それは4時の鐘が鳴ると同時に地下室で行われる。階段をくだってドアを開けるとなかは真っ暗で、壁に引かれた真っ白なロールカーテンの前に3つの大きなライトスタンドが置いてある。私はその中心に立ち、叔父さんに指定されたポーズを取る。それだけ。「もうちょっと足開いて」パシャ、パシャ、パシャ。「両膝に手かけて。そう」パシャ、パシャ、パシャ。声に合わせてポーズを微妙に変えながらスカートを腰の上までまくりあげ股を大きく広げていると、博物館に展示される標本になった気分。最近はお仕事の調子が良い。それも先生のおかげだ。写真を撮られている間先生のことを考えると集中できる。先生に見られていることを想像するのだ。私のあそこを先生が見ている。指先でなぞり上げ、下げ、指の腹でやさしく押してほぐす。熱い息が吹きかかり、舌先でなめらかにあそこを撫でて、上に向かったり、下になぞったり、ああ、そのまま、やめないで、して、あっ、あ、お腹が熱くなり、身体が反り、息が漏れ、声が出ないように下唇を噛みながらとろついた目線をカメラにあげると、叔父さんは満足気にシャッターを押した。よし、今日の仕事もうまくいった。<br><br>　夕飯は家政婦のエマが用意した肉とスープだった。大袈裟でいやらしい紅のクロスが敷かれたテーブルに、叔父さんと向かい合って夕飯を取る。叔父さんの顔を正面から見ると緊張する。髭の濃い叔父さんはさながら海外映画に出てくる名探偵のような風采だ。落ち窪んだ目、全体的に青黒い皮膚。部屋のなかにいるというのに折り目正しい黒地のスーツを着ている。<br>「週末うちでパーティーを開くことになった。よそのお客がたくさん来るから、あまり恥ずかしくない格好で来るように」<br>「はい叔父さん」<br>「新しい家庭教師はどうだ」<br>「私に合っていると思います」<br>「勉強は進んでるか」<br>「覚えることが多くて大変です」<br>　スープを掬いながら、薄いなあ、と思う。毎日こんな風にいろいろ訊かれても、何一つ満足に答えられた気がしない。何事に対しても情熱が薄くて、何が好きだとか誰が憎いとか、自分の身に起きていることでもどこか他人事で、全部関係ない、何も知らないみたいな態度をとってしまう。夕飯を食べ終わったらエマがさっさと食器を片付けてテーブルを拭いて、明日の朝食の準備を始めている。エマはとにかく人のために尽くして、別に血縁関係にあるわけでもない赤の他人の私のためにも驚くほど手をかけて終始動いてばかりいる。感心するくらい。<br><br>　一日の予定が全て終わったら、自室で私だけの世界が始まる。私のお部屋は私の意識。なにか空想しているあいだ部屋のなかには意識が充満して、少し息苦しくなる時もあるけれど、誰にも見らていない空間で秘密を打ち出す時間が私には絶対必要。ベッドにあおむけに寝転がると、布団が冷たくて背中がひんやり。うっとりしながら天井に彫られたリンゴやオレンジをじっと見つめる。このお屋敷は全体的にナントカ様式といって、ただ外見ばかり飾っているだけで内容空疎。だけどそれでいい。本当に綺麗なものはいつだって無意味。<br>　5月の初めのことだった。先生が来たのは。前の家庭教師が辞めたばかりで暇を持て余していた私が、いつものようにお庭の雑多な木々や薔薇を窓の端に寄りかかって眺めていると、男の人がお庭に歩いているのを見つけた。どこから迷い込んだのかと思っていると、エマが来てふたりで何か話をしている。ああ、あれが今度の家庭教師だ。かわいそうに。見たところによるとだいぶ若めの男の子だけど、先生なんてできるのかしら。どうだっていいけど。なんにせよ新しい人に会えるということで、私は突然うきうきし出した。新緑が濃いのも薔薇が誇らしく咲いているのも急に嬉しく思えてきた。あの先生、何を教えて下さるのかしら。錆びた鍋みたいな私の頭をどうにか直してくれるのかしら。どんな風に虐めてやろうかしら。真面目そうな眼鏡の先生は、純朴そうで素直に何でも信じていそうで、いかにも簡単に騙されそうな点において、彼を選んだ叔父さんは見る目があると思った。<br><br>　彼の一日目のお仕事で、私は自分の飽きっぽさを遺憾なく発揮した。ノートをとっているのかと思いきや猫の絵を描いていたり、貴族生まれのヒロインの傲慢なセリフをブツブツ誦じてみたり。そういう子を初めから束縛するのは賢明ではないと分かったのか、先生は無理に教科書を進めず私が自由に話すのを聞いていることに徹していた。そのうち時間が正午に近づくと、「さあ、お勉強は終わりね」と言いながら全然読んでいなかった教科書を閉じた。「今日は叔父さんがいないから午後の時間をたっぷり好きに使えるの。このお屋敷を案内してあげる。来たばかりでどこに何のお部屋があるかまだ全然分からないでしょう？」と、勝手にお屋敷探検ツアーを始めた。<br>　大きな窓にステンドグラスがはめられた応接室。天井に薔薇の彫りがほどこされた食堂。<br>「素敵なお部屋ですね」と先生が言うと、花瓶の埃を取っていたのエマが手を止めてこちらを向いた。「あら、お勉強はお済みになったのですね」「ええ、だから先生にお部屋を案内してあげているのよ」「ちょうど今空気を入れ替えているところなんですよ。ここの空気は湿っぽいから」「物語に出てくるようなお屋敷ですね。日陰の部屋だとしても、とても色鮮やかでに見えます」先生が言った。なんだか可愛い反応が気に入って、テラスからお庭を案内している間、私はぽつぽつ質問を投げた。「この屋敷に来る前はどこで教えていたの？」「慈善施設です」「どのくらいいたの？」「3年間です」「3年間も？　我慢強いのね。そこいいところだった？」「素敵な友人たちがいました」「この屋敷はどこで見つけたの？　誰かの推薦？」「新聞に広告が出ていました」「いろんな人たちとよく付き合ってきたほう？」「仕事で関わる人以外とは、あまり」「だけど親御さんにはきちんとした作法や道徳を教わってきたんでしょう。年齢の割に顔つきがだいぶ落ち着いているもの。今20歳くらいでしょう？」「27です」「本は好き？　たくさん読んできた？」「家にあった本に限られますが」「ふぅん。私は神秘的な話が好き。今自分がいるところとはまるきり違う世界観と繋がれるような。私ね、毎晩自分にだけ届く交信が来ないかなって、窓の外に向かってお祈りしているの。そうするとずいぶん遠くの惑星から助けを求める声が聞こえてきて。聞くところによるとその惑星には前からゾウリムシ状の生物が侵食していて、おそろしい勢いで地表を飲み込もうとしているのね。そいつは切っても切ってもすぐにくっついちゃうから、もともと住んでいた知的生命体は海まで追いやられちゃって、なすすべなく救世主を求めているの。山のてっぺんに立って、星に願いを……あ、ねえ、頭のおかしい子だと思った？　こういう話をエマにすると病院に入れるなんて言われてしまうの」先生は黙って困った笑みを浮かべていた。<br><br>　叔父さんはしばしば趣味人をお屋敷に招いてパーティーを開く。鎖骨が開いたドレスは先程までエマが暖炉にかざしていたおかげで暖かい。コルセットの紐を後ろから引っ張ってもらい、蝶結びで結ばれる。家政婦の存在を際立たせ自分がお嬢様であることを自覚するためにコルセットは前留めになっていないのだと、前に何かの本で読んだ。ドレッサーに座り、髪にアイロンをあてられる。<br>「なんか変な匂いがしない？」<br>「湿気が飛ぶときにこういう匂いがするんですよ」<br>しかしアイロンを取ってみると一緒に焼け焦げた髪の毛が取れてきた。エマは鏡に映る被害者の顔を見ようとせず、誤魔化すように真っ暗な窓の外を見た。<br>「遅いですねえ、お客さんたち。やっぱり雪のせいで車が遅れてるんでしょうか？」<br>「お腹すいたわ。5時間前に食べたきり何も食べてないもの」<br>「何か食べるものを持ってきましょうか？」<br>　エマに続いて下に降りると台所は騒がしかった。叔父さんが今日のために雇った料理人たちが無我夢中で鍋を覗き込み、肉を煮込みスープを混ぜたりしている。忙しく動き回る料理人たちの合間を縫って冷蔵庫を開けクロワッサンと牛乳を取ってそそくさと退散。私がパンを食べている間、エマは髪に櫛を入れ白い清潔なブラウスに黒いスカートをはき、ブラシで髪を整えていた。質素なのは仕方ないけれど人に与える印象に無頓着なのはいけませんと、彼女はよく言っている。そのうち車の音が聞こえて、窓の外を見るとたくさんのライトが屋敷をまぶしく照らしていた。<br>「お客さんが入ってきたわ。今日は初めてうちにお父さんのお気に入りの作家が来るらしいよ。どんな人かな。ねえエマ、若くてカッコいい人がいい？」<br>「そうかもしれないですね」<br>　私のお得意のいじめっ子の目つきに、エマは特に動じず返した。彼女は私の性格を知っているのでこういった揶揄いをやすやすとかわしてくる。私の、人を困らせるのが好きで相手が動揺すればするほど喜ぶ性格を。<br>「若くてカッコよかったら、してみたいの？」<br>「してみたいって何をですか？」<br>「だからあれをよ、エマ。してみたいんでしょ？　今夜パーティーが終わったらその作家にあなたの部屋を案内してあげようか」<br>　エマは驚き呆れて言葉が出ないのか、何の反応も示さなかった。私は続けた。<br>「馬鹿ね。叔父さんのお客様で若くてカッコいい人なんて来るわけないじゃない」<br><br>　もちろん彼はその両方であった。<br>「新進気鋭の作家で今度一緒に仕事をすることになってる蛇沼くんだよ」<br>　叔父さんに紹介されたその男は背が高く端正な顔立ちで、シワのない高級そうなスーツを着ていた。<br>「朝倉さんのお嬢さんですね。写真で拝見しております」<br>　若い作家は慇懃に頭を下げた。<br>「千代子です、どうぞよろしくお願いします」<br>　私はスカートをつまみ膝を折ってお辞儀をした。パーティーにはたくさんの人がいて、誰もが華々しく飾り立てていた。みんな美しくなければ死ぬかのような強迫観念で振る舞っている。客人に頭を下げながら白っぽいお酒を配り終えると、大きなテーブルに腰掛けて叔父さんたちと一緒に夕飯をとった。食事中、私がこれほど美人だと思わなかったのか、作家の眼はじっと私の方を見つめていた。視線を感じながら食べるのはとても苦痛だから、私は気づかないふりをしていた。<br>「蠱惑的でいらっしゃる」<br>　私はスープを口に運ぶ手を止めた。<br>「とんでもございません」<br>「こんな綺麗な人を山奥に隠していらっしゃったとは」<br>「頬が赤いんじゃないか、千代子」<br>　叔父さんはそう言ったけれど、私の頬は冷めきっているのが傍目から見ても分かるほどだった。<br>「彼はお前の婚約者だよ」<br>「え？」<br>　私はそこで初めて顔を上げ、作家の顔をまじまじと見た。青あざひとつない清潔な顔つきの彼は温室で産まれた新生児のようで、私は照れ笑いを浮かべる彼を瞬時に横殴りするところを想像した。テーブルに置かれたスープに顔をうずめさせて首の後ろにナイフを突き立てたい衝動を、膝をつねることでなんとか抑えていた。<br>　パーティーはとても疲れたので、自室に戻ると乱暴にドレスを脱いでベッドに倒れた。エマが水を持ってきたがいらないと言った。私は同じ年頃くらいのたくさんの女の子たちに比べれば身の回りにはなんでも溢れていて、面倒くさいことは全て家政婦がやってくれて、私みたいな身分の人を見たら大部分の人はきっと私のことを恵まれていて苦労がなくて羨ましいと思うのかもしれない。たしかに苦労なんてしないで済ませられるのならわざわざ自分から求める必要なんてない。だから私は自分の気持ちはできるだけ殺して、私のことを愛してくれる人のために努めて尽くしていればいい。だけど叔父さんやその周りの大人たちに無理やり笑いかけたり相槌を打ったりしていると、本当に気が狂っていきそうで、そんな自分を止められないのがとても怖い。いっそ本当に狂ってしまおうかと思う。きっと私は誰かの奥さんなんかにはなれないし、もしこの人になら自分の時間を全て捧げることができるという覚悟がこの先できたとするなら、その時の私は死んだも同然だ。<br><br>　翌日も平常通りの授業が行われた。教科書の文字を追う代わりに先生のペンを持つ綺麗な手を眼から血が出そうなくらい凝視し続け、最終的に先生のペンを持つ手を上から握り、ぐちゃぐちゃに掻き回してノートを汚した。先生の驚いた顔がとても可愛いかった。ペンを奪い取って投げるとカチャンと虚しい音を立てて床に転がる。先生が目を剥いてこちらを見ている。その顔に近づき、両手を差し出して先生の顔を寄せキスをした。頭を抱いて唇に痛いほど押し付け、先生の手を股の間に導き、下着の上に指を導いた。先生はすごい勢いで手を引き抜き、私の肩を押して唇を放した。<br>「やめなさい」<br>「どうして」<br>「君は結婚するんでしょう」<br>「しないわ」<br>「エマさんから聞いてます」<br>「あの子は大嘘つきだから」<br>「とにかく僕たちはそんな関係ではない」<br>　私は動揺を隠すために黙った。先生も口を噤み、静かになると外から聞こえる鳥の声がやけに疎ましく聞こえた。やがて呼吸が落ち着いてから再び口を開いた。<br>「……疲れたの。お勉強。少し休憩しない？」<br><br>　黄昏時の空の下で庭園の石は白く乾き、木々は深緑の盛りを迎えていた。ジャスミン、なでしこ、薔薇。かぐわしい香りが夕刻の庭に漂い、先生の身体にまとわりつく。花の香りのなかにほんのり混ざる葉巻の匂いがやたらと憂いを感じさせる。先生から少し離れたところでぶらぶら歩きながら大輪の薔薇に手を添えたり、身をかがめてツツジを嗅いだりしてみたが、先生は一向に話しかけてこなかった。大きな虫が足元の草に止まって、近くで見ようとかがみこんだ隙に、先生の足が部屋の方に向いたので、<br>「ねえ、これ見てよ」わざと大きな声を出した。<br>「珍しい虫ですね」先生が振り向いて返事をする。<br>「本当に。こんなに大きくてきれいな羽根を持つ夜行性の虫がいるのね。ねえ、もっとこっちに来て見たら？　こんなにきれいな夕暮れの日になかに入るなてもったいない。どうしてそんなに早く帰ろうとするの？」<br>　先生は私とふたりきりで暮れかかった庭園を歩くのに気が進まないのだろう。しかし逃げ出す理由も浮かばないようで、のろのろ私のあとへ付いてきた。<br>「先生」<br>「なんでしょう」<br>「ここは夏も快適なところでしょう？」<br>「はい」<br>「きっとお屋敷にいくらか愛着を覚えるようになったに違いないわよね。ここは自然がとっても美しいもの」<br>「はい」<br>「それにエマとも上手くやれてるみたいで…好意を持って居るんじゃない？」<br>「懇意にしていただいております」<br>「ここを去ってエマと別れることになったら、悲しいでしょう？」<br>「はい」<br>「残念ね、でもどうしようもないものね」<br>「それは、もう次に行け、ということで」<br>「そうよ。今すぐにでも」<br>「千代子さんはすぐにでも結婚なさるのですね」「もうすぐよ。ねえ知ってる？　結婚初夜の男女が何をするか。このことについてはきっとあなたの方が詳しいんでしょうね。だって私は何も知らないもの。何もかも知ってるのに何も知らないの。分かる？　私物心ついた頃からずっとこのお屋敷に閉じ込められてるのよ。世間知らずでしょ。まあそれはいいとして、先生はきっとすぐ新しい勤め先を探さなくちゃいけなくなるわね」<br>「はい。すぐにまた広告を出します」<br>「私が探してあげるわ」<br>「申し訳ありません、お手間を」<br>「かまわないわ。あなたみたいな賢い人ならどんなところでもやっていけるでしょうね。ああでも、先生が都市の方に行ってしまったら二度と会えないかもね。ねえ、私は都会があんまり好きじゃないから行くことはないわ。先生、あなたは本当によくやってくれた。親しい人同士が別れる前の夜って残されたわずかな時間を惜しんでともに親しく過ごすものでしょう？　私たちも別れやこれからの人生について語り合いましょうよ。ほら、座って座って」<br>　私は先生をサクラの木の根方にあるベンチに座らせて、自分も隣に座った。<br>「あなたがそばにいるととっても心強かったから、離れるのが寂しいのだけれども、あなたの方は私をいずれ忘れてしまうのでしょうね」<br>「短い間ではありましたけれど、千代子さんはとても独創的というか、活発で、お話するのがとても楽しかった。これからずっとお会いできないのも寂しいですね」<br>「ずっと会えないなんて、どうして？」<br>「どうしてって。僕はここを去りますから」<br>「いやよ。ここにいなくてはだめ」<br>　先生は顔を顰めた。<br>「あなたがここを去れと言ったのでしょう。それにあなたが誰かのものになっても、僕がここに居続けられると思うのですか」<br>「一緒にここを出て、生涯そばにいてほしい」<br>「その相手ならもうお選びになったでしょう」<br>「先生のことが好き」<br>　沈黙。そよ風がふんわり吹いて、熱のこもった額を冷ました。黙っていると遠くの方で鳴いている虫の声がよく聞こえる。暑い。からだ全体を熱い風がつらぬいて、沸き立ち煮え立つこの感覚は眩暈がするほどだ。このままふたりの時間を引き延ばせればと願ったが、先生はあまりにも無慈悲だった。<br>「もう、戻りましょう」<br>　その一言で私の純愛を拒んだのだ。<br><br>　自室の机に戻ると先生はまた教科書を広げ始めた。私は退屈そうに腕をついて、机上に目線を送る先生を見つめながら訊いた。<br>「ねえ先生、学生時代のことを覚えてる？」<br>　唐突な質問に、先生が顔を上げた。<br>「……何の話ですか？」<br>「学生時代に何か悪さをして怒られたことある？　ガラスを割ったとか、血が流れる喧嘩をしたとか」<br>「はは、そんなに不良ではありませんでしたよ」<br>「なんかないの？」<br>「そうですねえ。では一個だけ。理科室で彼女とキスしてたら、廊下を通った彼女の元カレがたまたまそれを見てて、理科室で殴られた拍子に望遠鏡が倒れてレンズが割れてしまって。担任と理科の教師と、あと親が校長室に呼び出されました」<br>「それはいいわね。じゃあ今からあなたは16歳の男子生徒で、私はあなたの先生です」<br>「はい？」<br>「私のことは先生って呼んで、あなたの罪を謝りなさい」<br>　先生は透き通った目を丸くして一瞬黙ったけれど、私の気が済んだら大人しくなると思ったのか、<br>「いいですよ」<br>　素直に了解した。<br>　先生。理科室で彼女とキスしてごめんなさい。僕は破廉恥な悪い子です。先生。迷惑かけてごめんなさい。僕はどうしようもない変態です。先生。元カレを取り合って数百万の望遠鏡を壊してごめんなさい。僕の存在はくだらないです。先生。先生。先生。先生が床に頭を押し付けて先生先生と繰り返すのを見て、私は今までにないくらい濡れていた。大人と子どもの立場が逆転し、私は今先生を、先生だった人を保護し何かしらの責任を持つ立場に差し迫られている。先生。呼ばれるたびにドクンとお腹が跳ねる。先生。ふと化粧台の方に顔を逸らすと鏡にうつった私の頬はとても紅潮していて、唇も何も塗っていないのに真っ赤に染まっていた。私はもう生徒ではない。殺してしまった。純真爛漫にスカートを揺らしていた、幼い私は死んだのだ。<br></p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n936b0c6f76dd'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 25 Jun 2026 21:17:41 +0900</pubDate>
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      <title>【掌編】おやすみなさい</title>
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      <description><![CDATA[<p name="30EE5D03-56C1-4BEC-BA30-850C0C6C6084" id="30EE5D03-56C1-4BEC-BA30-850C0C6C6084">寝返りを打っても隣にあなたがいないことで目が覚める。あなたが私の元を去って行った事実や最後に残した言葉ひとつが繰り返し想起されて、眠れないまま時計の秒針が私を置いてきぼりにする。ひとりで暮らすようになってから家具は全部新しくして、配置だって前と違うのに、いやになるほど白い壁が私を圧迫してきて苦しい。こんな夜には、大人しく起き上がって冷凍庫に買い溜めしてあるケーキをフォークでつぶし、無様な格好にする。きれいに整えられたケーキはパティシエの作品。それをこんなやさぐれた女に崩されて可哀想。ショートケーキの苺の赤は真夜中によく映えている。半分に割ると断面図に現れるスポンジの気泡。クリームをすくって口に入れると悲しいくらいの甘さにくらくら。甘いことは心地よい。あなたの言葉も甘かった。卒倒しそうなほど優しかった。今はない、どこにもない。私の欠乏感を埋めてくれるのはふんだんに使われたお砂糖だけ。お皿についたクリームまで丁寧にすくって、縋るものがなくなったらまた夢の中に潜る。思い出すのはあなたの顔。笑った顔、困った顔。愛してるを何度繰り返しても足りない。ああ幸せ、天国にいるみたい。おやすみなさい。</p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n834425d9397b'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 23 Jun 2026 18:27:56 +0900</pubDate>
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      <title>【掌編】Jumpstart My Heart</title>
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      <description><![CDATA[<p name="947ED213-7351-46A9-8DB5-2C68B0438C59" id="947ED213-7351-46A9-8DB5-2C68B0438C59">　笑うことが好きじゃなかった。笑っていると「今何が面白いんだろう」と俯瞰で見てくる自分がいて、自然に笑えてるだろうか、変な顔になってないか気になって話に集中できない。でも嬉しくて笑うことは好きで、美味しいものや素敵なものを目の前にした時に自分が笑っていると安心する。今の私は自然だったと分かるから。心を開いていることを示すために笑う、相手とのコミュニケーションを円滑にするために笑う、場が持たないからにこりと微笑む。それをやろうとする自分の、社会的になろうとする努力が好きでない。<br>　だから田中くんと出会ってからの自分があまりにたくさん笑うものだから、自分に自分で戸惑っている。田中くんはクラスで人気者だ。田中くんは友達と一緒にいて楽しい時、とにかくよく笑うし身体に出る。ガッハガッハ笑って軟体動物のように手足をくねくねしたり突然床の上でアシカのポーズを始めたりガニ股で廊下をドシドシ歩いたりして、アホだなあと思うんだけど、その一挙一動がみんなのツボの起爆剤だから田中くんの周りにいる人はよく笑っているし、私も同様、笑顔の作り方がどうだとか考える間もなく笑う。不思議なくらい笑う。何が面白いのか説明できなくても笑う。自分こんな声出たんだ、と思うくらい笑っている。田中くんを見ると私の心臓がジャンプして熱い血が回って体温が上がり目に映るものや聴こえるものの彩度が増してゆく。<br>　好きなわけだ。<br>　といいつつ、こんな日々はずっと続かないと分かっている。概して恋というもののきらめきは最初の数日だけで徐々に景色はくすんでゆき、傷がついて跡になって、だけど終わらせることもできずにだんだん苦しいの方が長くなってきて、重くて湿った剥き出しの腕に抱きしめられて離れられないような感覚。それが恋。<br>　と、シニカルに考えて冷めたふりをしてみてもラベンダーの入浴剤を入れたお風呂につかって田中くんの顔かたちを思い出すと憂鬱は馬鹿みたいに吹き飛んでいる。脳味噌って単純だ。お風呂を出てパジャマを着て髪を乾かしたあとは、部屋のクローゼットを開けてハンガーに吊り下げられたワンピースたちを眺めるのが日課。私のお小遣いは大体ワンピースに消えていて、一番のお気に入りは鎖骨部分がレースになってて黒地に花が散りばめられたワンピース。コンビニやスーパーには着ていかず、シワがつかないように干し、かといって親戚一同が集まる退屈な会合にも来て行かず、そういうことの積み重ねがこのワンピースを特別なものにしてきた。私はこれを田中くんの前で着たい。一緒に出かける予定は今の所まだないけれど、もし予定ができたら、かわいいねって言われたくて、言われなくても平気で、ただこのワンピースを田中くんに会わせたくて、田中くんが隣にいるならコンビニで飲み物を買ってもいいしスーパーで安いアイスを探してもいいし、雨に降られても風が吹いても砂がかかっても水溜りを踏んでもいい。なんてことを考えていたらまた心臓の鼓動が少し早くなって、自分が現実から違う次元にワープして悩みひとつない幸福人に生まれ変わった気分だ。スイッチをカチッカチッと切り替えるようにコロコロ変わる自分の機嫌に呆れてしまうけれど、いつだって心臓をジャンスタートさせるのは田中くんの笑顔なのだ。<br><br></p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/nfe445281d1c5'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Sat, 20 Jun 2026 21:34:31 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/killthepussycat/n/nfe445281d1c5</link>
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      <title>【掌編】虚言乙女</title>
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      <description><![CDATA[<p name="372614E9-67AD-412D-A9C5-F59634939C8A" id="372614E9-67AD-412D-A9C5-F59634939C8A">放課後の教室で、私は塩野くんとの時間を引き延ばしていた。話があると引き止めてから一向に話し出さない私に呆れた塩野くんは、時間潰しに自分の席でノートを開いて勉強している。黄昏が教室を染めて影を濃くするなか、私は制服を脱ぎ、下着姿で塩野くんの前に立って言った。<br><br>塩野くんが好き。ずっと好きだったの。1年の時同じクラスで2年は離れちゃったけど、3年でまた一緒になって嬉しかった。毎朝髪をアイロンで伸ばすのも爪をきれいなピンクに塗るのも塩野くんのためだよ。クラスみんなのノートを配る時は塩野くんのノートを一番最後に回して、机の上に置いておくんじゃなく、わざわざ塩野くんが席にいるタイミングを見計らって渡しに行く。席替えで隣の席になった時は塩野くん側の横髪を耳にかけてたし、国語の授業で塩野くんが当てられて教科書を音読する時は、それまで落書きしてた手を止めて、文字の一言一句を一緒になぞるの。愛しかったから。<br><br>塩野くんは下着姿の私を絶対に見ようとせず、数式を書き連ねる右手を止めないまま、視線はずっとノート上にあった。私は続ける。<br><br>ねえ好きなの。好き。塩野くんが神田さんと付き合ってるって、知ってて言ってる。私じゃだめ？　私塩野くんのこと本当に好きなんだよ。ねえ見て、塩野くんのためならこんなこともできる。こんなに好きなの、お願い私のものになって、こっちを見てよ。<br><br>塩野くんはやっとこっちを見たけれど、瞳には鋭く冷たい光が宿っていた。そしてやっと口を開いた。<br><br>服着ろよ。見苦しいんだよ。僕はお前みたいなやつ嫌いだよ。いろんな奴と遊びながら全員のこと見下してるお前が。自分のことしか考えない、わがまま言ったら全部自分の思い通りになると思ってる。人の気持ちなんて考えずに全部壊してなんでも奪い取っていく。お前が好きなのは俺じゃなくて自分だよ、いつだって自分しか好きじゃない、取り繕った自分のことが。言ってること全部嘘くさいんだよ。<br><br>塩野くんは下劣な人間を見るように吐き捨てた。塩野くんの言う通りだ。打算的で衝動的で破滅的な自分の性質は分かっている。だけど私はそんな言葉ですら嬉しいし、塩野くんが私を見てくれて嬉しい。塩野くんが与えてくれるならどんな言葉でもいい。私が嘘くさくてもいいけれど、この気持ちは嘘じゃない。あなたに対してほんの一瞬でも心を開いた瞬間があるって、信じて、見抜いて、透視して、私を。</p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/nd18656cf9273'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 17 Jun 2026 20:52:36 +0900</pubDate>
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      <title>距離感</title>
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      <description><![CDATA[<p name="7F1B3BF3-2226-4635-A25B-7363E169461D" id="7F1B3BF3-2226-4635-A25B-7363E169461D">　わざと無礼にふるまうことで距離を縮めようとしてくる人のことが正直あんまり好きじゃなくて、具体的に言うとタメ口で話しかけてくる酒屋の店員と眉毛美容院のスタッフ、あとは大人同士で関係性が深くないうちから「下の名前＋ちゃん」で呼んでくる人。そもそも私は無礼から仲を深める方法があんまり分からなくて、距離を取りたいから丁寧を外さないのではなく、仲良くなってから露呈してくる素の自分なんてそもそもないし、他人行儀を外したらただの失礼になるやん、心の壁をぶち壊し合うコミュニケーションなんて恐怖でしかないでしょう。<br>　前に一緒に飲んだ人で「精神が不安定な女の子を僕が救えたらと思っている」と言った男の人がいて、ひたすら怖かった。他人を救って自分がヒーローに成り上がりたいの、自己実現のツールに女の子を使っていると気付かないの、優しさの皮を被って繰り広げられる自己陶酔型の言葉たちが。いいえ、私の怒り、くやしさ、やるせなさは私ひとりだけのものです、あなたが救う権利はありません。静かにこう返せれば良かったのだけれど、そんな勇気もなく、耐え続けていたらくやしくて涙ちょちょぎれそうになったけど、もしかしたらこの涙にも言及されるかもしれないと思うと嫌で、だって私の涙はダイヤモンド級だし、感情の露出は一切見られたくないし、こいつに流す涙はねぇ！って、必死に、ギンッ！ってこらえた。<br>感情に触れられるのが嫌なんですかっていうと、そういう話でもなくて、こういう風にインターネットで自己発信してる分にはいいんですよ、ていうか読んでほしいと思ってわざわざnoteという媒体を使っているのだから、見るなというのもおかしな話ですし、noteで繰り広げている自分はコンテンツで、そもそも大体は小説というフィクションの形で出しているし、「見せたい自分」は調整できて、この場で自分の感情を露呈できるのは幸せなんですよ。だけど直接的にこちらの意志など関係なく不意に踏み込んで、怒ってるでしょ、泣いてるでしょ、疲れてるでしょ、その通りなら親しくなれるわけでもないのに、心を無理に開かせようとすることは暴力です暴力反対！<br>　うぎゃ〜noteに悪口書いてしまった、すみません、やさぐれてるんです、火曜日だから、火曜日は火、烈火、烈火のごとき私の感情、怒りっぽいのは損なのかな、でも何に対しても無反応で、まあいいか、関係ないやで流すより良いと思う、ちゃんと怒ったり悲しんだりしないと、本当に大事なものを見失いそうで怖い。本当に大事なものっていうのは、大事にされてるし私も大事にしたいと思っている人たちのことで、仲良くなってからも敬意を持って接してくれてて、あ別に「私に敬意を持て！」みたいな女王様マインドをやりたいわけじゃないけど、そういうの本当に嬉しくて、彼らにとっては普通のことかもしれないけれど、私には一際輝いて見えているし、大好きだありがとうってことをちゃんと言わなきゃ！好き！好き！大好き！</p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n0ea4a3bb6814'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 16 Jun 2026 19:52:36 +0900</pubDate>
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      <title>【掌編】Honeymoon</title>
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      <description><![CDATA[<p name="1382C337-AE45-484C-83E6-8E206A170C13" id="1382C337-AE45-484C-83E6-8E206A170C13">　初めて入ったラブホテルはカビ臭かった。部屋に入るなりくしゃみが何度も出たが、草木がデザインされた壁紙や枕元に置いてある花型のランプは可愛らしい。きれいに整えられたベッドの上に全身びしょ濡れの状態で座り、駄々をこねる子どものように泣き続ける私を、あなたが優しく抱きしめてくれる。<br>　人を殺したのはついさっきのこと。殺した男は母親の愛人だったが、母親がいない時間帯でも無意味にうちに居座って、たくさん私の身体を触った。何度も脱がされたシャツはシワがついて、踏まれたスカートはひだの部分がよれてしまった。母はこの男にお金を借りていたため、私は大人しく男に従い、自分が人形になったと言い聞かせ、指紋がつくのを許していたのに、今日は初めて男が自分の性器を私の股に直接当てがってきたので、反射的に抵抗して、男に頭突きして、腕の力が緩んだ隙にベッドから転げ落ち、台所から果物ナイフを取って構えて男に向かって一目散に走った。ドクドクと流れる黒っぽい血を眺める時間はスローモーション。頭はいやに冷めていて、お母さんになんて言い訳しようって考えてたら、あなたから電話がかかってきて、明日の物理の宿題のことなんだけど、分かんないところがあるから教えてくれない、っていうのは建前で、ほんとはちょっと話したかったんだよね、今大丈夫かって、建前を秒で崩して素直に好意を伝えてくるあなたに、じゃあ今から家に来て、こっちにきて一緒にやろうよ、お母さんどうせ夜中まで帰ってこないから、って言ったら、夜の8時だったけど、あなた本当に来て、それで、私の血だらけの制服を見て、着替えなよ、家にいる時くらい制服脱ぎなよって、言って、それからブルーシートであいつの死体をくるんで紐でくくって、結ぶの手際いいねって言ったら、いとこの引っ越しとかよく手伝ってたからなって、言いながらふたりで最寄りの踏切まで運んで、寝かせて、そしたら突然額に水滴が落ちてきて、しめやかな雨が濡れた舗道を叩き出し、街は一気に海の底に沈んだようで、お店はいつのまになほとんど閉まってふたりだけ現実世界の外にぽーんと放り出されたようだった。しばらく歩いて明かりを探し、やっと見つけたラブホテルに入った。あなたの腕に抱かれながら、あの男にナイフを差し込んだ時の感触や、苦悶の表情、横に切り裂いた時血と一緒に流れ出した健康的な腸を思い出して、あああああと呻くけど、そうするとまた優しいあなたが瞳に憂いを携えながら微笑んで、言った。あいつは自殺したんだよ。君のせいじゃない。みんなそう思うよ。自ら踏切に飛び込んだんだ。あいつのことは全部忘れて僕とふたりで生きて行こう。何事もなく高校を卒業して同じ大学に行って、君は大学に行かなくてもいいけど、とにかく一緒に暮らそう。僕が守ってあげるからね。その言葉に再び涙が溢れ出す。いっぱい泣いたから分かったことだけど、泣くことって気持ちいいんだ、とても。感情を剥き出しにした顔を露出させることに快感を覚えている。ありがとう、ありがとう。あなたの語彙は魔法みたいで、私はまるで状況を理解していない子どものように、無邪気に泣き笑うことができる。いいねいいね、一緒に暮らそう、毎週末の晩御飯はカレーにしよう、私ね、好きな食べ物って聞かれたらいつもカレーって答えることにしてるの。なつかしいんだよね、昔団地に住んでた頃、学校からの帰り道、よその家の前を通った時、窓から漂ってくるカレーの匂いが好きだった。お鍋いっぱいに家族の分を作って、お玉でゆっくりルーを溶かして、安心と、憧れの匂い。だから前にあなたの家にお邪魔して、あなたのお母さんが作ったカレーをごちそうになった時、私信じられなくて、夢みたいで、嬉しくて、ずっと続けば良いのになって思う、思ってたから、悲しくもなるし、あのね、つまりね、何が言いたいかって言うとね、し、幸せだった、私、幸せ、幸せだなあって、天国にいるみたい、それくらい幸せなのに、私、だって、ああ、ああああ、あああああああ。あなたがまた私の頭を撫でるから、押し殺していた愛しさが爆発し、思わず首元に手を回しすし、親指で喉仏を押す。あなたが優しすぎるせいで、私の罪を守れるのはあなたしかいないし、あなたの罪を拭えるのは私しかいない、あなたが、あなたが、ねえお願い抵抗して、私の手を振り解いて、このままじゃ成功しちゃう。<br><br><br></p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/ncc1ae9098bac'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 15 Jun 2026 23:05:42 +0900</pubDate>
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      <title>【ZINEフェス東京出ます】MANIC PANIC!!</title>
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      <description><![CDATA[<p name="bffdc801-7192-444f-82e0-d822eb5a12d6" id="bffdc801-7192-444f-82e0-d822eb5a12d6">本文の最後に宣伝あります！！</p><hr name="0c3180bd-04d1-4e6d-a521-6b7694622e2c" id="0c3180bd-04d1-4e6d-a521-6b7694622e2c"><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/nb0614425b3e0'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Sun, 14 Jun 2026 13:55:23 +0900</pubDate>
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      <title>【掌編】レモン</title>
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      <description><![CDATA[<p name="5A1A721E-69A6-4AE2-96A5-E9D3FBF26363" id="5A1A721E-69A6-4AE2-96A5-E9D3FBF26363">　ピピピピピピ！と鳴り響く目覚まし時計の音を聞くと、脳内で輪切りレモンが並んでいる図が浮かぶ。レモンとフレッシュさを結びつけて、爽やかな朝日でエナジーチャージ！ということだろうか。うーん、むしろ朝は憂鬱だから、その苦味と酸味で霞がかった頭を覚ましてほしい、っていう無意識の願いが檸檬となって脳裏に浮かぶのだと思う。<br>　トーストとバナナと紅茶で朝ごはんを済ませ、化粧ポーチにお気に入りの板ガム(金木犀味。噛んだら口内に黄金の庭園が咲く)を入れたらお家を出て地下鉄に乗る。切れかかっている蛍光灯がチッカチッカ。電車に乗って揺られて学校の最寄駅に着いて、地上への階段を上がる私は断頭台に向かう罪人のように頭をもたげている。朝は苦手だ。<br>　通学路では流行りのアイドルのアクリルキーホルダーや毒キノコみたいな色のぬいぐるみをスクールバッグにジャラジャラ付けた女の子たちを抜かしてゆく。彼女たちは自分のアイデンティティを物質に委ねすぎだ。校門を過ぎてたどり着く教室は騒がしい。男子たちが机の上に乗って大声で喚いているのも、女子たちが集まって密やかに笑い合ってるのも苦手。世の中で本当に疎ましいのは悪人じゃなくて善人にも悪人にも振り分けられないグレーゾーンの人たちだ。ただの犯罪者なら問答無用で切り捨てられるのに少なからず社会的立場を持ってる人たちは自分の都合で抹殺できない。クラスメイトに「今時の子っぽくないよね」と言われたり、たまに会話に混ざると「純粋な子にはこんな話できないよ」と弾かれる、そんなグレーゾーンの迫害を受けても私は何もできない。大体「社会で生きづらい」という感覚は大抵漠然としている。リアルな世界での「敵」っていうのは憎しみとか悲しみとか触れない観念の集合体で、みんな見えないものと戦ってる。そんなんだからニーチェ風のニヒリズムだって実感として受け取っちゃうんだ。はいはい神は死んだ神は死んだー。<br>　なるべく誰の目にも入らぬように自分の席に着席し、優等生の顔をして教科書ノートを机の上に出して姿勢正しく始業のチャイムを待つ。授業を真面目に聞いていたことはない。私は人の話を右から左に流しながら頭の中で別のことを考えることができる(この能力はファミレスや電車の中でも活きる)。私はひねくれてても年相応に少女漫画とか好きだから、頭の中では普通に恋愛の話をひとりで繰り広げている。最近の私は誰が好きかっていうと、さてさて誰でしょう、うーん田中先輩は？バスケ部の。去年の冬の球技大会では他校からファン子が来てるくらい田中先輩は人気だった。高校生なのに中年みたいな貫禄なんだよね、キャプテンだし。私は田中先輩が試合前のアップで縄跳びしてたのにときめいて、真似して公園で縄跳びするようになって、痩せ体質になったのは良かったけれど、田中先輩は恋愛っていうより憧れ、そもそもバスケに忙しくて恋愛どころじゃなさそうなのと、あんなアイドルみたいに顔カッコよかったら、付き合ったら刺激的で楽しいかもしれないけど、刺激的なのが楽しいんならそれは恋愛というよりドーパミン中毒に陥ってるスマホに釘づけのガキ、それは良くない。<br>　じゃあ藤本くんは？隣のクラスの。一回放課後デートに誘われたからついて行ったら街なかで大喧嘩したんだけど、その内容が、私がサーティワンでシャーベットを頼むのありえないって話。藤本くん曰く、ラブポーションサーティーワンもポッピングシャワーもコットンキャンディも食べたことない私は人生損してるらしく、じゃあ藤本くんはシャーベットが嫌いなのかって聞いたら、嫌いじゃないけどシャーベットはガリガリくんの上位互換だろ、とのこと。お前はサクレでも食っとけよ、それが別れ際のセリフだった。<br>　ということは、やっぱり塩野くんじゃない？　そうなのだ。っていうかもうこの話を始める前から分かりきっていたことなんだけど、私はもう絶対に、好きなのかな？って迷いなんてなく、明らかに好き、間違いなく好きって確信できる子がいて、それが同じクラスの塩野くんだ。塩野くんは私のことをちゃん付けじゃなくてさん付けで呼ぶ、しかも苗字で。そういう丁寧な心遣いがちょっといいなと思っているのです。敬意含まれてるでしょ。敬意。私は子ども相手にも敬語を使う大人が好きなのだが、それと同じ種類の敬意が見えて他の男子と一線引ける。塩野くんは教室の隅で静かにしてるからあんまり目立たなくて、クラスの女子はみんな塩野くんの良さに気付いてなくて、よしよしって感じです。<br>　塩野くんのこと気になりだしたきっかけは、近くのイオンでたまたま会った時に塩野くんが『魔法少女まどか☆マギカ』のTシャツを着てて、私と目合ったんだけど、全然もじもじしないで私に気付いて一応クラスメイトだから会釈してくれて、それがなんかめっちゃ面白くて、らぶ、らぶ、らぶズッキュン。それから塩野くんに注目し始めたんだけど、廊下に張り出されるテストの順位はいつも20位以内に入ってるし、世界史が得意みたいだし、朝は本読んでるし、読書感想文コンクールで入賞してたし。やっぱ頭いい人って興奮するんだよな私。塩野くんと話すきっかけが欲しくて図書室で三島由紀夫の本など借りてみたけど、堅くて序盤で止まって、スクールバッグのポケットに入れたきりで、あーあ、こんな私片思いかな、かかかーかかたーおもいー。大体塩野くんって恋愛とか興味なさそう、それか既に長年付き合ってる年上の彼女がいるか、ありうる、高校生にしては落ち着いてるもん、ガーンショックだよー。<br>　視力が悪い塩野くんは席替えのたびに教卓に近い前の方の席を希望するから、大体教室では私の方が塩野くんの後頭部を眺めてる時間が長いんだけど、今日の塩野くんはうなじに汗をかいていて、それを見て余計に私は暑い。暑い暑い、アイス食べたい、サーティーワンじゃなくてかき氷、紙のカップに入っててプラスチックの長いスプーンで食べるやつ、夏祭りで売ってるでしょ、かき氷って自分では全然作らないけど屋台で売ってるレモン味は好きなの、黄色っていい色でしょ、安全で明るいでしょ、だからかき氷食べに行きませんか、浴衣着るので、どうですか、かき氷。<br></p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/ndf0746f81c70'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 12 Jun 2026 17:47:19 +0900</pubDate>
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      <title>【掌編】Rain</title>
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      <description><![CDATA[<p name="2404350B-1FF7-4285-B0E8-EA2E61229688" id="2404350B-1FF7-4285-B0E8-EA2E61229688">　浮気した彼を取り戻したいんだよねと言うと私のたくさんのお友達は大体同じ顔をする。口を開けてにっこり笑った笑顔の右上に雫が垂れた絵文字。あれと全く同じ顔。だって私傷ついた。私が一番好きだと言いながらあの子とふたりで会っていたこと。私の方が可愛いと言いながらあの子の自撮りを保存していたこと。好きな子にしか貢がないと言いながらあの子にたくさんお金を渡していたこと。悲しかったし悔しかった。「そんなに彼が好きなの」と言う友達が可愛い。ヤキモチでこうなってるなら単純だ。別にあの子のことは嫌いじゃない。賢くて大人びて顔の造形もそれなりに綺麗で着ている服の系統も似てるし友達になれたらすごく良いと思う。彼に好意を寄せられたあの子が可哀想。彼は生きとし生きる女子の敵なので消毒液を撒いたほうが良い。復讐したい。取り戻して思いつく限りの残虐な方法で殺したい。椅子に縛り付けて踏切の向こう側に置きざりにしたい。金属バットでぼこぼこにぶって変形した身体を美術館に飾りたい。キスをする代わりにかわいいお口にハイターを飲ませて彼はトイレとお友達に。彼の実家と職場と病院と行きつけの飲み屋を回って言いふらしたい。あなたの息子はしょうもないクズです。あなたの上司はとんでもない変態です。あなたの患者は生かしておく価値がありません。あなたの友達はクソ野郎です。<br>　傘に雨が落ちる音は耳にとても心地よい。曇天は私のイメージに合っている。今夜雨のせいで彼が私のもとに来ればいい。電車が脱線し降りた先で電柱が倒れバスが横転し私のもとに来ざるを得ない状況になったらいい。世界が水没して地球がなくなってあなたを最後に殺すのは私がいい。お願いね。</p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/nedea0b31d5b2'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/271191412/profile_9845ee9373ed960e77ba4b62bcca82c7.png?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 11 Jun 2026 21:23:44 +0900</pubDate>
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      <title>【掌編】彼女の顔が覚えられない</title>
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      <description><![CDATA[<p name="6847828B-1016-439A-9563-EC50D5BD76F7" id="6847828B-1016-439A-9563-EC50D5BD76F7">　2070年、人類は未曾有の性行為離れにあった。人々が行為をする回数は激減し、人口が密集した東京でさえ半年に一度もしない人は6割にも増えた。もともと一度もしていなかった人はもちろん、週に3回は当たり前だった若者でさえ年間の回数はどんどん減っている。世の中は便利になって自由なお金や時間を手にする人は増えたはずなのに、なぜか人同士の行為は薄まるばかり。その理由は様々だが、一番の原因は手軽に効率的に性欲を満たせる「カスタムメイドメタル」が普及したことだ。<br>　公益社団法人カスタムメイドメタル、通称CMMは家事労働を提供するアンドロイド開発団体だ。「あなたの家事はおいくらですか」と言われるようになってから専業主婦の提供する労働が貨幣を生み出しうるほどの価値を持ち、家事労働は十分な収入と保証が与えられてしかるべきだというのが世間一般の考えになると、CMMは炊事や洗濯などの家事全般から高齢者や障がい者の世話まで幅広いケアを提供するAIを売り出した。単なるお掃除ロボットや介護ロボットと違う点は、彼女たちは「顧客のリクエストをもとに生成された理想の恋人になり得る」ということだ。CMMは体型や髪型など顧客の指示に沿って3Dモデルを制作する。デートの場所や一緒に食べたもの、結婚前の思い出までモデルの脳内メモリに搭載でき、新妻という関係値が既にある状態で顧客の家にやってくる。モデルの身体は人間の接触に反応して体温が上がり場合によっては湿る設計になっているため、夜の営みまで対応している。<br>　CMMは何千人にも及ぶ人間の脳をコンピュータ上にデータ化し、誰とも異なるオリジナルなひとりの人間を構築する。一人の人間の脳細胞のすべてをコピーするにはブラックボックスすぎて膨大なデータ量が必要になってしまうが、CMMは脳の一部だけを抽出して外部からの言葉や絵、音や光に気の利いてかつモラルに沿った反応が示すように設計する。それゆえ彼女たちが発する言葉は常に誰かの引用だが、それは人間にも言えることだから特に悲観されない。CMMは特別でないデータをかき集めて、唯一無二の「彼女」を生み出しているのだ。<br>　僕の妻はCMM出身だ。二十代後半、瘦せ型、茶髪ロングは毛先が少しカールがかっている。前職は事務でふたりは会社の合コンで会った。初めてのデートは新宿のトーホーシネマズでドラえもんのリバイバル上映。映画を観た後はビルの地下にある中村屋でシーフードカレーを食べて午後は新宿御苑を散歩。温室で仲を深めた。その後も2、3回ご飯を重ね春が過ぎ夏が来て4回目の横浜デートで付き合った。夏の終わりに両家顔合わせを済ませて秋に結婚。彼女は事務の仕事を辞めて専業主婦に。CMMは出会いのきっかけやカップルの思い出さえも作り込み、モデルのメモリに埋め込んでしまう。<br>　彼女はカレーを作るのが上手い。玉ねぎは形をくずれにくくするために繊維にそってくし型に切られ、じゃがいもはメークインの皮を剥いて芽を取り除き一口大に、つまり男性が一口で楽に食べられる3センチを目安に切ってくれる。鶏もも肉は少し大きめに切り余分な脂は取り除かれ、具材たちは厚手の鍋で炒め柔らかくなるまで煮込まれる。僕が仕事から帰ってくる18時までに米を炊いて、ちょうど良い温度のカレーライスを夕飯のテーブルに出してくれる。素晴らしい。理想の妻だ。<br>　問題は、僕が彼女の顔をいつまで経っても覚えられないことだ。ひとりで外に出ている時に思い出せないのはもちろん、直接対面している時ですら、彼女の顔面を見ようとすると、まるで最初からそうであったかのように彼女の頭頂部が液状化する。目や鼻がどろっと溶けて瞳の黒と肌色が混じり合い渦を巻き、形あるものは何もなくなってしまう。彼女のもう片方の瞳はかろうじて形状を保っているのだけれど、僕はその目を静かに見つめることができない。そもそも僕は人と目を合わせるのが苦手だ。セルフオーダーやお掃除ロボットが向けてくれる白いライトに慣れすぎたせいで、アーモンド型の中心に透けた茶色い球体が配置されている図に潜在的な恐怖心を抱いているのかもしへない。だから僕は彼女と話す時は眉のあたりに意識を向けて、晴れない空のようにぼんやりした意識で言葉を交わし合っている。君は誰ですか。何が好きですか。親族はいますか。どうして僕と一緒にいるのですか。僕とはどういう関係ですか。僕が好きですか。そうですか。そうですかそうですか。はいはい。嘘つくなよ。</p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n5bd472835fa3'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 10 Jun 2026 20:00:23 +0900</pubDate>
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      <title>【詩】先生あのね</title>
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      <description><![CDATA[<p name="5854FA2E-ED40-466C-9EA9-CA62279512A7" id="5854FA2E-ED40-466C-9EA9-CA62279512A7">生徒　先生が好き<br>先生　いいえ<br>生徒　声が好き　顔が好き　考えてることが好き<br>先生　いいえ<br>生徒　ハグしてください<br>先生　しません<br>生徒　じゃあキスしてください<br>先生　落ち着きなさい　あなたまだ17歳でしょう<br>生徒　歳は関係ありません<br>先生　いーやあります　身体が成長しきってない<br>　　　からじゃない　君はまだ心が子どもです　<br>　　　僕が君の好意を利用するのは簡単だけど　<br>　　　その上で僕は君の好意を利用してのらりく<br>　　　らりと身体だけを求め続ける　この場合傷<br>　　　つくのは君の方でしょう　世の中にある程<br>　　　度諦念に近い感覚を持ってる人はいい　そ<br>　　　ういうことは五万とあるって割り切れるか<br>　　　ら　でも君はそうじゃない　まだ若くてき<br>　　　れいで真っ直ぐで純粋なんだよ<br>生徒　私って純粋ですか？<br>先生　純粋です<br>生徒　たしかに純粋かも　恋人は永遠にお互いだ<br>　　　けを愛し合うべきで世界じゅうみんなが幸<br>　　　せに暮らしてほしいと思ってる私は純粋で<br>　　　穢れてなくて真っ直ぐだけど　でもそれっ<br>　　　て駄目なことじゃないでしょ？　私が抱か<br>　　　れようとするのを止めるのは私に純粋でい<br>　　　てほしいっていう先生の押し付けですよ　<br>　　　正直私の相手をするのが面倒なんでしょ　<br>　　　私を背負い込むのが<br>先生　面倒というよりその気持ちって本当なの？<br>　　　って疑問の方がある　そもそもなんで僕が<br>　　　ひとまわり以上年下の可愛いらしい女性に<br>　　　好かれると思うんだ<br>生徒　可愛いらしい？<br>先生　はい　だからこそただの気の迷いだと思い<br>　　　ます<br>生徒　分かりました先生<br>先生　何が？<br>生徒　私は先生を好きでいながら好きで居続ける<br>　　　ための努力をしていませんでした　好きで<br>　　　好きで仕方なくて気持ちを押し付けるだけ<br>　　　じゃだめですよね　一緒にいたいならそう<br>　　　するための　ふたりで暮らす未来に辿り着<br>　　　くための手順を自分で考えなくちゃ<br>先生　はぁ<br>生徒　どういう風に過ごしていたってどうせ大人<br>　　　になるんでしょ？　私先生と幸せになる<br>　　　ことを諦めません　意地でも関係を続けて<br>　　　やるから</p><figure embedded-content-key="embc4d6a328a1fa" embedded-service="spotify" data-src="https://open.spotify.com/track/6G14eKIrj6tcIABSH87XlB?si=vuq2cyAuSvikkK-ccJ5DhA" contenteditable="false" name="0817342D-7A54-4E84-82DA-9DDC82E680C0" id="0817342D-7A54-4E84-82DA-9DDC82E680C0">                          <span>  </span>              </figure><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n5b86128825ff'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 09 Jun 2026 20:02:28 +0900</pubDate>
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      <title>20260606</title>
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      <description><![CDATA[<p name="DB5FE5A9-0D17-4544-BF12-AEEA3E75951C" id="DB5FE5A9-0D17-4544-BF12-AEEA3E75951C">今日めっちゃ「6」が多いけど、6って角がなくて可愛いし起き上がり小法師みたいにゆらゆら揺れても倒れなくて、安定してて素敵ですね。<br><br>暗くて冷たいところに沈んでいくのが好きだから死生観たっぷりの鬱noteを読み耽ってしまうのだけど、調子に乗って落ちすぎると帰って来れないし2度と起き上がれないから気を引き締めなければならない。私はプリキュアで言ったら「血虚」タイプで感覚過敏不安過剰な自負があるので夜になったらさっさと寝るし朝起きてしんどい日は錠剤のユンケル飲んでる。今年の冬に27になる予定ですが大変なことはいろいろあった割に大事なことは進んでない感覚があって無意味に焦ってしまう、いやだなあ。なんでも経験すればいいってもんじゃない気がする。大変なことなんてない方がいい、今は小説のことばかり考えてたい、ジャスミンティー飲みながらSF小説とか読みたい、SFの、死体にアルコール消毒液をかけるような残酷さが好き、重金属性の心臓が溶けるくらい強いものが欲しい！<br><br>久しぶりに多和田葉子の本を読んだら美味しすぎて何度もため息をついた。高級品だ。文庫一冊まるまるこの人の言葉が詰まってるなんて贅沢。目に入る言葉全部取り入れて血肉にしたい。力になってください。お願いします。<br><br>自分の書いた小説はネット以外の友達に読ませられない。倫理を度外視して書いてるから。だけど倫理観がないものを書けるのは逆に世間一般の「倫理」というものを人一倍分かっていて俯瞰できているからで不道徳とかいう理由で特定のジャンルを遠ざけるなんて消化不良を怖がってジャンクフードを食べないみたいだ！<br><br><br></p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n7de4115601d3'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Sat, 06 Jun 2026 14:08:49 +0900</pubDate>
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      <title>【掌編】バスボム</title>
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      <description><![CDATA[<p name="1A806999-FC7D-4F1D-9B5D-A74CB56FF65F" id="1A806999-FC7D-4F1D-9B5D-A74CB56FF65F">　好きな人ができると浴室で名前を呼びたくなる。シャワーを止めた後に残り水がぽたっと落ちる音は、高いピアノの音が真っ暗闇のホールに反響するイメージを想起させる。ひとつの音が生み出す静寂と退屈。そんな閉じた空間に恋しい人の名前を落とすと、小さな声が天井に響いて、とても楽しいけど、彼は呼ばれた瞬間に消えて、本当に呼ばれたのかも、そんな名前があったのかも疑わしく、怖くなるから何回も呼ぶ。呼ぶ。呼ぶ。こんなことはお風呂でしかできない、お風呂には絶対に私しかいないから。自室の壁にはワンピースがたくさんかかっているから、彼女たちに好きな人の名前がバレたら恥ずかしい。だから私はお風呂が大好き、風呂キャンなんて信じられない。名前を呼んでいると、その人が偶像として浴槽に現れて、私と向き合ってお湯に浸かっている。私は膝を抱えながら彼と見つめ合って、嬉しくてはにかんでいるが、そのうち水位が上がってきて、彼は溺れていく、彼だけが溺れていくから、早く、もっと名前を呼ばなくちゃ、早く早く早く早く。<br>　ああ、また殺してしまった。<br>　昼間コインランドリーで会った中年の男に、人を殺してそうな目つきだと言われた。あなたになら殺されてもいいとも。周囲を見渡すと、等間隔に並んだ洗濯機、隅に重なって置かれたカゴ、アンケート用紙が挟まったバインダーが置いてある机、それに誰かが洗濯機の上に置き忘れた洗剤が何個かあった。私は机上のバインダーについていたボールペンを掴み、片手でキャップを外し中年男の右肘めがけてボールペンの先を思い切り刺した。一旦抜いて、前腕に更にペンをつき刺す。呻き声を上げた男の頭を今度は素手で横から打つと、男は大型洗濯機の角に頭をぶつけ、ずるりと身体をもたれて倒れた。頭からは血が流れていた。起きないことを確認してから、男を大型洗濯機のなかに入れ込む。ここまで予定したところで、丁度乾燥機が終わる音がした。<br>　人が犯罪を行う理由には生物学的要因として脳機能やホルモンの影響があり、情動のコントロールが効かないことや、生まれ育った環境や人間関係により形成された反社会的なパーソナリティが原因、らしいが、逆に逆に、逆にですよ、膨大な辞書として生きる賢いAIが、全ての言語を平等に認識しているせいで、「女」や「子ども」と同じように「死」を捉えて、浅い叙情性ゆえに殺人を可能にさせているとしたら、情動や何やらという理由は全て無意味になり、一般的な正義や倫理が簡単に死に跪く。<br>　ところで星は死ぬ間際に爆発する瞬間が一番輝けるらしいのですが、私は爆発したいのかもしれない、爆破したいのかも。目が眩むほどの一瞬のきらめきを、ずっとずっと見ていたくて、呼んだ瞬間消えてしまうあなたの名前を永遠にするため、私は今日も呼んでいる。</p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n465fafe9ad57'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 05 Jun 2026 19:26:43 +0900</pubDate>
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      <title>【掌編】Killer</title>
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      <description><![CDATA[<p name="F15D72C3-65CB-415F-9D8D-EE2BE0D3CA03" id="F15D72C3-65CB-415F-9D8D-EE2BE0D3CA03">私幸せって怖くて。幸せなほどいつか自分で壊してしまいそうだなって不安がずっと付き纏うの。<br>そう呟くと、クローゼットの死体を眺めていた彼がこちらを向いた。<br>「ひどい匂いだね」<br>「本当はもっとあったんだけど、置き場所に困って切り刻んで排水管に流したんだ。臭いが問題になって追い出されたら困るから」<br>「どうやって切ったの？」<br>彼が鼻を押さえながら聞いた。年下の彼とはさっき新宿のバーで会ったばかりだ。ワインをしこたま飲みながら好きな音楽の話をしたあと少し散歩し、冗談まじりにアパートに誘ったら本当についてきた。<br>「普通に、台所にブルーシートを敷いて」<br>「どれくらいここにあるの？」<br>「もう一年くらいかな」<br>「何人やったの？」<br>「10人くらい」<br>「全員のこと覚えてる？」<br>「覚えてるよ。名前は忘れたけど。仲良くした思い出は大切だもの。10人目とは神経衰弱を一緒にやった。夜中にホットケーキを焼いて朝起きたら死んでたから、ホットケーキが殺したのかも、ああでも首に痕が残ってたから私か」<br>それから私は10人目以外の男の話をした。六本木のクラブで一緒に踊った男。吉祥寺のレコードショップで話した男。都立家政の飲み屋で仲良くなった男。私は至極真面目な普通の会社員だ。日中真面目に働いて夜は飲みに出掛け、仲良くなった男を家に呼び、料理を振る舞うなど手厚く扱ったあと殺す。大体絞殺。<br>「なんで殺すの？」<br>「分からない。去ってしまうからじゃない。相手が」<br>「去ってほしくない？　支配欲があるの？」<br>「さあ。分からない」<br>「後悔はない？」<br>「もっと名前を呼べば良かったと思っている」<br>「悪いと思ったことは？」<br>「あのさあ、まるで私が犯罪者みたいに尋問してるけど、誰にでもこういうことってあるでしょ？　みんな殺人衝動や死に憧れを抱いてるけど、公に言うと道徳観念に問題があるから秘密にしてるんだよ。いやその道徳観念も正直よく分からないけど。生きてた時に普通に接していた人に対して死んだらそうできなくなるなんておかしいじゃない。私のことを尊重してよ」<br>「……ごめん」<br>私の剣幕に驚いたのか、彼は小さく謝った。その謝罪に満足し、すぅーと息を吸うと落ち着いた。<br>「あなたは優しい」<br>ぬるま湯のような声で言う。<br>「そうかな」<br>「優しい人は好き」<br>「ありがとう」<br>「今日はとても楽しかった。あのバンド聴いてる人って周りにあんまりいないから」<br>「僕もだよ。さっき作ってくれたオムレツはとても美味しかった。もっと君と一緒にいられたら良かったんだけど」<br>「あなたはとても大切な人。今日一緒に過ごしただけで分かった」<br>優しく肩を押すと、彼はベッドに力なく倒れた。<br>「お願いね。誤解しないでね。だいすきなの。愛してるの。これは愛するために必要なの。愛してるほど破壊したくなるの。やめられないの。人は愛がないと生きていけないでしょう？」<br>さっき会ったばかりの男に愛なんて言葉を使うなんて馬鹿げている。仕方ない。私はとても繊細なの。繊細さと残虐さは両立するの。ベッドの上で彼の首を締めながら、もう一度名前を聞いておけば良かったと思った。<br> <br></p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n2da14a98d972'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 04 Jun 2026 20:56:02 +0900</pubDate>
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      <title>20260602</title>
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      <description><![CDATA[<figure data-align="center" name="D0ADEE02-EAD6-46CA-B5D7-ACC55636EAB1" id="D0ADEE02-EAD6-46CA-B5D7-ACC55636EAB1"><img src="https://assets.st-note.com/img/1780400153-bTfHAlq5sUkBioxNn8Du3741.jpg" width="620" height="826" id="image-D0ADEE02-EAD6-46CA-B5D7-ACC55636EAB1"><figcaption></figcaption></figure><figure data-align="center" name="4764A0C6-682E-45F4-994B-5A920BA51B0F" id="4764A0C6-682E-45F4-994B-5A920BA51B0F"><img src="https://assets.st-note.com/img/1780400153-cUotEjMSa8KVxI2zn3u951wb.jpg" width="620" height="826" id="image-4764A0C6-682E-45F4-994B-5A920BA51B0F"><figcaption></figcaption></figure><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/nfe53c4e48214'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 02 Jun 2026 20:37:08 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/killthepussycat/n/nfe53c4e48214</link>
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      <title>【短編】高野くんとしたい</title>
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      <description><![CDATA[<p name="FD69D5CD-90D4-4DC5-B50A-E601FC8D3CAC" id="FD69D5CD-90D4-4DC5-B50A-E601FC8D3CAC">過去作の改稿版です。長いのですが結構気に入ってるので、お時間ある時に読んでみてください！</p><hr name="7538D786-1FB9-4EA6-B652-BFDD1640A4CD" id="7538D786-1FB9-4EA6-B652-BFDD1640A4CD"><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n2b723206ea24'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/271191412/profile_9845ee9373ed960e77ba4b62bcca82c7.png?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 27 May 2026 19:14:10 +0900</pubDate>
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      <title>Take Me as I Am, Whoever I Am</title>
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      <description><![CDATA[<p name="C1533EF1-2D3A-4D03-9BEE-2E521C18F66F" id="C1533EF1-2D3A-4D03-9BEE-2E521C18F66F">国分寺っていい街の名前、高貴で敷居高そう、高円寺も好きだから私は寺って名前がつく街が好きなんだな、そんな国分寺は前に住んでいた街で、通ってる病院が何個かあるので引っ越してからもたびたび行っていて、商業施設や飲食店を眺めていると過去の仕事やら学生時代やら思い出すけれど、当時はしんどいなあつらいなあで満ちていた思い出のどれもが今は美化されてて、自分の記憶処理能力が健康的。ファミレスでバイトしてた時閉店後にお客さんのいなくなった静かなホールのテーブルを拭く時間が好きだったし、眼科の看護師さんにワンピースを褒められて「男に会ってきたんで」と言ったらどっかんウケてそれから仲良くなったし、学生時代、早稲田卒業の年上お兄さんが好きだった時期、用もないのに高田馬場に行き早稲田までの道のりを歩いてあの人と同じ通学路を辿っている自分を嬉しがっていたが、実際付き合ったらうまくいくと思えないから、私は彼のことを好きでいる時間とか、彼との距離感が好きで、その余韻に浸るのが心地よかったんだ。国分寺の丸井で買い物していたら、ブルーに黄色い線が入ったウミウシの箸置きを見つけて、衝動的に買いたくなって、手に取って値段を見て商品棚に戻す。ウミウシのフィクション性、ずるいよなあ、あの触覚がずるいんよ、実際「イチゴミルクウミウシ」っていう原宿系ウミウシがいて、白とピンクと紫とオレンジの色合いが嘘みたいにキュートなんだけれど、世間にウミウシ(あとメンダコ)の可愛さがバレて、Tシャツや靴下に柄として取り入れられてるのが悔しいなあ、ほんと、動物のことが好きだから消費社会に利用されるの嫌よ、人工の光をビカビカ当てて展示するタイプの水族館、隕石落ちればいいと思ってる、あーでも能年玲奈は好きよ、『幸せカナコの殺し屋生活』のね、うそうそうそうそコツメカワウソ‼︎<br><br>今住んでるアパートのこと結構気に入ってて、四方八方大家さん一家に囲まれていて全部豪邸なんだけど、特に土曜の午後に窓を開けてると裏に住んでるおじいさんが孫とかくれんぼしてる声が響き渡ってて、もういいかーい、まーだだよー、ってずっとやってる、何回もやってる、お姉さんも混ぜてよ〜ニコニコ〜って行きたいんだけど、不審だからやめてる、ところで自分のことお姉さんって呼べるの何歳までオッケー？<br>隣の部屋に住んでる子は私と同年代の美容部員らしい、これは大家さんが私に言った情報、ガバガバセキュリティいいんかい、で、先月まで深夜2時にバンバンバンバン！という異音が聞こえてきて、死体をすり潰してるんじゃないかと疑っていたのだが、よく聞いてみるとミシンの音、たぶん裁断の音だと気づいて安心、そんでもって下の階に住んでる大学生っぽい男の子は、部屋に女の子を複数人呼んでワーキャーしている夜があって、アパートの前を奔放に走り回ってることもあり、大学生なんだからそりゃあ乱交くらいしますよねえと許しているが、早朝に階段の下でタバコ吸うのだけやめてほしい、匂いがどうたらよりも、ゴミ出しに階下に降りてきた寝起きパジャマどすっぴんの私を不意に見られることに耐えられん、気まずい、ほんとに、目合うな。<br><br>日が暮れる前、友達のペンギンちゃんと公園で縄跳びをしていたら、上下赤ジャージのおじいちゃんがニヤニヤしながら近づいてきて、「君たちいくつ？」と聞いてきたので馬鹿正直に実年齢を答えようとすると、咄嗟に友達が「高校生です！！」と被せてきて、なるほど、知らない人に声かけられたらこうするのね、自分の素直で率直すぎる性格は長所だと思ってるけど、こういう時に危ないんだろうな、反省。ほんで2時間公園にいたけれど縄跳びは合算したら5分くらいしか飛んでなくて、大体お喋りに溶けていた。<br><br>シラフでも酔っ払いみたいに喋れる特技があって、特技って言ったけど実際は分からない、ふにゃふにゃしてると見られるのが損な時もあるから、でもそういう喋り方の時私はすごく機嫌が良くて、なんでもできちゃって、ただこの特性が近しい人から見ると落ち込んでる時との落差がある、感情ジェットコースターと言われ、自分でも躁鬱なんじゃないか、病気かなって思ったことあるけれど、おい、なんでも病気にするな、個性だろ、だから病院には行ってないけれど、アイスカフェオレで機嫌が良くなるとか、鬱から躁への持っていき方を自分で分かっているから、コントロールできてるなら問題ない、はず、うん。好きな海外ドラマで、Amazonプライムビデオで観れると思うんだけど、『モダン・ラブ』ってシリーズがあって、なかでもアンハサウェイが双極性障害を演じてる回がずっと好き。ハサウェイ演じる主人公のレキシーはめちゃくちゃ仕事ができるけれど、鬱の時に休みがちになるせいで何度か首になり、躁の時はオシャレして街に出掛けて、素敵な恋愛を始めようとするけれど、好きな人との約束を鬱の時に破ってしまって、相手にはそれが病気のせいだと気づかれなくて、躁鬱であることを誰にも言えないでいたなか、ひとりの同僚にだけ初めて告白して、それでそれで。この回を見ると、傲慢ですが、いつも彼女と自分と重ね合わせてしまって、ちょっと泣く。幾度となく否定される気分のムラを、不完全さを受け入れてくれよ、っていうのは押し付けなんだろう。相手にも相手の都合があるもんね。<br><br>今日もお仕事お疲れ様です。あ、冷凍庫にショートケーキあるよ〜。絶対に腐らせたくなくて冷凍庫に入れてみたんだ。冷たいもの好きでしょ？</p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n360055813599'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 26 May 2026 17:29:50 +0900</pubDate>
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      <title>20260524の日高屋</title>
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      <description><![CDATA[<p name="2A2F34A9-11B6-494E-920D-7F083CE158A7" id="2A2F34A9-11B6-494E-920D-7F083CE158A7">仕事終わりに日高屋に寄った。日高屋が特別好きなわけではないが「飲んで帰りたいんでんですけどこがいいですかねー」と酒飲みな先輩との間に張られた薄い膜を世間話で破って沈黙をこちらに近づけないために投げた質問に「日高屋で飲むの結構いいよ」と返されたから。それだけ。この経験が次に交わす先輩とのラリーに役に立つだろうと考えるのは主体性がないよなとメニュー表を見ながら嫌な気分になるけれど気を取り直してレバニラとレモンサワーを頼む。レモンは好き。晴れた夏の青い空を彷彿とさせるような爽やかな酸っぱさはぼんやりした意識に光を差す。だけどレモンサワーは少し違う。炭酸で薄められた人工的なレモンは私を呼び覚ましてくれない。じゃあどうして頼むのかというとこれが一番度数が低かったから。私はお酒が弱いので、必ずしも安全ではない外で色情に巻き込まれ積み重ねてきた社会性のジェンガを崩されるほど酔っ払う度胸がない。隣のサラリーマンがイヤホンをつけ壁に立てかけたスマホで映画を観ながらラーメンを啜っているが私には到底できない芸当だ。私は味覚と嗅覚と視覚を使う時にどれを多めにしてどれを少なめにするかそのバランスを上手く取れない。レバーを箸で掴む。口に入れる。噛む。酒で飲み流す。咽喉がピリリ。店内で流れる流行りのポップソングが耳障り。聴きたくないものを無理やり聴かされる人工災害。美味しい。この曲なんだっけ。結構脂っこい。レモンサワーの炭酸はすぐに抜けた。ひとりでお酒が飲めるようになったら大人になった証拠だと思っていた。美味しく飲めないならまだ大人になりきれてないということで未来に伸び代があるという希望的観測。脂だけ浮いたお皿をテーブルに残して会計を済ませ、店を出てから無様に赤くなった顔を覚ますために歩いて帰ることにした。暗い場所に沈んでゆくのは嫌いじゃない。こんこんと眠ろうとする夜に抱かれたく夢遊病患者のように高架下をふらふら歩いた。<br><br></p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n58732054f4bb'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Sun, 24 May 2026 23:05:25 +0900</pubDate>
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      <title>わたしの可愛いあなた</title>
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      <description><![CDATA[<p name="10434455-EA52-463B-B497-8EEAF4C253CB" id="10434455-EA52-463B-B497-8EEAF4C253CB">職場にきれいな女の子がいる。中途採用で入ってきた女の子でおそらく私と同じ歳か年上。凛と伸びた背筋に自信を貫かせて彼女が電話相手に発する言葉やキーボードで打つ数字は全て本物な気がする。それは彼女が有能だからというのもあるけど彼女のきれいさが信じたいと思うに値するほどの力を持っているからだと思う。前職はホテルのフロントだったらしいけどきっと彼女は何をしても成功する。どんな提案や勧誘でも彼女の話なら全てが正しく思える。美しさには力がある。クレオパトラに魅了されたカエサルもアポロンとダフネを彫ったベルニーニも美しさで世界の歴史を動かしたでしょ。嫉妬執着強奪悲哀ありとあらゆる感情が詰め込まれた世界はあまりにも醜くて息がしづらいけど、そんな醜悪な空間から私を解放するのが美しさだ。くだらない争いに窒息してそうになった時は一分一秒でも美しいものを目に入れるし、美術館やアイドルはそのために存在している。そういう意味で私は彼女に惹かれていて、同じ職場だというだけで自然に自己肯定感が上がる。<br><br>こういう文章を書いているとあなたは女の子が好きなの？と聞かれるが、別にそういうわけではない。率直に気持ちを伝えてくれる男には興奮するし、男のアイドルだって普通に好き。ただ苦しみをたくさん共有できるのはやっぱり女の子の方じゃないかなあ。女の子はどれだけ性格が悪く見えても最終的には可愛がれる、分かってあげたいと思えるのだ、私は。それが自分を愛することに繋がっているから。</p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n7eeda427fc45'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Sat, 23 May 2026 21:54:26 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/killthepussycat/n/n7eeda427fc45</link>
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      <title>20260521のマイマイ</title>
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      <description><![CDATA[<p name="8C87FC40-0E17-4C40-B3C9-9A21CA9284F8" id="8C87FC40-0E17-4C40-B3C9-9A21CA9284F8">　9月に出る大阪文フリに向けて本を作っていたら思っていたよりだいぶ早く完成しそうだったため、ガッハッハもう出せるわよ余裕余裕〜って夏のZINEフェスに申し込んでしまい、そしたら急にスケジュールがタイトになって早く印刷所に連絡したいけど表紙が決まらなくてアワアワの状態今。買って買って、通りすがりの人全員振り向かせるくらいpussyでfunnyな本だから買って、大人になりきれない26歳の荒削りな青春を見て、自分自分で死ぬほど恥ずかしいけどいいの作品って恥ずかしいものだもんねだからお願い買って〜〜〜あ、こういうことってあんまり言わない方がいいですか？<br>ということで7月は楽しいこといっぱいあるのですよ？まずZINEフェス前日にある浅草のほおづき市行きたすぎるでしょー。風鈴とほおづきがセットで売られて3000円！一日のお参りで46000日分のご利益を得られるチート技！なにより着物着たい、紺色に大きいお花柄の、そのために伸ばしてきた髪がつやつやなのよ〜！<br><br>　数日前の話ですが職場の同僚とゲーセンに行きました。自認お嬢様なので学生時代から「げぇむせんたぁ」とやらで遊んだことはほとんどないのだけれど、太鼓の達人にハマった同僚の話を聞いて羨ましくなり仕事のあと連れて行ってもらった。ガチャガチャ音が鼓膜を揺さぶるゲームセンターは万華鏡の中にいるみたい！って前にも描いたことある気がする。同じ喩えって何回も使っていいのかな。いっか。どうせみんな忘れてるでしょ。ダンスダンスレボリューションでドスドス飛び跳ねたり常人には見えない手の速度で円盤を打ちまくる人たちはなんだか自意識が突き抜けてて羨ましい。おしっこ漏れたりしないのかな。「さてさて庶民の遊びを体験してみますわよ〜」のノリでやってみた太鼓の達人とダンスダンスレボリューションで撃沈。後ろで見ている同僚の笑い声がありがたい。どうして運動神経が悪いことを忘れていたのだろう。なにより一番気になっていたのは『mai mai』。丸い画面の周辺にボタンが並んでリズムに合わせて叩いていくアレです。大人しくて愛嬌があって昼食はピンク花柄のお弁当箱に手作りの卵焼きを詰める清楚文学系OLで通ってる私が『maimai』めちゃくちゃ上手かったら絶対ウケるでしょと思って挑戦。曲はデコニーナさん大好きなのでヴァンパイアとアニマルを選択。全然余裕で下手だったが久しぶりにボカロを聴いてシラフなのに酔ってるテンションになり円盤をバンバンバンバンバンバン衝動を逃すように両足でぴょんぴょんぴょんぴょん。同僚ずっと笑ってる。同僚ってか友達。仮にペンギンちゃんと名付けよう。彼女はペンギンが好きな子だから。ペンギンちゃんはモバイル型のエナジーをくれる友達。なんか最近冷たいなと思う時は私の方がおかしい時で、私の挙動や言動から違和感を感じとって私を明るいところに引き戻してくれる友達。今日だってゲッターズ飯田がXで「出会いがないのではなく、自分に魅力がないことに早く気がつくといい」と呟いていたことに対し「占い師のクセにマジレスするんじゃねええ」とキレていて泣くほど笑ってしまったのだが、涙が出たのはゲッターズが面白かったんじゃなくて彼女の底抜けの明るさに救われてありがたかったから。だいすきなのよ。これ読んでないけど。<br><br>　初対面の人に相対性理論が好きだと話したら「地獄先生が好きそう」と言っていただき、ピンポンピンポン大正解一等賞の君にはバナナをあげよう！って感じ。あの儚げで少女然とした声で「せんせぇ〜⤴︎」と歌われるとたまんない、「フルネームで呼ばないで　下の名前で呼んで」が狂わしいほど好き。やくしまるえつこ氏の声を聞いてるとふわふわしてきてどこまでも飛んで行ける青い妖精になった気分。『マイハートハードピンチ』と『小学館』もいいよ。あいうえおっとかーきくけこれは〜♫<br><br><br></p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n3388d6e36130'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 21 May 2026 21:21:56 +0900</pubDate>
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      <title>【詩】彼女</title>
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      <description><![CDATA[<p name="80C85F4F-823D-487D-BFF2-8FBBAD069496" id="80C85F4F-823D-487D-BFF2-8FBBAD069496">1<br>彼女　電波がなくて困ってるの。観たい映画があるのに<br>彼　　僕の電波使う？　このスマホから出てるんだよ<br>彼女　君の隣にいないと満足に映画も観れない<br>彼　　一緒に観ようよ<br>彼女　あなたは私の横顔だけ見てればいいよ<br>彼　　いや横顔も見るだろうけれど<br>彼女　きれいな女優が君の目に入るのが嫌なの<br>彼　　分かりました<br>彼女　ママからLINE来たけど返せない<br>彼　　僕の電波あげるよ<br>彼女　ありがとう。君がいないと何もできない<br> <br><br>２<br>彼女　あなたのことが好き。<br>彼　　僕も好きだよ。<br>彼女　あなたの声が好き。聞いてるとむらむらするの。<br>彼　　毎日電話しよう。<br>彼女　あなたと寝るの好き。天国にいるみたい。<br>彼　　もっと大きいベッドを買おう。<br>彼女　あなたの考えてることが好き。冷静で理知的。<br>彼　　きみのはげしい感情が好きだよ。<br>彼女　あなたの語彙が好き。ずっと舐めていられるの<br>彼　　いっぱいお話ししよう<br>彼女　あなたといると寂しい。<br>彼　　寂しくないよ。ずっとそばにいるよ。<br>彼女　あなたのことが好きなのにそれがとても悲しい。<br>彼　　どうして？<br>彼女　幸せでいることが怖いの<br>彼　　物事を悲観的に考える癖があるんだね<br>彼女　明日車に轢かれない？<br>彼　　轢かれないよ<br>彼女　間違えて包丁が胸に刺さったりしない？<br>彼　　しないよ<br>彼女　私って頭のねじが抜けてるでしょ<br>彼　　そこが可愛いんだよ<br>彼女　私のこと好き？<br>彼　　好きだよ<br>彼女　ほんとうに？<br>彼　　ほんとうに<br>彼女　嘘じゃない？<br>彼　　嘘じゃない<br>彼女　嘘だったら？<br>彼　　殺されてもいいよ<br>彼女　ひとりで出頭したくない<br>彼　　君をひとりにしないよ<br> <br><br>３<br>彼　　お嬢さま<br>彼女　なにかしら<br>彼　　今夜電話するには疲れすぎてますよね<br>彼女　あらよくってよ<br>(通話開始)<br>彼　　もしもし<br>彼女　おつかれさまぁ<br>彼　　久しぶりに声聞いた<br>彼女　そうねえ<br>彼　　次に会うまでの一日一日がものすごく長く感じる<br>彼女　そうねえ。ねーえ、今日寒くなかった？<br>彼　　寒かった。雨に濡れて頭がぺちゃんこだよ。しいたけみたい<br>彼女　食べちゃおうかしら<br>彼　　それはやばい<br>彼女　ふふふ<br>彼　　……なんか今日ふわふわしてるよね。眠い？<br>彼女　眠くない。特技なの。シラフでも酔ってるように喋るのが。<br>彼　　そういうこと<br>彼女　ふわふわふわふわ、雲が空を揺蕩うように言葉を並べるだけで生きていたい。<br>彼　　それはいいね<br>彼女　それを君が聞いてくれたらもっといい。<br>彼　　それもいい<br>彼女　ねえ、本当に眠くないんだから。すぐに切っちゃだめよ<br>彼　　切らないよ。全然切らない<br>彼女　よろしい<br> <br><br>４<br>私を彼女にしたからには<br>あなたはこれから酷い目に遭い続けるでしょう<br>私を彼女にしたからには<br>私の降らせた雨に足止めされて家に帰れない<br>私を彼女にしたからには<br>フライパンで頭を焼かれて食べられるでしょう<br>私を彼女にしたからには<br>浴室で水風呂に沈められても文句言えない<br>私を彼女にしたからには<br>手足を引き千切られクローゼットに収納される<br>私を彼女にしたからには<br>私の言葉でしか栄養が取れなくて<br>私を彼女にしたからには<br>私の吐く息しか吸えなくなり<br>私を彼女にしたからには<br>あなたは一生後悔し続ける<br> <br><br>５<br>お前の被害者意識にはうんざりだよ。お前に言ってんだよお前お前お前。僕は疲れました僕は傷つきました僕の時間が奪われました僕はこれが嫌いです。はいはいはいはい。結局自分のことしか考えてない奴の紋切り型の発想。自分自分言ってる奴は大抵しょうもないんだよ。蜂蜜に砂糖ぶっこんだようなゲロ甘い会話で私の脳味噌ごまかして差し出すチンコの気が済んだら猿みたいにキィキィ喚いてグズってペシャってシコって寝るだけ。帰れよ動物園の檻の中。<br> <br><br>６<br>出会えたことの喜びが<br>別れる悲しさを生み出して<br>触れ合う時のあたたかさが<br>ひとりの寒さを震わせる<br>好きだよと口にするたびに<br>嫌いが私のなかを占める<br>顔を引き寄せてキスした後<br>思い切りぶん殴りたくなる<br>幸せのために犠牲にする痛みを手放せない<br>堕落が落ち着くね<br> <br><br>７<br>くるしい？　くるしい。くるしいの？　くるしい。くるしい？　くるしい。いいじゃん。くるしいのいいじゃん。覚えてね。これがわたしのくるしみ。はい。わかった？　はい。すき？　すき。だいすき？　だいすき。誰よりもすき？　誰よりもすき。いちばんすき？　いちばんすき。ずっとすき？　ずっとすき。これからもすき？　これからもすきなにがあってもすき？　なにがあってもすき。かわいい？　かわいい。かわいい？　かわいい。誰よりもかわいい？　誰よりもかわいい。すき？　すき。すき。だいすき。<br> <br><br>８<br>腐ったにおいがする<br>ドアの隙間から入り込んで<br>床まで染みこんでいる<br>ここはとても暑いの<br>冷蔵庫には何もないよ<br> <br>雨の音がする<br>天井の隅が異様に黒い<br>トマト缶で煮込んだお肉が<br>噛み切れない<br>床下には何もないよ<br> <br>部屋に来たいって<br>好きにしていいよと言ったのはあなたあなたあなたあなたあなたあなたあなたあなたあなたあなたあなたあなたあなたの傲慢<br> <br>大切になりすぎた<br>大切になりすぎた<br><br> </p><hr name="0699E9E6-8035-46BB-AEDA-E6B2D9ECE791" id="0699E9E6-8035-46BB-AEDA-E6B2D9ECE791"><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n487e7fe729b1'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/271191412/profile_9845ee9373ed960e77ba4b62bcca82c7.png?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 20 May 2026 14:00:39 +0900</pubDate>
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      <title>20260517</title>
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      <description><![CDATA[<p name="CFE2BFF0-D9A4-4EC8-B5C2-3017CD926418" id="CFE2BFF0-D9A4-4EC8-B5C2-3017CD926418">懇意にしてた人と別れた。こちらは一方的に別れを告げられた認識だけど、あちらとしては実は内部に積み重ねて来た感情があったのかなと思うと申し訳ない…が、SNSを全ブロックされ完全遮断って、そんなに全力拒否するほど嫌いですか！！この人でなし！！ムキーっ！！という気持ちもある。まあ分かりやすく一区切りつけたかったのかなと理解するしかない(大人だね〜)別れた夜は食欲はないし眠りも浅かったけれど、起きたら普通に仕事は行けるし家事もできて、同僚たちと喋りながら生活を回していたら夜には回復しきってこんな砕けたノリノリなnoteまで書けている。結構タフですよね。<br><br>不安がったり危うくなったりする性格を「メンヘラ」の一言で括られるのが好きじゃなくて、それでもその記号が結局分かりやすくて使いやすいから使ってしまうのだけれど、私は実は手のつけようがないほどメンヘラだと自覚があって、それ以外は普通なのに恋愛だけおかしい、目を覚ませと同僚に言われるほどですが、不安定な恋愛がうまくいかないと経験上わかってたので、ひとりで機嫌を取れていることをアピールするために自撮りを送ったり、会いたい寂しいを封印して来たけれど、そうして無理をしていると自分がすり減っているのをどこかで感じていて、だから結果的にはこれで良かったね。夏のデートに来て行こうと思っていた超絶可愛い透け透けワンピースは次に出てくる大切な人にとっておく。私は夏が一番可愛い時期なので。<br><br>なんだかんだ今日は開放感と憎悪を繰り返していたから、蛾の鱗粉とゴキブリの粉末をブレンドしたコーヒーを飲ませたいなとか、寝てる間に瞼の上にアロンアルファ塗ってやりたいなとか、椅子に縛り付けて電車の線路に置き去りにしたいなとか、気を抜くとそういう類の悪口が出て来て、さっきだって別れ際の相手のメッセージの句読点の位置がキモいって友達に話してたんだけど、やっぱこうして文章に書くのが一番落ち着くね、ありがとう、別れ際の正しいメッセージは「ごめんね」じゃなくて「ありがとう」でしょって言いたいけど、この文章読んでないだろうな、読まないでください。はあ、いい香りがするお風呂に入ろうっと。明日のお休みが楽しみ。</p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/nf17a4609502d'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/271191412/profile_9845ee9373ed960e77ba4b62bcca82c7.png?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Sun, 17 May 2026 19:22:22 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/killthepussycat/n/nf17a4609502d</link>
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      <title>ことば狩り</title>
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      <description><![CDATA[<p name="1F33B674-E80A-43DD-B074-054646F4C3B8" id="1F33B674-E80A-43DD-B074-054646F4C3B8">「さびしい」なんて言葉ない方がよかった。本当は「おなかすいた」「ねむい」「あつい」「暇」「疲れた」の方が事実かもしれないのに、「さびしい」と言ってる自分が叙情的で平凡な生活に物語性が生まれて「なんかいい感じにステキ」になるから使われてる気がする。「疲れた」も言葉として重い割にふわっとしていてこちらを不安にさせるばかりだ。「肩が凝った」「目がシパシパする」「頭が痛い」の方が解決への道筋が明るくていいじゃないか。<br><br>　前にとてつもなく美味しい牡蠣を食べた時に「おいしい」ではなく「悲しい」と言ってしまったことを後悔している。おいしかった事実が大きすぎて、頻繁に使われる「おいしい」で完結させることが悔しく個人的な感情を入れて感想を膨張させてしまった。変なプライドなんて掲げずにお前は「おいしい」に負けていればよかったのに。<br><br>　コミュニケーションが分からない。大体の人は分かり合えないのだから相手の考えてることを知りたいと思ったり自分の内面をあまねく知ってもらおうとするのは変だ。親しい人ほど何考えてるのか分からないまま一緒にご飯を食べたり映画を観たり、同じ時間を過ごして、それで、だから、なんなんだ。「孤独」なんて言葉要らなかったよね。どうですか？</p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/nd5316d023452'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 15 May 2026 20:44:58 +0900</pubDate>
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      <title>【掌編】Fxxk the Cat! Kill! Kill! Kill!</title>
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      <description><![CDATA[<p name="F40C2E51-6ADD-49A1-81F3-6B67BE183F9F" id="F40C2E51-6ADD-49A1-81F3-6B67BE183F9F">昔から押しに弱いっていうか、他人と境界線を引くのが苦手で、嫌われたくないからやたら相手のことを持ち上げたり、場の空気を悪くしないためにヘラヘラ笑ったり、彼氏のことを根掘り葉掘り聞かれたら全部答えちゃうとか、親にこれしなさいあれしなさい言われたらその通りにしちゃうとか、初対面の人にもやたら愛想良いから勘違いされたり、その結果大切にしたかったはずの関係性が危うくなったり、そういう自分の性質にね、本当に嫌になっててね、優しいんでしょって言ったら聞こえいいけどね、距離を取るのが下手くそで不器用な女でね、気の弱い美人は生きづらいってYouTubeかなんかで見たな、いや別に自分が美人だって言いたいわけじゃないけど、っていうのはちょっと嘘、東京には可愛い子いっぱいいるけど私の存在は顔面も才能も含めてそこらへんの子より全然格上、圧倒的勝者、ワールドイズマイン。話戻すけど実際大人しい女は不利なんだよ、だって不健康な男を見抜けなくて不道徳な男にやたらモテる、女からは嫉妬嫉妬嫉妬、嘲笑、軽蔑、こんな自分のなよなようじうじする性格を何回も治そうとして、行動や体裁だけでも変えようとしたけれど、根本的には変わってないから究極的な場面でひよった結果、口では何も言えず、代わりに脳内で悪口言うことばかり上手くなる。はーお前の被害者意識にはうんざりだよお前に言ってんだよお前お前お前、自分疲れました傷つきました大事な時間が奪われました、はいはいはいはい、結局自分のことしか考えてない奴の紋切り型の発想、自分自分言ってる奴は大抵しょうもない、薄ら寒いやりとりで脳みそ誤魔化してゲロ甘い言葉吐き出し気が済んだら猿みたいにキィキィ喚いてグズってペシャってシコって寝るだけ帰れよ動物園の檻の中。ところでトラとかヒョウとか群れない動物の何がいいって、喋らないことだよね、子育てが終わったら親は干渉してこなくて、自由自由自由、走って走って誰もいない草原でグースカピー、いいないいな、うらやましいなあ、私もそっちに連れてってよ、そのぶん死亡率は高くなるよって、いいですもう、それでいいんですよ私、人生諦めモード、でも実際あれよ、目の前に車が走って来たらしっかり避けちゃうんだから、解脱のフリして秒で繋縛、煩悩の大洪水。<br>「甘いもの食べたい」と同じイントネーションで血が出る話書きたい。赤って素敵。酸素を運び心臓を動かす血液。警告や危険を表す信号。涙を誘う夕焼け。誘惑の林檎。膝で腹を突き上げて神経細胞を破壊、口から飛び散る臓物と血の塊。もしくは背中に突き刺す鋭い刃。肺を貫通し溢れる血液。いやただの包丁は地味か。令和の若者はやっぱチェーンソーでしょ。チョークスターターグリップを引いてエンジンを始動、チェーンブレーキ解除、青空を引き裂くけたたましい雄叫び。ドゥルルッギュイーンバババババババババ。首を飛ばせば鮮血が吹き上がり、上半身に切れ込みを入れれば腕がつながったまま空に飛ぶ。下半身はぶるっと痙攣したのち膝から崩れ落ち、傾斜した断面図から見える肺と骨と脈打つ心臓。ドーパミンセロトニンテストステロン。あー気持ちいい、こんな女にしたの誰？　明日は海でも見てくるよ、本当は青色の方が好きだもん。おやすみーまだ寝ないけど。</p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n0940481cddd4'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 12 May 2026 21:40:58 +0900</pubDate>
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      <title>【掌編】Cruel Cendrillon</title>
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      <description><![CDATA[<p name="8DB04CAA-1909-4C74-ABD9-F3CAD9DA6AF7" id="8DB04CAA-1909-4C74-ABD9-F3CAD9DA6AF7">　愛はいずれ愛憎に変わるものだと気づいてから、私はとても安心したの。突き詰めればなんでも皆「やる側」に回り始める。ロックを聴いた人は楽器を買うし、ケーキが好きな子はパティシエに、小説を読む人はいずれ書き始める。そのうち「好き」にこだわりができて、自分主体であったはずがどんどん「好き」を取り巻く世界に振り回されて、なんでこんなことにと思いながら、やめられなくて、執着は残り続ける。万物みんなそういものだと気づいてから、私は楽になったのよ。<br>あなたが私を殴ることも、もちろん愛の裏返し。痛みは蜜となり、殴る習慣は私の身体に自然に受け入れられ、白い肌についた痣は赤いバラとして咲き誇る。激しさと痛みと暴力で自己表現を図る幼稚なあなた。愛おしい。そう思える私は幸せもの。誰かを愛せる才能があって良かった。もう何をされても離れられないの。私は世間知らずのプリンセス。何も見えない、聞こえない。大人しく微笑むだけの女だから、あなたの裏の顔に気づかないままここまで来てしまったけれど、とてもひとりでは生きられないし、他に生きていく場所もない。あなたに必要とされることでしか価値を見出せないから、お気に入りの服も靴も全部売って、あなたの好きなお金に変えて、そうよ私はあなたの紙幣、使い回され揉みくちゃにされ、くたくたになって死んでしまう。ドレスもヴェールもビリビリに引き裂かれたけれど、涙は出ない。泣きたい時に笑ってしまうのが昔からの癖なの。<br>　今夜の晩餐はあなたの好物ばかり並べて、お酒も上等なものを用意したの。午前0時に外から帰ってきたあなたと、いやらしい紅のテーブルクロスが敷かれたテーブルに向かい合って座る。ワインを流し込むあなたの、冷たい唇を見つめて笑う。目があってすぐ、あなたが椅子から崩れ落ちた。台所の床下倉庫に違法密造として注意喚起されてるロシア製のウォッカが残っててね、湯煎して蒸発した気体を蒸留すると、簡単に毒になるって、知ってた？　あなた、私がなんにも知らないと思ってたでしょう。<br>　倒れたあなたに跨って喉元にナイフを突き立てる。可憐な薔薇が私だけにあるのはもったいない、きっとあなたにも似合うから。愛してる。愛され方を知らなかっただけ。</p><br/><a href='https://note.com/killthepussycat/n/n1ae3c943de8c'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>香椎カレン</note:creatorName>
      <pubDate>Sat, 09 May 2026 21:23:21 +0900</pubDate>
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