波打際外伝16話 江の島龍神伝説 Enoshima: Rise of the Dragon God
江の島の岩屋についた時政は、供の者たちを岩屋の入り口に待機させ
一人で中に入っていった。

灯火だけの明るさなので、本当に暗い。
はじめは立ったまま歩けたが、次第に狭く、天井も低くなる。
かがみながらゆっくりと進む。
先が二股に分かれている。迷ったが左に入った。
さらに細くなる。
横の穴につながるところで立ち止まり、
灯火を下に置いて、胡坐をかいた。
奥から少し、風が来ているようだ。
どこかにつながっている。

噂では、富士山までつながっていると聞いている。
が、あまりにも細く、それを確かめることは不可能だ。
暗さに目が慣れたのだろう、ぼんやりと奥が見える。
白い蛇が動いたように見えた。
白蛇は神の使いだという・・・が、やはり気のせいか・・・
昔、空海がここに来ていたらしい。
こんなところで座禅していたら、悟りも開けよう。
しばらく、時政も座禅してみた。
悟りはしないが、声が聞こえた気がする。
その方向をみると、龍がいる。

手を合わせると
「その方、いつ来たのじゃ?」
「見かけぬ顔じゃな」
「昔、よく僧侶が来て、わしの前で座禅をして居った」
「その者、のちに弘法大師とかになったらしいの」
「ああ、そうじゃ、この間も来た者がおる」
「源氏の棟梁だとか言っておった。」

「父祖の無念を晴らすのじゃとかで、平家の打倒を祈願しおった」
「平家の打倒など、わしの範疇ではないのでな・・・その願いはお断りした。」
「その源氏の棟梁という男は、困ったような顔をして居った。」

「思い直したようにこう言いおった。」
「鎌倉を都にし、発展させとうございます。とな・・・」
「そう来られると・・・、断れぬわな・・・」
「おぬし。まさか平家打倒とか言わんだろうな」

「え、あ、その・・・」
「ほ、北条家の繁栄をお願いいたしたく存じます。」
「ほう・・・・おぬし、なかなかな御仁じゃな。」
「・・・それも・・・断れない願いじゃな・・・・」
「よかろう。そなたの子孫は天下人になるであろう。」
「その願い、聞き届けよう。」
龍の姿は見えなくなった。
後には、三枚の龍のうろこが残っていた。
これが、北条家の家紋 ミツウロコである。
そののち、源頼朝は征夷大将軍となる。
鎌倉幕府は成立し、平家は滅亡した。

後に鎌倉幕府の執権を独占する北条家の最初の執権が、
この北条時政である。

鎌倉は、武士の都となり、
確かに・・・・発展した。

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