不機嫌と外国語は、相性が悪い
夕方から、なんだか機嫌が悪かった。
なにか特別な出来事があったわけではない。思い返しても、なにが決定的な原因なのかはよくわからない。
やろうと思っていたことができなかったとか、簡単に済むと思っていた作業に思いのほか時間を取られたとか。そんな些細なことが、少しずつ積み重なったのだと思う。
だから、夫の話す英語の解釈を間違えて、会話がちぐはぐになってしまったときも、それを解きほぐそうとする気にはなれなかった。英語を聞いて理解するという、生活の一部になっているはずの作業すら、面倒くさくてうんざりした。職場に新しく来たAさんが仕事でアップアップしている様子を、そんなに詳しく教えてくれなくていいよ、とも思っていた。
不機嫌と外国語は、どうにも相性が悪い。
でも国際結婚をしていると、機嫌が良くても悪くても、外国語はいつも生活の中にある。
子どもたちが寝静まったあと、わたしは夫に言った。
「わたし、今日は機嫌が悪かったの」
知ってると思うけど。八つ当たりして、ごめん。
夫は「えー、そうだったの」と大袈裟に驚いてみせてから、「どうして?」と聞いた。
わたしが「よくわからない」と言うと、それは別にどちらでもいいという顔をして、それ以上は深追いしなかった。
「でも、機嫌が悪いって教えてくれてありがとう。言ってくれたら、ああそうなんだってボクもわかるから。二人のコミュニケーションにとって、きっといいことだと思うよ」
そう言って、にこりと笑った。
単純なもので、このやりとりだけで不機嫌はずいぶん軽くなった。この会話も、もちろん英語だったけれど。笑って受け止めてくれる人がいるというのは、ありがたいことだ。
だから、今度また機嫌が悪くなる日がきたら、夜まで待たずに言おうと思う。
“I’m in a bad mood!”
それだけで、ちゃんと伝わるのだから。
(おわり)
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