春はあけぼの、いとおかしからず。
春はあけぼの。ようよう白くなりゆく窓辺、まだ眠っていたい時間に、娘が起こしに来た。
昨晩から鼻がつまっていて、うまく眠れなかったらしい。間をおいて、二度も来た。正直、わたしは眠い。かなり眠い。
わたしを起こしたところで、鼻づまりは治らない。
そう思ったけれど、口には出さなかった。言ったところで、起こされたことに変わりはない。
そういえば昔も、わたしに伝えたって何も解決しないようなことを知らせるために、わざわざ夜中に起こしに来ていた。「ママ、おしっこしたい」とか。
娘にとっては、解決してほしいというより、ただその状態をわたしに渡して、安心したかっただけなのだろう。
かつては毎晩のように起こされていたのが、いまやこうして特別な事情で眠れないときだけに限られるようになった。子育てというのは、毎日が同じ繰り返しのようで、少しずつ変わっていく。
娘の部屋まで戻り、布団をかけてやると、すぐに目を閉じて眠りに落ちていった。
一方わたしは、そのあとしばらく寝付けなかった。こうやって眠りをたち切られると、その瞬間は眠くて気絶しそうなのに、いざベッドに戻ると目が冴えてしまう。
静かな早朝に、眠気だけが置き去りになる。
春のせいではないけれど、ただ、眠い。いとおかしからず。
(おわり)
