娘の宿題が、いつの間にか大喜利になった話
「ママ、『白いもの』を言ってみて」
宿題をしていた娘が、急に顔を上げてそう言った。
小学2年生の娘は、月ごとにプリントのパケットを持ち帰ってくる。その中に作文のお題表があり、そこから好きなものを選んで自由に書く。それが宿題だ。
聞くと、この日のお題は、こうだった。
「Snow is white. Make a list of other things that are white.」
(雪は白い。ほかの白いものをリストにしなさい)
娘は、すでにいくつか書き始めている。
a snowshoe hare(雪ウサギ)
The fat of a piece of steak(ステーキの脂身)
paper(紙)
the tip of your nail(爪の先)
「これ、作文か?」と言いたくなったが、まあいい。
白いものね。雲とか?
そう言うと、娘は少し考えてから言った。
「んー、でも雲って灰色のときもあるよね?」
やんわり却下された。
じゃあ、ビーチは?
「砂って、真っ白じゃないよね」
意外に厳しい。それを言うなら、君の挙げた雪ウサギだって、よく見たら白じゃない毛も混ざっていると思うけど?
と言い返しそうになるのを、大人の理性で抑えた。
そして、大人の本気を出す。
「わかった。バニラアイスクリーム!」
娘はそれを聞くなり、にんまり笑って紙に書きこんだ。その顔が、「グッドジョブ、ママ」と言っている。
その後、ピアノの白鍵や、ハリーポッターに出てくる白フクロウ、ヘドウィグの羽などが続いた。
あと一つ書けば、ページが埋まる。
娘の宿題なのに、いつの間にか、母と娘のどちらが「いい白」を思いつくかという、親子大喜利大会になっている。
最後の一つ、白いもの、白いもの。
ここで、わたしは重大なことに気がついた。
「ちょっと待って。白ご飯は?」
わたしたちにとって、白いものといえば、まずライスじゃないか。
大袈裟に娘を見ると、娘も手を口に当てて「信ジラレナイ」という顔をしている。そして、静かに手を動かし、紙に「rice」と書き足した。
この会話を横で聞いていた夫(アメリカ人)が、クスっと笑って言った。
「日本人でも、ライスを忘れることがあるんだね」
……なんだか、悔しい。
いいや、わたしは忘れていない。この宿題が終わるまでに、ちゃんと思いついた。順位がちょっとアレだっただけで。
そう抗議していたら、娘は欄外に、もう一つ書き足していた。
「sugar」
こうして、ライスは最下位を免れた。
我が娘ながら、よくできた子である。
(おわり)
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