話が通じない人と”ご機嫌”に仕事を進める方法〜ワンランク上のフリーランスになる!
「この人、話が通じない」「何を言っても伝わらない……」と感じた経験はありませんか?
フリーランスの方は、様々なクライアントや仕事仲間と接する機会が多くなりがち。価値観もバックグラウンドも千差万別な人たちと、コミュニケーションを取っていかなければいけません。
ですから、「話が通じない」相手に出会うのは、ある意味“当たり前”と言えるでしょう。とはいえ、話が通じない相手とのコミュニケーションは大きなストレスです。
そこで、今回は、フリーランスの方がそういった場面に遭遇したときに、できるだけご機嫌に仕事を進めるためのヒントをお伝えしたいと思います。
「話が通じない」のは、定と観のズレ
話が通じない状態は何かがズレているために発生します。ズレは大きく2種類あります。私はそれを「定のズレ」と「観のズレ」と呼んでいます。
定のズレとは、定義や規定のズレ、具体的には言葉の定義や進め方のルールなどが異なっていることです。プロトコル(通信規格)のズレと言い換えてもいいでしょう。ITの世界では通信プロトコルが異なるとデバイス間でデータ通信ができません。人間の世界でもプロトコルが異なると話しが通じないということになります。
もうひとつの観のズレは、価値観、世界観、倫理観など信念の違いです。何を目指すのか、何を大切に思うのか、何を正当な手段と思うか・・・これらの違いは、話している言葉の意味は理解できたとしても、納得できないという状態になります。
定のズレは定義を合わせたり、具体的な進め方などの話し合いを重ねていくことで徐々に解消され話が通じる状態になっていきます。自分としても新しい業界知識や進め方のノウハウも増えるため、ズレを合わせることは自分の知識や対応できるケースの幅を広げることにも繋がります。
一方、観のズレは言葉を尽くすなど時間がかかるうえに、モヤモヤした気持ちを抱えるなど感情の持ち出しも多く、ビジネス的に言ってしまうと“取引コスト”がかかります。取引コストがかかると強みや専門性を発揮しにくいため、成果も納得しづらくなります。
話が通じない状況が起きた時には、まずはどんなズレがあるのかを認識し、対応を決めておくと、時間を無駄にしたり、落胆したり、怒りが湧いてくるのを防げます。
では、それぞれのズレにどう対応するのかをみていきましょう。
定のズレを合わせる4ステップ
定のズレは言ってみれば海外の方との異文化コミュニケーションと同じです。異文化体験だと捉えて楽しむスタンスでいると、自分のスキルと視野が広がっていきます。
定のズレはできるだけスタート直後に認識を合わせておくことがポイントです。だいぶ進んで何か問題が起きてしまったり、お互いにストレスが溜まる前に解消するとよいでしょう。
以下のように4ステップで考えます。
ステップ1: 言葉の定義を合わせる
まずは同じ言葉を同じ意味で使っているのか、認識を合わせます。業界・業種、組織文化が違うと、専門用語やルールなどが異なることはもちろんですが、“成果”や“レビュー”といったよく使われるビジネス用語でも、ところ変われば違う認識で使うことがあります。
こうした違いは「なるほど、そちらではそういう意味なのですね」と理解し合う姿勢で、言葉の定義をすり合わせます。面倒だと思うかもしれませんが、ここを丁寧に確認するだけでトラブルを減らせます。初期段階でこそ必要なプロセスだと割り切りましょう。
【言葉の定義を合わせる4つの事例】
▶︎事例①
「念のため確認ですが、“◯◯”は□□という意味でよろしいでしょうか?」
→こちらの想定を示し、相手に Yes/No で答えてもらうシンプルな聞き方。
▶︎事例②
「御社の中で “◯◯” はどのように定義されていますか?」
→相手側の社内ルールや文化を尊重しつつ、具体的な説明を引き出す。
▶︎事例③
「“◯◯” の範囲は、どこからどこまでを想定していらっしゃいますか?」
→ 用語がカバーする領域・スコープを明確にしたいときに便利。
▶︎事例④
「私たちが共通で使える定義を作りたいのですが、“◯◯” をもう少し具体的に言語化するとどうなるでしょう?」
→ 共同作業で定義を作るスタンスを示し、対等な議論に持ち込む。
ステップ2: 成果やアウトプットの認識を合わせる
次に目指すもの、達成するもの、アウトプットの認識を合わせていきます。私はアウトプットイメージを数パターンお見せしてズレがないようにしていきますが、具体的アウトプットイメージがすぐに描けない場合でも、以下のような問いかけで認識を合わせていきます。
【成果やアウトプットの認識を合わせる5つの事例】
▶︎事例①
「完成形をイメージしやすいように、理想の状態を 3つのポイントで挙げるとしたら何になりますか?」
→ 抽象的なビジョンを具体的なチェックポイントへ分解してもらう質問。
▶︎事例②
「“成功した” と判断する基準を、定量・定性の両面で教えていただけますか?」
→ 評価指標(KPI/KGI など)を数値とストーリーの両方で引き出す。
▶︎事例③
「最終成果物を 1 枚の写真に例えると、どんなシーンが写っているイメージでしょう?」
→ ビジュアル比喩でゴール像を共有し、イメージのズレを減らす。
▶︎事例④
「“これさえ達成できれば合格ライン” という必須条件と、“できれば嬉しい” という加点要素を分けて教えてください。」
→ マストとベターを区別し、優先順位を明確にする。
▶︎事例⑤
「納品後にステークホルダーが最も驚いたり喜んだりするポイントはどこだとお考えですか?」
→ エンドユーザーや経営層が期待する “インパクト” を具体化しやすい。
ステップ3: 進め方の認識を合わせる
次に仕事の進め方の認識を合わせます。進め方は稼働時間・修正回数・連絡手段・支払い条件・スコープ管理などの認識合わせです。
▶︎事例①
「私の稼働日と緊急連絡先を共有しますので、レビューサイクルを〈○営業日以内〉に設定しても問題ないでしょうか?」
→スケジュール制約を明示し、クライアントのレスポンス期待値を固定。
▶︎事例②
「初稿提出 → 1 回目フィードバック → 改訂版 → 最終検収、という 3 ステップで合意できれば、追加修正は別途お見積りにしましょうか?」
→“無料修正は何回までか” を先に線引きし、後からの膨張を防ぐ。
▶︎事例③
「Zoom/Slack/メールのどれが最もご都合いいですか? 週1回15分の定例で進捗共有できると助かります」
→連絡チャネルと頻度を指定し、コミュニケーションコストを最小化。
▶︎事例④
「検収完了をもって請求書を発行し、翌月末払いでよろしいですか? 万一遅延が出た場合のリスケ方法も今決めておきたいです」
→納品基準と支払サイトをセットで確認し、キャッシュフローの不安を潰す。
▶︎事例⑤
「スコープ外のご要望が出た際は “影響度・追加費用・納期” の 3点を整理し、必ず双方合意してから着手する形で進めましょう」
→“言われたからやったけど未契約” を防ぐ。

ステップ4: スタイルを合わせる
最後に確認するのはスタイルです。スタイルとは、前例踏襲で無難さを求めるのか、新規性や斬新さを求めるのか、などの価値観です。
例として以下のようなスタイルがあります。

このような双方がよしとするスタイルに違いがあると「自分は当然こうだと思っているのに何で全然違う反応になるの?」という状態を引き起こします。
ここは、相手の意向を聞き出す問いかけと、合意形成する二段階でズレを修正していきます。合意形成では極端にどちらかを選ぶのではなく、どのくらいの塩梅がちょうどよいのかを言語化することです。

このようなフレーズを組み合わせれば、スタイルのズレを短時間で可視化して一致しやすくなります。
観のズレへの対処は2パターン
定よりもやっかいなのは観のズレということは、皆さんもお気づきかと思います。では、どのように「やっかいなのか」がわかる事例をいくつか紹介しましょう。いずれも、実際に私が経験した事例や知人から聞いた事例です。
【Webサイト構築】「顧客が解約できないように解約手順を隠せ」と言われた。
【研修講師】「内容なんて理解させなくていいから強制的にやらせろ」と言われた。
【マーケコンサル】「満足度なんて5割以下でいいからたくさん集客しろ」と言われた。
【ライター】「炎上上等。話題性重視でバズる記事を書いて」と言われた。
【経営コンサル】「競合他社に潜入してでも機密情報を集めろ」と言われた。
このように、先方に色々な事情や背景があったとしても、倫理観のズレを受け入れにくいと感じるフリーランスの方も少なくないのではないでしょうか。観=信念は短期間で変えられるものではありません。ですから、取引コストを考えたうえで勇気ある撤退を考えるか、対応する場合は、あらかじめ自分の心の持ち方を決めておくとよいでしょう。
撤退を決めるためには「撤退判断チェックリスト」を作ることをおすすめします。たとえば以下のようなチェックに半分以上該当したら撤退すると決めておくのです。
【撤退判断チェックリスト】
・言葉を尽くしても距離が縮まった感覚がない
・打ち合わせ後に必ずモヤモヤや疲労感が残る
・ Slack/メール通知を見た瞬間、反射的に胸がザワつく
・ 自分のブランドや信用が傷つきそうだと直感する
・ 報酬額より「メンタルコスト」が真っ先に頭をよぎる
・ 相手を人間的にリスペクトできず、会話が消耗戦になる
・ この案件のことを「ポートフォリオで語りたくない」と感じる
・ 定例前になると胃が重くなり、他タスクの集中力が落ちる
とはいえ、観のズレだと認識しつつも、気づいた時にはすでに契約してしまい、撤退できない状況の場合もあると思います。その際には消耗しないようにルールや対処策を決めておく必要があります。例をあげてみましょう。
・タイムブロック:そのクライアントに対応する時間の上限を決めておく
・感情ログをつける:打合せ後などにモヤモヤを言語化し思考の堂々めぐりをなくす
・メンタルバディを作る:同業者仲間やメンターに週一回話して感情の暴走を防ぐ
・エネルギー先貯金:午前は好きな仕事や運動で充電してストレス耐性をあげておく
・信念への考え方:今すぐはだめでもいつか通じる日がくると考えて一喜一憂を防ぐ
私も観が違うクライアントと接することがあります。
そんな時は、「人間そんなにすぐに変わることはない」という心構えで接することが多いです。実際、数年後に「あの時おっしゃっていたことの意味が理解できました」と言われたこともあります。時間軸を長めに俯瞰して大きく構えるとイライラが減るかもしれませんよ。
話が通じない人との出会いは、停滞のサイン?!
話が通じない相手と出会うことは、一見ネガティブな出来事のようにも感じるかもしれません。しかし、慣れ親しんでいるこれまでの常識や前提が通じないということは、自分自身がコンフォートゾーンを抜け出しておらず、停滞気味だというサインとも考えられます。
イライラで終わらせるのではなく、定のズレと観のズレに対して、合わせ方や対処法を自分なりに蓄積し、ご機嫌をキープするヒントにしていただけたら嬉しいです。
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清水久三子
大手アパレル企業を経て、外資系コンサルティング会社にて企業変革戦略チームや人材育成部門のリーダーを歴任し、2013年に独立。ビジネス書の執筆やメディアへの寄稿、講演、研修講師などの活動を行う。国内では20冊、海外翻訳で10冊の著書を出版し、年間登壇は140日を超える。(2022年現在) 著書は、『プロの資料作成力』『一流の学び方』(東洋経済新報社)、『1時間の仕事を15分で終わらせる』『一生食えるプロのPDCA』(かんき出版)『働くママの成功する中学受験』(世界文化社)他多数。Official HP:https://andcreate-official.com


