「SYNCLE」第1期生インタビュー(コースA)|「誠実」を社名に刻んだ、創業の原点【佐藤 英吾 / 株式会社Sincecore】
東京都のスタートアップ支援事業「TOKYO SUTEAM」の協定事業に採択された、DEEPCOREとMIMIGURIが共同開発するピアラーニング・プログラム「SYNCLE(シンクル)」。
その第1期生(コースA)として参加した佐藤 英吾さんは、大手メーカー2社で20年以上キャリアを積み、2026年5月に株式会社Sincecoreを設立しました。
「自己認識と実際の役割のギャップを消化しきれない」というモヤモヤを抱えながらも、大企業での経験の中で「0→1」の面白さに気づき、内部通報やメンタルヘルス相談、不祥事対応といった企業の高リスク面談を支援する事業を立ち上げた佐藤さんに、創業への思い、これからの展望についてお話しいただきました。
▼「SYNCLE」プログラム詳細はこちら
https://note.com/deepcore_kernel/n/n9692cd5ea7bf
<プロフィール>
佐藤 英吾(Eigo Sato)
株式会社Sincecore 代表取締役CEO
新卒で富士フイルムに入社し、生産管理・労働組合・経営企画・営業・新規事業など幅広い業務を経験。40歳で大日本印刷への転職を経て、新規事業開発に専念した。労働組合時代に、産業カウンセラーの資格を取得。企業における高リスク面談を担う中で、健全な労使関係を維持しながら職場における人の尊厳と向き合い続けた。この経験を原点に、2026年5月に株式会社Sincecoreを設立。企業の高リスク面談をAIを活用したSaaSと専門家によるコンサルティングで支援する対話ガバナンス基盤「シンミライナビ」を提供する。
「1→10」から「0→1」へ。大企業の中で気づいた、ゼロから価値を生み出す面白さ
──起業という選択肢が浮かんできたのはいつ頃ですか。
佐藤:2社目の大日本印刷に転職して2〜3年が経ったころでしょうか。「自分で事業を立ち上げたい」と強く思うようになったんです。
1社目の富士フイルムでも新規事業には携わっていましたが、どちらかというとすでに形があるものを大きくする「1→10」の仕事が中心でした。2社目でより「0→1」に近い領域を経験する中で、何もないところから価値を生み出す面白さを実感し、「自分が主体となってゼロから作る側に回りたい」という感覚がじわじわと強くなっていきました。
もう一つ、大きな組織で働き続ける中で、モヤモヤがあったんです。大企業での私の役割は、新規事業の推進を支える立場で、人材育成や風土づくり、仕組み作りが中心でした。組織全体の最適化を目指すのはもちろん大事な仕事です。しかし、自分のこだわりを出せる余地がだんだん少なくなっているように感じられ、当時の私はそのギャップをなかなか消化しきれないでいました。
この2つが重なった結果、「自分で会社を興してゼロから作る」という起業の選択肢が、自分の中で一気に現実味を帯びていきました。
──「SYNCLE」への参加を決めた背景を教えてください。
佐藤:本格的に起業を検討し始めた段階で、同じ境遇の起業家とのネットワークを広げることや、自分自身のコミュニケーション力をアップデートすることを目的に応募しました。「きちんと準備をしてから踏み出したい」という気持ちもありましたね。ただ正直なところ、このプログラムを通じて、ここまで自分の「やりたいこと」の解像度が上がるとは思っていませんでした。
「重大な対話を、構造で支える社会へ」
──株式会社Sincecoreはどのような事業を展開していますか。
佐藤:Sincecoreは、内部通報・メンタルヘルス相談・不祥事対応のような企業の「高リスク面談」を支援する、対話ガバナンス基盤「シンミライナビ」を提供しています。こうした面談は、大きなリスクがあるにも関わらず属人化しており、初動の遅れや設計ミス、記録の不足が裁判などの紛争や数億円規模の損失に直結するだけでなく、個人の尊厳が傷つけられてしまうケースも少なくありません。
私たちはAIを活用したSaaSシステムと、業務に精通した専門家集団(社労士、弁護士など)によるコンサルティングを組み合わせることで、一連のプロセスを標準化・仕組み化し、このような課題を解決します。
言語だけでは表せない、「作品」を作るプロセスで、自分のコアが見えた
──「SYNCLE」プログラムの中で印象に残っている体験を教えてください。
佐藤:「なぜ自分がこの事業をやるのか」というWhyの言語化は、参加前から自分なりに取り組んでいました。「SYNCLE」では、白紙のA4用紙を使って自分自身の葛藤を「作品」にし、それを他の参加者に見せてフィードバックをもらい、最終的に言語に落とし込んでいくプロセスがあります。言語以外の表現で自分の思いを整理することで、普段の言葉だけで考えているときには出てこなかった感情が浮かび上がってくる感覚があり、とても新鮮でした。
私が作ったものはシンプルな「ピラミッド」です。「私の現在地は人が作った大きなピラミッドの一角を担っている状態。一方で本当にやりたいことは、自分自身がピラミッドを作ること。そして最初は小さくてもそれを大きくしていくこと」という結論が出て、非常にしっくりきました。

──「これこそが自分の目指す事業の核だ」と腹落ちした瞬間はありましたか。
佐藤:過去の原体験を深く掘り下げていく問いの中で、ようやく言葉にできた感覚がありました。
「SYNCLE FES」というプログラムの成果発表の場では、自分の内側にある「感情」を3つの層に整理して伝えました。
1つ目は、「これまでは敷かれたレールの上を生きてきたが、40歳の転職を機に、これからは自分で道を選ぶと決めた──自分の意志で生きたい」という感情。
2つ目は、「大企業の組織に身を置いてきたからこそ、組織の力で社会に大きなインパクトを生めることも知っている。だからこそ──個人の小さな自己実現だけで終わらせたくない」という感情。
3つ目は、これらすべての想いを統合して「自分が心からやりたいことを事業にし、人生をかけて大きくしていきたい」という感情です。
この3つの感情を語るうえで、欠かせない原体験があります。30歳のときに経験した、労働組合時代のことです。
当時、人生における大きな決断を迫られ、深刻に思い悩む先輩がいました。私はその先輩に誠実に寄り添い、ひたすらに話を傾聴し、その大切な決断を支えました。そのとき先輩からもらった「ありがとう」という言葉は、今でも鮮明に覚えています。
当たり前のことですが、人生は良いことばかりではなく、無慈悲なことや理不尽なこともたくさんあります。けれど、「誠実であること」は、それらの理不尽に打ち勝つ強さになる。このときの経験が、私の仕事観、そして人生の軸になっています。
「SYNCLE」でここまで深く掘り下げて初めて、「誠実さを核に、人の尊厳を守る」これが自分の事業の核だ、とはっきり見えた気がします。社名の「Sincecore(シンスコア)」には、「SINCERELY AT THE CORE(誠実さのコア)」という意味を込めています。
▼「SYNCLE FES」についてはこちらから
https://note.com/deepcore_kernel/n/n459d6b53c7a3

──この領域での事業化に行き着いたのは、そうした原体験があったからなのですね。
佐藤:はい。私たちが進めるこの高リスク面談の支援はニッチで、市場創出型の事業とも言えます。しかし、社会的な意義は明らかに大きく、この領域における特殊な業務経験と強い思い入れがある私たちだからこそ、今このタイミングで事業化する意味があると考えました。
「誠実さを核に、人の尊厳を守る」。これは、私一代では到底終わらない大きなテーマです。だからこそ、会社組織という事業の形で、世代を越えて持続的に続けていくものにしたいと考えています。
「SYNCLE」でまとめた言葉でいえば、Purpose(存在意義)は「人の尊厳を守る」、Vision(描く社会)は「重大な対話を、構造で支える社会へ」、Mission(使命)は「企業の高リスク面談を、再現可能にする」。この3つが、ブレることのないSincecoreの指針になっています。
「SYNCLE FES」で、自信が生まれた
──発表の場である「SYNCLE FES」はいかがでしたか。
佐藤:いい反応というか、会場の多くの皆さんからすごく共感をもらえて、正直ほっとしました(笑)。自分が考えていることが、ちゃんと人の心に届くという感触を得られた事実が、大きな自信になりました。
別のコース(コースB)の受講者のプレゼンテーションからも刺激をもらいました。自分より少し先のフェーズを走っている方々のリアルな声を聞き、事業の進め方や資金調達の方向性について「自分は間違っていない」という確信が持てました。また、組織を大きくしていくうえでの注意点もあらかじめ知ることができ、大きな収穫がありました。参加されている皆さんの目の輝きにも触発されましたね。

──共同創業者の方を「SYNCLE FES」にお連れしたそうですね。
佐藤:Sincecoreは創業メンバー3名で立ち上げていて、そのうちの1名に来てもらったんです。自分の事業の話を、これから一緒にやるメンバーと「SYNCLE」という場で共有できたことは、大きな意味がありましたね。メンバーからも「これまでに経験のない新しい形式で面白かった」と言ってもらえました。
一緒に戦う仲間には自発的に動いてほしいという思いがあったので、「SYNCLE FES」の空間でいろいろな人の発表や熱量に触れ、刺激を受けている様子を見て、「この場に来てもらって良かった」と心から思いました。
──「SYNCLE」を終えて、今も日々の事業に活きていると感じることはありますか。
佐藤:Why Us(なぜわれわれがこの事業をするのか)に関して、「SYNCLE」で具体化したものが強い確信となっています。事業を進める中で、問いや選択に直面するたびに自然と立ち返るようになっていますね。
第2期生へのメッセージ
──これから「SYNCLE」に参加する方々に、ひとことお願いします。
佐藤:自分のこだわりを持ちながら、周囲からの客観的なアドバイスも素直に受け入れる。その両方を大切にしてほしいです。
「SYNCLE」には、フレームワーク、対話、ワークショップと起業初期に必要なすべてが詰まっています。「自分が本当にやりたいこと」がまだぼんやりしているという方こそ、飛び込んでみてほしい。プログラムを通じて、言語化できないと思っていたものが、きっと言葉になっていくはずです。
会社紹介
株式会社Sincecoreは、企業の高リスク面談(内部通報・メンタルヘルス相談、不祥事対応)をAI-SaaSと専門家によるコンサルティングで支援する対話ガバナンス基盤を提供しています。
▼「SYNCLE」について
DEEPCOREとMIMIGURIが共同開発し、東京都のスタートアップ支援事業「TOKYO SUTEAM」の協定事業に採択されたピアラーニング・プログラム。起業家の「創業の想い」を作品にし、対話を通じてクリアにしていく0→1フェーズに特化したコースAと、組織の難所を仲間と乗り越えるコースBの2コース制。
▼「SYNCLE」第2期について
現在、「SYNCLE」では第2期生を募集中です(募集期間:2026年5月25日〜6月7日)。
参加をご希望・ご検討中の方は、以下より詳細をご確認ください。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000044.000031481.html
▼「SYNCLE」HP
