土に還る 【ショートショート】
最初は、背中の違和感だった。
肩甲骨のあたりが、ゆるやかな丘のように盛り上がってくる。医者はそれを「古墳症」と呼んだ。
古墳症——病が進むと皮膚は乾いた土のように固くなる。やがて細い草が生え、小さな虫が住みつく。人は歩くことをやめ、静かな場所を選んで横たわる。
数か月後それは、なだらかな土の丘になる。人だったものの土塊。
町の外れには、そんな丘がいくつも並んでいた。
誰も掘り返そうとはしない。掘れば、きっとまだ温もりの残る骨に触れてしまうからだ。
けれど、奇妙なことに、その丘の周りだけは草木がよく育つ。枯れかけていた森が、ゆっくりと息を吹き返していく。アスファルトの地面を割りながら命が芽吹く。
私は今日も背中の膨らみを撫でながら、丘の列を見渡した。
この病気が世界の終わりなのか。
それとも長い再生の始まりなのか。
私の命が何かを生き永らえさせる糧となるのか。
ウネウネと列を成す丘のあいだから、温かな風が吹いていた。
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