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人と人が関わること。“ソーシャルインパクト” という問いを歩く

国際交流シェアハウス事業などを展開するボーダレスハウス株式会社は、2025年9月より、新たにホームビジット事業を開始し、「”ちがう” を越えて人と社会をつなぐ」をビジョンに事業を加速させていきます。

目指すのは、差別や偏見を越えた先にある多文化共生社会。非営利団体やボランティア団体ではなく、ソーシャルビジネスに挑む企業として、ひたむきに “共生” に向き合っていくボーダレスハウスが大切にしているのが「ソーシャルインパクト」です。

連載企画「わたしたちの羅針盤 〜ソーシャルインパクトという問いを歩く」は、変化が多い時代だからこそ、ボーダレスハウスの核となるビジョンや、「今」の思考や関心を分解し、私たちが目指す社会への現在地を確かめる『インパクトへの問い』を歩む記録です。ボーダレスハウスが現在、そしてこれから先、何を目指そうとしているか。

シリーズ第1回は、新事業展開の背景や、解決したい社会課題を改めて代表のりーさんが振り返ります。


今ここにある差別偏見を見つめて、超えていくこと

ーボーダレスハウスのパーパス、ビジョン、ミッションをリニューアルして約1年が過ぎました。2025年9月にはホームビジット事業に関するリリースがあり、ボーダレスハウスとしての新しい動きがはじまっていますね。新パーパスのもと走ってきたこの期間、社内やご自身に対してどんな変化を感じていますか。

「差別偏見を超えた先にある多文化共生社会」。差別偏見のない社会、ではなく、超えた先へ。パーパスで一番分かりやすく変わったのが、この部分です。

この表現の変更は、僕の考え方にも大きく作用していると感じています。

ーくわしく教えてください。

この1年、衆院、参院の選挙があり、その中で日本人ファーストという言葉とその考えへの賛否が話題に上りましたよね。また、オーバーツーリズムや移民など外国からの受け入れに関するイシューもあります。

自分と異なる意見に触れた時にも、まずそれが「ある」という状況を受け入れた上で、目の前で起きている出来事を見つめて、僕たちはそれを超えた先にどんな社会を作れるだろうかといった視点で考えるようになりました。

日本国内に限らず、アメリカや他国でも、リベラルと自国主義の間で絶えず揺れながら、社会は進んでいくんだなと俯瞰的に捉えるようにもなっています。

ーメンバーの皆さんにはどういった変化がありましたか。

シェアハウス事業の運営メンバーの間では、「多文化共生の架け橋となる担い手と仕組みをどう作っていくか」について話している場面を目にするようになりました。

シェアハウス事業では、様々な価値観や背景を持つ人同士が出会う体験とコミュニティを提供してきました。今もそこは変わりませんが、「多文化共生や異文化理解の大切さを実感した一人ひとりが、その先でどう主体的に動いていくのか」までをミッションに含んだことで、シェアハウス事業のメンバーが入居者の方々の行動を後押しして、主体性を発揮できるように働きかけている景色はすごくいいなと思うし、大きな変化じゃないかと思います。

ボーダレスハウスで働くメンバー


ーパーパスやミッションの重要性を物語るエピソードですね。

そうですね。ただ、そう意識したり、考えることが大事じゃないとは言いませんが、実際に行動して形にしてこその事業屋だと、常々自分自身を戒めているので。笑

差別偏見を超えた社会を作るために自分たちにできることは何か。シェアハウス事業に加えて、もっと多くの人にアプローチできる方法をずっと模索してきたこともあって、言動一致の一歩という意味でも、今回ホームビジット事業を始められることは嬉しいですね。

差別偏見を超えた社会づくりへ、そろったピース

ーホームビジット事業が始まることは、どんな意味合いを持っているのでしょうか。

シェアハウス事業は、多様な価値観と出会う体験をした人たちが、多文化共生の架け橋となることまでを見据えて事業づくりをしていますし、サービスも顧客体験も本当に価値あるものだと自負しています。

ただ、事業の特性上、シェアハウスのある地域に住むことができる若い人たちが対象となり、多文化共生社会を実現するというゴールから見た時に、シェアハウス事業だけではアプローチできない人たちが多くいることをもどかしく感じていました。

あらためてこのパーパス、ビジョンの実現に向けて進んでいくと決めたからこそ、この社会に暮らすより多くの人に提示できる方法が不可欠で、その答えがホームビジット事業でした。

世界中の旅人と食卓を囲むホームビジット事業「Borderless Visit」

ー社会づくりを掲げるからこそ、多数へ向けたアプローチが必要となるんですね。

そうですね。パーパス刷新と前後して、多文化共生のイベントを開いたり、地域に暮らす外国籍の方への日本語学習の場を持つようになって、これまでの入居者さんや物件オーナーの方々に加えて、地域にくらす日本の方、外国籍の方など、ステークホルダーも多様化しています。

シェアハウスという場所を地域に開いて、様々なコミュニティと接点を持って行う活動が広がるにつれ、「ボーダレスハウスは、ただ外国の方が入居OKなシェアハウスをしているのではなく、社会づくりを本気で仕掛けているんだ」と理解して、求人に応募してくださる方が増えてきました。

新パーパスのもとで、シェアハウス事業の物件数だけが増えていっても、メンバーのみんなは満足しなかったと思うんですよね。「やっと始まるんですね」という期待感をメンバーからも感じています。

戦争やジェノサイドを解決するのは、一人ひとりの小さな関わり

ー今回、解決したい社会問題についてもアップデートされたそうですね。

先日、ボーダレスグループの社長会でホームビジット事業について発表する機会があり、解決したい社会課題についてもあらためて定義しました。それがこの「憎悪のピラミッド」です。

Anti-Defamation League(https://www.adl.org)による原図を元に日本語訳の上で作図。 ©︎2018 Anti-Defamation League 

ーホームビジット事業、シェアハウス事業の明るいイメージと、このピラミッドに書かれている言葉の強さ。そのコントラストが印象的です。

そうですよね。このピラミッド図の「暴力」や「差別」といった課題が深刻に顕在化している部分にアプローチしたほうがいいのではといった指摘をもらうこともありますが、暴力やヘイトといった差別行動と戦うスタンスの事業づくりは行わないと決めています。

偏見から憎悪へ、歩みを進めないためにできることは「人と人が関わること」。そしてその体験を自分の周りへ伝えること。これがシェアハウス事業を通して僕たちが目の当たりにしてきたことであり、確信を持っている解決策です。

僕たちが行う事業が、切り口としてライトに見えるからこそ、課題側を再定義しておくことが重要だったと実感しています。

ーこの図では、私たち自身の無自覚な先入観や偏見がどんな社会課題を招くのかが可視化されているようで、ドキッとします。

このピラミッドは下のレイヤーに進むことで、良くなっていくと見ることもできるんですよ。

例えば在日コリアンやLGBTQ+といったマイノリティ性を持つ人たちへの見方も、80年代と今では違いますよね。様々な権利が認められるようになって、メディアで活躍する人を目にしたり、実際にそういった背景を持つ友人がいたり。一人の個人として深く知り合っていくと、暴力や差別感情、よく知らないことから生まれる恐れは薄れていきますよね。

人と人が日常の中でリアルに出会うこと。これが差別偏見といった根深い社会課題への絶対的な解決策だと、シェアハウス事業を通して確信しています。この考えを裏付ける研究や文献もあります。

ー「戦争やジェノサイドを解決するのは、人と人が個として出会うことである。」言葉としては理解できますが、実際に体験したほうが腑に落ちる気がします。

答えとしての目新しさを感じなかったり、これこそが特効薬だと感じるようなインパクトのある理論に思えないですよね。だから難しいんです。

これを偶然ではなく狙いを持って、ビジネスとして継続させること。多文化共生や国際交流の専門家の方々がボーダレスハウスの取組みを評価してくださっているのはそういったところかもしれないです。

ーシェアハウス事業とホームビジット事業は、どんな相乗効果を生み出していくのでしょうか。

この両輪によって、より多様な「日常の中での異文化との出会い」を生み出していけると確信しています。ホームビジット事業は、シェアハウスで培ってきた多文化共生のスキームを、日本や全世界へ、多世代へ広げていける社会ソリューションです。これまでシェアハウスに入居してきた124か国19,000名の入居者の方と一緒に進めていける期待もあります。

シェアハウス事業とはまた違うダイナミズムで動いていく事業なので、ホームビジット事業が立ち上がっていく姿を、メンバーがどんな風に見ていくかも楽しみですね。

「ちがう」を越えて、人と社会をつなぐ。ボーダレスハウス株式会社

私たちボーダレスハウス株式会社は、国籍やルーツ、生まれた場所、性別などのさまざまな「ちがい」に関係なく、一人ひとりの多様なアイデンティティが尊重され、つながっていく体験とコミュニティをつくりたいと強く思っています。
「“ちがう” を越えて、人と社会をつなぐ」というビジョンの下、出会いやつながりが多文化共生社会への一歩になると信じて、差別偏見と向き合うソーシャルビジネスを社会に広げていきます。



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