【全国調査レポート公開】リハ職の77.6%が「書類作成業務で疲弊」──医療DX・生成AIの実態を1,014名に聞いた
「今日も書類作成業務が終わらない」
臨床が終わった後、パソコンの前で計画書や報告書と格闘する時間。患者さんと向き合う時間こそがセラピストの本分であるはずなのに、その前後を膨大な書類業務が圧迫している──。この感覚は、おそらく多くのリハビリテーション専門職にとって「あるある」では済まされない、切実な日常だと思います。
しかし、この問題がどれほど深刻なのか、そして医療DXや生成AIがどこまで現場に浸透し、実際に課題解決に寄与しているのかを、大規模なデータで定量的に示した調査は、リハビリテーション領域においてこれまでほとんど存在しませんでした。
そこで私たちバックテックは、全国のPT・OT・ST 1,014名を対象に、「リハビリテーション領域における医療DX・生成AI活用 実態調査 2026」を実施しました。リハ職に特化した医療DX・生成AI活用の全国調査としては、国内最大級の規模です。

本記事では、この調査から見えてきたリハ職のリアルな現状と、業界にとって極めて重要な示唆をダイジェストでお伝えします。調査レポートの全データは無料で公開していますので、ぜひ最後までお読みください。
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調査の概要
本調査の概要は以下の通りです。
調査期間は2026年2月18日〜24日の6日間、全国の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を対象に、オンラインアンケート(Survey Monkey)で実施しました。全回答者数は1,137名、うち同意が得られた解析対象者は1,014名(同意率89.2%)です。

調査の目的は、リハビリテーション専門職における①書類業務負担の実態、②医療DXツールの導入・活用状況、③生成AIの利用実態とスキルギャップを包括的に把握し、業界のDX推進に向けた基礎データを提供することです。
回答者の属性としては、年代は30代(47.8%)・40代(34.4%)が中心で、臨床経験11〜15年(32.4%)・16〜20年(27.8%)のミドル層が多くを占めています。所属施設は急性期・回復期の病院が約半数を占め、一定規模以上(リハ部が51名以上)の組織に所属するセラピストの回答が多いことが特徴です。
つまり、臨床の最前線で日々奮闘している中堅〜ベテランのリハ職が、何に困り、何を求めているのか。その声が凝縮されたデータだとお考えください。
ここから、調査結果のハイライトをお伝えしていきます。
書類作成業務負担の深刻さ──データが映し出すリハ職のリアル
まず、臨床現場で最も解決したい課題について聞いた結果です。最多は「書類作成業務(計画書・報告書等)に時間がかかりすぎる」で39.6%。次いで「論文検索等の情報収集に時間が取れない」(15.1%)、「カルテ・記録の作成に時間がかかりすぎる」(15.1%)と続きました。

約4割のリハ職が、書類作成業務を最大の課題として挙げている。この数字は、現場の肌感覚を裏付けるものではないでしょうか。
さらに注目すべきは、書類「記録」業務と書類「作成」業務の負担感の差です。10段階評価(10が「限界を感じるほど負担」)で7以上と回答した割合は、記録業務が39.4%であるのに対し、作成業務は60.8%に達しました。日々のカルテ記録も大変ですが、計画書・報告書・サマリーといった作成業務が、セラピストにとってより重い負荷としてのしかかっていることがデータから明確に読み取れます。

そして、この書類業務負担がセラピスト個人に何をもたらしているのか。
記録・書類作成業務が「自身の疲労感やウェルビーイングに負の影響を与えている」と回答した者は、実に77.6%でした。
この数字の重みを、私たちは真正面から受け止める必要があります。
セラピストが疲弊しているということは、その先にいる患者さんへのケアの質にも影響しかねないということです。書類作成業務の負担軽減は、もはや個人の努力の問題ではなく、業界として取り組むべき構造的な課題です。
生成AI活用の現在地──「使いたいのに使えない」構造的課題
では、この書類業務負担を軽減しうる手段として期待される生成AIは、リハビリテーションの現場にどこまで浸透しているのでしょうか。
結論から言えば、浸透はしている。しかし、活用には至っていない。これが今回の調査で見えた現実です。
生成AIを「業務で使っている者」は54.6%と、すでに半数を超えています。一方で、最も多かった回答は「プライベートでは使うが、業務では使っていない」(40.5%)でした。つまり、生成AIそのものへの関心やリテラシーは決して低くないにもかかわらず、業務活用への移行が進みきっていないのです。

なぜ、業務で使えないのか。業務で生成AIを活用していない者にその最大の理由を尋ねたところ、「院内でのルールが整備されていない(禁止を含む)」が40.7%で最多でした。「何が出来るかイメージが湧かない」(18.6%)、「情報漏洩やセキュリティが心配」(18.0%)がそれに続きます。
さらに、生成AIの利用に関する院内規定が「策定されていない」と回答した者は68.1%にのぼります。すでに策定済みと回答した者はわずか9.2%。

加えて、業務で生成AIを実際に使っている人であっても、活用スキルに「自信がない」と回答した者は56.8%に達しました。使ってはいるが、思った通りの結果が出ない。何を聞けばいいかわからない。そんな状態のまま手探りで使っているセラピストが半数以上いるということです。
この状況を一言で表すなら、「個人の意欲はある。しかし、組織の体制が追いついていない」。これがリハビリテーション領域における生成AI活用の偽らざる現在地です。
最大のインサイト──DXの成否を分けるのは「ツール」ではなく「医療DX人材」
今回の調査で最もお伝えしたいのが、この章の内容です。
本調査では記述統計に加え、多変量解析を実施し、医療DXの成果に関わる要因を統計的に検証しました。その結果、非常に重要な知見が得られました。
まず、医療DXツールを導入しているかどうかそのものは、残業時間の短縮やウェルビーイングの改善と有意な関連を示しませんでした。つまり、「DXツールを入れれば現場が楽になる」という単純な図式は、データによって否定されたのです。
では、何がDXの成果を左右するのか。分析の結果、浮かび上がったのは「医療DX人材」の存在でした。
具体的には、医療DX人材が不在であることは、ツールを「使いこなせていない」実感と有意に関連していました(OR=1.42, p=0.015)。そして、「使いこなせていない」実感は、疲労感やウェルビーイングへの悪影響と有意に関連していました(OR=1.63, p=0.011)。
この関連の連鎖を整理すると、こうなるのではないかと解釈しています。ただ、あくまで横断データので因果関係は言い切れないので、仮説レベルです。
医療DXツールは導入した
→ しかし、医療DX人材がいない
→ ツールを使いこなせない
→ セラピストの疲労感・負担感はDXツール未導入時と変化はない
実際、DXツールの運用上の課題として最も多く挙げられたのは「医療DX・生成AIについて詳しい人が所属先にいない」(46.8%)であり、医療DX推進チーム・委員会等の組織がない施設は53.2%と過半数を占めていました。
医療DXツールの導入は手段に過ぎません。その手段を現場で活かせる人材と組織体制・規定があって初めて、医療DXは意味を持つ。
本調査のデータは、このことを明確に示していると考えています。
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本記事では調査結果のハイライトをお伝えしましたが、実際の調査レポートにはここで紹介しきれなかった詳細データが多数収録されています。
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ご自身の所属先の現状把握や、医療DX推進の社内提案の根拠資料として、ぜひご活用いただければ幸いです。
そして最後に、一つだけお伝えさせてください。
今回の調査を通じて改めて痛感したのは、セラピストは変わりたがっているということです。医療DXや生成AIへの関心は高い。
足りないのは意欲ではなく、環境と機会です。
私たちが運営する「セラピストドットコム」は、まさにその環境と機会を届けるために存在しています。医療DXや生成AIの最新動向はもちろん、セラピストとしてのキャリアを次のステージに引き上げるための情報やつながりが、ここにあります。
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