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『敵』 | これこそがシン・PERFECT DAYS

○鑑賞日:2025.3.31
○鑑賞場所:新宿シネマカリテ


※ネタバレありの感想です。
特に「これ以降ネタバレです」とかも区切ることなく観てきて感じたことをそのまま書くので、未鑑賞の方はご注意ください。


敵。

ブックデザイナーの井上新八さんのブログで「前半は『PERFECT DAYS』と
『孤独のグルメ』を足した映画で、後半は黒沢清作品」
なんていう感想を読んだもんだから、どうしても行きたかった作品。
(わたしの映画ライフはどんだけ新八さんに影響を受けているだとい感じだが)

『PERFECT DAYS』は去年、大きく影響を受けた作品。

黒沢清も去年『Chime』で入門しまして、ホラー嫌いながらもこの人の作品は今後観ておきたいと思っている監督。

そんな好き作品の合体版みたいな感想をあげてもらって、いかないわけにはいかず。
だけどタイミングを逃しまくってて、なんとか平日有給をGETできた昨日観てきた。

で、結果としては前情報のとおり前半は『PERFECT DAYS』。後半は黒沢清だった。いや、デビッド・リンチだったかもしれない。

正直結構かなり心がざわついて、気持ち的にだいぶ持ってかれた。帰ってきてから若干体調を崩したほどだった

フランス文学の権威、渡辺儀助は77歳。妻に先立たれ、ひとり暮らしながらも祖父より受け継いだ立派な日本家屋を持ち、規則正しく日々を生きる。決まった時間に起き、贅沢ではないけどきちんと料理を作り、たまに友人やかつての教え子と酒を交わす。

いわゆる「丁寧な暮らし」をしつつ、金銭的残高に合わせて自分がどれだけあと生きられるかを計算して来るXデーに向けて日々を生きている。

もうここだまでは完全な『PERFECT DAYS』。達観しつつメリハリのある日々を大切に生きている、そんなご老人。

でも後半からその完璧な日々が崩れだす。

どこからが夢でどこからが現実かがわからないようなことがたくさん起きて儀助の生活は大きく崩れていく。そう。「敵」がやってくる。

結局、本作における「敵」とはなんだったのか。観る人によって解釈はいくらでも別れそうだけど、わたしはシンプルに「老い」や「孤独」、「死」を想像した。

あれだけ達観したとように振る舞っていた儀助もセイには抗えなかった。セイは"生"であり"性"である。

77歳にもなって、お気に入りの元教え子との関係を妄想をしたり、若い女学生に一定の下心を持って接する儀助。

が、「なんとも情けない」ではとても一蹴できない。老いたとはいえ、これまで築き上げてきたプライドや未だに整えている自負もある彼。誰だってそういう側面はありそう。「自分はまだいけんじゃね?」っていう。

なにより人間らしいと思うのは、そういったふるまいに対して自身が見る(妄想する?)夢のなかで自傷的に自分を傷つける様。儀助もプライドや過去の後悔、生きることに固執していることを自覚している、けど逃れられないということも自覚している。

儀助はマクロで見れば、善良で優秀で立派で博識な男だったに違いない。男として一定のスケベ心があったかもしれないけれどそんなものは誰でもある側面であり、妻を愛し、仕事に誇りを持って打ち込んでいた、そんな人に思える。

そんな人でさえ、最期はあんなに敵に怯えながら過ごさねばいけないのかと思うとつらくて仕方がなかった。

わたしは『PERFECT DAYS』を観て、主人公であるトイレ清掃員・平山に憧れた。ああいう生き方をしていきたいと思った。

けど、実際はああじゃないんだと思う。多分コッチ、『敵』のほうがリアルだ。

別に平山が日々何も起きてない、何も揺さぶられないみたいな表現で描かれていたわけではない。彼の人生にももちろん色々あったと思う。でも、やっぱり"キレイ"に描かれていたように今なら思う。

本当はもっとドロっとしているし単純じゃない。もっともっと複雑なのだ。この『敵』で描かれていたように。


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