未解の知|file.4 第8期への応募の感謝と「未解の知を皆で語れば基礎研究は応援されやすくなる」という仮説
こんにちは、ANRIの榊原和洋です。
2025年も素晴らしい日本人研究者がノーベル賞を獲られたことに沸き、「基礎研究を盛り上げて、日本の科学技術力を高くしていくぞ」と高市首相もコメントを残す年末になりました。

本当にそうあってほしいと強く願っています。その一方で、しばらくすると再び「日本の研究力低下」が嘆かれ、結局あまり状況は変わらない——そんな光景もまた繰り返されるのではないか、と想像している自分もいます。
過剰に盛り上がっても、過度に悲観しても仕方がありません。だからこそ、基礎研究が盛り上がる方向に、たとえ小さくてもアクションを積み重ねていきたい。そんな気持ちでいます。
さて、今年リブランディングを行った、ANRIの自然科学領域の給付型奨学金「未解の知」ですが、このたび第8期の選考を無事に終了しました。
今回は大変ありがたいことに、174名もの学生の皆さんからご応募をいただきました。本奨学金を見つけ、チャレンジしてくださった皆さま、本当にありがとうございました。
また、全国の大学や多くの学会の皆さまに情報掲示のご協力をいただきました。心より御礼申し上げます。応募者のうち約35%の方が、大学や学会経由で本奨学金を知ってくださいました。皆さまからの与信があったからこそ、尖ったコンセプトの奨学金でも挑戦してもらいやすくなったのだと思います。来年以降も、ぜひ連携させていただけますと幸いです。
応募者数の多さは非常に嬉しく感じていますが、同時に、もっと広く全国の学生の皆さんに届けたいとも思っています。地域別で見ると、応募の約60%が関東圏の大学に集中しており、大学数や研究環境の違いを考えれば致し方ない面もあります。それでも、全国各地で研究に取り組む学生の皆さんに届くよう、来年以降も工夫を重ねていきたいと考えています。
地方(こうした括り方自体に違和感はありますが)の大学・研究機関の皆さま、来年もぜひ引き続きご一緒させてください。
選考過程で申請書を拝読し、多くの方とお話をする中で、毎年のように感じることがあります。それは、**皆さんの研究も、そして皆さんご自身も「本当に面白い」**ということです。
これは選考に関わったメンバー全員が口を揃えて言っていたことで、「日本の未来は明るい」と、毎年思わせていただいています。
なぜこれほど面白く感じるのか。改めて振り返ると、それは単に「何を研究しているか」だけでなく、「何を明らかにしたいのか」を皆さんがきちんと言語化してくれていたからだと思います。つまり、大きなゴール設定をしたうえで、どのような道を歩んでいるのか伝えてくださったのです。
「あなたの解きたい未解の知は何ですか?」
この問いに答えるのは、決して簡単ではありません。日々、目の前の研究に必死に没頭していればなおさらです(もちろん、その没頭自体が素晴らしいことだと思っています)。ラボのテーマに全力で取り組む中で視野が狭くなったり、興味を深く掘り下げるほど話題が細分化していったり——私自身、学生時代にまさにそうでした。
研究室や学会の中であれば、それでいいのだと思います。新たな知を生み出すためには、深く、細かい議論が必要ですし、それはとても楽しいものです。ただ、少し分野の離れた人から見ると、話についていけなくなってしまう。分野が違えば、まるで外国語を聞いているように感じられることもあります。
アウトリーチのために無理に噛み砕いた説明をすべき、という話ではありません。ただ、ときどき一歩引いて「自分が本当にやりたいことは何だったのか」と考えることは、若い研究者の皆さんにとってきっとプラスになるはずです。今後、研究費を獲得するにしても、独立してPIになるにしても、「自分の研究テーマ」を持つことが不可欠ですし、ラボの研究ではなく「自分の研究」として、今のテーマを見つめ直す機会にもなると思うからです。
聞き手として「あなたの解きたい未解の知」を伺い、私自身がこれほど楽しめたのは、研究内容そのものだけでなく、皆さんの熱や人間性を垣間見ることができたからだと思います。
難しい専門性という壁があっても、魅力的な人が語れば、その壁は乗り越えられる。そう感じています。
「博士ちゃん」や「マツコの知らない世界」、「激レアさん」が長く人気番組として続いているのも、知識そのもの以上に「人」を面白がっている側面が大きいからではないでしょうか。
こうした選考過程での実感を踏まえ、冒頭で触れた「基礎研究をどう応援するか」という問いについて考える中で、私は一つの仮説を持つようになりました。
「挑戦する未解の知を、皆で語れば、基礎研究は応援されやすくなるのではないか」
なぜ自分が基礎研究を応援したいと、ここまでピュアに思えているのかを振り返ると、それはマクロな視点で合理的に考えたからではありません。わくわくする研究と、それを推進する才能豊かな研究者に、具体的な事例として数多く出会ってきたからだと思います。
「基礎研究を盛り上げなければ、日本は終わる」と言われても、頭では理解できても、どこか手触り感がない。目的語が大きすぎるのかもしれません。「やばい」「まずい」と言われても、すぐに前向きな応援の気持ちにはつながりにくいのではないでしょうか。
だからこそ、素晴らしい研究者と一緒に、「どんな人が、どんな面白いことに挑戦しているのか」という個別具体で温度感のある情報を発信していきたい。
「基礎研究」という言葉を聞いたとき、抽象的な概念ではなく、今まさに取り組まれている具体的な研究や、顔の浮かぶ研究者がいる。そんな状態を少しでもつくれたら嬉しいと思っています。
「未解の知 〜The ANRI Fellowship〜」には、第1期から第8期まで、約90名の魅力的な研究者と研究テーマがあります。まずは年明けに、第8期の採択者の皆さんをご紹介する予定ですので、ぜひ楽しみにしていてください。
今後も、彼ら彼女らとともに情報発信を行いながら、「どうすれば基礎研究を、みんなで応援するものにできるのか」という問いに具体的なチャレンジしていく2026年にしていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
🔗 未解の知のリンクはこちら 🔗
