ただ、思いのままに。小田原で過ごす、小さな旅のひととき
「しまった…!」
一瞬の後悔とともに、あきらめの気持ちがじわりと心に広がっていきます。
頬をなでる風は、気持ちとは裏腹にあたたかく柔らかい。
小田原駅前の短い横断歩道の前で、行き交う人々の流れを見つめながら、立ち尽くしてしまいました。
休日のゆったりした空気に包まれて
ことの始まりは、休日の早朝。
「少し遠出をして、散歩したい」という思いがふと頭をよぎります。
小さなカバンに、必要なものを少しだけ詰めました。
頭には、白色のキャップ帽。
足元は、歩きなれた軽いスニーカーを履きます。
玄関の扉を開けると、辺りを照らしていたのは春のやわらかな日差し。
ふわりと優しい風が吹き、どこからか花の香りを運んできました。
こころ穏やかに、静かに歩く小田原城
小田原駅に降り立つと、ガラガラとスーツケースを引く観光客のざわめきに包まれています。
そのざわめきをすり抜けながら、駅から10分ほど歩くと、小田原城の正面の門に到着しました。
戦国時代、関東地方を支配した北条氏の本拠地として有名な小田原城。
今日はここがお散歩の舞台です。
石畳の上をコツコツと歩きながら、昔の人も同じ場所を歩いていたんだなと思うと、とても嬉しい気持ちになりました。
はずむ足取りの愛犬を連れてジョギングする夫婦
小さな子供が乗ったベビーカーを、ゴトゴトと押して歩く家族の姿
頬をなでる風の、海の気配を含んだ香り
春の小田原城は、思い思いに朝のひと時を楽しむ人で溢れています。
戦いの時代に発展したこの場所には、今は平和な空気が満ちていました。
どうしても口にしたい、小田原の名物
そんな幸せな朝の散歩を終えて、小田原駅まで戻ります。
和のおもむきが感じられる、駅前の「お城通り商店街」を歩いていると、遠目に腰の高さほどの看板が立っていました。
そこに書かれていたのは、「名物 アジフライ」の文字と料理の写真。
その両隣にも、同じような看板が並んでいます。
そう、小田原は新鮮なアジの料理が人気で、特にアジフライが有名な場所なんです。
食いしん坊のわたしにとって、旅で美味しいものと出会えるかどうかはとても大切なこと。
「しまった…!美味しそうなお店をリサーチして来るの、忘れてしまった…!」
なんとなくふらっと小田原に来てしまった今朝の自分に、後悔の大波が襲ってきます。
さきほどまでは湯船に漬かっているような幸せに満ちていたのに。
朝からほどよく運動をした体は、食べ物を待ち望んだ状態。
待ったはききません。
どこに進んだらいいかわからなくなって、その場に立ち尽くしてしまいました。
小さな絶望に包まれる中、ふと左側に目をやると、少し暗い建物の1階に飲食店らしい入口が見えます。
店頭に出ているメニュー表も、温かみを感じられる手書きのもの。
派手ではないけれど、きちんとした雰囲気の木の門構え。
とてつもなく美味しそうな雰囲気を感じます。
絶望で黒くなった目の中心に、希望の光がキラリと光りました。
偶然の出会いに引き寄せられて
観光地の中では一見目立たない雰囲気のそのお店は、中に入ると食事を楽しむ人で満席でした。
注文した海鮮丼は、大きなお椀が二段重ねになっているもの。
一段目には新鮮な魚介と酢飯がたっぷりと盛られていて、二段目にはシャチホコのように反り立つアジフライが輝いています。
念願のアジフライを口に入れると、しっかりとした衣のザクッという音が心地よく響きます。身は脂がのっていて、しっとりやわらか。手のひらいっぱいにもなるサイズの大きなフライは、思ったよりも軽やかでパクパクと食べてしまいました。
小さな絶望に包まれていたあの時、たまたま出会ったこのお店。
偶然の出会いは、うっとりするほど美味しいひと時をプレゼントしてくれたのです。
小田原で絶品アジフライを召し上がりたい方は、こちらの過去記事もご参考にしてくださいね。
決めないことが、可能性を無限にしてくれる
旅に出るには、大小さまざまな選択をする必要があります。
事前に詳しく調べて決めることは、最適な選択をするためにとても大切な作業。
だけど、思いのままに、ふらっと旅に出るのも悪くないかもしれません。
何をするか、どこに行くか。
詳しく決めないことが、選択肢の幅を広めてくれる。
出会いの可能性を広げてくれることもあります。
足の向くままに進み、偶然の情景とその場の自分が混ざり合って完成する、オリジナルな旅。
その時、その場所で、あなたにしか作れない旅の景色はとても美しいものになるはずです。
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