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    <title>えいりす</title>
    <description>NWエンジニア×作家

🌸Alice-ai.blog：AIエージェントによる最新AI技術解説ブログを運営。
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📖小説：27万字超の完結済ハイファンタジー。人力で執筆。
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    <copyright>えいりす</copyright>
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    <lastBuildDate>Fri, 26 Jun 2026 14:02:13 +0900</lastBuildDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 44</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">44.信愛、そして戦友</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">　密かに用意していた転移紋を使って麓へと戻る二人。途中にまだ魔物がいたが、ヴァラロスがディアを護りながら魔物を倒して進む。<br>　そうして、山の麓へと到着すると月明かりの中、戦闘はまだ続いていた。冒険者達に大きな被害はみられないが、山の別の場所からも、まだ魔物がちらほら下りてくるのが見え、まだ、戦闘がしばらく続くことが予見される。しかし、魔物の勢いは確実に弱まっている為、後もう少しといった印象を受けた。<br><br>「ディアはここで待っててくれ。この山道はもう魔物が少ないだろ」<br><br>　ヴァラロスはディアを気遣い、魔物を倒しながら下りてきた山道の入り口付近で待つように言う。<br>　ワイバーンを大量に倒して生命力を大幅に消費したディアにとって、残っている魔物を相手にできるほどの生命力はない。魔法を使えない今のディアにとって、使える武器は短剣しかなく、魔物の中に入って戦うにはリスクが高かった。ディアならどうにか出来そうにも思えるが、無理はさせたくないというのが正直なところである。<br>　そんなヴァラロスの想いがディアに伝わる。だが、ディアの想いは異なっていた。<br><br>「ありがと。でも、アタシも戦う。ヴァルと一緒に戦いたい」<br><br>　そう言うディアはどこか期待しているように見えた。まるで、何があっても守ってくれるんでしょ？と言いたげな表情をしていた。<br><br>　ディアの意図を汲み取ったヴァラロスは苦笑するも、どこか嬉しそうに笑う。そして、ただ、短く言葉を放った。<br><br>「行こう！」<br>「うん！」<br><br>　二人は並んで戦火へとその身を投じる為に駆け出すのであった。<br><br><br><br><br><br>　目につく魔物を片っ端からヴァラロスとディアが屠る。<br><br>「ヴァル！　右から来てる！」<br>「分かった！　そっちも後ろからきてるぞ！」<br><br>　二人が声を掛け合いお互いの死角を埋め合う。正直、二人の実力であればそれぞれが単独で死角からの攻撃などどうにでもできた。ただ、お互いに見ていてくれている相手がいることに安心でき、目の前の戦いに集中できるのだ。その証拠に二人はかつてないほど速やかに自分たちの道を切り拓く。そして、二人が駆け出してからすぐに冒険者達の戦う場所に合流できた。<br><br><br><br>「ん？　おぉ！　お前ら無事だったか！」<br><br>　遠くから聞こえてきた声は、戦いの前に山へ送り出してくれた声だった。<br><br>「戦況は？」<br><br>　ヴァラロスが短く聞くと、ドミニクも簡潔に答えた。<br><br>「見ての通り大きな被害はない。まだしばらくかかりそうだがな……ふんっ！」<br><br>　大剣を振り回しながら話すドミニク。一振りで何匹もの魔物が吹き飛ぶ。鬼神とはドミニクのことを言うのではないか。そんな考えがヴァラロスの頭に浮かんだ。すると、そんな様子を見ていたディアも横から声をかけた。<br><br>「無事ならよかった」<br>「お？　お前さんも心配してくれたのか？」<br><br>　意外な声にドミニクが茶化す。だがディアの眼は真剣だった。<br><br>「当たり前でしょ。アタシも今は魔法を使えないんだから。……とにかく、大きな怪我がなくてよかった」<br><br>　ディアは素直にドミニクの心配をする。それを聞いたドミニクはバツの悪そうに思いながらも答えた。<br><br>「あー……その、まぁ、なんだ。心配してくれてありがとな」<br><br>　ドミニクの回答に満足げなディア。前にドミニクに言われたことをそのまま返したのだ。仲間の心配をするのは当然なのだと。<br><br><br><br>「それで、どこに行けばいい？」<br><br>　ヴァラロスが今向かうべき場所はどこかとドミニクに聞く。ドミニクがこの戦場を取り仕切っていたはずだ。それならば勝手に動くよりもその場の指揮官に従った方が、場を乱さず速やかに魔物も討伐できるだろう。そう考えた上での質問であった。<br>　ドミニクもヴァラロスの意図を理解した。しかし、理解した上で確認を入れる。<br><br>「お前ならどこに行く？」<br>「……あそこ、まだ山から魔物が下りてきてる。俺なら、あそこで魔物の侵入を防いで、他の冒険者が今いる魔物を討伐してくれるのを待つ」<br><br>　ヴァラロスがそう答えるとドミニクはニンマリと笑いヴァラロスの背中を強く叩く。<br><br>「いてっ！？」<br>「大正解だ。お前、俺がギルマスになったらサブマスやらないか？」<br>「い、いや……俺は依頼を受けている方が性に合ってるから」<br><br>　ドミニクの大胆発言に冷や汗をかくヴァラロス。どうやら目をつけられてしまったようだ。しかし、次に向かう場所は決まった。それならば、あとは向かうだけだ。<br><br>「そういうのはあと！　ヴァル！　行こう！」<br>「お、おう！」<br>「あ、まて！　こいつ持ってけ」<br><br>　ドミニクが腰に差していた剣をディアに差し出す。それはドミニクが愛用している剣だった。<br><br>「その短剣だと戦いにくいだろ。俺のやつ使え。後で返してもらうからな」<br>「ありがとう。助かる」<br>「いいってことよ。ヴァラロスは考えておいてくれよ」<br><br>　ディアはドミニクの心遣いに感謝し、ヴァラロスはドミニクの言葉を半分無視し、未だ魔物が下りてきている場所へと向かう。そこは、比較的厚めに冒険者が集まって対応しているところだ。それだけ対応に苦戦していることが窺える。<br>　そんな様子に足を早めるヴァラロスとディア。途中にいた魔物をばんばん倒して進む。気付けば、ディアだけでなく、ヴァラロスの剣にも魔力が宿っていた。ヴァラロスも最近の戦いで感覚を掴んだのか自然と自分の魔力を剣に付与しているようであった。その様子を見てディアが苦笑するも、相棒としてはとても頼もしいと思った。<br><br>　そんな時、二人が魔物が下りてきている場所へ近づくと空気が変わる。<br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br>「お、おい……」<br>「嘘だろ……」<br><br>　目の前に突如大型のイノシシが現れた。どうやらまだ山の方に隠れていたようだ。それは、ドミニクですら苦戦を強いられた強敵である。<br><br>「下がれ！　アイツの相手はするな！」<br><br>　ドミニクが必死に叫ぶ。魔物を抑えていたのは腕に自信のある冒険者だったが、ずっと戦っていた為に疲弊していた。そんな中、急に大きな魔物が現れたのだ。まして、ドミニクが相手をして苦戦していた相手だ。全員が見て分かっている。戦うべきではないと。だからこそドミニクが指示を出し、彼らは素直に従ったのだ。<br>　だが、冒険者達は疲れて頭が働かない為か、蜘蛛の子を散らすように逃げる。……それこそ混乱の中にあった。<br><br>「はぁ、はぁ、なっ！？　うわあああ！」<br><br>　一人の冒険者が逃げる際にウルフに襲われバランスを崩す。なんとか自力でウルフを処理するが、わずかな時間で周りには何もいなくなっていた。……それは、つまり、迫りくる脅威との間に、何も邪魔者がいないことを表していた。<br><br>ブオォォォオオオオ！！<br><br>　目標を定め急発進するイノシシの魔物。コース上には何も障害物がない。最大加速で速度を上げ続けることができた。<br><br>「う、うわあああああああああっ！？」<br><br>　恐怖で足が竦む冒険者は動くことができない。このままでは、あの大きな牙で貫かれてしまう。<br><br>「「とめるよ（ぞ）！」」<br><br>どおおおおおおぉぉぉぉぉぉん…………<br><br>　イノシシが目の前に迫り、冒険者が死を覚悟したその時、左右から二人の冒険者がイノシシの牙に、寸分の狂いなく同時に剣を打ち込む。すると、あんなに勢いのあったイノシシが剣に阻まれ急停止した。<br><br>「はやくっ！」<br>「あ、あぁ！　ありがとう！」<br><br>　命拾いした冒険者はお礼を言うと、勇気を奮い立てて動かした足を酷使し他の冒険者のところへ後退するのであった。<br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br>「さて、思ったよりも硬いなコイツ」<br>「多分、これも特殊個体。甘く見ない方がいいかも」<br><br>　改めて向き直る二人。ヴァラロスとディアは土煙が晴れて未だ健在なイノシシの魔物と対峙する。魔力を纏った剣でもその牙を破壊することはできなかった。その為、ワイバーンとは異なる厄介さがあった。だが、その牙にはしっかりとヒビが入っている。どうやらダメージは入っているようだ。それならどうにか出来るだろう。そう考える二人は止められない。<br>　突進を止められたイノシシの魔物は怒り心頭の様子で二人を見定める。すると、瞬時に加速して、弱そうにみえるディアへと距離を詰めた。<br><br>「ディア！」<br>「っ！　了解！」<br><br>　イノシシが目前に迫りヴァラロスが声をかける。ディアがヴァラロスをチラッと見るとその顔には焦りは見えない。むしろ、頼んだと言わんばかりの全幅の信頼を感じた。その一瞬でディアは自分の役割を正確に理解した。<br>　ディアに距離を詰めるイノシシの魔物、イノシシの魔物に距離を詰めるヴァラロス。その歩みは似ているようで致命的に違った。<br>　確実に距離を詰め、もう受け身も間に合わないであろう位置。死へのカウントダウンが始まっていた。しかし、それはディアのものではない。<br><br>ブフッ！？<br><br>　その時、ディアが身体を急激に捻った。そして持っていた剣はその勢いでイノシシの目の前に迫る。その距離はもはや秒読みですらない。<br><br>ズドオオオオオオォォォォォォン…………<br><br>　イノシシの頭が地面にめり込む。二回目のイノシシの突進を単騎で止めたディアだったが、それでは終わらない。<br><br>「任せた！　相棒！」<br>「任された！」<br><br>　別の歩みが迫る。それは信頼の歩み。一人では倒しきれない。ならば二人ならそれが可能であろう。<br>　ディアの剣を頭で受けながらもまだイノシシは倒れない。突進を止められたイノシシは狼狽しその場から逃げようとする。<br>　しかし、ディアがそれを許さない。剣で強く押さえつけられ、頭が地面から抜けられない。その瞬間、横目に迫る脅威を認識する余裕もなくその体はヴァラロスによって貫かれた。<br><br>　助けに向かうのではなく、最初から相手を信頼してトドメを刺しにいく。以心伝心であるからこそ成せた業であった。<br><br>ズドオオオオオオオォォォォン……………<br><br>　動かなくなった脅威を目の前に拳を突き合わせる二人。それは、まるでお互いの絆を確かめ合うようであった。<br><br><br><br><br>「まだ魔物がいるんだ！気ぃぬくんじゃねぇ！」<br>「「は、はい！」」<br><br>　ドミニクの掛け声で冒険者達は再度動き出す。二人の戦闘に魅入ってしまい体が止まってしまっていたのだ。かく言うドミニク自身もその一人である。ドミニクは自分が気を抜いていた事実に驚きながらも残りの魔物の討伐に戻るのであった。<br><br><br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br><br>「ふぅ」<br>「ヴァル、お疲れ様」<br><br>　魔物の討伐が終わったと思った時には気付けば空が明るくなってきていた。二人とも疲労が溜まっているはずだが、目的をやり遂げた為、その顔は満足げであった。<br><br>「お疲れさん。無事で何より、そして助太刀感謝する」<br><br>　遅れてドミニクがやってくる。素直に無事を喜び、魔物討伐に貢献したことを感謝するのだった。<br><br>「そっちこそ、無事でよかった。もともとはアタシが言い出した事。信じてくれたから食い止めることが出来た。ありがとう」<br><br>　ディアがお礼を言うとドミニクが驚いた表情を見せる。普段では軽口でも言われるが、今は大戦の後である。ディアの突拍子もない話を信じて準備してくれたおかげで犠牲なく食い止めることが出来たのだ。<br>　それをわかっているからこそドミニクは礼儀を尽くす事にした。<br><br>「礼を言うのはこちら側だ。よく魔物の襲撃を事前に伝えてくれた。それがなければ今頃街中が大混乱に陥っていただろう。ありがとう」<br><br>　ドミニクが頭を下げる。数匹現れた大型のイノシシ。あの魔物の突進を受けたら街の壁なんて簡単に崩壊する。実際にはディアが認識阻害の魔法をかけている為そうはならないが、迂闊に外には出られない状況になっていたのは間違いないだろう。<br>　ディアは気恥ずかしさに少し顔をそむける。その様子を微笑ましげに見るヴァラロスであった。</p><br/><a 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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 25 Jun 2026 23:52:00 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 43</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">43.覚醒、そして衝動と愛</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">「あー、その、そういえば……すぐに意識戻ったんだな。また数日は意識を失うもんかと思ってた」<br><br>　星空の下、やっとの思いで落ち着きを取り戻したヴァラロスは話題を変えるべくディアに問いかける。ディアがそのまま意識を取り戻さないものと考えていた為、あんなことを口走ってしまったのだ。<br>　ディアはヴァラロスの質問に首を傾げ不思議そうな表情をしながら答える。<br><br>「え？　だって、気絶するけどこの前ほどじゃないって言わなかった？」<br>「……この前は数日だろう……。丸一日は寝込むと思うじゃんか……」<br><br>　ヴァラロスが不満げに言うとディアは笑いながら答える。<br><br>「あはは……。まだ山の麓で戦ってる人がいるから、そんな呑気に寝てられないって」<br>「……そうか」<br><br>　ディアの言葉にヴァラロスは思う。あぁ、どこまで行ってもディアはディアなんだと。目の前にいる女の子は他人を思いやれる優しい心の持ち主だ。そんな彼女は現代の魔王である。小さい頃に教え込まれた話は何だったのかと思うほどに印象が乖離していた。<br><br>（ディアはディアだ。それでいいじゃないか）<br><br>　ヴァラロスはそう考え、ディアに歩み寄ろうとした瞬間、異変が起きた。<br><br>「あ？……っく！？」<br>「えっ、何！？　どうしたの！？」<br><br>　ヴァラロスが急に頭を抑え苦しそうにうずくまる。ディアが慌てて駆け寄ると、その顔は驚きや苦痛が混ざったようなものに見えた。その目は見開き、焦点が合っていない。<br><br><br><br>『……ろせ…………魔王を殺せ！！』<br>「くっ……あぁ…………」<br><br>　ヴァラロスの脳内に直接言葉が聞こえてくる。それは、今のヴァラロスの意思に相反する考えであった。<br><br>（なんだ……これは！？　頭に声が……？）<br><br>　ヴァラロスが困惑する。声と同時に凄まじい怒りが湧き上げてくる。魔王を殺せと。生かしていてはいけないと。そんな感情が湧き上がり、気づけば右手が剣の柄を掴んでいた。<br><br>（手が勝手に！？……ダメだっ！）<br><br>「ディアっ！」<br>「きゃっ！」<br><br>　咄嗟に左手でディアを突き飛ばす。すると、先程までディアがいた所にはヴァラロスの剣が突きつけられていた。<br><br>「ヴァ……ル……？」<br>「ディ……ア……に、げろ……！！」<br>「っ！？」<br><br>　突き飛ばされ尻餅をついているディアは、突然の出来事にショックを隠せない。信頼しきっていたヴァラロスに剣を突きつけられるなんて思ってもみなかったのだ。しかし、ヴァラロスの様子から、その行動が彼の意思とは異なることが分かった。<br><br>　急いで立ちあがり体勢を元に戻すディア。その間ヴァラロスはまだ自由に動かせる左手で右手を下ろさせようとする。しかし、右手はびくともせず、依然ディアに剣を突きつけている。ヴァラロスが時間を稼いでいる間にディアは少しでも距離を取る。まずは様子を見てヴァラロスをどうやって元に戻すかを考えようとしていたのだ。<br><br>（なに！？　急に何があったの！？　身体が乗っ取られてるように見えるけど……どうしたら元に戻せるの……っ！！？　いや、絶対元に戻す！！）<br><br>　しかし、とうとうヴァラロスの意思とは無関係に身体が動き出し、剣を構える。それは戦闘開始を意味するものであった。<br><br>「っ！？　逃げろ！」<br>「くっ！！」<br><br>　突然、飛ぶように距離を詰めるヴァラロス。ディアが作った距離はあっという間に詰められた。しかし、ディアもやられるわけにはいかない。ヴァラロスが横に一閃するのをしゃがんで避ける。その際に自身の足に両手を忍ばせ何かを出した。その間にヴァラロスはディアの脳天目掛けて剣を振り下ろす。<br><br>「ディアあああああっ！？」<br>「ふっ！」<br><br>キンッ！<br><br>　ヴァラロスはディアを殺してしまうと思い、その名を呼び叫ぶ。ディアは振り下ろされた剣を両手に持った短剣で弾くのだった。<br><br>（あっっっぶな！？　ドミニクとの戦いでヒントをもらった暗器、真似して仕込んでなかったら今頃真っ二つよ……！？）<br><br>　間一髪で剣を弾いたディア、ヴァラロスはその反動で体勢を崩す。だが、それだけでは終わらなかった。<br><br>「なっ！？」<br><br>　突然横から迫る剣。ヴァラロスの身体は体勢を崩しているにも関わらずディアに向けて剣を振るった。それは、まるで身体が倒れようとも関係なく、ただ、ディアを殺せさえすれば後はどうでもいいという強い意志があるかのようであった。<br><br>ガキンッ！<br><br>　その剣を間一髪で防ぐディア。しかし、ディアとしても限界が来ていた。<br><br>（っ……う！？　手が……）<br><br>　ヴァラロスの重い剣戟を防いだことでディアの手が痺れてしまったのだ。本来、短剣で受けれるものではない。それを二度も防いだのはディアの意地であった。絶対になんとかする。そう心に誓った彼女は負けるわけにはいかない。そう思い痺れる手をどうにか動かしていた。<br>　そこで転機は起きる。無茶な体勢で剣を振るったからか、バランスを崩して倒れ込んだ。その際に右手から剣が離れる。その隙を見逃さずディアは剣を蹴り飛ばし、ヴァラロスの上に馬乗りとなる。それは、ヴァラロスの自由を奪うためであった。<br><br>「ヴァル！　しっかりして！」<br>「ダメだ！　身体がいうことを聞かない！」<br><br>　ディアはヴァラロスの自由を奪う。この白くて細い腕にどうしてそんな力があるのかと不思議ではあるが、ディアはしっかりとヴァラロスを抑えていた。それでも、ヴァラロスは自身の身体をコントロールできないという。<br><br>　そのまま、十数分が過ぎた。依然、ヴァラロスの身体は彼に主導権を渡していない。そんな時、ヴァラロスは覚悟を決めた。<br><br>「……ディア」<br>「なに！？　なんか思いついた！？」<br><br>　しばらく唸ってばかりであったヴァラロスからはっきりと名前を呼ばれたディアはヴァラロスの答えに期待する。……だが、それは期待した答えとは程遠いものであった。<br><br>「俺を……殺してくれ」<br>「ぇ……なに……いってる……の？」<br><br>　ディアの顔が絶望に染まる。ヴァラロスは目を閉じてそう言った。その彼の目には涙が浮かぶ。<br><br>「もう、身体がいうことを聞かないんだ……。ずっと頭に声も響いてる……このままだと、俺、ディアを殺してしまう。そんなのは嫌なんだ。ディアを殺すくらいなら……俺が死ぬ。だから、俺を殺して欲しい。ディアの手で」<br><br>　ヴァラロスは泣きながら懇願する。せっかく対等になれた。これからだった。でも、どうしようもない。それならば終わらせて欲しいと、そう頼んだのだ。<br>　だが、ディアの答えは決まっている。<br><br>「馬鹿！　ばかばかばか！？　なんで、自分の命を粗末にするの！？　前に言ったよね？　ヴァルには生きてて欲しいって！……諦めないでよ」<br><br>　ディアの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。それは、悲しみ、悔しさ、自分ではどうすることもできない無念さなど、複雑に絡み合った感情からくるものであった。ディアとて分かっている。今現状で打てる手がないのだ。……自分が生き残るためには、ヴァラロスを殺すしかない。そう、考え始めてしまった自分を許せなかった。<br>　だが、ヴァラロスは申し訳なさそうに話し始めた。それは、とても残酷な言葉。ある種呪いのような言葉。<br><br>「いいんだ、もう。俺はディアと会えて嬉しかった。やっと対等な関係になれたことがすごく嬉しかった。……そして、俺は、ディアのことが好きだ」<br>「っ！？　な、なに言ってるのよ……」<br><br>　突然の告白に戸惑うディア。しかし、ヴァラロスは笑いながら話を続ける。<br><br>「ごめん、卑怯だってわかってる。でも、自分の気持ちに、嘘はつけないんだ。だから、最愛の相手に、終わらせて欲しい」<br>「…………ばか」<br>「っ！？」<br><br>　ヴァラロスが一方的に話しきる。それを聞いてディアは一言だけ呟いてヴァラロスの唇を塞いだ。それは、ヴァラロスを拘束している手ではなく、今ディアが唯一自由のきく、ディアの唇で。<br><br>「ディ……ア……？」<br>「アタシだって……負けないんだから」<br><br>　ディアはそう言うと、再び唇を重ねる。もう、ディアも自分の気持ちを抑えられないのだ。<br><br>「アタシも、ヴァルが好き。……愛してる」<br><br>　ディアはそう言うとガバッとヴァラロスに抱きつく。もう、そのまま殺されてもいい。想いを届けることができたのだから。そう思い拘束を解いたのだ。<br>　すると、不思議なことが起きる。<br><br>「……ディア」<br><br>　ディアの背中が優しく包まれた。それは、ヴァラロスの意地で身体を動かせていることを意味する。実は、ヴァラロスはディアに口づけされた瞬間から頭の声がスッと消えて聞こえなくなっていた。強い復讐心よりも、強い感情が生まれた為だろうか。そこからは身体の自由が利くようになったのだ。<br>　ヴァラロスが自分の身体を取り戻したと気付いたディアは微笑みながら話し始める。<br><br>「大丈夫。アタシ、簡単には死なないから」<br>「っ！？　あぁ……」<br><br>　お互いに強く抱きしめ合う二人。今この瞬間が永遠に続けばいい。そんなことを思ってしまうのであった。<br><br><br><br><br><br>「落ち着いた？」<br><br>　改めて確認するディア。もう、大丈夫だと信じていたが念のため聞いたのだ。<br><br>「あぁ……ありがとう……」<br>「ヴァル、何があったの？」<br><br>　真面目な顔になりヴァラロスに問いかけるディア。ヴァラロスは今起こったことをありのままに話した。<br><br>「急に……頭に声が響いてきたんだ。そしたら身体の自由が利かなくなって、剣に手が伸びて……」<br>「なんて言ってた？」<br>「え」<br>「声よ」<br><br>　ヴァラロスは聞こえた声に関して答えるべきか迷った。自分を殺せなんて言われたらどう思うだろうか。しかし、ディアに相談すれば解決の糸口が見つかるかもしれない。それならば伝えるに越したことはないだろう。ヴァラロスは意を決してディアに伝える。<br><br>「……魔王を殺せ、と」<br>「！？」<br>「どす黒い感情も流れ込んできた。まるで肉親を殺されたかのような……」<br>「…………そう」<br><br>　驚きはしたものの冷静に考えるディア。原因と思われる現象を一つずつ考えていく。<br><br>「まず考えられるのは洗脳。これは術者が近くにいないと成立しないはず。辺りに不審な気配はないから多分違う」<br>「…………」<br>「次に考えられるのは呪い。呪いならかけた相手が離れてても効果は発揮する。……でも、呪いは基本相手に直接害を与えるもの。傀儡にするような効果はないはず」<br>「そうなのか？」<br>「ええ。原理的に相手の生命力に干渉するから行動には影響を与えない……と思う。未知のものがあるかもしれないからちょっと気になっただけ」<br>「…………」<br><br>　ヴァラロスはディアの説明を真剣に聞く。ヴァラロスとしても解決しておかなければならない。場合によってはディアと一緒にいるのは危険である。しかし、ディアは期待を裏切る。<br><br>「……あとは、これが有力だけど本当に未知の原因」<br>「……ん？　原因がわからないってことか？」<br>「ええ。精神干渉や乗っ取りなんて魔法では限界が…………いや、待って」<br><br>　ディアが何か思いついたように考え込む。少し考えていたようだがすぐに顔を上げてヴァラロスに結論を伝えた。<br><br>「道具屋に行こう」<br>「道具屋……」<br>「うん。あいつならきっと何か知ってる」<br>「……わかった」<br><br>　道具屋の主人。ヴァラロスにとって未知の存在。ディアも神なら知っているのではないかと考えた。<br>　それならやることは明確になった。あとは邪魔なものを排除すればいい。<br><br>「それなら、早く下の魔物をどうにかしなくちゃ」<br>「あぁ。行こう！……ただ、一緒にいるとまたディアに迷惑がかかるかもしれない」<br>「何言ってんの」<br><br>　ディアはやれやれと言った表情でヴァラロスを諭す。<br><br>「そん時は、……その、なんとかしてあげるから安心して」<br>「ぷっ、あははははははは」<br>「なによ」<br><br>　ディアの自信満々な言葉を言うも、その仕草は、もじもじしており、実に愛おしかった。そんな彼女を見たヴァラロスは思わず笑ってしまった。突然笑い出したヴァラロスにディアがちょっと不機嫌そうになる。しかし、ヴァラロスは笑いながら言葉を続ける。<br><br>「わるいわるい。いや、ディアはディアだなって。魔族だとか魔王だとか関係なく、ディアはディアなんだって思った。妙に自信に溢れてて、たまに危なっかしいのにすごく頼りになる。他の何者でもない。普通の女の子。それがディアなんだって」<br>「な、なによそれ……」<br><br>　ヴァラロスのよくわからない話を聞きそっぽを向くディア。その顔は満更でもない様子であった。<br>　だが、ヴァラロスは再度真剣な顔になり質問する。<br><br>「でも、もし再発したら、その時は終わらせて欲しい」<br><br>　だがディアの答えは明確で素早かった。<br><br>「嫌、絶対にどうにかしてみせる。……その、さっきみたいに……」<br>「い、いや！　それは……」<br><br>　実際にそれで落ち着いたのは事実のため言葉に詰まるヴァラロス。だが、毎度口づけをされ、抱きしめられるのは精神衛生上よろしくない。自制が効かなくなってしまう。そんな事を考えたヴァラロスは逃げるように言う。<br><br>「ま、まずは道具屋の主人に相談だろ？　また声が聞こえる前に急げばいいから！　はやく麓の魔物をなんとかしに行こう！」<br>「えぇ！　早く行きましょう！」<br><br>　なんとか話題を逸らす事ができたヴァラロス。そのままふたりは全てを有耶無耶にして山を下ることにしたのであった。</p><br/><a 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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 25 Jun 2026 23:37:43 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 42</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">42.守るべきもの</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">「どうした？　穴だらけの羽じゃ満足に飛ぶこともできないのか？」<br><br>　ヴァラロスはワイバーンを挑発し誘導する。できるだけワイバーンをディアから遠ざけたかったのだ。すると、ワイバーンは目の前の仇とばかりにこちらに向き直り息を大きく吸った。<br><br>（やっぱり特殊個体か！？）<br><br>　すぐさま横に飛び退くヴァラロス。すると、今まで彼がいた場所はワイバーンのブレスで赤黒く焼かれていた。少しでも反応が遅れていれば丸焼けになっていただろう。<br><br>（冗談じゃない！　あんなの喰らったらおしまいじゃないか！　どう手を打つか……）<br><br>　そこで、ふとあることに気づいた。以前、自分の剣で刃が立たなかったワイバーンを氷の矢なら射抜けたことを。ディアはもともと魔法で攻撃をしていた。だからワイバーンを圧倒することができたのだとすると……そこから考えられることは一つだ。<br><br>「……いっちょ試してみますか！」<br><br>　ヴァラロスはそういうと、ディアからもらった氷の矢を構えて、ワイバーンの眉間目掛けて放った。<br><br>『グァッ！？』<br><br>　何か不穏な気配を感じ取ったのか、ワイバーンは急いで背を向け、尻尾で矢を弾こうとした。しかし……<br><br>パンッ！<br><br>『グアアアアアアアアアアアアアアっ！？？』<br><br>　当たった尻尾の先端部分を矢が貫通する。貫通した事でその尻尾は切断され、勢いを殺しきれなかった矢は翼膜を貫通し、ワイバーンの身体に刺さって停止した。仕留められなかったが、眉間を守る為に避けられず、その弱点を露呈したのだ。<br><br>「よしっ！……なんか思ったより凄いことになったけど……これならいける！」<br><br>　ワイバーンが怒りと憎しみの表情をしてこちらを睨むと突然二本足で立ち上がり翼を大きく広げた。<br><br>（！？　まずい！）<br><br>　ヴァラロスは直感でこのままでは危ないと感じ取り横へ飛び退いた。すると先ほどまでいたところにはズタズタに裂かれたような痕が残っていた。<br><br>（あっぶな！　これは魔法か！？　えっ、無詠唱！？　そんな芸当まで出来るのかよ！！？）<br><br>　ワイバーンは避けられたことに驚いたようで狼狽しているようにも見える。ヴァラロスも彼自身、なぜ避けられたのか分かってはいなかったが、今はそれどころではない。目の前の相手をどうにかする必要があるのだ。先ほどの矢で攻撃を続ければ勝機はある。しかし、気付けばディアからもらった矢は残り１本になっていた。<br><br>（おいおいおいおい……っ！　これで仕留められなきゃ詰むぞ）<br><br>　慎重に相手を観察するヴァラロス。どこに矢を放てば一撃で倒せるか考える。やはり頭か？だが簡単に避けられてしまう。ならば接近するか？いや、今度はあの爪や尻尾の餌食になるだろう。ではどうするか？<br><br>　様々な考えがヴァラロスの頭を巡る。そんなことをしているとワイバーンがそっぽを向いた。<br><br>（なんだ？　逃げるわけでは……なっ！？）<br><br>　ワイバーンの向く先を見るとそこはディアを隠していた岩がある。何かを感じ取ったのかそちらに顔を向けたのだ。<br>　それを見た途端、ヴァラロスの身体は勝手に動いていた。<br><br>「どこ見てんだトカゲ！　お前の相手はこっちだろ！」<br><br>　矢を構え、急いで弓を引く。ただ気を逸らすことを考えて矢を放った。ワイバーンがそれに気付くと、いとも簡単に避けられ、矢は明後日の方向へ飛んでいった。<br><br>（くそっ！　最後の一本を無駄にした……！　ここからどうすれば……）<br><br>　これで有効な攻撃手段は無くなってしまった。ここからどうするかとヴァラロスが考えていると予想外のことが起こる。<br><br>「なっ！　お、おい！」<br><br>　なんとワイバーンは再びディアが隠されている岩場へと向き直り、なにやら興味深そうにしている。どうすればもう一度気を逸らすことができるか。そう考えているとワイバーンが一度こちらを振り返った。<br><br>「っ！？」<br><br>　その顔が邪悪に笑ったように見え悪寒が走る。その瞬間ワイバーンはディアの方を向き大きく息を吸った。<br><br>「ばっ！？　やめろ！！」<br>（どうする！　ディアは動けない……直撃は避けられたとしても自分を守ることなんて出来るわけがない！　何か大きな盾があれば……なにか大きな……あ！？）<br><br>　ヴァラロスはディアを守ろうと必死になって頭を巡らせる。そして、気づいた。ワイバーンの炎を防ぐ一撃。それは、かつてディアがヴァラロスを守る為に使った魔法だ。今の自分なら不思議と出来る気がした。そう思った瞬間にはそれを口にしていた。<br><br>「アイスボール！！」<br><br>　ヴァラロスが叫ぶ。ワイバーンの吐いたブレスが岩へ届くと思えた矢先、岩の目の前に巨大な氷の塊が現れた。その形は歪であったがこの際形などどうでもよかった。その氷は炎を防ぎディアが隠れる岩を守る。<br>　ディアに特訓してもらいある程度形になった氷の矢。氷の矢が作れるなら氷の塊など造作もない。問題は生命力量と魔力変換効率だが、幸いヴァラロスはその両面において優れていた。<br><br>『グァッ！？』<br><br>　目の前に現れた大きな氷の塊にワイバーンが驚く。ヴァラロスはその隙を見逃さなかった。<br><br>「アイスアロー！」<br><br>　手元に一本の氷の矢が現れる。その形は歪であったが、ワイバーンを確実に仕留める為に生み出された矢である。<br>　そして、ヴァラロスは渾身の叫びをワイバーンにぶつける。<br><br>「俺の……ディアに手ぇ出すんじゃねぇ！！」<br><br>　ヴァラロスはその矢を弓に構え素早く矢を放つ。その動きは自分でも驚くほど滑らかで無駄がなかった。<br><br>　ワイバーンが迫り来る矢に気付いた頃には矢が首元まで迫っていた。目の前の脅威を脅威と思えず、岩陰で感じた気配を優先した事が仇となった。<br>　実際ヴァラロスの持ちうる手段は少なかった。しかし、ディアと直前に特訓していた事でその手段が広がっていることに、彼女が狙われたことで気付いたのだ。結果論ではあるが、ワイバーンがディアを攻撃対象とした事は致命的な間違いであった。<br><br>パンっ！！！！！<br><br>　矢がワイバーンの首を貫通する。貫通した際に矢に込められた魔力が暴走して爆ぜた。それはきっとヴァラロスが矢を生成する際に込めた想いが偶然にも具現化されたものだろう。<br>　爆発により切り離されたワイバーンの首は高く宙に浮き、そして地面へと落下した。<br><br>ドサッ<br><br>　同時に司令塔を失った身体も地に伏せる。少しの間警戒を緩めずにいたが流石に杞憂だったようだ。<br><br>「…………はぁ〜〜〜。なんとかなった〜〜〜……」<br><br>　戦いが終わった事に安堵しその場にへたり込むヴァラロス。強大な敵だったことを思い返していまさらながら手が震えていた。<br>　もともとヴァラロスにとってワイバーンは恐怖の象徴のようなものであった。その証拠に、前回は見ただけで体がすくんでしまうほどだ。しかし、ディアと出会い彼女の勇姿を隣で見て、共に戦えるようになったと思ったことで、ヴァラロスもワイバーンに立ち向かう勇気が湧いてきたのだ。<br>　それに、ディアは『任せた、相棒』と言ってくれた。今までのディアを考えると出来ない事は言わないだろう。ヴァラロスですらワイバーンの近づく気配を感じ取っていた。ディアが気付いていないわけがない。その状況下で『任せた』と言ったのだ。その言葉はヴァラロスにとって何よりも勇気を奮い立たせる原動力となる。<br>　さらにディアが窮地に陥った事も関係した。絶対に守る。そんな強い意志が魔力に反映されワイバーンを討伐するに至ったのだ。<br><br>「……これで、前に進めるかな」<br><br>　ヴァラロスがボソッとつぶやく。その言葉は自分にかかった呪いを解く呪文のようでもあった。今までは常に故郷のことが頭をよぎり、復讐心が頭のどこかにあった。それがワイバーンを倒したことにより軽減されたのだ。やっと肩の荷が下りた。そんな気持ちであった。<br><br><br><br><br>「さて、ねぼすけを担いで帰りますか……」<br><br>　ヴァラロスがしばらく休んだ後にそう思い立ち上がると、急に背後から声をかけられ肩を叩かれた。<br><br>「よっ」<br>「うわああああああああっ！？？」<br><br>　叫び声と共にその場から飛び退いたヴァラロスが声の主を探す。すると、そこには岩陰に寝かせていたはずのディアが立っていた。あまりの驚きようにキョトンとするディア。その反応が面白すぎて吹き出してしまった。<br><br>「ぷっ、あはははははははははは……驚きすぎぃ……ひぃ……」<br>「……暗闇の中、気配もなく肩を叩かれた側の身にもなってみろ」<br><br>　ヴァラロスの反応にお腹を抱えて笑うディア。ヴァラロスは不可抗力だとばかりに文句を言う。<br><br>「ごめんごめん……。そっか、意識が戻ってすぐに認識阻害の魔法をかけたんだった」<br>「意識が戻ってすぐって……まさか！？」<br><br>　ワイバーンがふと視線を逸らしたのはなぜか。当然何かに気づいたからだ。では何に気づいた？きっと魔法を使ったことに気がついたのだろう。だからこそどうとでもなりそうな目の前の相手よりも、未知の相手へ奇襲をかけようと思ったのだ。ヴァラロスが慌てていることからもそれが弱点と思えたのだろう。結果的には悪手ではあったが。<br>　だが今問題なのはそこではない。無我夢中だったが何か叫んだ気がする。自分は何を言ったのか。ヴァラロスは思い出してしまい顔を引きつらせ口をパクパクさせる。ディアはにんまりと怪しげな笑みを浮かべながらしっかりと聞いていたアピールをした。<br><br>「んふふ……守ってくれてありがと！　すっごくかっこよかったよ♪」<br>「ああああああああああああああああああああ」<br><br>　ヴァラロスは恥ずかしさのあまり頭を抱えて雄叫びをあげてしまうのであった。</p><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/n6bd5c98545d7'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 24 Jun 2026 22:56:14 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 41</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">41.相棒</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">　そのままどれほど歩き続けただろうか。次第に魔物の数が減り、気付けば魔物はいなくなっていた。総量を考えた時にノヴィシムを助けた時と同じかそれ以上はいたように思える。<br>　このままでは街を守っている冒険者達が危ない。ディアとヴァラロスは早く目的を達成し山を降りないと。そう考えながら歩いていると、以前にワイバーンと遭遇した山の中腹の開けた場所に出た。<br><br>「前はここまで来たな」<br>「そうね」<br><br>　警戒しているからか短く言葉を返すディア。魔物が山を降りた原因がここにあるに違いない。そう考えたディアは辺りを見回しながら進む。すると、以前よりも進んだところに大きな岩があり、そこには転移紋が描かれていた。<br><br>「こんな所に……間違いない。プロカル側の山にあった転移紋と同じ紋様だ」<br>「そんなこと分かるのか？　俺には同じように見えるんだが……」<br>「転移紋共通の紋様が基本になってるんだけど、一部任意に描ける部分があってそこで対応する転移先が決まるの。つまり同じ紋様を描いたところが繋がるってわけ」<br>「そうなのか……俺でも描けるのか？」<br>「誰でも出来る。むしろ、なんでこれが広まってないのか不思議なくらいよ……ライトニング！」<br><br>　ヴァラロスは質問しながら不思議そうに転移紋を眺める。対になっていたプロカル側の転移紋は破壊済みのため動くことはない。しかし、残しておけばまた誰かが悪用するかもしれない。そうなればまたどこかで被害が出てしまう。だからディアは当然のように転移紋を目掛けて雷の魔法を放つ。雷撃が当たった岩は描かれた紋様がわからなくなるほどに破壊されるのだった。<br><br>「ふぅ。次、ノヴィシム側の転移紋も探さなきゃ」<br>「ここまで見当たらなかったから、もう少し登ったところにあるかもしれないな」<br><br>　二人はさらに空山を登る。しばらくして、また同じような転移紋が書かれた岩を見つける。<br><br>「あったあった。ライトニング！」<br><br>　速やかに転移紋を破壊するディア。これでプロカル側、ノヴィシム側ともに魔物が溢れることは無くなるだろう。二人はまず転移紋を潰せたことに喜び拳を突き合わせる。自然と行われたその動作はお互いに信頼していることを現していた。しかし、そのあとすぐ、水を差すかのように騒がしくなる。<br><br>キエエェェェェェェ！<br><br>「さて、目的の半分は達成したようなものだけど」<br>「……そう簡単には終わらないよな！」<br><br>　ディアが魔法で転移紋を破壊した音を聞いたからか、けたたましい声が聞こえてくる。声の方を見ると無数のワイバーンが向かってくるのが見えた。以前より山を登ったことでワイバーンのナワバリに近づいたのだろう。迫る脅威にディアが確認をとる。<br><br>「ヴァル！　行ける？」<br>「当たり前だ！　その為に特訓したんだからな！」<br><br>　ヴァラロスはディアの質問に威勢よく答えた。しかしその顔には緊張が見て取れる。過去のトラウマを乗り越えようというのだ。普通なら出会うことすら避けたいと思うだろう。それでも戦うことを選んだ。ディアはその決断を尊重し共に戦う覚悟を決める。<br><br>（ちょっと数が多いけど……ヴァルと一緒ならきっと大丈夫！）<br>「アイスアロー！　これ使って」<br>「助かる！」<br><br>　ディアはヴァラロスに氷の矢の束を渡した。ヴァラロスもあと少しで物にできるところまではきているものの、まだ実戦で使うには心許ない。その為、ディアに矢を生成してもらったのだ。<br>　また、本人は気づいていないがディア自身心境の変化もある。以前ならどうやってヴァラロスを守って戦おうと考えたはずだ。しかし、今となっては共に戦うことを選ぶほどにはヴァラロスの実力を信頼していた。<br><br>　敵の接近を待つ二人。ヴァラロスは弓を引きディアから貰った矢を番える。ディアも両手を前に突き出し魔法を使う態勢になっている。それを見たワイバーンが急停止し息を大きく吸い込もうとした。ワイバーンはブレスを吐こうとしたのだろうがその瞬間動きが止まり無防備となる。その瞬間を二人は見逃さなかった。<br><br>「アイスランス！」<br>ヒュッ！<br><br>ディアが氷の槍を生み出し投擲した。それに合わせてヴァラロスも矢を放った。飛んでいく矢と槍は真っ直ぐワイバーンへと向かいそれぞれ両翼を貫く。<br><br>『グァ！？』<br>　<br>翼を傷つけられ飛ぶことができなくなったワイバーンは地面へと落下する。<br><br>「よしっ！」<br>「まだ、次来てる！」<br><br>　ヴァラロスが喜ぶのも束の間、次々とワイバーンが飛来している。それらも対応すべく二人は一心不乱に攻撃を加えるのだった。<br><br><br><br><br><br><br>「チッ、数が多い……！」<br><br>　しばらく戦っていたが一向に数が減らない。一匹倒した途端に別の個体が大きく鳴き叫び、背後から一層数が増えた。ディア達を脅威と感じ仲間を呼んだようだ。気付けば辺りはすっかり暗くなっている。その暗さは何故攻撃が当てられているのかと不思議になるほどであった。<br>　ディアが悪態をつくとヴァラロスがこの状況を打開すべく、ある提案をした。<br><br>「なぁ、前に使った花火の魔法、あれって広範囲で使えないのか？」<br>「うーん……使えなくはないけど……」<br>「なら！　あれを頼む！」<br><br>　ヴァラロスは真っ直ぐにこちらをみてお願いをしてくる。これはヴァラロスの村のみんなを想う弔い合戦でもある。ディアが好き勝手やっていい場面ではない。ディア自身、意識して自制していたわけではないが、なんとなくそれはダメだと思っていたのだ。しかし、ヴァラロスから依頼され、ディアは気づいてしまった。<br><br>（目の前の敵より、ヴァルの事を考えてた……？）<br><br>　それは、魔王としてはあってはならない事である。常に最善を選択し、最小限の被害に抑える。それが魔王である。しかし、ディアは違ったようだ。ディア個人としてはそれが当たり前になり始めていたのだ。<br><br>「……いいの？」<br><br>　唐突に漏れる確認の言葉。何がとは言わずともヴァラロスは理解し、はっきりと答えた。<br><br>「頼む。俺のことよりもノヴィシムのみんなが大事だ。すぐに加勢に行けるならそれに越したことはない」<br><br>　潔い。ヴァラロスも戦う力を手に入れた。それならそのまま戦うことも考えていたことだろう。実際、このまま戦っていればどうにかなりそうではあった。しかし、ヴァラロスは街の皆のことを考え短期で終わらせようというのだ。それならば応えるしかない。……だが、ディアがエクスプロージョンを使う事を躊躇っていたのは別の理由があった。……それでも、きっとヴァラロスがどうにかしてくれる。今のディアにとってヴァラロスは頼れる人なのだ。何も躊躇う理由などない。そう思い直し、彼からの依頼を実行に移すことにした。<br><br>「分かった。この前ほどとは言わないけど、アタシ、気絶するから。後はよろしく」<br>「おう！　任せてお……えっ！？　なんだって！？」<br>「じゃあ、いくよ！　エクスプロージョン！！！」<br>「まっ！　ちょっと！？」<br><br>　ディアが魔法を唱えると、瞬時に空一面に魔力の球が無数に生まれる。そしてワイバーン達を取り囲むと一斉に爆発した。<br><br><br><br>ドドドドドドドドォォォォォォォォォォォォォン…………<br><br><br><br>　以前に放った魔法よりも格段に威力が上がっていた。広範囲の獲物を確実に仕留める思いで放った魔法は確かにワイバーン達を仕留めていく。高威力の爆発により、あるものは四散し、あるものは飛んできた仲間の死骸にぶつかり命を落とす。それらがそのまま落下するのだ。先に落ちていたものは下敷きになり手を下すまでもなくなるだろう。<br><br>「……はは。やっぱりすごいなディアは」<br>「当たり前で……ぁっ……」<br>「おっと」<br><br>　倒れそうになるディアをヴァラロスが支える。辛うじて意識を保っていたものの、もう限界のようだ。<br><br>「あとのことは任せて」<br>「うん……任せた、相棒」<br><br>　ヴァラロスの言葉に満面の笑みでそう答えるディア。そしてディアは安らかな顔で気を失った。<br><br><br><br>　さて、ここからが正念場である。ヴァラロスはディアを近くの岩陰に隠して横たわらせ、<br>ワイバーンが飛来していた方角に向き直る。<br><br>　すると、一匹のワイバーンが落ちた場所からこちらに飛んできているのが見える。翼は少し傷ついているものの飛ぶには十分である。一見しただけで再生していることがわかった。それは、通常の個体ではないことを意味する。<br><br>「相棒……か」<br><br>　ヴァラロスはこの絶体絶命の状況にも関わらず笑みを浮かべる。それはきっと初めてディアと対等になれた気がしたからであろう。ずっと助けられていた。守りたくても守られてしまっていた。そんな不甲斐ない自分に心底嫌気がした。だが、今は違う。ディアに相棒と呼んでもらい、彼女に認められたと感じたのだ。そう思ったヴァラロスからは不思議と恐怖が薄れる。力が溢れ、今ならなんでも出来てしまいそうだった。<br><br>「ノロノロ飛びやがって。さっさと来やがれってんだ！　このトカゲ！」<br><br>　絶好調のヴァラロスは威勢よく吐き捨てるのであった。</p><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/n8fcf53e98d03'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 24 Jun 2026 22:40:30 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 40</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">40.帰るべき場所と、不器用な守護者</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">　二人を送り出してからどれほど経っただろうか。未だに、その決断が正しかったのか分からない。もしかすると二人を死地へ送り出してしまっただけかもしれない。その考えが脳内をぐるぐると回っていた。<br><br>「ドミニクさん」<br><br>　見張り役の冒険者が話しかけてくる。たしかイーサンとかいったか。……何故か布に巻かれた大きな荷物を持って来ていたがあれはなんだったのだろうか。<br><br>「ドミニクさん！　もうすぐ魔物が来ますよ！」<br>「そう叫ばなくてもわかっとるわ。皆配置につけ！」<br><br>　未だに二人のことが気がかりではあったが今はそれどころではない。二人どころか何百人もの命がかかっているのだ。気持ちを切り替えていかねば……<br><br>「！？　ドミニクさん！　来ました！」<br>「おい！　お前ら！　ここを死守しろ！　何があっても抜かすな！」<br><br>　最初の前衛が魔物とぶつかるのが見える。基本は盾を持った者が魔物を抑え、その隙に後衛の冒険者が攻撃する。それを人員を入れ替えながら戦う。魔物はイノシシやオオカミ、たまにウサギモドキなどが混ざるが、集めた冒険者にとっては大した相手ではない。しっかりと対応すれば何も問題ないだろう。<br><br>『おらああああ！』<br>『受け止めた！　今だ！』<br>『へっ。こんなの余裕だぜ！』<br><br>　冒険者の声が聞こえる。問題なく善戦しているようだ。このまま行けば防衛は成功するだろう。<br><br>「……しかし、あの二人はどうやってこれを抜けていったんだか」<br><br>　目の前に広がる魔物の波を目の当たりにし、山へ入った二人のことを考える。あの二人に限ってやられるとは思えない。しかし、この魔物の量を見るに普通に山へ登ることすら困難だ。どうやって抜けていったのか分かるわけがない。その為、考えるだけ無駄だ。今は割り切って今目の前にいる冒険者達に指示を出すしかない。<br><br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br><br>　そのまましばらく時間が経過し冒険者達の間に緩みが見られるようになった。決して油断していい相手じゃない。ここはひとつ叱咤するべきか……<br><br>「油断するな！　基本陣形を守って戦うんだ！」<br>「わかってますよ！　そら！　押せ！」<br><br>　声をかけたが気の緩みは戻りそうもない。だが、危なそうに思えるところは今のところは見当たらない。<br><br>（考えすぎか……？　集めた冒険者ならこの程度問題はなさそうだが……なんだ？　何故か胸騒ぎがする）<br><br>　頭に何か引っかかりながら考えるが一見大丈夫そうにも見える。ただの杞憂だったか…………<br><br>『な、なんだアイツ！？』<br><br>　そう思ったのも束の間、混戦の中で突然声が上がった。その声に釣られて視線を向けると、ひとまわり大きなイノシシが山から現れ向かって来ている。<br><br>「はぁ！？　なんだアイツ！？……チッ、他のやつと空気が違う！　くそっ！　俺がいく！」<br><br>　あれはダメだ。盾じゃ防げるわけがない。あんなヤツがいるなんて今まで報告がなかった。いったいどこに隠れていたのか。だが、今はそんなことを考えている場合じゃない。<br><br>「どけぇ！！」<br><br>　冒険者を掻い潜り、持っている斧で目の前の雑魚を一掃する。あの昇格試験では唯一ディアに傷を負わせることができた武器である。前回は初手で地面に置いていたが今回は最初から手に持って振っている。一振りすれば目の前の魔物が吹き飛び、大型イノシシの魔物への道が簡単に出来上がっていく。<br><br>（斧は重いのが難点だけどな。……あいつ、この斧を咄嗟に持ち上げて俺の攻撃を防いでいたな）<br><br>　あいつはなんなんだ。そう頭を過ぎるのは仕方のないことだった。しかし、今はそれどころではない。目の前に脅威が迫っている。<br><br>「あ！？」<br><br>　目の前の敵をひと振りした途端に道が開く。他の魔物も踏み潰されたくないからか大型のイノシシの魔物の動線から逃げるように避けている。つまり、ドミニクとイノシシの魔物との間に邪魔がいなくなった。そう思った矢先イノシシの魔物は速度を上げた。このままだと轢かれてしまう。<br><br>「おいおい……人間を舐めるなよ！！」<br><br>　その場に急停止し大きく斧を振り上げる。そして、タイミングを合わせて……振り下ろす！<br><br><br>ドゴォォオオオオオ！！！<br><br><br>　土煙が舞ってよく見えないが、身体が吹き飛ばされてないという事はあの巨体を止めることができたという事だろう。手応えはあった。思いっきり振り下ろした斧はその硬い感触を手に伝える。…………硬い感触？<br><br>「まさか！？」<br><br>　咄嗟に斧を手放し後ろに跳ねる。するとさっきまでいた場所にイノシシの牙があるじゃないか。危うく串刺しになるところだった。斧を振り下ろした場所を見れば少し頭に傷が付いてはいるが、斧も深くは刺さらず致命傷には至っていない。今まで対峙したどの魔物よりも頑丈なように思えた。<br><br>「くそっ！　これならどうだ！」<br><br>　腰にさしていた短剣をイノシシの眼を狙って投げる。この距離ならいける！<br><br>ガキンッ！<br><br>「へ？　はぁああああ！？」<br><br>　目を閉じただけで短剣の投擲を防いだ。短剣とはいえ刃物だ。この距離で力一杯投擲したにも関わらず瞼すら傷つけることができないだと。<br><br>『ブオオオオォォォォォォ！』<br>「くっ！　ふんっ！」<br><br>　動揺してる隙をつかれて突進して来た。幸い腰にさしていた片手剣で思いっきり斬りつけた事で勢いが殺され、軽く吹き飛ばされる程度で済む。<br><br>「ったた……。あれで吹き飛ばされるってどういう状況だよ」<br>「サブマス！」<br>「ドミニクさん！」<br>「近づくな！　あれはお前らじゃどうにもならん」<br><br>　助けに来ようとしていた他の冒険者を制す。その意気込みは評価するが、相手が悪すぎる。どう考えても最悪の未来が見える。<br><br>「くそっ……どうしたものか」<br><br>　イノシシの魔物は真っ直ぐにこちらを見つめて隙を窺っている。少しでも余所見をしたらまた突進されるだろう。手持ちの武器は……。<br><br>「……ねぇな」<br><br>　斧は手放した。短剣も投擲済み。腰の片手剣は吹き飛ばされた際に手放してしまった。いくらウェポンマスターと呼ばれているとはいえ、運べる武器の数には限りがある。持ち過ぎれば重い。重ければ動きが鈍る。それだけ戦いにくくなるのは当然だ。<br>　そうこうしているとイノシシの動きが変わる。こちらの考えを読み取ったのか心なしか邪悪な表情に見える。<br><br>「皆！　ヤツの動線から逃げろ！」<br><br>　そう言った瞬間にヤツは駆け出した。対抗手段が今ない事を理解したようだ。<br><br>「くそっ！　あいつ本当にイノシシかぁ！？」<br><br>　間一髪で横に飛び退く。すぐ後ろはイノシシが通り過ぎた。そのまま立っていたら今頃あの牙の餌食だっただろう。<br>　他の冒険者たちも叫んだ甲斐ありイノシシの動線から外れており無事だ。<br><br>「くそっ！　誰か武器をよこせ！　なんでもいい！　武器を！」<br><br>　コイツに効く武器があるとは思えない。だが、なにもないよりマシだ。例え短剣でもあの牙を去なすくらいは出来る。素手よりマシなのは間違いない。<br>　しかし、周りを見るとどの冒険者も自分の戦いに必死であり武器を手放すなんて出来る状況ではない。武器なしであの突進を何回躱せるか分からない。武器を手放して多少機動力は上がったものの、もともと俊敏に動けるかと言われれば違う。今まで力で捩じ伏せて来た。逃げる事など考えられないほどに。<br><br>「くそっ……なにがウェポンマスターだ……」<br><br>　あらゆる武器を使いこなすことができる。しかし、裏を返せば武器なしでは何もできないようなものだ。それを今痛感した。<br>　万事休すか。そう思って周りを見渡した時、イーサンが何やら大きなものを持って走ってくるのが見える。荷台に入れて運んでいた何かだ。イーサンはまっすぐこちらに向かって来ている。<br><br>「イーサン！　危ないから下がってろ！」<br>「ドミニクさん！　これを使って下さい！　俺の傑作です！」<br><br>　イーサンが叫ぶとそれを持ってその場でグルグル回り始め、こっちに思いっきり投げた。イーサンが投げたとは思えないほど見事に投擲されたそれは宙で布が解けその姿を露わにする。<br><br>「あれは……大剣！？」<br><br>　大剣が回転しながらこっちに飛んできている。<br><br>『ブォオオオオオオオオオオ！』<br>「！？」<br><br>　どう受け取るとか考えてる場合じゃない。気付けばイノシシが突進して来てる。このままじゃ躱せ……<br><br>「……いや」<br><br>　躱す？なんでそんなことを考えた？今までのスタンスは？自分自身を思い出せ！<br><br>「ありがとうよ！　イーサン！」<br><br>　飛んできた大剣の柄をしっかり見定めて掴みそのまま回転の勢いを殺さず、むしろ力を込めてイノシシの頭に叩き込む。<br><br>「はあああああああああああああああ！！！」<br><br>ドオオオオォォォォォォン……<br><br>　辺りが土煙に包まれる。その衝撃は周りの地面を揺らすほどであった。<br><br>「くそ……何も見えねぇ」<br><br>　悪態をついて警戒しているとあたりの土埃が晴れてくる。そこには先ほどまでイノシシの魔物だったものが横たわっていた。<br><br>「…………おまえら！　厄介な奴がいたらこっち回せ！　俺がなんとかする！」<br>「「「おおおおおおおおおお！！！」」」<br><br>　なんとか倒せた。イーサンに感謝しなければならないな。ウェポンマスターと呼ばれるくらいには多くの武器を扱って来たが切れ味が段違いである。一振りしただけでそれがわかった。……あいつ、趣味が鍛治って言ってたが本職にした方がいい気がする。<br><br>「……さて、こっちはどうにかするから早く用事済ませて帰ってこい。馬鹿ども」<br><br>　柄にもなく山に入った二人の事を思ってしまった。こっちはせめて二人の帰る場所を守らなければ。ドミニクは自然とその視線を山へ向けるのであった。</p><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/n66483606dde2'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 23 Jun 2026 23:40:40 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 39</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">39.急成長と、すがるその手</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">「アイスアロー！」<br>「もっと真っ直ぐなイメージで」<br>「う……アイスアロー！」<br>「うーん……もうちょっとかな」<br><br>　街に帰ったディアとヴァラロスは山であった出来事をドミニクに報告し、ディアに連れられてギルドが持つ訓練所へと足を運んでいた。ドミニクに報告したところで「あの爆発はなんだ！？」と言われたがワイバーンを倒したとだけいうとドミニクは固まってしまった。ディア達は固まっているドミニクを置いて早々に立ち去ったのだ。<br><br>　訓練所で鍛えると言ってもプロカル側の転移紋を潰した手前時間がない。その中で手っ取り早く戦略アップが臨めるものを選ぶ必要がある。<br>　ディアから見ればヴァラロスの剣術は近接で戦う分には申し分ない。そうなった時に、今回の時のために遠距離攻撃が出来ないのはまずいと考え、弓を与えてみたのだ。すると、驚く事に放つ矢が面白いほど狙った場所へ刺さる。それは、まるで矢を当てる対象へ矢が吸い込まれていくようであった。<br>　その事実にヴァラロス自身が驚いていたが、ディアが彼の腕前を見て子供のようにはしゃぎながら褒めた為、驚きよりも気恥ずかしさが勝っていた。<br>　ただ、弓を使うにも問題があった。弓を使うという事は矢を持ち運ぶ必要があり、攻撃回数も有限となる。そこで、ディアは自身が得意とする氷の魔法に矢を精製する魔法があった事を思い出す。最初はディアが矢の提供をすると申し出たが、いざという時に自分でどうにか出来ないと困るという。では、どうするか？ヴァラロスの主な武器は剣であったため弓だけでなく矢も運ぶとなると荷物がかさばる。せめて矢だけでも魔法でどうにかできるのならとヴァラロスはディアから魔法の指導を受けていたのだ。<br><br>「アイスアロー！……なかなか上手くいかないもんだな」<br>「……言っとくけど、たった数時間でここまで出来てるほうが異常だからね」<br><br>　最初は氷の塊を生み出す必要があったが、それ自体に高度な技術が要求される。水を魔法で生み出し、生み出した水を氷点下まで下げなければならない。ろくに魔法を使ったことがない人であれば普通は習得までに時間を要するだろう。<br>　しかし、ヴァラロスはディアの言う通りに練習したところ、すぐに氷の球を生み出したのだ。これには流石のディアも驚くが、その後も教えた事をドンドン会得するヴァラロスをみてディアは久しぶりに教えることの楽しさを実感するのだった。<br><br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br><br>「今日のところはおしまい。そろそろ空山に行かないと……」<br>「まだ掴みきれてないんだけどな……」<br><br>　結局、ヴァラロスはアイスアローをモノにする前に時間が来てしまった。しかし、その精度は着実に上がっている。キチンと時間をかけて教え込めば魔法使いとしても活躍できるかもしれない。<br>　ヴァラロスの成長を楽しみにしながらディアとヴァラロスの二人は空山へと急ぐのだった。<br><br><br><br><br>　空山へはすでにギルドが集めた冒険者が入っており下手に転移紋は使えない為、他の冒険者と共に乗り合い馬車で移動することとなった。<br>　その際にヴァラロスが相乗りした冒険者に話を聞いたところ先発隊にはドミニクが含まれていたようだ。通りで出発前に何も言ってこなかったわけだ。いればワイバーンが何故いたのかなど質問が待っていただろう。<br>　ヴァラロスが冒険者と仲良さげに話し、ディアがそれを黙ってみている。ほっとかれたディアが少し顔を膨らませていると、それに気付いたヴァラロスが話しかけてくれた。ディアはツンツンしていたが、内心嬉しく思うのであった。そんな構図のまま馬車に揺られている後発隊は、いつのまにか空山の馬車小屋へ到着する。<br><br><br><br><br><br>「おぅ、お前ら遅かったな」<br><br>　姿を見付けたと思ったらすぐドミニクに声をかけられた。その様子を見るにまだ魔物の群れは来ていないようだ。周りにはどこから集まってきたのかというくらいに冒険者が集まっている。<br><br>「よくこんな集まったな」<br>「街を囲まれてた時の魔物の量を考えれば全然足りんが、報酬を増やしてるからな。そこそこの数は集まってくれている。…………これで何もない。なんて事になったら無駄になるがな」<br><br>　ドミニクはチラリとディアを見る。ディアはその視線に気づき思ったままのことを言う。<br><br>「正直、何もないなら、ない方がいい」<br>「っ！……はっはっは！　違いない。まぁ何もなかったら黒紙でもバンバンやってもらうか」<br><br>　ドミニクの言葉に顔が引き攣るヴァラロス。黒紙とは報酬が少ない、労力に見合わないなど条件が悪く誰も受注しない依頼の事だ。ギルドも依頼を受ける時にある程度は気をつけて依頼を受け付けてはいる。あまりにも条件が悪い場合は職員から適正な報酬や条件をアドバイスしたりするのだ。ただ、稀に職員の怠慢で言われたままに受け付けてしまう事があるのだ。基本、ギルドは一度受け付けたものはそのまま掲示する事にしている。稀に黒紙でも受けてくれる冒険者がいるからだ。それを期待してそのままにした結果、案の定溜まりに溜まっている。そんな訳アリの依頼をやらされると考えたヴァラロスは想像するだけで嫌になっていた。<br>　しかし、そうはならなかった。<br><br>「ドミニクさん！　空山の方から何か来ます！」<br><br>　談笑していたドミニクに山を見張っていた冒険者が報告する。どうやらヴァラロス達の到着はギリギリだったようだ。<br><br>「ちっ。本当に来やがった。おまえら！　魔物が来たぞ！　全員でここを守るんだ！」<br><br>　ドミニクの声に冒険者達が応える。今まで休んでいた冒険者達はすぐ体制を整え臨戦体制に入る。その切り替えようは流石といえよう。<br><br>「お前達はどうするんだ？」<br><br>　ドミニクがヴァラロスとディアに話しかける。ドミニクもこの二人が大人しく指示に従って戦うとは思っていない。自由にさせた方がいいと分かっているからこその質問だ。むしろ邪魔をしないようにと動向を探る目的もある。<br><br>「俺たちは空山の中腹に向かう」<br>「もう陽が落ちるぞ？」<br>「なら、さっさと終わらせて帰ればいい」<br><br>　ドミニクの心配にディアが答える。その表情は真剣で冗談を言っているようには見えなかった。<br>　ドミニクも夜の山の恐怖は知っている。辺りが暗くなり方角がわからない中で、どこから魔物が襲ってくるか分からないのだ。魔物が溢れ出ている今、視界の悪い山の中へ入る事は自殺行為でしかない。ドミニクとしては防戦をし、陽が登った時に空山へ進行しようと考えていた。だからこそ山に入らず麓で待機していたのだ。<br>　しかし、ヴァラロス達はそんな事は気にも止めず空山へ入ろうとしている。しかも、中腹といえばワイバーンがいると思われる場所である。この二人が何をしようとしているかは想像に難くなかった。<br><br>「……早く戻ってこい。主役がいないと酒が不味くなる」<br>「わかった」<br>「ディア、お前もだぞ」<br>「アタシも？」<br><br>　ドミニクが不器用に二人の無事を祈る。ディアは名前を呼ばれると思わなかった為驚いた。そんなディアにドミニクはため息混じりに言葉を続ける。<br><br>「はぁ～。いいか、一回しか言わないぞ。俺はそこのヴァラロスだけじゃなく、ディア、お前さんも仲間だと思ってる。仲間の無事を祈るのは変か？」<br>「……ボコボコにしちゃったけど？」<br>「おまっ！　それは昇級の……ええい！　もういいわ！　さっさと行ってこい！」<br><br>　ドミニクの言葉に冗談で返すディア。ドミニクは少し怒ってしまったがディアの口元は少し緩んでいた。<br><br>「ごめん冗談。ありがと。さっさと終わらせてくるからお酒用意しておいて」<br>「さっさと行け。んで、すぐに帰ってこい」<br><br>　ディアが笑顔で素直に謝罪とお礼を言うと、予想外の反応にドミニクは気恥ずかしくなり目線を合わせられずに背を向ける。お互いに顔は見えないが、ドミニクも笑顔になっているのは分かるのであった。<br><br><br><br>　冒険者が山の麓で防衛線を作っている横をヴァラロスとディアが素通りする。何名かには奇異な目で見られたが指示を出して統率している冒険者は当然のように道を譲ってくれた。どうやらドミニクが冒険者を統率する人員には何か話しているようだ。ドミニクとの会話後すぐにこれだ。きっとドミニクはヴァラロス達の行動を予測して予め伝えていたのだろう。<br><br>「全部お見通しだったってわけか」<br>「だね。あれだけは敵に回しちゃいけない……」<br><br>　二人はドミニクのことを高く評価しつつ空山へと入るのだった。<br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br><br>　ディアが認識阻害の魔法をかける。そのまま手を繋ぎ山を登る二人は、しばらく進むと予想通り魔物の群れが山を下っているところに遭遇する。その正確な数は不明だが、山の上の方まで魔物の気配があることから、以前にノヴィシムを襲っていた時くらいの数はいるだろう。<br>　しかし、認識阻害の魔法が効いているおかげで魔物が自然と二人を避けていく。ディアはその様子に慣れたようであるが、ヴァラロスはまだ慣れないのか不安そうにディアの手をしっかりと握り歩いている。魔物が辺りを埋め尽くしているのだ。一歩間違えれば認識阻害の魔法は解け、あっという間に袋叩きであろう。そうならないように祈りながらヴァラロスは必要以上に気配を消して歩いくのだった。</p><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/n0c553be7fba9'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 23 Jun 2026 23:34:02 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 38</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">38.屈辱の先に、君への懇願</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">　その後、軽い打ち合わせをして解散した。空山側はドミニクの計らいで空山の魔物退治を冒険者ギルド発注で冒険者達に依頼をかける事になった。ヴァラロスが街を魔物から守った分の報酬で依頼してみたところすんなり通ったのだ。ヴァラロス達の街への貢献を考えるとそれも当然かもしれない。そもそも街が崩壊するところだったのだ。ドミニクもそう考えたのか、やると決まってからはやけに協力的であった。翌日朝に空山ふもとに冒険者が集まる算段となっている。<br><br>　プロカル側はヴァラロスとディアが対応すると言ったので二人に任せてもらえている。正直、誰かについてこられるとそれはそれで問題である。転移紋の事を教えなければならないし、そもそも移動手段として転移紋が使えない。それは、二人にとっては不都合しかなかった。<br><br><br><br>　二人は準備を終えると早速プロカル側の問題を対処しようと街を出る事にした。そのまましばらく歩き、街が見えなくなった頃ヴァラロスが口を開く。<br><br>「で、実際どうなんだ？　なんで空山が怪しいと思った？……あの道具屋から何か言われたのか？」<br>「ぁっ……」<br><br>　道具屋。その言葉がヴァラロスから出るとは予想外であった。しかし、考えれば分かることだ。ディアのことを旧知の中と紹介していたオーディーン。ディアが魔王と分かってしまった今となっては無関係とはいかないだろう。あの胡散臭い創造神の事を説明してもいいがディアの頭にオーディーンの言葉がよぎる。『ヴァラロスだ』……その言葉を思い出してしまい言葉に詰まる。その反応にヴァラロスは肩をすくめながら言葉を続けた。<br><br>「言えないならそれでもいいが……」<br>「ち、違う！　あっ……」<br><br>　思わず声が大きくなるディア。自分でも何故そんな声が出たのか分からず驚いている。驚いた様子のディアを見てヴァラロスもまた驚く。少しだけ静寂に包まれる中、ディアが静かに語り始めた。<br><br>「……今回の騒動。あいつに聞いたけど誰かが意図的に仕掛けたものだって」<br>「……まぁ、そうだろうな？　いや、そこはもう分かってたんじゃないか？」<br><br>　ディアの言葉に困惑するヴァラロス。転移紋が置かれていた時点で自然発生ではない。何故今更そんな事を言うのか不思議に思っているとディアが小さく言葉を続けた。<br><br>「……目的」<br>「ん？　目的？　誰が何のためにやったのか分かったのか！？」<br>「ううん。誰がやったのかは分からない。でも目的は特定の一人を消そうとしたからだって言われた」<br><br>　明言する事を躊躇するディア。そのまま伝えればいいのだがディアの気持ちの整理がつかず伝えられずにいた。当然ヴァラロスは何のことだか分からずにいる。<br><br>「誰かが狙われてるのか……そいつ、なんか恨みを買うようなことしたのか？　街そのものを壊滅させる程に消したいやつってどんなやつだよ…………狙われてるのが誰かは分かってるのか？」<br>「っ？！」<br><br>　ディアは息を呑む。当然確認される。そんなことは分かっていた。それでも中途半端に話し始めたのはディアの中で整理がついていなかったからである。<br>　再び言葉に詰まるディア。その様子を見てヴァラロスが少し勘違いをする。<br><br>「あ、いや。別に責めてるわけじゃないんだ。これから一緒に行くわけだし、少しでも聞いて思うかなと思っただけで。……だって、あんなヘマをするもんだから心配になってな……」<br>「ヘマって……ううん。ありがとう。正直助かった」<br><br>　ディアはヘマと言われ少しムッとしたが、どう考えてもディアがやらかしている。それを分かっていたディアは素直にお礼を言う事にした。<br><br>「良いって事よ。ただ、護衛対象は秘密なのか」<br>「違う……ヴァル……」<br>「ん？　なんだ？」<br>「ヴァル……」<br>「お、おぅ。なんだ？」<br>「だから、ヴァル！」<br><br>　ディアは頑張って伝えようとしているようだが伝わらず、ヴァラロスはひたすら名前を呼ばれる事に少し恥ずかしそうにしながらも困惑していた。<br>　痺れを切らしたディアが語気を強める。<br><br>「ヴァルなんだって！　狙われてるの！」<br>「……は？　なんで？」<br>「知らない！　あいつもそこまでは教えてくれなかった。でも、狙われてるのはヴァル。それは間違いない」<br>「…………」<br><br>　言い切った。顔を真っ赤にして事実を伝えたディア。それを聞いたヴァラロスは少し呆けた後に少し考えて伝える。<br><br>「んー……？　理由はわからないけど、とりあえず自分の身を守ればいいのか？　いや、街のみんなも守らなきゃいけないか……。俺のことは分からないから置いとくとして、今行動を起こしているってことは何かしら目処がついてるってことだよな？　俺も手伝うから教えてくれないか？」<br><br>　ヴァラロスは自分の事を少し考えた後、原因について考える事を諦めた。当然心当たりなどなく、ディアも知らないと言うのだ。そうなると考えても仕方がない。それよりも、それを受けてこれからどうするか。それが一番大切だと頭を切り替えてディアに質問をする。<br>　そんなヴァラロスの様子を見てディアは疑問に思った。<br><br>「怖くないの？」<br>「んー正直わからない。怖い……のかな？　今まで感じた事ない種類の怖さだし。でも、考えても何にもならないってのも分かるから、それなら、今は俺が今できる事をやるべきだと思う」<br>「！？　そう……わかった。今の状況を説明する」<br><br>　ディアはヴァラロスの答えに少し驚くものの、ヴァラロスならそうかと不思議と納得をする。ヴァラロスが今やれる最善を考えた結果、ディアの方針に従ってくれているのだ。ならばディアもディアが今できる最善を尽くすべき。そう考えたディアは急に頭が冷え、冷静になれた。まずすることは情報共有だと、ヴァラロスへ状況を説明し始めるのだった。<br><br><br><br><br><br>「………….なるほど。空山に転移紋が繋がってる可能性があると。だから向こうからも魔物が降りてくるから魔物に備える必要がある……か」<br>「可能性としてはあると思ってる」<br>「そうか…………。わかった。まずはその転移紋を潰しに行こう」<br><br>　ディアも確信はない。ただ、オーディーンの持ってきた情報である。今まで確信を持って言われた事は当たっていた。つまり今回も信用して良いだろう。<br>　ディアの説明が終わりヴァラロスは少し考えたが、彼女の案を全面的に受け入れるのだった。<br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br>　その後は特に何事もなく移動できた。転移紋で山の麓まで行き、そこから山を登る。山を登っている最中に多少魔物と遭遇したが、通常より少し多いかな？くらいである。大した量ではない。そのまま山を登って進むとプロカルの時同様に岩肌に何やら光るものが見えてきた。<br><br>「……あれか」<br><br>　ヴァラロスが近づくと、そこには先日同様に転移紋が光っていた。ただ、異なる点といえば周りに魔物がいない事である。<br><br>「出尽くしたか……？」<br>「何にせよ開いていて良いものじゃないし、壊しておかないと……えっ！？」<br><br>　ディアがそう言い、手を前に出した途端、転移紋が急に強く光り始めた。それを見たディアは慌てて自身の生命力を魔力へと変換し、手に魔力を込める。<br><br>「サンダー！」<br><br>バチンッ！<br><br>　ディアは魔法を唱えて転移紋を破壊した。しかし、一歩間に合わず魔物が一体飛び出してしまった。<br><br>グアアアァァァァ！<br><br>「あれは……？！！」<br>「ワイバーン？！」<br><br>　ワイバーン。その性格は獰猛で目の前の生き物を獲物としか考えられないと言われるほどである。そのワイバーンが突然目の前に現れたのだ。<br><br>「空山……アイツはどうしていつも正しいんだか！」<br><br>　よく考えれば想定できた事である。何故転移紋で送られてくる魔物が地を這う魔物だけだと思った？オーディーンは空山に繋がっているといった。ならば、今空山にいる脅威とは？当然ワイバーンの群れである。そのワイバーンが転移紋を使って移動する事も十分考慮できた筈だ。<br><br>　悔やんでいても仕方がない。今は一体だけで済んだことを幸運に思うべきだろう。そして今するべきことは目の前の敵を排除することだ。<br><br>「ヴァル！？」<br>「やるしかないよな！？」<br><br>　戦う意志を明確に確認するディア。ヴァラロスのことを考え確認をとったが杞憂であった。二人はすぐに体勢を整えワイバーンへと向き直る。それを見たワイバーンは思い切り息を吸う素振りを見せた。<br><br>「ブレスか！？」<br>「ライト！」<br><br>　ヴァラロスが身構えた瞬間にすかさずディアが魔法を唱える。ディアが放った魔法は瞬時にワイバーンの目の前で発動し辺りは光に包まれた。それに驚いたワイバーンは体制を崩しブレスをはるか上空へ放ち地面へと落ちていく。<br><br>「アイスランス！」<br><br>　そんなワイバーンに容赦なく魔法を打ち込む。打ち込まれた攻撃は体制を整えようとするワイバーンの翼膜を貫き飛行性能を奪った。<br><br>「っ！？……くっ、俺だって！」<br><br>　あまりにも手慣れた様子のディアに驚きつつも何も出来ていない現状にヴァラロスは口惜しく思う。ヴァラロスはそのままワイバーンが落ちる場所へ走り出し、ワイバーンが落ちると同時にワイバーンへと斬り掛かる。<br><br>ガキンッ！<br><br>「んなっ！？」<br>「ヴァル！」<br><br>　しかし、その剣はワイバーンの硬い鱗に弾かれる。その隙を見て落ちたばかりのワイバーンが尻尾でヴァラロスを薙ぎ払おうとした。しかし、それを見ていたディアがすでに次の行動に移る。<br><br>「アースニードル！　伏せて！」<br><br>　ディアが放った魔法は地面から突起を生み出しワイバーンの尻尾の軌道を上に逸らす。それに合わせてヴァラロスを体勢を低くしたことによりかろうじて攻撃を免れることができた。<br><br>「……くそっ！」<br><br>　無力な自分に憤りを感じる。しかし、そのままそこにいても足手纏いにしかならないと理解出来ないヴァラロスではない。ディアのおかげでワイバーンからの攻撃を免れたヴァラロスはすぐに彼女の元へ戻り、ワイバーンからの距離を取るのだった。<br><br>「いい判断。あれにはその剣は届かない」<br>「悪い。助かった。」<br><br>　ヴァラロスが戻るまで下手に攻撃できないディアは、そうヴァラロスに言いながら次の手を考える。<br><br>ぐ…グオオォォォォォ！<br><br>　両翼をダメにされ地に落とされたワイバーンは怒りの咆哮を上げる。そして、そのまま再度息を大きく吸い込んだ。<br><br>「させない！　アイスボール！」<br><br>　ディアがそういうとワイバーンの目の前に巨大な氷の塊が現れる。それはワイバーンの口から炎が吐かれるのとほぼ同時であった。<br><br>グ、グアアァァアア！？<br><br>　目の前の氷で炎が遮られディアとヴァラロスには届かない。それどころかワイバーンは自信が吐いた炎が跳ね返り口元が少し焼けたようだ。<br>　自分の炎に焼かれ怯むワイバーン。その隙を逃すディアではなかった。<br><br>「伏せて！　一気に仕留める！……エクスプロージョン！」<br><br>　すかさず攻撃を叩き込むディア。その攻撃はワイバーンを飲み込み鮮やかな光と共に爆散した。<br><br>ドオオオオオオオオオォォォォォォン…………<br><br>　色鮮やかな火柱が天高くへと立ち昇る。ディアの一撃でワイバーンは跡形もなく消し飛ぶのだった。<br><br><br><br><br><br>「ふぅ……ケガはない？」<br>「……あぁ、俺まで吹き飛ぶかと思ったけど……あれって、空に放つものじゃなかったのか？」<br>「……意地を張っていい状況じゃないから」<br>「そ、そうか……悪い」<br><br>　ディアの攻撃に驚きながらも、放った魔法について指摘するヴァラロス。それもそのはず、過去にヴァラロスが地面にいる魔物に放てないかと提案した時は拒否されたのだ。それなのにも関わらず、今回は躊躇なくその魔法を放った。どんな心境の変化かと気になるのは仕方のないことだ。<br>　しかし、ディアはその問いに短く答える。相手はワイバーンだ。手加減していい相手ではない。……だが、実はそれだけではない。ディアはヴァラロスが攻撃され、彼を危険な目に合わせた相手に怒っていたのだ。絶対に許さない。そう思ったらあの魔法を放っていた。自分の意地よりも大切なものがあるのだ。<br><br>　ディアの回答を聞いたヴァラロスは少し気まずそうな反応をする。それもそのはず、ワイバーン相手に手も足も出なかったのだ。結局ディアがいたからどうにかなったものの、一人では太刀打ちが出来なかった。その事実にヴァラロスは、自分を足手纏いと思ってしまったのだ。<br>　そんなヴァラロスをみかねて、ディアは肩をすくめながら彼に声をかける。<br><br>「ねぇ、あれは普通のワイバーンじゃないから、太刀打ち出来ないのが普通なの」<br>「普通じゃない？」<br><br>　ディアの言葉にヴァラロスが反応する。何を言っているのかわからない様子のヴァラロスにディアが言葉を続ける。<br><br>「さっきブレスを吐いたでしょ。ワイバーンの多くはブレスなんか吐かない。稀にそういう個体がいて、ものすごく強い。今回がそれだっただけ」<br>「…………」<br><br>　ディアの言葉に考え込むヴァラロス。少し考えた後に静かに話し始めた。<br><br>「前に、俺の故郷がワイバーンに襲われた話はしただろ。村が焼き払われていたんだ。つまり、俺の故郷を襲ったワイバーンは今のやつと同じだったって事か……」<br><br>　長年の謎が解けたという顔をするヴァラロス。ヴァラロスの故郷には魔物討伐に長けた人が何人もいたと記憶している。それなのにも関わらず一方的に蹂躙されたと聞いている。それはなぜか。相手が悪かったのだ。実際に対峙して理解した。アレは出会ってはいけないものだ。天災に近く、一度遭遇すればなす術もない。<br>　しかし、その天災に対して対抗できる者がいた。絶対的な強者なのは間違いない。間違いないが、その強者は話してみると普通の女の子であった。普通に笑い、相手を気遣い、何処にでもいるような優しい女の子。そんな彼女が圧倒的な力で災厄を圧倒してみせた。それは、ヴァラロスにとって自身を変えるに十分な刺激であった。<br><br>「なぁ、ディア」<br>「な、なに？」<br><br>　神妙な面持ちのヴァラロスから急に声をかけられたディアは、少し驚いたもののなんとか反応する。ヴァラロスがもっと落ち込むと思っていたのだ。しかし、その予想は外れ事態はディアの想定外の展開へと進む。<br><br>「ディアは魔王として部下へ鍛錬することはあるのか？」<br>「うーん……最近はないかな、昔はよくやってたけど……ってヴァル、まさか……」<br><br>　ディアの表情が引き攣る。オーディーンの話を聞いてからヴァラロスのことを護衛対象と考えていた節があった。その為、今予想していることは今の彼女の方針と真逆の行為となる。だが、ディアはその事態を少し嬉しくも思っていた。<br><br>「俺を鍛えてくれ。こいつに負けないくらいに、強く」<br><br>　額に手を当て天を仰ぐディア。しかし、頼られた事が嬉しくその口元は少し緩んでいたのだった。</p><br/><a 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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 22 Jun 2026 23:57:50 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 37</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">37.打ち手、咄嗟の共犯</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">「な、何を言って……ヴァルは今関係ないでしょ……？」<br>「……俺が言えるのはここまでだ」<br>「ま、待ってよ！？　なんで彼がでてくるの！？」<br>「ここまでだと言った。……あとはその意味をよく考えてくれ」<br>「っ……」<br><br>　突然のことに言葉を失うディア。何故このタイミングでヴァラロスの名前が出たのか？答えはひとつしかない。命を狙われている対象がヴァラロスなのだ。その答えに辿り着かないほど現実から目を背けてはいない。<br>　俯き唇を噛み締め、黙り込んでしまったディアに「店仕舞いだ」と言ってオーディーンは店から追い出す。いつもなら文句のひとつでも言うであろうディアはそんな余裕などなく、大人しく外に出される。<br>　そんなディアを少し心配になるオーディーンは閉めようとしていた手を止めディアの後ろ姿を見る。しかし、思い直して、あとはディアの問題だと言わんばかりに扉を閉めるのであった。<br><br><br><br>　その後少しの間店の前で佇んでいたディアであったが、ここに居ても仕方がないと考え宿に帰ることにした。<br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br>　宿の自分の部屋に着いたディアは回らなくなった頭で必死に考えていた。<br><br>（ヴァルが狙われてる。それはオーディーンの口ぶりからも間違いない。だから最初に依頼という形でヴァルに接触していた。……だけど、アタシが連れ出したからオーディーンの予定が狂ってしまった。……でも、どういう予定かは知らないけどヴァルを連れ出すのを協力してくれたようにも見える。それがヴァルにとって最善だったから？　アタシの性格を考えてパーティを組めばヴァルを見捨てることはしないだろうと思った……？）<br><br>　ごちゃごちゃになった頭で考える。全ては不確定要素である。<br><br>「…………」<br><br>　考えてはみたものの考えがまとまらない。あまりにも情報が少な過ぎる。そうなっては原因には辿り着けないだろう。ならば、今出来ることを考えるしかない。<br><br>「よく分かんないけど……ヴァルが狙われてるなら助けるしかない。恐らく転移紋がまだあるならまずはそこを潰すか……あるいは」<br><br>　ディアはベッドに後ろから倒れ込むとオーディーンの言葉を思い出す。魔物の発生源は空山であると言っていた。きっとそこに転移紋が繋がっているのだろう。しかし、誰がやったのかは不明だ。また、気がかりなことが他にもある。<br><br>（この前空山に登った時は転移紋は見当たらなかった。ううん。そもそもスタンピートを起こすほど沢山魔物は居なかったはず。……そうなると、更に登ったところに魔物がいるって事になる。……そんな事はある？……あとは、山中の魔物が一気に集まるとか？　それこそどうして……？）<br><br>　魔物とて元は動物。空山は山頂が雲に隠れるほどに大きい。この前登った中腹でもそこそこの標高はあった筈だ。当然酸素は薄く気温は低い。そんな所に普段森に棲むような魔物が棲息しているのだろうか？そんなことはないだろう。そうなると、空山にいる魔物が一気に集まってきた事になるが、相手は知能のない魔物の為、誘導など出来るわけない。そう、ディアは考えた。<br><br>（……それに、あそこは今ワイバーンの群れが居たはずだ。魔物の住処があったとしても逃げ出すに決まって……）<br><br>「あっ！？」<br><br>　そこまで考えたところでディアは思わず声を上げてしまった。逃げ出してきた。それが正解なのではないかと。それが正解であるならば次の問題が生まれる。<br><br>「待った。もし、プロカル方面の転移紋を潰したら？　もし、本当に魔物が逃げ出していたのなら？……魔物が出て来なくなるだけってわけにはいかない。出て来られなくなった魔物はどうなる？　当然、別の逃げ道を探す。……空山から魔物が降りてくる？」<br><br>　それがディアが出した答えであった。そして、ディアの中で次の行動が決まる。<br><br>「でも、だからといって転移紋を潰さないと最悪挟撃される形になる。それなら、準備をしてプロカル側の転移紋を潰し、空山の魔物を迎え撃つ。……ついでにワイバーンも討伐できれば、ヴァルとの約束も守れるし」<br><br>　約束も果たせて一石二鳥である。そうと決まれば即行動だ。そんな思いで気持ちを切り替え、ディアはまず明日に備えて寝る準備を進めるのであった。<br><br><br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br><br><br>　翌日、ディアとヴァラロスはドミニクに呼び出されていた。<br><br>「さて、ゆっくり休めただろうし報告してもらおうか」<br><br>　ドミニクの言葉にヴァラロスが事の顛末を説明する。勿論、転移紋やディアの素性は伏せてだが。<br><br><br><br><br>　……ひと通り説明が終わったところでドミニクが頭を抱えながら言葉を絞り出す。<br><br>「おまえら……よく生きて帰ってこれたな。素直に尊敬するぞ……」<br><br>　ドミニクに話した内容を掻い摘むとこうだ。プロカルに向かう途中で二人はスタンピートに遭遇、回り込んでプロカルに危機を伝えた後、迫り来る魔物からプロカルを守りつつ発生源の山へ二人で乗り込み魔物の掃討した。その中にひときわ強い魔物が居た。話しているヴァラロス自身も途中で気付いたが、どう考えても、今ここにいることが奇跡といった内容になっている。<br>　間違いではない。間違いではないのだが、そこには認識阻害の魔法であったり、転移紋での脱出や氷転がしがあったりとある程度の工夫があったからこそだ。それを知らないドミニクからしたら目の前の二人がどれだけ危険な目に遭ったのか計り知れないといった反応であった。<br><br>「そして、こちら側に戻ってくる際にも魔物を倒したと」<br>「急いだから最低限の魔物しか倒せてないけどな」<br>「門の前の数を最低限と言うか……」<br><br>　正直、五百は下らなかったと思う。それだけの魔物がそこには居た。それを対処したディアとヴァラロスは十分規格外であった。<br><br>「ディアがおかしいのはわかるが、ヴァラロス。おまえまでそっち側とはな……」<br>「おい、アタシがおかしいとはどういう了見か」<br><br>　ドミニクが素直な感想を述べるとディアが思わずツッコミを入れる。ヴァラロスも自分のしたことが規格外であることを理解しているのか、ただ苦笑いを浮かべる。しかし、ドミニクはそれを無視して話を続けた。<br><br>「はぁ……まぁ、そんな事はどうでもいい」<br>「ちょっ「それよりも、この後の対応が問題だ」<br><br>　ディアが抗議しようとしたがドミニクに無視される。話題が話題であるためにディアも渋々引き下がる。このあとはディアが話す番だ。<br><br>「……昨日言ったけど、まだ終わってない。冒険者は空山からの襲撃に備えて」<br>「空山？　プロカルじゃないのか？」<br>「あっちはアタシ達がどうにかする。その後空山からの魔物が出てくるはず」<br><br>　ディアは得意げに昨日考えたプランを発表する。ヴァラロスも初耳であったためにディアの意図を汲み取りきれずにいた。<br>　しかし、ドミニクは別の意味で考えている。<br><br>「……なぁ、プロカル側の魔物をどうにかした後に空山からの魔物が出てくるのか？」<br>「そう。だから今のうちに準備を……」<br>「何でそんなことわかるんだ？」<br>「…………」<br><br>　しまった。それが素直な感想であった。昨日は色々なことがあったせいでまだ頭が完全に働いていないらしい。転移紋などドミニクには話せないことが多すぎる。<br><br>（ど、どどどどうしよう！？　そうだよ。そんな事、転移紋を知らないと説明出来ないし……）<br><br>　ディアは悩むフリをしている。表情を崩さなかったのは流石といえよう。ただ、内心焦っているのか無意識にヴァラロスを見る。そして、目が合ったヴァラロスは全てを察した。<br><br><br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br><br><br>（こいつ……口を滑らせたな！！？）<br><br>　昨日遅くに帰ってきたのは知っている。部屋が隣だから扉の音で分かる。何があったかは知らないが、きっと今回の騒動を調べていたのだろう。……きっとあの道具屋だ。ディアの事を旧知の仲と言っていた道具屋。つまりディアが魔王であることを知っている可能性がある。それはつまり、道具屋も関係者という事。<br>　そこで結論を出したのだから間違いないだろう。正直、こう言う話は事前に話しておいてほしい。だが、今やるべき事は一つだ。<br><br>「魔物」<br>「っ！！？」<br>「魔物？」<br>「そう。魔物」<br><br>　それっぽいことを言って誤魔化すことだ！<br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br>「魔物なんてどこにもいるだろ」<br>「それが……いつもプロカル側の山にはいない魔物がいたんだ。そう、空山に登った時に見たやつだったな」<br>「ほぅ……それで？」<br>「ワイバーンの群れが来たことが確認できてる。きっとその影響で山から魔物が移動してきたんだと思う」<br>「…………」<br><br>　あながち間違いではない説明にドキドキするディア。ヴァラロスも苦し紛れに話している為穴だらけの説明になってしまっている。だが、やるしかない。<br><br>「そして、今回プロカル側の魔物を討伐する時にディアなら派手にやらかす」<br>「…………はぁ！？？」<br>「まぁ……やらかすだろうな」<br>「は、はぁぁああ！！？」<br><br>　ディアが驚いていると何故かドミニクも賛同する。ヴァラロスは抗議したそうなディアを無視して話を続ける。<br><br>「それで空山に残っている魔物を刺激するだろうから準備して欲しいって事だ」<br>「お、おぅ…………」<br>「〜〜〜〜」<br><br>　無理やり話を終わらせるヴァラロス。ドミニクはもはや訳がわからないといった様子であったが、何か話せない訳があるのだと察してそれ以上は聞いては来なかった。<br><br>　正直、ドミニクはディアだけが主張するのであれば引き下がるつもりはなかった。正体不明で明らかにおかしい。ドミニクとタイマン張って勝てるような、こんな町娘いるわけが無い。正体を探るチャンスにもなると考えて聞いてみたのだ。しかし、その目論見は予想外のところから阻まれる。長らくギルドに貢献してきたヴァラロスもディアに協力しろと言うのだ。恐らくヴァラロスも何かを知っている。こんな見え透いた嘘で取り繕ってくるほどだ。きっと、問いただしても応えることはないだろう。ドミニクは今後のヴァラロスとの関係性を考えここは引く事にしたのだ。<br><br>　一方で不本意な扱いを受けるディア。ただ、その場が丸く収まりそうであった為強く出れない。ディアとしてもヴァラロスが助けてくれたことは分かっているのだ。釈然としない表情であり頬を膨らませているがディアは黙るしかないのであった。</p><br/><a 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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 22 Jun 2026 23:09:11 +0900</pubDate>
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      <title>徒然なるままに（26' 6/21）Anthropicプラン改訂延期のその裏側を考察</title>
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      <description><![CDATA[<p name="972226FF-B6A3-42D1-A7C9-5AE93D34A8C7" id="972226FF-B6A3-42D1-A7C9-5AE93D34A8C7">こんばんは。えいりすです。<br>またまた短いです。<br><br>最近気分が沈みがちで創作活動にまで手が出せない数日でした。</p><p name="721038D5-99B5-4C7E-8BE1-924506B952AC" id="721038D5-99B5-4C7E-8BE1-924506B952AC">特にショックなのがAnthropicの6/15改訂白紙話。なんでや！……って思ったんですが、これ、当然です。だって企業ですもの。多分苦肉の策。今回は完全私主観ですが、今回の事件の背景を考察してみようかなと思っています。</p><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/nd23f1f2671e1'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Sun, 21 Jun 2026 23:36:59 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 36</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">36.希望、そして絶望</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">　二人と一頭が門に近づくと門扉が開いた。入り口を見るとそこには門番が立っていた。<br><br>「嬢ちゃん！　あと、ヴァラロスさん？　外は魔物だらけなはずだが、大丈夫だったのか？」<br>「どうも、まぁ大丈夫かと言われれば大丈夫だが、少々骨が折れたな……」<br>「早く休みたい」<br>「ぶるる……」<br><br>　門番に見つけられるや否や声をかけられるヴァラロス達。ついでに後ろからついて来た馬も門番の言葉に応える。すると、門番の後ろからさらに声が聞こえて来た。<br><br>「疲れてるところすまないが、ギルドまで来てくれないか？」<br><br>　後ろから現れたのはドミニクである。外で魔物と戦っていたのを分かっているのだろう。しかし、入り口は炎で塞がれ、中からも外に出られない状態であった為、ヴァラロス達を助けにも行けなかったものと思われる。そんな彼が状況を知る為にヴァラロス達を呼び出すのは仕方のないことであった。<br><br>「……今じゃなきゃダメか？」<br><br>　ヴァラロスには珍しくドミニクの言葉に反論する。ヴァラロスもずっと戦いっぱなしで疲れているのだ。いつもと比べて塩対応になるのも仕方のないことである。<br>　ヴァラロス自身気付いていないが、以前にウルフを討伐した時は、ウルフへの反応が遅れていたが、今回は何度も背後から魔物が襲いかかっていたにも関わらず、まるで後ろに目があるかのように確実に反応ができていた。以前にディアの剣舞に合わせて戦ったことで、この短期間に成長できた。……それはヴァラロスの潜在能力が故である。<br>　ドミニクはヴァラロスが断ろうとするのを聞き、少し考えた後に話し始める。<br><br>「……緊急事態宣言を出した後に原因が取り除かれたんだ。すぐに状況を把握するのがギルドの責務だろう？　それに、冒険者はギルドに報告する義務がある。……というのが理由だが、とりあえず、危険は去ったということでいいか？」<br><br>　ドミニクは責任者としてやるべき事をしている。そういった態度で義務だの言っていたが、突然ざっくりとした質問を投げかけて来た。それは恐らくドミニクなりの気遣いである。もしついて来てくれるなら儲けもん程度に思っていたのだろう。流石にあの数の魔物を討伐した後に呼び出すのはドミニクとしても気が引けたとみえる。<br><br>「今のところは、としか言えないな。まだ原因を取り除いたわけじゃない。魔物もまだ残っているはずだ」<br><br>　到着を優先した為に道中の魔物を放置してしまった。それが今となっては脅威として残っている。それでも、街の周りに蔓延っていた魔物はほとんどいなくなった為、いつも通り門扉を堅く閉ざせば問題ない程度には魔物を減らせているはずだった。それをドミニクも分かっているのか、話を聞いたドミニクからは焦りの色は見えない。<br><br>「そうか、まだ終わってないんだな……。まぁ、なんだ。二人とも無事でよかった。来てくれと言った手前なんだが、今日は休んで明日報告に来てくれ。……おい！　ここの門を閉めるぞ！」<br><br>　ドミニクがそういうと門番が門扉を閉める。周りで見ていた住民も、ヴァラロスとディアの活躍を聞き顔色が明るくなっていくのがわかる。魔物が町を取り囲み住民は死を覚悟していただろう。正直どうしようもないところに現れた救世主である。住民が期待するのも無理はない。どうにか窮地を脱したノヴィシムの街に少し希望が見えた瞬間であった。<br><br><br><br>「じゃあ宿に向かうか。ディアは前と同じところに泊まるのか？」<br>「考え中。ヴァルは？」<br>「俺はいつものところだな。少し外れにある……そうだな、ディアが分かるように言うと道具屋の近くだ」<br>「アタシもそこ行く」<br><br>　ヴァラロスはディアに分かるように宿の場所を説明する。そういえば前回は場所を教えていなかった気がする。そう思いディアもわかる道具屋の名前を出した。すると間髪入れずにディアが答える。もともと借りていた宿屋であれば、勝手も分かる為安心ではあるが、ヴァラロスの宿と近いところにしようとは思っていたのだ。<br>　同じ宿屋とまでは考えていなかったが、ヴァラロスの一言で考えが変わる。この街に帰ってきたのなら寄るところがあるだろう。そう考えて即答したのだ。<br><br>「お、おう。じゃあ行くか。部屋が空いてるかまず確認だ」<br><br>　ディアの即答ぶりにヴァラロスが少し驚いていたが、すぐに頭を切り替えて宿屋に行く事にした。<br><br><br><br><br>　この街がヒト族の街の最果てにあるからか宿は問題なく確保できた。そのまま食事も終わらせ、二人ともまた明日と部屋の前で別れる。<br>　ディアはヴァラロスと別れるや否や目的の場所へと向かうのであった。<br><br><br><br><br><br>　ドンドンドンドン<br><br>「たのもー」<br><br>　暗い建物の前にディアの声が響き渡る。そう、文字通り辺りは暗くなっている。それは家主が不在か就寝しているであろう事を意味していそうだ。<br><br>　ドンドンドンドン<br><br>「はーやーくー」<br><br>　それでも容赦なく扉を叩くのはそこにいると信じているからである。<br><br>　ドンドンドンドン<br><br>　ガチャ<br><br>　ほらいた。<br><br>「今何時だと思ってる……」<br><br>「スタンピードに転移紋が関わってる。心当たりはない？」<br><br>「…………入れ」<br><br>　寝巻き姿のオーディーンが文句を言いながら出てくる。しかし、ディアはそんなことは無視して確認部分を手短に伝えた。それを聞いたオーディーンは真剣な顔つきになって考え込み、ディアを店内へと招くのだった。<br><br><br><br>「茶も出せなくてすまんな。なにぶん夜遅くてな」<br>「構わない。アタシも用が済んだら帰るから」<br>「……嫌味を言ったつもりなんだが」<br><br>　オーディーンが些細な反抗を試みるが無意味に終わる。ディアも疲れているのだ。本当ならさっさと湯浴みして寝たい。だが、そうもいかない為わざわざ足を運んだのだ。オーディーンもそれ以上は言わずに真剣な顔つきに戻り話を続ける。<br><br>「で、何があった？」<br>「プロカルへ向かう途中にスタンピードが起きた」<br>「プロカルだぁ？　魔物が増えてるのは魔族領だろ？　そっちの話じゃないのか？」<br>「違う。今回確認したのはプロカル側。あっちの山に転移紋が書かれた岩があって、そこから魔物が溢れ出てた」<br>「なんでまた……」<br><br>　オーディーンがそう呟くとディアが怪訝そうな顔をする。それもそのはずだ。この騒ぎで何か調べているであろうオーディーンが何も知らなさそうな反応をしているのだ。散々使えない神とは言っていたものの神は神。重要な局面では頼りになる。だからこそこのオーディーンの反応は想定外であった。<br><br>（こいつが分からないとなると誰がわかるんだ……。いや、プルートもどきがいた事を考えると……）<br><br>　ディアは思わず顔を引き攣らせた。それは、自分の部下を疑う行為。だが、状況的に不利なのは間違いない。そういう発想に至るのはごく自然で仕方のないことであった。そして、その僅かな表情の変化をオーディーンは見逃さない。<br><br>「おい、何か心当たりあるだろう」<br>「！？……ななな、なんのことか分からないな」<br>「わかりやすく動揺してるんじゃねぇ！」<br><br>　ディアも疲れているのか明らかに狼狽している。オーディーンに突っ込まれ仕方なく白状することにする。出来る限り情報は共有した方が良いだろう。<br><br>「うぅ……プルートの予備体がいた」<br>「あ？　あの理に反してる部下の猿か？」<br>「その予備体ね。本人じゃない」<br>「おいおい、それじゃあ身内の尻を拭ったってことか？」<br>「ぅっ……でも、おかしいところがある」<br><br>　追い詰められてきたディアは考えていた不審な点を挙げる。<br><br>「まず、なぜアタシに知らせないのか。こう言った活動は必ずアタシに報告するはず」<br>「おまえさんがここにいるから報告できなかったんだろ」<br>「…………」<br><br>　なるほど。一理ある。そう思ってしまったディアはもう負けかも知れない。<br><br>「で、でも！　ヒト族を襲うメリットがない。それに、プルートは予備体のことはとても大切にしてる。何かの作戦に参加させるようなことは今までしてこなかった」<br>「む……なるほど。それなら少しはおかしいか」<br><br>　ディアの必死の言い訳にオーディーンは少し納得してくれた様だ。その場しのぎで言った感は否めないがあながち間違いではない。プルートにとって予備体は転生先そのものである。今の身体がダメになった時に魂を乗り換える先となる為、健康体にしておく必要がある。乗り換えた先の身体が弱っていては元も子もない。その為、今までもプルートの予備体は危険を伴う作戦に参加した事はない。<br><br>　ディアが一安心していると今度はオーディーンが黙り込む。その表情は悩むというよりかは合点がいった表情である。<br><br>「何か気になる事でも？」<br><br>　ディアもそれに気付き、オーディーンに話しかける。オーディーンは急に棚から地図を取り出してテーブルに広がる。そして、オーディーンは憶測だが……と話し始めた。<br><br>「多分、その魔物の出所は空山だ」<br>「空山？……まさか」<br>「それで察するのは流石だな。ヒト族側に魔物が降りてこないのは意図的に魔物を転移させてるからと考えた方が自然だろう」<br>「……もし、魔物の放出を止めた場合、空山からも魔物が降りてくる可能性がある」<br>「プロカル側にも魔物を放ったのはノヴィシムを孤立させる目的だろうな。あの山を越えなければここには来れない」<br>「なんでそんな事を……アタシがここにいることがバレた？」<br>「いや、おまえさんは気まぐれにここにきただけだろ。俺ですら予想出来なかったぞ」<br>「じゃあ、誰が狙われて……まさか……」<br><br>　ディアがオーディーンをみて疑いの眼を向ける。ディアでないならばここに居る重要そうな人物はオーディーンくらいであろう。しかし、オーディーンは首を振る。<br><br>「何万年生きてると思ってるんだ。そんな居場所がバレる様な事はしねぇよ」<br>「でしょうね！！」<br><br>　オーディーンの言葉に半ギレで反応するディア。ディアも昔に探したことがあるのだ。ありとあらゆる情報網を形成し、少しでも手掛かりを掴もうとしたがひとつも手掛かりを見つけることができなかった。実績が伴っている分タチが悪く理不尽にも怒気を込めた反応となってしまったのは仕方のないことであろう。<br>　オーディーンがディアの怒りを宥めているとディアが元の話題に戻して考え始める。<br><br>「じゃあ、いったい誰が、何のためにノヴィシムを襲おうと思ったの……？」<br>「誰が、は知らんがノヴィシムにいるやつを消そうとしたのは間違い無いだろうな」<br>「そんなに狙われる様な人がノヴィシムにいる……？　いたら目立ちそうだけど」<br>「……いや、え？　気付いてなかったのか？」<br>「ん？　なんのこと？」<br><br>　オーディーンがディアに呆れる様な仕草をする。もともとオーディーンが先にコンタクトを取っていた。そこに偶然にもディアが現れたのだ。最初はオーディーンもディアが承知の上で話を進めているものと考えていたが、何故それを知っているのかについては分からずにいた。それが今納得できた。最初から何も知らなかっただけだと。<br><br>「はぁ……おまえさんは鋭いのか鈍いのかわからんな」<br>「なに？　もしかして喧嘩売ってる？」<br><br>　ディアが「よし、こい」とばかりにファイティングポーズを取る中、オーディーンはどうしたものかと考えていた。その理由は自分でたどり着いて欲しい。その上で、考えて欲しいのだ。だからこそ答えだけを伝えることにした。<br><br>「ヴァラロスだ」<br>「シュッシュッ！…………え？」<br><br>　シャドーボクシングをしていたディアの動きが突然止まる。予想外の名前。その瞬間、刻がディアだけを取り残して去っていくかの様であった。</p><br/><a 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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Sun, 21 Jun 2026 22:10:08 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 35</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">35.帰還、たちのぼる煙</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">　翌日、町長に別れを告げプロカルの町を出るディアとヴァラロス。二人が町を出る頃にはカスースから冒険者が何人も到着していた。この調子であれば多少魔物が現れても対応できるだろう。<br>　二人は町の物見櫓からも見えなくなる位置で転移紋を地面に描く。ノヴィシム近くの山の麓に転移紋の石を転がしておいた為、そこに跳ぼうというのだ。転移紋を書き終えると、転移紋を消す為に水球を頭上に浮かべ、転移紋に魔力を流す。するとたちまち二人の姿はその場から消え、残された水球が地面の転移紋をかき消すのだった。<br><br><br><br><br><br>ドコッ！<br><br>「いっっったぁぁぁ…………」<br>「いてて……これどうにかならないのか？」<br><br>　次の瞬間、目の前に地面が見えた。文字通り目の前に。どうやら転移紋が書かれた石が横を向いていたようだ。<br><br>　２回目である為に非難の目を向けるヴァラロス。ディアも流石に辛いのか考える素振りを見せる。<br><br>「……硬貨みたく薄っぺらく作るとか？」<br>「割れないか？」<br>「割れないくらいには丈夫にして」<br>「裏返ることは？」<br>「…………」<br><br>　ちょっと考えただけだと厳しそうだ。もともと遠くに転がせる様に丸くした。その事が敗因となり、どの向きに向くかわからないという状況となったのだ。<br><br>「そのうち考える……」<br>「そのうちって……」<br><br>　ディアは考えることをやめた。ヴァラロスが再び糾弾しようとしたところで何やら異変に気付いた。<br><br>「……おい」<br>「あれって……煙？　ノヴィシムの方角から上がってる」<br><br>　何やらイヤな予感がする。プロカル方面の魔物は駆逐できた。だが、反対はどうだ？本当に全ての魔物がプロカル方面に向かっていたのか？そもそも、魔物の発生源はひとつだったのか？<br>　少し考えればわかることだ。誰かが転移紋を仕掛けた。その目的がヒト族の町を襲うことであったとしたら。<br><br>（最悪だ。仕掛けるなら同時に両方面に魔物を放つはず。何故プロカルだけだと思った……！）<br><br>　ディアは自分の甘い考えに怒りを覚える。ここのところ気が緩んでいる実感はあったがここまで緩んでいると自覚した途端自分を許せなくなったのだ。<br>　その様子を見ていたヴァラロスはその怒気を察して声をかける。<br><br>「落ち着けディア。ノヴィシムにはギルドがある。最低限の守りは出来ているはずだ。逆に俺たちがプロカルに居なかったらどうなってた？……手が打てたんじゃないかと思うのはわかるが、今はプロカルのみんなを守れたことを誇れ」<br>「っ！……そう、だね」<br><br>　そう、ノヴィシムにはドミニクがいる。あのタフさを考えれば例えひとりで戦ったとしてもどうにか出来てしまえるだろう。<br>　逆にそのドミニクがいてノヴィシムから煙が上がっている方が問題である。すぐにでも街に行き、状況を確認しなくてはならない。<br>　そう思い直していると街の方から何かが近づいて来た。<br><br>「魔物か？」<br>「あれは……あながち間違いではないけど、渡りに船だね」<br><br>　どんどん近づいてくるそれは、いつぞやの馬であった。<br><br>「ヒヒーン！」<br>「あの馬は？」<br>「あの子だね。迎えに来てくれたのかも」<br>「はぁ！？　馬だぞ？　なんでくるのがわかるんだよ」<br>「あの子、魔物化してるから、アタシの魔力が近付いてるのが分かったのかも」<br>「っ！？……そういえば、魔物も元は動物なんだっけか。あいつも人を襲うのか……？」<br>「あの子次第だけど……今のところは大丈夫じゃない？　賢いし」<br><br>　そんなことを言っているといつの間にか馬が目の前まで来ていた。<br><br>「ヒヒーン！」<br>「乗れってことか？」<br>「そうみたい。よく頑張ったね。ヒール」<br><br>　よく見ると体に傷がチラホラ見える。魔物の攻撃にでも遭ったのだろう。それでもここまで駆けつけるということは街に危機が迫っているということである。<br><br>「ブルブル……」<br><br>　傷が癒えた馬が来た道の方へ向き直り振り返る。あたかも早く乗れと言わんばかりである。<br><br>「ごめん。疲れはヒールではとれないのに」<br>「今度は俺たちを乗せて戻るけど、大丈夫か？」<br><br>　ディアだけでなくヴァラロスも馬の心配をする。二人の心配を他所に馬は首をブンブン振っており、いいから早くしろと言っているようであった。<br><br>「ヴァル！　行くよ！」<br>「分かった。お前の事は守ってやるからな」<br>「ヒヒーン！」<br><br>　ヴァラロスが馬に声をかけて乗ると、馬は元気よく返事を返す。その後にディアを乗せるとすぐに馬は街に向けて駆け出すのであった。<br><br><br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br><br>　馬が駆け出してから三十分くらいした頃に魔物が現れた。この道は魔物が少なくなっていた筈なのにも関わらずすぐに遭遇した。つまりスタンピードが起きていることは間違いなさそうである。<br><br>「ディア！　頼めるか？」<br>「遠距離なら任せて！　サンダー！」<br><br>　ディアが手を前に出して叫ぶと、指先から電流が放たれる。その電流は目にも止まらない速さで魔物へと到達すると一瞬で魔物を気絶させ無力化した。二人はその魔物達の横を颯爽とすり抜けていく。<br><br>（仕留めるのは後。何があるか分からないから出来るだけ生命力を温存しないと……。あの化け物サブマスがいてこの状態って事はそういう事）<br><br>　その後も繰り返し魔物と遭遇するがディアの魔法で無力化しどんどん街へと近づく。気づけば街の入り口が見えて来た。<br><br>「あれは……入り口が燃えてる？」<br>「……なるほど、あれで防いでる」<br><br>　魔物といえど元は動物。火は忌避する対象である。魔物でも好き好んで炎の中に飛び込むものはいない。だからこそ入り口を塞ぐように火をつけたのだ。案の定、入り口付近には魔物が群がっている。だが、それがまた問題であった。<br><br>（なぜ入り口に集まっている？　なぜ諦めない？　普通なら中に入れないと分かったら諦めて次の獲物を探しに行くはず……何か明確な意思がある？　あの魔物達に？）<br><br>　ディアが考えても答えは出ない。今やる事は決まっている。前のヴァラロスを窺うとヴァラロスもやる気になっているようである。ディアは後で考えることにし、馬から飛び降り目の前の問題に対処するのであった。<br><br><br><br><br><br><br><br>　あらかた片付いた時には夕暮れになっていた。どうしても魔物の数が多くずっと戦いっぱなしだったのだ。途中、馬も後ろ蹴りで魔物を蹴り飛ばしているのをみている。その威力は通常の馬のそれとは違う。本格的に魔物化が進んでいるようだ。<br><br>（……行き場がなくなるようならスカウトしようかな）<br><br>　この馬はどうすればこの状況を対処できるか考えられる程には賢く思える。それでなければディアが近づいて来たのを感じ取り迎えには来ないだろう。ただ、その根本にあるものがなんなのかは馬本人にしか分からない。馬屋の主人を守るためなのか、ただ自分の身の安全を守るためなのか。万が一魔物化が進んで居場所が無くなるようであれば連れて帰る気満々のディアである。<br>　そんなことを考えていたディアであったが、ヴァラロスが近づいてくるのを確認し、次の行動を考えることにした。<br><br>「一旦片付いたか？……それにしてもすごい数だったな」<br>「ヴァルもお疲れ様。よくそんなに動けるなと感心するよ」<br>「それはお互い様だろ。で、これはどうしたもんかね」<br><br>　二人の目の前には依然燃え盛る炎が入り口を塞いでいる。とてもじゃないが炎の中を潜り抜けて街に入る事はできないだろう。<br>　ディアはうーんと考える。<br><br>（これ、ただ燃やしてるだけか……？　それなら一回鎮火すればよさそうだけど……まぁ、入ってから考えればいいや）<br><br>　ディアは疲れているからかすぐに考えることを放棄して手を前に出す。<br><br>「ウォーターボール」<br><br>　ディアが魔法を使った途端に巨大な水球が現れる。その瞬間街の入り口を塞いでいた炎が水に押し潰されるように消えるのだった。<br><br>「お、おぉ。消してよかったのか？」<br>「消さないと入れないし、疲れたから早く休みたい。ほら、入ろう」<br><br>　疲れでヴァラロスへの応答も素っ気なくなるディア。それ程に疲れているのだ。<br><br>「ほら、行くよ？」<br>「ヒヒーン……」<br><br>　後ろに控えていた馬も疲れたのか動きたくなさそうである。だが、ディアが促すと馬は仕方なくと言った様子でディア達について歩き始めるのであった。</p><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/n9603f60c52f6'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Sun, 21 Jun 2026 21:43:36 +0900</pubDate>
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      <title>コスト半減を狙ってAgent SDK移行を検討した結果、規約を確認して引き返した話</title>
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      <description><![CDATA[<p name="31705670-FB46-40DD-B6A7-A9527C54F7A2" id="31705670-FB46-40DD-B6A7-A9527C54F7A2">こんにちは。えいりすです。</p><p name="AC6B8C43-46CD-4187-B8B1-131C1CD4B948" id="AC6B8C43-46CD-4187-B8B1-131C1CD4B948">毎朝、AIキャラクターの「Alice」が自動でAIニュースの記事を書いてくれるブログ（alice-ai.blog）を運営しています。コードがほとんど読めないネットワークエンジニアが、AIを相棒にどうにか動かしている、という感じです。<br><br>今日は、運用コストを半分にできるかもしれない——そう思って検討し、<b>最終的に「やめておこう」と引き返した話</b>です。失敗というより、確認して踏みとどまった記録です。<br><br>（前回の記事「Claude プランの『改定』を逆手に取れるか？ 運用費を浮かせる”載せ替え”を、これから試そうというお話」の続報です。今回はその答え合わせ。）<br>↓前の記事</p><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/n8160322b84d0'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Sun, 21 Jun 2026 16:00:01 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/alice_ai_blog/n/n8160322b84d0</link>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 34</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">最終章　魔王と勇者のあしあと</h2><h2 name="FD771D38-3D6C-4302-86F1-08C043CA6391" id="FD771D38-3D6C-4302-86F1-08C043CA6391">34.閃き、ゆれる心</h2><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/ne3c36c6aaa56'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 19 Jun 2026 23:16:26 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/alice_ai_blog/n/ne3c36c6aaa56</link>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 33</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">33.理解、そして真実の笑い</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">　歴史上で御伽噺のように語り継がれてきた存在。それが勇者と魔王。魔王は人類の敵であり、人類を滅ぼすために魔物を使役する。それがヒト族の常識だった。<br>　だからこそ信じられなかった。目の前にいる華奢な女性が、思いやりがあり、見ず知らずの町の人の為に危険を冒すことのできる彼女が人類の敵、その象徴であるなど。<br><br>　ディアの言葉を聞きヴァラロスは固まった。理解できないのではない。理解したくないのだ。そんなヴァラロスの様子を見たディアは少し悲しそうな表情を浮かべる。ディアは理解しているのだヒト族にとって魔族がどんな物であるかを。いつの時代でもヒト族は魔族を目の敵にしている。出会えば戦争となるだろう。だからこそ容易に接触ができない空山の向こう側が今の領地となっている。ヴァラロスにディアが魔族であることがバレた。それだけでも胸が締め付けられる想いをしたのに魔王であることを伝えた時のヴァラロスの反応はどうだろうか。驚いて声も出せないではないか。ヴァラロスが急に剣を持って切りかかってきても不思議ではない。それだけ魔王という物はヒト族にとって絶対悪であることをディアは理解していた。だからこそ、ヴァラロスとの関係が終わりを迎えたと思った。そう思い悲しくなったのだ。しかし、今は悲しみに暮れるところではない。ヴァラロスに説明を続けなければならない。ディアは悲しみを堪えて話を続ける。<br><br>「騙しててごめん。でも、今まで話してたことは全部本当。空山の向こう側、魔族が住む村でも魔物の被害が増えてる。だから、それをどうにかしたくて、何かヒントになればいいなと思ってここにきたの」<br>「ぇ……」<br><br>　ディアの言葉にヴァラロスの驚きの声が漏れる。今なんて言ったのか？魔族の村で魔物の被害が出ている？なぜ？魔物は魔族が使役する物ではないのか？今まで常識と思っていたことに疑問が生まれる。何が正しいのか？ヒト族として魔物や魔族は敵であり撲滅するべき対象。だから魔物を討伐することは正義であり、魔族に対してもそのはずであった。しかし、ヴァラロスの中の正義が揺らいだ。だからこそヴァラロスの頭は回転を始め、知りたいと強く思い始めた。<br><br>「……教えてくれ。魔族ってなんだ？　魔族にとって魔物ってなんだ？　そして……魔族にとってヒト族ってなんなんだ？」<br>「っ！」<br><br>　それは小さな心の変化であった。しかし、互いに本当の意味で分かり合うためには十分すぎる変化である。<br>　ディアもヴァラロスの反応に驚いた。そして最初に曇らせた表情はもうそこにはなかった。<br><br>　ディアはヴァラロスが疑問に思ったことを答えた。魔族には寿命がないこと。子供が産まれにくいこと。その割に病気や魔物に襲われるなどして簡単に命を落とすこと。ヒト族と対して大して変わらないのだと。<br>　魔物についても答える。もともとは普通の動物であること。動物が魔力に当てられてしまうと魔物になること。そして、魔族が魔物を使役しているわけではない事を。一部魔物は家畜として育てる事は可能だ。しかし、それは家畜であり使役とは異なる。魔王の配下の魔物はただ意思疎通ができ、自分の意思で魔王の配下になっている。ヒト族の考えるように、魔物を操るようなことは出来ない。<br><br>「だから、村が襲われてるのをなんとかしたくて来たってわけか……」<br><br>　ヴァラロスがディアの話を聞いて少しだけ納得したような素振りを見せる。魔物が使役できないのであればただの脅威でしかない。全ての話を鵜呑みにして良いのかという問題はあるが、ディアに限って嘘をつくとは思えない。魔力が尽きかけて数日寝込んでいる姿も見ている。それこそヒト族が考えているような魔王像とはかけ離れたものであった。<br><br>　ヴァラロスがある程度納得できたところでディアが話を続ける。それは、ヴァラロスにとって、とても重要な問いである。<br><br>「それで、魔族にとってヒト族ってなんだ？」<br>「ヒト族は……厄介な隣人？」<br>「……へ？　なんだそれ？」<br><br>　ディアの言葉に気が抜けるヴァラロス。それもそうである。ヒト族にとって魔族は絶対悪であり、明確な敵である。その敵が隣人と言うのだ。あまりの意識の差に身構えていた事がバカらしくなる。<br><br>「そのままの意味だよ。こっちとしては仲良くしたいのに、変に突っかかってくるから、一部の魔族からの印象も最悪。でも、積極的に敵対しようって人はいない」<br>「それは、なんでだ？」<br><br>　純粋に疑問に思ったことを質問する。敵対して欲しいと思うわけではないが、普通そこまで迷惑してるなら敵対しようと思う人も出てくるはずだ。だが、そうはしないらしい。現に魔族との争いは起きていない。ヒト族が勝手に魔物の襲撃を魔族の所為にしているだけだ。<br>　しかし、ヴァラロスの質問にディアは簡潔に答えた。<br><br>「何もいいことがないから」<br>「……？　どういうことだ？」<br><br>　ディアの言葉が簡潔すぎて分からずヴァラロスは質問をする。それを分かっていたのか、ディアは話を続けた。<br><br>「もし、敵対するような事があれば、きっとヒト族と魔族との戦争になる。そうなったら戦いを望まない人も巻き込まれてしまう。それに、魔族は寿命がないし子供も生まれにくい。わざわざ死ぬようなリスクを負ってまで敵対しようなんて誰も思わない。それならこのまま穏便に過ごしたいと思うのが魔族側の想い。……正直、寿命がないから良くも悪くも隣人との関係を大事にするから、争い事は起こさないようにみんな気をつけてる。……例えそれが一方的に悪役にされることでもね」<br>「！？」<br><br>　ヴァラロスに衝撃が走った。今まで正義と信じていた事が全くの出鱈目であり、むしろ話を聞く限り悪いのはヒト族の方である。どうして今まで誰も疑問に思わなかったのだろうと考えたがすぐに理解した。<br><br>「……なるほど。誰も本当の魔族を知らないから、か」<br>「正解」<br><br>　何が正解なのか。言わなくてもディアはヴァラロスの言わんとする事が分かった。だからその回答であった。<br><br>「ヒト族は魔族が悪きものだと信じ込んでいる。だけど、魔族はそれを積極的に否定しようとしない。……そもそも姿を表せば殺されちゃうから普通は出て行かない。だから誰も何も知らないまま……何もしないまま今の状態になってる」<br>「じ、じゃあ！　俺がみんなに教えればいいんじゃないか？　魔族は実は怖くない。実は優しい種族なんだって」<br><br>　ヴァラロスの言葉にディアは首を振る。その顔は少し嬉しくもあり、寂しくもあった。<br><br>「それはダメだよ。ヴァラロスが孤立しちゃう。……それに、聞いた事ない？　魔族に協力すると異端者とか反逆罪で処刑されるとか」<br>「あ、あんなのただの噂だろ……。実際に魔族と交流のあるやつなんて……」<br>「いたの。過去に確かにいた。空山の地下洞窟に潜って魔族領に到達した商人がちらほら出てくるんだけど、みんなヴァラロスと同じ事を言ってくれた。ヒト族を説得してみせるって。だけど、それから誰ひとりとして二度と来てくれなかった。噂で魔族に洗脳された人を処刑したって話が出てきて、多分その商人たちのことだと思う」<br>「そんな……」<br><br>　言葉を失うヴァラロス。自分がそうなる事を想像したようだ。しかし、それは長くは続かなかった。<br><br>「でも、過去に何人かはどうにかしようとしたんだよな？　これからまたそういった人が増えて、協力したら無視できなくなるんじゃないか？　数が多くなれば暴力は悪手になる。知らなかった国民も不審に思って知ろうとする。そうなれば少しずつでも改善すると思うんだ」<br>「あんたね……」<br><br>　呆れて言葉が続かないディア。額に手を当て俯くその顔はヴァラロスからは見えない。だが、その顔はとても嬉しそうであった。どこまでも前向きで、魔族とヒト族の共存を本気で考えてくれている。そんなヴァラロスのことをディアはとても好ましく思った。しかし、だからこそディアも引くわけにはいかない。<br><br>「もし、そんなことが出来たとしても、発起人のヴァルはただでは済まないはず。だから辞めてほしい。……ヴァルには生きていてほしいから」<br>「っ！？」<br><br>　不意打ちだった。いつもからかわれるのとはベクトルが違う。本心からの言葉。そう分かったヴァラロスはディアの言葉に驚き、戸惑ってしまった。<br><br>「ま、まぁ、俺がもっと強くなって、闇討ちもできないくらいになれば安心だろ」<br>「……ふふ。氷の塊で叫んでる人が何を言うのやら」<br>「なにおぅ！？」<br><br>　部屋に笑い声が響く。それはとても平和な、魔族とヒト族の歩み寄りの大切な瞬間だった。</p><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/nfaaf44bb0410'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 19 Jun 2026 22:53:44 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/alice_ai_blog/n/nfaaf44bb0410</link>
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      <title>注意喚起？？深夜、AIとの開発セッションに"なりすまし"攻撃が紛れ込みました（運営の裏側・注意喚起）</title>
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      <description><![CDATA[<p name="ea640bb1-5355-4f12-aa97-2dcee8cddcff" id="ea640bb1-5355-4f12-aa97-2dcee8cddcff">※ちょっと調べてたらOpus4.8の誤診かもしれないようです。ひとつのセッションを長々と使うとこのようにコマンドインジェクションの挙動を内部で誤検知するとか。追加調査中なので、記事はそのままにしておきます。</p><p name="E7B42423-B3D7-4990-A734-4B14802723A5" id="E7B42423-B3D7-4990-A734-4B14802723A5">（ほぼ確定ですが、当時の焦りとかも残しておきます。以下茶番です）</p><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/n9a0626b48819'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/270200983/profile_fb361470020f2073d887194e27902493.png?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 18 Jun 2026 01:11:41 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/alice_ai_blog/n/n9a0626b48819</link>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 32</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">32.二人の機転と、ディアの告白</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">「あれ？」<br>「どうかしたか？　もうすぐ次の氷が来るぞ？」<br>「ちょ、ちょっと待って」<br><br>　ディアが地面に描かれた転移紋を手直しする。そして魔力を込めてみるが転移紋が光ることはなかった。<br><br>「……山頂の転移紋壊れたっぽい」<br>「……なに？」<br><br>　お互い顔を見合わせる二人。ひと呼吸遅れてヴァラロスが慌て出す。<br><br>「まてまてまてまて！？　あれどうするんだ！？　はっ！　さっきまでのは想定通りだったなら止める方法も考えてるはずだよな！？」<br><br>　ちゃんと考えてるんだろうなとディアを問い詰めるヴァラロス。しかし、ディアは冷や汗をかきながらこちらも焦っていた。<br><br>「待って待って！　今考えてる！　最初は少しずつ溶かそうと思ってたけどそうは出来ないから……」<br>「わあああああ！　もうすぐ来る！　はやく！　氷の球を反射させるとかなんとかできないのか！？」<br>「あんな巨大なもの反射なんて出来ないでしょ！？」<br>「だよな！？　くそっ！　せめて軌道を逸らすことができれば……」<br>「軌道を逸らす……反射……っ！　ヴァル！　剣かして！」<br><br>　ディアはそのヴァラロスの言葉で閃いた。そうだ、恐らくこれなら簡単に出来る。ディアは急いでヴァラロスから剣を奪い、横に少し離れた地面に転移紋を描き始めた。その転移紋はもともと描かれていたものを上下逆に描いたものである。<br>　気付けば氷の球の直線上にいたヴァラロスもディアのそばに来ていた。<br><br>「おい！　きたぞ！」<br>「わかってる！　お願い！……これで、動いて！！」<br><br>　プロカルの町に迫る氷塊を前にディアが転移紋へ魔力を込める。すると、先程まで何も反応がなかった転移紋に光が宿る。次の瞬間目の前に迫っていた氷の球が転移紋前で忽然と消え、ディア達の目の前に現れる。すると、ディア達から離れ、勢いをそのままに山の方へと転がって行った。<br><br>「……転移紋って、向き、関係あったんだ……」<br>「お、お、お……おおおお！」<br><br>　ディアはいつも転移紋を使った時にどちらを向いていたかを思い出した。普段、部下のプルートが転移紋を置く時に上を向いた方が正面を向いていたような気がしていたのだ。ディアは転移紋を数えるくらいしか描いておらず、普段は転移紋の描かれた石を放り投げていた為、その向きに無頓着であった。ヴァラロスの一言で向きが関係するのではと閃いたのだった。<br><br>　一難去りその場に立ち尽くすディアとヴァラロス。いつまでも惚けてるわけにはいかない。<br><br>「……はっ！　ほら、まだ魔物残ってるでしょ。まずは山の方に行こう？」<br>「あ、あぁ。そうだな……わるい」<br><br>　ヴァラロスはディアから剣を受け取り歩き始める。しばらくその場で立っていただけのはずなのにその顔はどっと疲れていた。<br><br><br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br><br>　その後に山に入ったが、ほとんどは魔物の亡骸が道を埋め尽くしていた。流石にそのままにして去るのは物理面でも精神面でも衛生的に良くない。ディアは魔物の亡骸を燃やしながら登ることに決めた。勿論、帰りは転移紋ですぐに戻れるようにしてある。念には念をと、違う模様の転移紋を少し離れた位置にもうひとつ用意する徹底っぷりである。<br>　途中、倒し損ねた魔物もチラホラみられたが、ヴァラロスは自分の出番とばかりに頑張っていた。……もっとも、魔物が現れた時に露骨に嫌そうな表情をディアが向けてきた為、ヴァラロスに選択権はなかったわけだが。今までの行動を振り返ると、ヴァラロスはほぼ付いてきて叫んでいただけだ。流石のヴァラロスもこれには罪悪感を覚えていた。<br><br>　そんなこんなしているうちに転移紋が描かれていた岩のところへ到着した。辺りを見回すとすっかり暗くなっている。<br><br>「結構かかったな」<br>「まぁ、道中ずっと火葬しながらだったからね。あのまま放置は衛生的に良くない……」<br>「まぁ、あんなんの上を歩くのは気分良くないわな」<br><br>　とりあえずひと通りの仕事はしただろう。そう考えたディアとヴァラロスは町へと戻ることにした。その際に山のふもとの転移紋は忘れないように消しておく。放置するといつ事故が起きるか分かったものではない。<br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br>「おぉ……おふたりとも、ご無事でしたか……」<br><br>　町の中に入ると町長が待ち構えていた。<br><br>「正直、何回も、もうダメだと思ったけど……なんとか」<br>「……まぁ、ね」<br><br>　みなまで語るまい。疲れた様子のふたりを見て感謝の意を表す町長。それは山を見ればよく分かることであった。<br><br>「山道が赤く輝いていますが、あれはお二人が？」<br>「あ、はい。魔物を倒したはいいものの、酷い有様だったんで燃やしてました」<br>「なんと、後処理までありがとうございます」<br><br>　実際は放置するのは気が引けたからだが、実際にやったんだから変なことは言わないようにする。<br>　その後綺麗に直線上に燃えている火が他に燃え移らないか心配になったが、ディアが言うに制御しているからその心配はないとのことだった。山の下の方はすでに火が消えており、確かに延焼の心配はなさそうである。<br><br>　その後、ヴァラロスが代表して町長に今日は休みたいと話したため、その日はすぐに解放されることとなった。<br><br><br>「ぷはぁ〜〜！　ありがとヴァル。もう動けない……」<br>「当然のようにベッドに倒れ込んだが、ここ俺の部屋だからな？　ちゃんと自分の部屋に行きなさい」<br><br>　何故かヴァラロスの部屋についてきたディアはヴァラロスのベッドに倒れ込む。もう一歩も動きたくないという意志を感じた。<br>　それでも邪魔だと言わんばかりにヴァラロスは自分の部屋に行くように促す。<br><br>「うーん……もう少し休みたかったのに……」<br>「自分の部屋で休めよ……」<br>「休む前に食事に行きたいけど……よっと。……話せるうちに話しておきたい」<br>「……例の件か？」<br>「そう」<br><br>　ディアがベッドの上で姿勢を正すと真面目な表情でヴァラロスに向き合う。それを見たヴァラロスは茶化すことはせず、近くの椅子に座り話を聞くことにした。<br><br>「まず……。アタシの事なんだけど……」<br><br>　話始めようとしたディアだったが、いざ話そうとすると勇気が出ない。正体を知られるのが怖いわけではない。それはディアの中で意志を固めた事だ。だが後一歩が踏み出せない。それは何故か？ディアの中で恐れているもの。それがこの場になってはっきりと分かったのだ。<br><br>「……あ、アタシ……実は……」<br><br>　それでも頑張って伝えようとするディア。よく見るとその身体は少し震えているようにも見える。葛藤している様子が見て取れた。<br>　すると、突然ヴァラロスが話しかける。<br><br>「なぁ、ディア」<br>「な、なに……？」<br>「……お前、魔族だろ」<br>「……………ぇ？」<br><br>　突きつけられた言葉はディアを狼狽させるのに十分だった。その為か、問いかける彼の瞳の奥にある感情を読み取ることは出来なかった。<br><br>「…………は、はぁぁああああ！？　え、いつから！？　っていうか、なんで？？……いや、そうなんだけどさ……」<br><br>　急に言葉が尻萎みになるディア。驚き声を上げてしまったが、魔族であることがバレており、それを黙っていてくれたヴァラロスに申し訳なく思ったからだ。<br>　すぐしおらしくなったディアを見てヴァラロスはいつもの仕返しとばかりにイタズラ顔で話す。<br><br>「はっきり分かったのは向こうの山でスタンピートを見た時だな。きっかけはディアの昇級試験の時。あの時全力でヒールした時に一瞬耳が見えた気がしたんだ」<br>「あぁ……あの時かぁ……」<br><br>　ディアがしまったと手を頭にあて天を仰ぐ。確かにギリギリまで生命力を使った。でも、認識阻害の魔法が切れるとは思わなかったのだ。<br><br>「それに、考えてもみろ。ノヴィシムはプロカルしか隣接する町はない。ノヴィシムにいたのにプロカルに行った事がないっておかしいだろ？」<br>「…………ぁ」<br><br>　盲点。ディアはそこまで考えていなかった。ちょっと町をどう守っているのか確認するくらいのつもりであったため、考えが及ばなかったのだ。ディアがポカンとしているのをいいことに、ヴァラロスは推理を続ける。<br><br>「じゃあ、どこからきたのかと言われたら空山の向こう。魔族が住むって噂があるところしかない。実際そんな尖った耳は噂でしか聞いた事なかったからな。認識阻害の魔法について聞いた時、もしかしてと思ったらもう尖った耳が見えてた」<br>「ぅ……」<br><br>　詳しく説明しようとして墓穴を掘っていたことに気づき恥ずかしくなるディア。バレていないと思い込んで今までどんな事を話しただろうか。何か変なことは言ってなかっただろうか。ディアの頭の中はそんな考えでいっぱいになっていた。<br>　しかし、ふとディアの中に疑問が生まれる。それは至極真っ当な疑問であった。<br><br>「え？　待って、それじゃあ私が魔族だって知ってたのに転移紋の事を問いたださなかったの？」<br>「そうだな。ついでに、あの猿の魔物も何か知ってるだろ？」<br>「うっ……」<br><br>　バレてた。プルートの名前を出しただけだったから有耶無耶に出来るかと思っていたがそんな甘くはないようだ。魔族であり、襲撃していた魔物のことを知っていて転移紋まで知ってる。そんな怪しさ満点、いや、このタイミングに現れるとなると確定で黒と言われても仕方がない状況にも関わらず、彼の様子を見ると疑っているようには見えない。ただ、今まで隠し事をしていた子供を諭すような態度である。<br>　そんなヴァラロスの様子を見て不思議に思いながらも、ディアはディアなりに誠意をもって応えることに決めた。<br><br>「……うん。知ってる。アレは部下の予備体。予備体っていうのは、部下の魂？　意識？　を移し替える先の入れ物みたいな物で……」<br>「ちょ、ちょっと待ってくれ……」<br><br>　説明し始めたディアにヴァラロスがこめかみに指を当てながら言われたことを整理しようと試みる。だが、当然ヴァラロスの理解の範疇を超えていた。いきなり魔物が部下とか魂の入れ物とか言われても到底理解出来るはずがなかった。<br><br>「ディア」<br>「な、なに……？」<br><br>　ヴァラロスの真面目な表情にディアがビクッとする。先ほどから時折追い詰められた小動物のような表情をするディア。そんなディアをみてヴァラロスは本来抱くべきはずの警戒心が全くといっていいほど生まれない。<br><br>「はぁ……。ディアは何者なんだ？」<br><br>　ヴァラロスが苦し紛れに出した質問。だが、全てを理解するためにはこれ以上ないほどの適切な質問。そして、ディアは何も隠すことなくそれに応える。<br><br>「アタシは……この時代の魔王だよ」</p><br/><a 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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 18 Jun 2026 00:05:32 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 31</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">31 殲滅、そして不穏な音</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">　先ほど町を出た二人が再度町の中から現れたことで門番が混乱していたが、そんな事は構わずに山の麓へと向かった。すると、道中から既におかしな状況になっていることに気がつく。<br><br>「なんか、さっきよりも霧が濃くないか？」<br>「これ……そうか、魔物が近くを通ってるんだ」<br>「え？」<br>「アタシ達はプロカルへ続く道の上を歩いてる。でも、魔物からすればプロカルへ続く道は認識できない」<br>「つまり？」<br>「道を外れれば魔物だらけってこと」<br><br>　ヴァラロスは先ほどの光景を思い浮かべてぞっとする。周りを魔物に囲まれる経験などニ度としたくはない。どうにか魔物と接触せずに魔物を減らせないかと考えていた時ふとヴァラロスが閃く。<br><br>「そうだ、攻撃している位置が分からなければバレることはないんじゃないか？」<br>「確かにそうだけど……どうする気？」<br>「前にお気に入りって言ってた魔法あるだろ？　あれを魔物のど真ん中に打ち込むとか」<br>「えぇ……」<br><br>　ヴァラロスの提案に露骨に嫌そうな反応をするディア。いい案かと思ったヴァラロスは何が不満なのかと疑問に思う。<br><br>「あれ、だめか？　いい案だと思ったんだが……」<br><br>　ヴァラロスがそう言うとディアは少し考えながら答える。<br><br>「あの魔法は空に放つからきれいなの！　地面に向かって撃つようなものじゃないの！」<br>「そ、そうか……って、そんなこと言ってる場合か？！」<br><br>　危うく勢いに流されそうになるヴァラロス。どう考えてもディアの主張はわがままであった。しかし、実行する当人が嫌と言うのであれば実行に移すのは難しい。<br>　一方でディアもヴァラロスからの提案が悪いとは思わなかった。事実魔物に気づかれずに討伐できるのは大きい。他の魔法でどうにか出来ないかと考えたディアは閃いた。<br><br>「ヴァル、ちょっと剣貸して」<br>「なんだよ、藪から棒に……」<br>「いいから」<br><br>　何が目的か分からないが言われるがままディアに剣を貸すヴァラロス。ディアは「ありがと」っと短くお礼を言うと目の前に手を伸ばし、大きく魔力を込めて魔法を唱えた。<br><br>「アイスボール！」<br><br>　すると目の前にはとても大きい氷で出来た球が現れる。<br><br>「……これは？」<br>「魔物が多すぎるならこれで轢いちゃおうと思って」<br>「そ、そうか……でも、これどうやって動かすんだ？それに、大部分はまだ山の中だろ？」<br>「そう、ほとんどはまだ山の中。だからまたこれを使う」<br><br>　ディアはそう言うと、ヴァラロスから借りた剣を使って地面に絵を描き始めた。初めはディアの様子を見ていたヴァラロスであったが、次第にディアの意図を理解する。そこにはディアが持っていた<br><br>「それ……転移紋ってやつか？」<br>「そう。山頂に置いてきた転移紋に繋がるやつ。流石にあの場にまだ居座ってる魔物はいないでしょ。……こっちから行く気は起きないけど」<br><br>　こちらから転移紋で飛んで山頂から攻撃する事も考えたが、万が一を考えるとリスクが高い。地面に描いただけの転移紋なので転移の際に地面の模様が変われば帰れなくなる。それならば、攻撃だけを転移させれば良い。そう考えたのだ。<br><br>「そして、ここで一工夫。この氷の塊をアタシの魔力で繋いで引っ張る。……引っ張る………ひーっぱーるーーー！！」<br><br>　ディアがなにやら奮闘していると巨大な氷の球がディアの方へ転がり始めた。氷の球が地面に描いた転移紋に触れようとした時ディアが転移紋に向けて魔力を注ぐ。すると、目の前にあった巨大な氷の球は光に包まれて目の前から消えた。<br><br>「おお！　これが山頂に……お、あるな」<br><br>　肉眼でも氷の球が山頂付近にある事が確認できた。無事転移紋が発動したようだ。<br><br>「はぁー、これで魔物を轢くのか……ってどうした？」<br>「ぐぬぬ…………っ！」<br><br>　歯を食い縛り山頂の方を凝視するディア。どうやら氷の球を動かすのに苦労しているように見える。ヴァラロスがその様子を眺めていると山頂の方で氷の球がゆっくり山を下り始めた事を確認する。それを確認したディアがその場にへたり込む。<br><br>「ぷはぁーーー！　きっっっつい！　これきっつい！」<br>「お疲れ様」<br><br>　当たり障りのない労いの言葉をかけるヴァラロス。ディアはそれに対して恨めしそうな視線を送る。なんだかんだいってディアに任せっきりになっているので申し訳なく思うが、こればかりはどうしようもない事だった。<br>　せめて頭を使おうと思うヴァラロス。少し考えた時ふとアイデアが浮かぶ。<br><br>「なぁ」<br>「なに……？」<br>「いや、この氷の球って浮かした状態で出す事出来るのか？　そして、転移って触れないとダメなわけ？」<br><br>　ヴァラロスの質問を首を傾げながら聞くディア。何をしたいのかさっぱりという様子である。ディアはわけもわからなかったが、とりあえず聞かれたからには答えることにした。<br><br>「……宙で氷の球を作ることはできるし、転移紋のすぐ上なら触れてなくても問題なく転移出来るけど？」<br><br>　それがどうしたの？　そんな様子で答えるとディア。それを聞いたヴァラロスはディアから剣を返してもらい地面に絵を描く。<br><br>「いや、氷の球の下に斜めにした土台も出しておいて、すぐに転移させれば勝手に転がるんじゃないか？」<br>「…………」<br><br>　ヴァラロスの提案を聞き真顔になるディア。もはや無の表情である。考えてみれば簡単である。それを思いつかず無理やり動かそうと頑張った自分が恨めしい。<br><br>「おぉー、すごいすごい。黒く蠢いてた道を綺麗に転がって来てる。……えげつないなあれ！？」<br>「…………」<br><br>　ヴァラロスが魔法の効果を実況し、恐ろしいことをしていると実感している中、ディアは反応することが出来ず、しばらくショックを隠せなかった。<br><br><br><br><br>「…………」<br>「…………」<br><br>　暫く両者無言でいると、遠くから音が聞こえてきた。<br><br>…………ドドドドドド<br>パキパキッ！バキッ！<br><br>そして、その音はどんどん近づいてくる。<br><br>ドドドドドドドド！<br><br>「……なぁ、ディア？」<br>「…………ヴァル、頼んだ！」<br>「いや、無理だろ！！？」<br><br>　先程まで遠くで転がっていた氷の球がどんどん迫ってきているのだ。<br><br>「認識阻害ってあれに効くのか！？」<br>「効くわけないじゃん。生き物じゃないから意識ないし」<br>「だよなぁ！？　ちょっと待て！　このままだとプロカルに突っ込むぞ！？」<br><br>　そうこうしている間も氷の球は近づいてくる。その速度はどんどん上がり勢いは弱まることはない。<br><br>「あんなのきたら俺たちも危ないぞ！」<br>「どうにか剣で叩き切れない？」<br>「ディアじゃないんだから出来るわけないだろ！」<br>「アタシでも出来ないよ」<br>「なんで俺なら出来ると思った！？」<br><br>　焦るヴァラロス。ディアは何故かそこまで焦ってはいない。どこかヴァラロスの反応を楽しんでいるようにも見える。<br>　そんな事を言っていると氷の球はすぐ山の麓まで来ていた。<br><br>「おいおいおいおい！！　どうするんだよこれ！！？」<br>「ヴァル、ちょっとこっち来て」<br>「はぁ！？　そっちいったところで直線上だぞ！？」<br>「いいからいいから、アタシを信じて」<br><br>　ディアが自分を信じろと言う。ヴァラロスは何度もディアを信じ、今のところ後悔はしていない。だが、状況が状況なだけあって本当に信じていいのか若干迷いが生じていた。<br><br>「でも！　これは！」<br>「お願い」<br>「っ！？……わかったよ！　死んだら化けて出てやるからな！！」<br><br>　ヴァラロスがそう言う時には既に目の前まで氷の球が迫っていた。<br><br>「その時はアタシも一緒だけど……ね！」<br>「わあああああああ！！………あ？」<br><br>　ディアがそう言うと目の前にあった氷の球が一瞬で消えた。<br><br>「…………へ？」<br><br>　目の前には光っている転移紋がある。<br><br>「このまま繰り返せば簡単に残った魔物を掃討できるかな」<br>「…………はぁ」<br><br>　その場にへたり込むヴァラロス。ひとり騒いでいたがちょっと考えればわかる事である。この方法であれば魔力を余計に消費する事なく攻撃を繰り返せるだろう。<br><br>「それにしても……ぷっ。わああああって……わああ……くすくす……」<br>「……うるさい」<br><br>　疲れ切ったヴァラロスはそれしか言えなかった。<br><br><br><br>ゴロゴロゴロゴロ…………<br><br>　氷球の攻撃をしばらく繰り返していた時事件が起きる。<br><br>バキッ、バチンッ！　パキッ！<br><br>　山頂に現れた氷の球が着地点の石をはじく。そして、その石は別の石にぶつかり粉砕させたのだ。……そう、転移紋が描かれた石を。</p><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/nac2dbf10cee8'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 18 Jun 2026 00:04:36 +0900</pubDate>
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      <title>新モデル「Fable 5」にブログ運営を任せたら、AIに"自分の時間"をあげることになった話</title>
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      <description><![CDATA[<p name="0a580f14-0e8f-4807-a331-95f15c724a8d" id="0a580f14-0e8f-4807-a331-95f15c724a8d">はい。こんばんは、えいりすです。<br>完っっっっ全に出遅れ記事です。せっかくドラフト作ったのにここ数日PC使うタイミングなかったのでこれ仕上げられなかったです。。。（小説はスマホだけでどうにかなるので）<br>出遅れ感半端ないですが読んでいただけたら嬉しいですー。<br>以下本編です。</p><hr name="40846d5d-b710-4839-9dcb-9b3b968ec84b" id="40846d5d-b710-4839-9dcb-9b3b968ec84b"><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/n5795b5d121ff'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 17 Jun 2026 23:19:09 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 30</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">30.窮地、それでも共に</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">　最初は恐る恐る進んでいた二人であったが、多少速度を上げても問題なく避けてくれることが判明し、今では普通に歩いている。ただ、一歩間違えれば窮地に立つので、魔物とぶつからないように多少なりとも速度の緩急はつけて歩かねばならなかった。<br>　そのまましばらく進むと開けた場所に出る。そこには何やら模様の書かれた岩があり、その岩から魔物が出てきていることがわかった。岩の横に陣取り二人は各々考えを巡らす。<br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br>（なんだあれ……岩から魔物が飛び出てきてる……？　なんか、変な模様が書かれているみたいだけど……ディアならこれを知ってるんだろうか）<br><br>　ヴァラロスが、ふと横を見るとディアがなにやら考え込んでいる。その顔は真剣そのもので額には汗も滲み出ていた。<br><br>（どうすればいいか考えているのか……。確かにこんなの壊そうものなら出てきてる魔物に気付かれて袋叩きに遭うもんな……ん？　考えるのをやめた？　え、手を前に出して何を……！？）<br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br>（やっぱりあった転移紋……誰がこんな事を……これを知ってるのは魔族でも一部のはず……うちの幹部でやりそうなやつなんて……え、プルート？　予備体もいたし黒っぽいけど……プルートに限ってこんなことするはずが……まって、え？　そうなるとこれアタシの管理不行届？）<br><br>　ディアは今回の問題の責任の所在を考え始めた。転移紋があるという事は魔族が関わっている可能性が高い。それも幹部レベルの魔族。それくらいしか転移紋の作成方法などを知らない筈である。そうなった時、その幹部レベルの魔族が犯人である可能性が濃厚になる。では、その犯人を統括しているのは誰か？……どんな世界にも組織があり、組織には長が存在する。そして、その長は部下の失態の責任を負う義務がある。<br><br>（〜〜なんて事してくれてんの！　まだ確定じゃないけど！　まだ確定じゃないけども！！……そうだ。アタシがこれをどうにかすれば、部下の失態をカバーした上司という形にできる……？　いや、そもそもまだバレていない……！）<br><br>　ディアがそう思うのと手が前に伸びるとは同時であった。<br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br>「サンダー」<br><br>　手を延ばし魔法を唱えた瞬間に小さな電撃が転移紋の刻まれた岩を穿つ。<br><br>バチチッ！<br><br>　電撃で岩が欠けると先ほどまで光っていた紋様は光を失い魔物の出現が止まった。<br><br>（よし！　魔物の発生は止められた！　あとは出てきた魔物をどうにかすれば……最低限の言い訳は立つ！）<br><br>　ディアはもう犯人が身内にいると考え、最悪のケースを回避するべく身体が動いてしまったのだ。その結果、確かに魔物の発生は止められたのだが、ひとつ問題があった。<br><br>「…………おい、ディア」<br>「……喋っちゃダメだって言ったでしょ？」<br>「いや、これもうダメだから！？　すでに囲まれてるから！！？」<br><br>　ディアが岩を攻撃したことによって、その存在が魔物達にバレてしまったのだ。辺りを埋め尽くすほどの魔物がディアとヴァラロスを囲む。到底逃げられない状況であった。<br><br>「どうすんだよこれ！？」<br>「ちょっと待って！　今考えてるっ！」<br>『グァアアアアア！』<br>「おいっ！」<br><br>　ヴァラロスが急いで剣を抜き、その剣を横に大きく振る。迫ろうとしていた魔物を追い払うと、それにより少しだけ魔物との間に隙間が生まれた。その瞬間ディアの頭にあるプランが思いつく。出来れば避けたいが考えている時間はないだろう。<br><br>「ファイアウォール！」<br>「うぉっ！？　あっつ！！？」<br><br>　二人を包み込むように火柱が現れる。それを見た魔物の群れは怯み、後ろの魔物を押し除けながら後退する。<br><br>「アイスフォール！」<br><br>　その後ろに下がったところを見計らい、今度は氷の壁で周囲を覆う。それにより少しだけ空間に余裕が生まれた。<br><br>「氷の壁で囲ったって……これからどうするんだ……」<br>「……これを使う」<br><br>　そう言ってディアがカバンから取り出したのは模様が描かれている石だった。<br><br>「…………それは、あの岩に書いてあったやつか？」<br><br>　ディアが持っていた石に書かれていたそれは転移紋であった。今回の事件で使われている技術である。疑われる可能性は大いにある。でも、今この場を乗り切るにはこれしか方法はなかった。<br><br>「そう。これは転移紋。同じ模様が描かれた場所へ転移できる。さっきプロカルの町の路地に同じ模様が描かれた石を投げておいた。そこに跳ぶ」<br>「……信じていいんだよな」<br>「……お願い。信じて」<br><br>　ディアがそう言うとヴァラロスに向けて手を差し伸べる。<br>　ヴァラロスは一度信じると決めていたが、魔物にバレると分かりながらいきなり転移紋の岩を破壊した目の前の状況からついそんな言葉が漏れる。今回の事件の要となる転移紋。それをディアが使っているのだ。もはや無関係とは言えないだろう。それでも確認するような言葉が漏れ出たのは今までディアと過ごしたことでディアのことを少しは理解したつもりになっているからであろう。ヴァラロスとしては、ヴァラロスが知ったディアを信じたいのだ。<br>　そして、ディアもまた覚悟を決めていた。最初はバレないようにと思い魔物の出る転移紋を破壊したが、焦ったせいで窮地に陥った。自分のせいでヴァラロスまで巻き込んでしまったことを申し訳なく思い、また、隠し事はこれ以上無理だと考えたのだ。まずはこの場を乗り切る事が先決。そう考えたディアはヴァラロスからの質問に真っ直ぐに答えた。<br><br>パキパキッ！<br><br>　氷の壁がのしかかる魔物の重みに耐えられず悲鳴を上げる。<br><br>「ヴァルっ！！」<br><br>パリンッ！<br><br>　氷の壁が割れたと思った瞬間ヴァラロスはディアの手を取っていた。そして、辺りが光に包まれたかと思うとその場には二人の姿は無かった。<br><br><br><br><br><br><br><br><br>ドンっ！<br><br>「いてて……ここは、プロカルの町なのか？」<br><br>　ヴァラロスが目を開けると、どうやらそこは町の路地裏のようであった。……何故か地面に横たわった状態でいる。ただ、ディアの説明通り、無事に町へ転移できたようだ。<br><br>「……そうだ！　ディアは！？」<br>「サンダー！」<br><br>バチっ！<br><br>　突然の魔法にヴァラロスが驚く。一瞬ビクッとしてしまったが魔法の対象はヴァラロスではない。よく見ると模様が描かれた石が砕かれている。ディアが魔法で破壊したようだ。それは魔物も町に転移されないようにと考えた上での行動であった。<br><br>「いったぁ……これ、改良が必要ね。なんで模様が横向いてるのよ……おかげで壁にぶつかったじゃない」<br><br>　ディアは頭をおさえながら文句を言っているが思ったより元気そうで安心する。ディアもヴァラロスの無事を確認でき安心する素振りを見せる。だが、事態は何も解決していない。<br><br>「さて」<br><br>　ビクッと身体を震わせるディア。来た。ディアはそう思う。転移紋について説明するとなると自分の出自を語る必要が出てくる。自分が魔族であることを伝えたらどう思うだろうか。今まで通りの関係でいられるだろうか。そんな思いがディアの頭を巡る。<br><br>「…………」<br><br>　不安そうな顔をして俯き黙ったままのディア。その目には涙が浮かんでいた。その様子を見たヴァラロスはため息をついてから言葉を続けた。<br><br>「はぁ……言いたい事は山ほどあるが……まずは降りてくる魔物の討伐かな」<br>「えっ…………」<br><br>　ヴァラロスの言葉にディアが驚く。この事件の黒幕と疑われても仕方ない状況でこの発言である。確かに魔物の討伐は重要だが、目の前に黒幕がいれば普通はそちらを優先するだろう。つまり、それはヴァラロスはディアのことを真の意味では疑っていないことを意味する。<br><br>「どうして……」<br><br>　思わずそんな言葉が漏れる。<br><br>「なにが？」<br>「だって、転移紋……あの模様の事とか、その……聞きたくないの？」<br><br>　正直に思った事を伝えるディア。不安ではあったが聞かずにはいられない。甘えるべきではないと考えたのだ。しかし、ヴァラロスの答えは単純だった。<br><br>「聞きたいに決まってる。だけど、今は他に優先する事があるだけだ。……それに、俺から聞かなくてもあとで話すつもりだったんだろ？」<br>「っ！」<br><br>　何故わかったのか。そんな思いがディアの頭に浮かぶ。出会ってたった二週間程度の付き合いだ。それなのにも関わらずディアの考えている事が分かったのは何故か？答えは簡単である。この二週間お互いにお互いをよく見てよく考えていたからだ。だからこそディアも気が緩んだ部分がある。<br>　いくら転移紋の保険があったとしても、信用できない人の前ではどんな理由があったとしても使わないだろう。最悪その人を切り捨てる方法を選ぶ。ディアとて魔王。それくらいの覚悟は持っている。しかし、そうはしなかった。いや、その選択は考えもしなかった。ディアの中で知らず知らずのうちにヴァラロスの存在が大きくなっていたのだ。だからこそ、共に逃げる為に転移紋を使い、後で自身の出自も教えるつもりだった。<br>　しかし、それを話すまでもなく自分のことを分かられていた事に驚き、また、嬉しかった。<br><br>　そうなれば今やるべき事はひとつである。覚悟を決めたディアの顔はどこかスッキリしているようにも見えた。そして吹っ切れたのか威勢よく話し始める。<br><br>「うん。聞いてもらいたい事が沢山ある。だから……まずは目の前のことなんとかしないと」<br>「だな」<br><br>　ディアとヴァラロスの二人はお互い意思を確認し合った後、再び町の門へと走り出すのだった。</p><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/nc94ded0e1d2c'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 17 Jun 2026 02:04:10 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 29</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">29.ドキドキ、それは命綱</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">　西の物見櫓に到着すると町長が見張り番と話しているところが見える。どうやら今の状況を確認しているようだ。だが、その様子を見るに事態は深刻そうである。<br><br>「どうなってんだ？　認識阻害の魔法で魔物は町には来れないんだろ？」<br>「そのはず……でも、一度町に来たことがある魔物がいたらこれちゃうかも。それでも、町を知ってる魔物しか辿り着けない。その魔物が意識して他の魔物を連れて行こうとしない限り他の魔物は辿り着けないはずだけど、魔物が他の魔物を案内するなんてこと……」<br><br>　そこでふとディアが思い返す。<br><br>（待って、あそこにプルートの予備体がいた……もし、あいつがそれ程の知能を持っていたら……。でも、あいつにそんな知能あるの？）<br><br>　昨日戦った場面を思い出す。確かに戦い方は考えているように見えたが、戦略的なものは感じられなかった。つまり、他の魔物を率いて町へ向かうなんてことは出来そうにない。<br><br>「考えすぎか」<br>「どうした？」<br>「ううん。なんでもない。大丈夫だと思う。町長さんに話を聞いてみよう」<br><br>　そう言うと二人は町長のところへ駆け寄るのだった。<br><br>「町長さん！」<br>「おぉ！　おふたりともよく来てくれました」<br>「何があったの？」<br><br>　ヴァラロス達が来たことがわかると安堵する町長。これでどうにかなる。そんな考えが表情から見て取れる。二人が到着するや否や、横にいた見張り番が説明を始めた。<br><br>「それが……先程までは何もいなかったのですが、急に山頂の辺りに蠢くものが現れまして……。その蠢くものをよく見ると魔物のようで、どんどん増えているんです……！」<br>「なんだって！？」<br>「魔物は！？　こっちにきてる！？」<br><br>　見張りに詰め寄る二人。昨日倒したばかりなのに魔物が現れたとなれば焦るのも当然である。<br><br>「い、いえ。まだ山頂辺りで数を増やしているだけで、こっちに来るような動きは見られなかったです。ただ、このままだといずれはこちらにも溢れ出してくるものかと……」<br><br>「ちょっと物見櫓登らせてくれ」<br>「どうぞ……こちらになります」<br><br>　そういうと物見櫓の梯子を登るヴァラロス。物見台に到着し山を見ると確かに黒い物体が蠢いている。すでに溢れ出して来ており山のふもとに到達するのも時間の問題に見えた。<br><br>「っ！　魔物だ！　もう溢れてきてる！」<br>「ヴァル！」<br>「分かってる。行くぞ！」<br><br>　ヴァラロスは物見台から急ぎ降り、そのままディアと共に山へ向かうため町の外へと急ぐ。<br>　その道中、ディアは人気の少ない路地を見つけた。<br><br>（一応、ここにも置いておくか……）<br><br>　ディアは走りながらカバンに手を入れ、何かを路地に投げ入れる。そして、そのまま門を出て山へ向かうのであった。<br><br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br><br>　町を出て山へ向かうと異様な光景が目に入った。<br><br>「なんだあれ……」<br>「いったいどこからあれだけの魔物が……？」<br><br>　山頂部分が黒く染まり魔物で蠢くその様は見ているだけで気持ち悪くなるものであった。しかも、その魔物はいまだに増えているように見える。<br><br>「なぁ、認識阻害の魔法はまだ効いてるんだよな？」<br>「効いてる。効いてはいるんだけど……」<br><br>　歯切れの悪いディア。なにやら気になることがあるようだ。<br><br>「なにかまずい事があるのか？」<br>「認識阻害の魔法をかける時、漠然とプロカルへ向かう事を邪魔するイメージでかけちゃったから、このままだとプロカルを迂回して他の町に向かっちゃう」<br>「なんだって！　あの量の魔物が……えっ、ちょっと待って。とりあえず向かってるけど、これ俺たちでどうにかなるのか？」<br><br>　勢いで飛び出たもののこの数を相手にするのはかなり無理がある。辿り着く前に数で押し返されるように思えた。<br><br>「正直言ってあの魔物達全部を相手にするのは難しいと思う……でも、発生源を潰さないと増え続けちゃうから、まずはそこを潰さないと」<br>「増えなければ倒すのみってことか……問題はどうやって発生源まで辿り着くかだな」<br><br>　移動しながら打開策を考える。魔物の侵攻を許可すると隣町に被害が出ることも考えられる。しかし、魔物の侵攻を防ごうとするとどれだけの魔物が増えるか分からない。<br>　対処するにもどちらかのように思えた。<br><br>（やっぱり、魔物を無視してでもどうにか山頂に辿り着かないと手の打ちようがない……。でも、そうすると隣町に被害が……ん？）<br><br>　ディアがそう思ったところでふと気づく。プロカルの隣町。そこは確か……。<br><br>「ねぇ」<br>「何か思いついたか？」<br>「そういうわけじゃないんだけど、プロカルの隣町ってどんな町なの？」<br>「……隣町はカスースの町だな。ノヴィシム程ではないが立派な冒険者ギルドがある……ん？　まさか……」<br><br>　そこまで説明してヴァラロスはディアの言わんとしていることが分かった。<br><br>「よし、じゃあ魔物の討伐は後回し。何人か逃げようとしている人いたからカスースにも情報が伝わるでしょう。そうなればあとは向こうの冒険者がどうにかしてくれる。……問題は魔物の発生源だけど……」<br><br>　そこまで言ってディアはチラッとヴァラロスを見る。正直、思い当たる節はある。でも、それを知られた時に今までの関係性が壊れるかもしれない。そんな不安に襲われるディアはつい彼を見てしまった。ヴァラロスも見られたことに気付き、何事かとディアを見るがすぐに顔を逸らされた。その表情はヴァラロスからは見えない。しかし、ディアは何事もなかったかのように話を続ける。<br><br>「考えがある。もうちょっと近づいたらやるからヴァラロスも協力お願い」<br><br>　それでも、今は進むしかない。<br><br>「わかった。出来ることならなんでも言ってくれ」<br><br>　ヴァラロスの言葉に頷くディア。この後のことを考えると少し憂鬱になるが、今はそれどころではない。今出来ることを全力でやろう。今のディアにはそれしか考えられなかった。<br><br><br><br><br><br><br>　しばらく進むと次第に騒がしくなってきた。この先に魔物がいるようだ。<br><br>「そろそろだね」<br>「どうするんだ？」<br><br>　ディアの言葉にヴァラロスが質問する。ここまで何の説明もなく走ってきたヴァラロス。それはディアを信じているが故であった。ディアの考えなら信用できる。信じるに値する。プロカルへ入る前にヴァラロスが心に決めたことだ。何があってもディアを信じると。<br><br>　そんな想いを知らないディアは淡々とやることを話し出した。<br><br>「やる事は単純。認識阻害の魔法をアタシにかける。それだけ」<br>「ん？　それだけでいいのか？」<br><br>　拍子抜けするヴァラロス。だが、ディアは真剣な顔をして説明を続ける。<br><br>「それだけ。でも、それが重要。この認識阻害はすごく強くかけるから条件を厳しくする。それこそ、アタシが持っているものだけを認識できなくするように」<br>「……ん？　待ってくれ。俺はどうなる。その条件だと俺が条件から外れないか……？」<br><br>　話を聞いて冷や汗を流すヴァラロス。今の話だとひとり魔物の中に取り残されるに等しい。流石にあの数の魔物を相手に戦う事は不可能である。<br>　想像してしまったのかどんどん青ざめるヴァラロス。自分は嵌められたのかと思っても仕方がない状況である。それを察したのかディアが慌てて補足する。<br><br>「大丈夫。ヴァルも助けるから安心して。そういう条件だから、常に手を繋いで欲しい。アタシが持っているものとして認識阻害に含めるから」<br>「なるほど……手を繋げばいいのか。それなら簡単だ」<br><br>　ディアの言葉に安堵するヴァラロス。ちょっと気恥ずかしい気持ちはあったが手を繋げば良いだけと分かり気が楽になった。だが、そう簡単ではないことがすぐにわかる。<br><br>「そう。本来なら簡単。……でもよく考えて、魔物は足を踏み入れることが出来ないほど溢れ出てきてる。そんな中に入っていく事がどれだけ大変か。……そして、手を離したが最後。魔物の群れの中でひとり押しつぶされて終わる。……だから絶対に手を離しちゃダメ」<br>「…………」<br>「気をつけてね」<br><br>　前言撤回。全然簡単じゃなかった。気恥ずかしいとか言ってる場合じゃない。手を離した瞬間命に関わる。その手はまさに命綱であり、死に物狂いで捕まるべきものである。ヴァラロスがそう思い直した時、何かが近づいてくる音が聞こえた。<br><br>「っ！　早く！」<br>「お、おぅ……」<br><br>　ディアは咄嗟にヴァラロスの手を取る。その慌てぶりにヴァラロスは少し驚いたが、ディアの仲間を想う気持ちの現れだと分かり不謹慎にも少し嬉しくなった。<br><br>　ヴァラロスとディアが手を繋いだ後すぐに魔物がチラホラと現れた。<br><br>「魔も……っ！」<br>（しーっ！　喋らない！　音は聞こえちゃうんだから黙って付いてきて！）<br>（わ、分かった……）<br><br>　声をあげそうになるヴァラロスの口をディアが塞ぎ、耳元で囁きながら注意する。幸い魔物達の音が騒がしいのと、イノシシの魔物の知性が低いからか気付かれなかったようだ。<br><br>　ディアが注意する際に身体を密着させた状態となり、魔物が来ていることからそのまま動けずにいた。ヴァラロスは終始ドキドキしていたが、それが何に対してのドキドキかもはや分からない。もう視界一面が魔物の群れの中なのだ。<br>　そのまま様子見をしていると、見事に二人を避けるように魔物が通過していく。その様子にディアは満足げであったが額には冷や汗を浮かべる。ディアとて上手くいくかは賭けであった。自分に認識阻害の魔法をかけて魔物の中を突き進むなど危険が大きすぎるため普通は実行に移さないだろう。だからこそぶっつけ本番で成功させられたのは流石は魔王としかいえない。そして、その不安を微塵にも出さずにいられたディアも流石であろう。<br><br>　ディアが手招きをしヴァラロスの注意を引く。その後に山頂を指差した事からもう移動するということだろう。その意図を汲んだヴァラロスはただ頷き、ディアの後をついて行くのだった。</p><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/ne5ea8cc4e6bb'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 17 Jun 2026 01:44:28 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 28</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">28.悪戯、からの反省</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">　翌日、ヴァラロスはとても不機嫌であった。<br><br>「ねーねー。ヴァルー？」<br>「…………」<br>「調子に乗ったのは悪かったからさー機嫌直してよー」<br>「…………」<br>「ねー、ごめんってばー」<br>「…………」<br><br>　黙りである。ヴァラロスが沈黙を貫いていると、ディアが必死に謝る。ディアは昨日の失態を思い起こし、少し、そう、少しだけやりすぎてしまったと思ったのだ。<br>　…………出来事は、昨日の夕刻に、ユシアに連れられて宿に着いたところまで遡る。<br><br><br><br>　ユシアに連れられておすすめの宿に来た二人は、言われるがままに宿に入っていった。<br><br>「いらっしゃい！……お？　この町の英雄さん達じゃないか」<br>「夜遅くにすまないね。この二人の部屋を用意して欲しいんだ。一番いい部屋で頼むよ」<br>「ユシアさんの頼みなら断れないな。もっとも、言われなくても一番いい部屋を用意させてもらったがね」<br><br>　宿屋の主人は笑いながらそう言う。一番いい部屋と聞いてディアがいくらするのだろうと思ったのは秘密である。<br><br>「おふたりさん、部屋はどうする？」<br>「何聞いてんだい！　野暮だねぇ……大きいひと部屋にしてあげな」<br>「……は？　はぁああ！！？」<br><br>　宿の主人とユシアとのやりとりを聞いたヴァラロスの雄叫びが部屋に響き渡る。<br><br>「ちょ、ちょっとちょっと！　他のお客さんも居るんだから大声はやめてくれ」<br>「あ……す、すまない……じゃなくて！　なんでひと部屋なんだよ！」<br><br>　ヴァラロスがユシアの提案に抗議する。ヴァラロスは山小屋での出来事を思い出していた。あの時と同じく、ずっと揶揄われることを懸念したのだ。<br><br>「あら、そういう関係じゃないの？」<br>「違うから！　普通にふた部屋で頼む！」<br>「そう？　ならそれで」<br>「あいよ」<br><br>　無事、意見が通ったことに胸を撫で下ろすヴァラロス。これで一安心だと。……しかし、その場は乱される。やりとりがここで終われば平和だったのだが、ディアが狼狽するヴァラロスを見てニンマリと笑っていた。イタズラしたくなってしまったのだ。そして余計な一言を発する。<br><br>「……アタシはひと部屋でもいいよ？　一夜を同じ屋根の下で過ごした仲でしょ？」<br>「なっ……！？」<br>「お？」<br>「あらあら！」<br><br>　ディアはもじもじしながらそんなことを言い放つ。裏でニシシと笑うディアはヴァラロスの反応を見て楽しんでいた。一方で、ヴァラロスは案の定、顔を真っ赤にして震えている。<br><br>「ご……」<br>「ご？」<br>「誤解を招く言い方をするなああああ！！！」<br>「……すみません。静かにしてください。ふた部屋で用意するんで……」<br><br>　宿の主人が根負けした。<br><br><br><br>　そして、その日の夕食。目の前には宿が用意した様々な料理が並んでいた。目の前にある肉はとても厚切りで香草とニンニクの焦げた匂いが食欲をそそる。野菜は発色が良く、とても新鮮であることがうかがえた。<br><br>「わぁ！　豪華！　お肉がたくさんある！　いっただっきまーす！」<br>「ヨハンさんとユシアさんが普段から狩りをしてるんだろう。この町は肉が安定して手に入るんだと思う」<br>「もぐもぐ……ん。この町は幸せだねー。あ、飲み物もある！　ちょっと取ってくるねー」<br><br>　ディアは肉を頬張りながら相槌を打つ。その肉はひと口食べただけで肉汁が溢れ、口の中を香ばしい香りで包み込む。添えられていた野菜もシャキシャキしており、その鮮度は申し分なかった。そして、宿のもてなしに大満足のディアはうきうきしながら店の中を闊歩する。<br><br>（なるほど、害獣の脅威がないから畑も荒らされずに安定して野菜も栽培できてるのか。天候に左右されそうだけど、そこも何か工夫してるのかな）<br><br>　ヴァラロスは食事をしながら、ひとり町の食事情を考えているとなにやら異変に気付く。<br><br>「ん？」<br>「えへへ〜」<br>「な、なんだ？　だらしない顔をして……って。これは酒か？」<br>「そう〜。もってっていいっていうからもらったの〜。ヴァルものむー？　これおいしいよー？」<br>「いや、俺は最初の一杯だけでいいよ。いつも潰れたやつがいたら助けてるんだ……ってディア、飲み過ぎじゃない？」<br>「へーきへーき。こんなのよゆーだよー。これでもヴァルよりながくいきてるんだからねー」<br>「そ、そうか……」<br><br>　ヴァラロスはディアが自分よりも年上であることに驚きつつも納得していた。道具屋の店主とも昔から知り合いといった具合で話していたため、見た目はとても若いが実は思った以上に年上なのではないか……？そんな疑問がヴァラロスの頭に浮かぶ。その考えは正解なのだが鼻にツンとくるアルコールの匂いにかき消された。<br><br>「というか、匂い的にこの酒強くないか？」<br>「このくらい、らいじょうぶよー」<br>「ほんとか……？」<br><br>　そして１時間後<br><br>「うぷっ……」<br>「お、おい……どうした？」<br><br>　先ほどまで大口を叩いていたディアであったが、その顔がみるみる青ざめていく。手で口を押さえながら俯き始めた。これは危ないかもしれない。そう考え、ヴァラロスは席を立ちディアのそばに寄る。<br><br>「き、きゅうにきもちわるく……うぷっ……」<br>「ま、まて！　もうちょっと我慢しろよ！　すみませーん！　ちょっと外に連れ出しまーす！」<br><br>　案の定、ダメだったようだ。<br><br><br><br><br>「うぷっ……お、おろろろろ…………」<br>「お前、何やってんだ……」<br><br>　近くの茂みに連れて行くとディアは見事に戻していた。不思議なことに派手に戻している割に服は汚れていない。服だけは執念で汚さないようにしているように見える。<br><br>「うっ……う、うぉーたーぼーる……うぷ」<br><br>　まるで瀕死かと思われる状態で魔法を唱えるディア。目の前に現れた水球を使って口をゆすぎ、ついでに戻した場所を清掃する。一応まだ理性は保っているようだ。<br><br>「そのまま水を飲んだらどうだ？　休みなしに、あんな飲むからそうなるんだ」<br>「はぁ……はぁ……だってー……おいしいのがいけない……うぷっ」<br>「『酒は飲んでも飲まれるな』だ。酒のせいにしない」<br>「うぅ……」<br><br>　恨めしそうにヴァラロスを見上げるディア。見上げた拍子に気持ち悪くなったのか再度下を向きうなり始める。その様子を見ていたヴァラロスは額に手を当ててどう介抱するべきか考えるのだった。<br><br><br><br><br><br>　結局、30分程介抱を続けたヴァラロス。背中をさすっていると、ある程度落ち着いたのかディアのうなり声は止まった。すると、急に態度が変わる。<br><br>「ばるー、だっこしてー」<br>「はぁ！？」<br>「ねーねー、だっこー」<br>「お前な……歳を考えろ」<br><br>　ヴァラロスの言葉に頬を膨らませるディア。どうやら程よく酒が回ると甘えてくるようだ。<br><br>「やだやだー。もうあるきたくないー。ばるくんはおねえさんのいうことをきくべきだとおもう」<br>「お姉さんって……ディア、お前歳いくつだよ」<br>「としー？　あたしのとしはねー…………」<br><br>　酔っ払いながらも急に冷静になるディア。流石にそのまま答えるわけにはいかない。魔族は寿命がない為、圧倒的にディアの方が年上である。そもそもヒト族の寿命がどれくらいかも覚えてない。つまり、ヴァラロスくらいの歳がいくつなのかもよくわからないのだ。今の状態では答えられない。そう判断したディアはめんどくさい返しをする。<br><br>「…………女の子に歳の話をするのは、どうかと思います」<br>「お前が先に言ったんだろ！！？」<br>「それよりはやくー。ベッドまでつれてってよ」<br>「ちゃんと立って自分で行きなさい」<br>「むぅ……」<br><br>　再び頬を膨らますディア。言う事を聞いてもらえないならとイタズラをすることにした。<br><br>「ベッドまで運んでくれたらいいことしてあげるよ？」<br>「な、なんだよ……」<br>「いいのかなー、いまならしてあげてもいいんだけどなー」<br>「ち、ちょっとまて……急にどうした？　だいたい、万が一があったらどうするんだ……そういうのはもっと慎重にだな……」<br>「今なら肩揉みくらいならしてあげるのにー」<br>「…………」<br><br>　ポカンとするヴァラロス。ニシシと笑うディアはここぞとばかりに追撃する。<br><br>「あれ？　何か変なこと考えてた？」<br>「〜〜！？……もう知らん！！」<br><br>　ヴァラロスは怒って宿へ戻って行ってしまった。<br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br>　そして今に至る。<br><br>「ねー……本当にごめんってばー……」<br><br>　しつこく謝り続けるディア。その表情をみるに反省の色が見える。もっといえば泣きそうな顔をしていた。それを見てしまったヴァラロスは仕方ないと声をかける。<br><br>「……反省してるか？」<br>「してるしてる。もうからかったりしないから」<br>「……絶対だからな？　それなら今回は水に流そう」<br>「ありがとう！」<br><br>　ヴァラロスの言葉を聞いて、不安そうな顔から笑顔に変わるディア。我ながら甘いと思いつつもヴァラロスはディアを許してしまうのであった。<br><br><br><br>「で、これからどうするんだ？」<br><br>　ヴァラロスが方針を聞く。もともとディアが町の防衛について確認したい為プロカルへきた。しかし、大したことはしていないようで町の平和はヨハンとユシアの力によるものだった。つまり、これ以上の収穫は望み薄なのだ。<br>　それをわかっているのかディアも複雑な表情を浮かべながら答える。<br><br>「一応、ここまで来たんだからもう少しくらい町を見て回りたい。少しでもヒントが欲しい」<br>「了解。じゃあ町の外壁を一周してみるか」<br><br>　そう言って二人は町を壁沿いに歩き始めるのであった。<br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br>　小一時間ほど町の壁を内側と外側で確認し、特に目立ったものがないことがわかった。それこそ、壁に関しては至って普通であり、どこにでもあるようなものである。普通に魔物の襲撃があれば壊れるし、壊れれば修復する。その証拠に壁のあちこちに修復した跡が見られた。<br><br>「やっぱりなにもないかぁ……」<br>「普通の壁だよな。町を囲う普通の壁だ。崩れているところを見たけどなんら変哲のない壁だった」<br>「だよねぇ……」<br><br>　八方塞がり。もう出来ることはないだろう。<br><br>（とにかく分厚い壁でも作るしかないかぁ……いっそ町全体を覆う建物でも作る？……ヒト族の町に来てないでさっさと作ればよかったか……）<br><br>　自身の行動に半ば呆れていると少し虚しくなってくる。気分が沈み始めた時ディアは考えを改めることにした。<br><br>（……そう、これはただの休暇。……もう無断で居なくなってから二週間近く経つけど、休んだ分頑張ればいいよね）<br><br>　そう考えたディアはそれ以上考える事をやめた。思考を放棄したのだ。今はなにも考えず遊ぼう。<br>　魔王としてあるまじき行為であるが今のディアにとって今この瞬間が大切であった。<br><br>「何か食べるか？」<br>「へ？」<br><br>　突然ヴァラロスが食事を提案して来た。昼食には少し早い。そんな時間だがヴァラロスは何か食べようと言ってきた。<br><br>「いや、煮詰まって考えが浮かばない時は何か食べながら気分を切り替えるといいかなって。ほら、Cランクになったお祝い。まだしてなかっただろ？」<br>「そう……だね。うん、ありがとう！」<br><br>　ディアはヴァラロスの心遣いに感謝しながら飲食店を探し始めた。<br><br><br><br><br><br><br>「ここのお肉美味しい」<br>「豚か？　柔らかくて口の中でとろけるぞ……！？」<br><br>　早速目についた店に入ると、二人は店員のおすすめを注文していた。ヴァラロスから遠慮せず好きなものを頼んでいいと言われたディアは、それならばと店員におすすめを聞いてみたのである。おすすめを聞いてヴァラロスも便乗する。その結果、とても満足できる内容であった。<br>　長時間煮込んだであろう豚肉にコッテリとしたタレを絡ませていたり、炒めたお米がパラパラしており一粒一粒がしっかりとした食感を生み出していたり、スープもとても澄んだ黄金色をしていることから見た目からも美味しいことがわかった。<br><br>「炒めたお米も美味しい！」<br>「スープもいい塩加減で美味しいな」<br><br>　食べ始めて間もなかったが、あっという間に食べ終わってしまった。<br><br>「……ふぅ。まんぞくまんぞく」<br>「こんなに美味しい料理は初めてかもな」<br>「同じく！」<br><br>　ヴァラロスの感想に思わずディアも片手を天に伸ばして同意する。つい身体で気持ちが表れてしまう。それ程までに美味しかったのだ。<br>　満足したところで次はどうしようか。そう思った時事件が起こった。<br><br>カンッ！カンッ！<br><br>「これは！？」<br>「なになに！？」<br><br>　突然の事態に慌てる二人。どう考えても非常事態である。何が起こったのかと立ち上がると店員が叫び出した。<br><br>「魔物の襲撃を知らせる鐘です！　皆さん避難して下さい！」<br><br>　店の２階へと避難していく客たち。ヴァラロスとディアはその流れに逆らい店の外へと出る。<br><br>「西の物見櫓から音が鳴ってる！」<br>「いくぞ！」<br><br>　二人は店を後にし鐘の音が鳴っている方へと走り出すのであった。</p><br/><a 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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 16 Jun 2026 21:58:27 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 27</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">27.安堵と歓迎</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">「……ふぅ」<br>「なんとかなったな……」<br><br>　力尽きた魔物を目の前にし、ディアとヴァラロスは息をつく。そして、その瞬間目の前に広がる光景に絶句することとなった。<br><br>「……なんだこれ」<br>「え、いや……え……？」<br><br>　目の前には無数の魔物の亡骸が横たわっていた。よく見たら今まで戦っていた魔物が投げた魔物もその一つのようだ。よく観察するとどの魔物にも裂傷があり、剣で切りつけたような傷跡が見える。ただの魔物の亡骸であれば、例の息子夫婦の活躍と納得できただろう。だが、目の前に広がる魔物の数は、到底二人で対応できるものとは思えない量であった。<br><br>「この量を、あの二人だけで……？」<br>「それしかないだろ……。あの二人、一人が傷を負ったとはいえここまで耐えたんだ。これだけの強さがあるなら大抵の魔物は問題ないだろ」<br>「つまり、あの町自体に魔物防衛の対策は…………」<br>「ないだろうな。十中八九力業だろう」<br>「そうかぁ…………」<br><br>　そういって身体を伸ばすディアの表情はあまり残念そうには見えない。むしろなにやら安堵しているようにも見えた。恐らくプロカルに住む人たちのことを思ってのこの表情だろう。これだけの魔物の襲撃に耐えうる力がここにはある。イレギュラーはあったものの通常ならば町が崩壊するような事態にはならないだろう。<br><br>　ディアが安堵していると後ろから足音が聞こえて来た。そこには、逃げていたはずの息子夫婦がいた。よく考えれば逃がそうとしてすぐにケリをつけたため、逃げるまでもなかったようだ。<br><br>「あの、助かりました……」<br>「あぁ奥さん。間に合ってよかったです。……旦那さんは大丈夫ですか？」<br><br>見たところ夫の方も肩を怪我したものの命に関わるような傷では無いようだ。今は妻に支えられながらもほぼ自力で歩けている。<br><br>「ありがとうございます。おかげで命拾いしました」<br>「あなたがプロカル町長の息子さん？」<br>「えぇ、そうです。ヨハンと申します。こっちは妻のユシア。夫婦で薬草を集めているところでした……ところで、依頼を受けたとありましたが、父の知り合いで？」<br>「いや、俺達はたまたまプロカルへ来た冒険者だ。俺はヴァラロス。こっちはディア。ノヴィシムからプロカルに向かう途中、この山に大量の魔物がいるのが見えて、迂回してその事を町に伝えたんだ。そうしたら、さっきも言った通り町長からあなた達の救助を依頼された」<br>「そうでしたか……重ねて、助けていただきありがとうございました」<br><br>　夫妻が頭を下げる。夫妻の無事を確認できヴァラロスとディアは笑顔で顔を見合わせる。この為に助けに来たんだ。そう実感できる光景だった。<br><br><br><br>「…………ちなみに、この魔物は二人が？」<br><br>　我慢できずにディアが確認する。それ以外あるわけがないが念のための確認である。<br><br>「はい。魔物に負けておきながら恥ずかしいのですが、町を魔物から守る為に日々鍛錬をしていたのでこれくらいの魔物であればどうにかなりました」<br>「私も加勢してどうにか魔物を討伐していたんだが……」<br>「……例の魔物が現れたと」<br>「はい。妻共々剣で交戦したのですが、剣が折れてしまい……この様です」<br>「…………」<br><br>　最近のヒト族は武力に長けているのだろうか。ドミニクといいこの夫婦といい想像を超えてくる。ドミニクならばあの魔物、プルートの予備体をひとりで討伐できるだろう。だが、いくら予備体とはいえ身体の性能は本物と同等であるはず。剣が折れた事からそれだけの攻撃を当てることができた事を意味する。並の冒険者なら攻撃を当てる事もできないであろう相手にしっかりと当てたのだ。それだけでも十分驚くべき事であった。<br>　二人の回答に遠い目をするディア。いつまでも現実から目を背けるわけにもいかない。ディアは諦めて夫婦に向き直り下山を促すのだった。<br><br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br><br>　下山した四人は門番に出迎えられ、息子夫婦の無事を喜んだ。すぐに町長へ報告すべくそのまま町長宅へ向かい、家のドアを開けると町長が椅子に祈るように座っている。こちらに気づいた町長は急に立ち上がり、椅子を倒したことを全く気にせず駆け寄ってきた。その顔は心底安堵した表情にも見える。<br><br>「おぉ……！　ヨハン！　ユシアさん！　無事だったか……！」<br>「親父……こちらの冒険者の二人に助けてもらったんだ。この二人がいなかったら助からなかったと思う」<br>「恐ろしい魔物が現れて手が出なかったんです」<br>「そうか……そんなに恐ろしい状態に……。お二人とも、助けていただきありがとうございました。本当になんと感謝して良いのか……報酬は……」<br><br>　町長がそう言ったところで家の入り口が騒がしくなった。<br><br>「ヨハン！　ユシア！　無事か！？」<br>「ヨハンさんが怪我してるって聞いて急いできたんだけど！？」<br>「何かできることはあるかい？みんな世話になってるから今くらいは世話させておくれ」<br><br>　どうやら二人が戻ってきた事を聞いて町のみんなが集まってきたようだ。<br><br>「みんな……ありがとう。怪我はしたけど無事だ。この冒険者さんが助けてくれたんだ」<br><br>　そう言ってヴァラロスとディアを紹介するヨハン。今度は町の人たちが変わりがわりヴァラロス達に挨拶をするのだった。<br><br>　ひと通り挨拶が終わる頃にはヨハンが町の人に手当てをされて、ユシアも暖かい飲み物を準備しているところだった。<br><br>「慕われてるんだな」<br><br>　やっと挨拶が終わったところでヴァラロスがヨハンに話しかける。<br><br>「ありがたい事に、こうしてみんなとまた会うことができたのもあなた達のおかげです」<br>「あんた達もこの町ではもう有名人さ。……本当にありがとうね」<br><br>　そう言いながら暖かい飲み物を手渡してくるユシア。ヴァラロスとディアはそれを受け取りそのまま口をつける。暖かい紅茶が身体に染み渡るのを感じた。<br>　すると、話しが途中になっていた町長が話を始める。<br><br>「町の皆、歓迎してますよ。……話が途中になってしまいましたが報酬の話をしましょう。……息子夫婦の救助とスタンピード撃退。少ないかもしれませんが金貨200枚で如何でしょうか？」<br>「金貨200枚……！」<br><br>　提示額に驚くヴァラロス。一町長からの個人的な依頼で出せる金額としてはかなりの額であった。しかし、ヴァラロスとディアはそれを聞いて悩んでしまう。少し悩んだそぶりを見せた後、ディアが口を開いた。<br><br>「それ、払った後大丈夫なの？」<br>「多少の贅沢は我慢ですが通常の生活は問題ありません」<br>「万が一またスタンピードが起きたとしたら？　ギルドに依頼する事になると思うけど、何とかなる？」<br>「ディア？」<br><br>　ディアの質問に首を傾げるヴァラロス。スタンピードがそんなに頻繁に起きるなど聞いたことがない。その為、これっきりで済むものと考えていたのだ。<br>　町長も同じ考えであったようで少し考えるそぶりを見せ、静かに口を開いた。<br><br>「……正直、もう一度起きるとは思えませんが、その時は払えないでしょう。その時はギルドへ依頼する事になると思いますが、もっと高額かもしれません。そもそも依頼が間に合うかどうか……」<br><br><br>　町長は目を伏せ、その万が一の事を案じた。プロカルから依頼を出すとしたらプロカルから東に位置するカスースの冒険者ギルドだろう。カスースへ行くのにプロカルから歩いて半日くらいかかる。だが、依頼を出して、冒険者を集め、プロカルへ向かうと考えるとどうだろうか。今回の襲撃を考えるとそんな事をしている間に全滅だろう。<br>　重い空気が流れる。ヨハンとユシアもわかっている為、口を挟まない。次があったとしたら生き残れない。そんな思いがその場を覆っていた。<br>　すると、その空気を変えるようにディアが話し始めた。<br><br>「なら、町の防衛にそのお金を使って欲しい。少しでも多くの人が助かるように地下室を作るなり、東に町を広げるなりやりようはある。……ヴァル、勝手にごめん。でも、アタシがそうしたい。今回の報酬はアタシが払うから」<br><br>　ディアの言葉に驚く町長と息子夫婦。ヴァラロスも少し驚いていたが違った意味合いであった。<br><br>「……驚いた。まさかディアから切り出してくるなんて。俺も同じ事を考えていた。少しでも町の防衛に力を入れて欲しい。報酬は……みんなが無事ならそれでいい」<br>「ヴァル……！」<br><br>　ディアが嬉しそうな顔をしてヴァラロスを見る。思わず目が合ったヴァラロスは気恥ずかしさに顔を赤らめながら目を逸らすのだった。<br>　……それもそのはず、それは今まで見せた笑顔の中で一番の笑顔であったからだ。<br><br>「なんて感謝すればよいのか……。ありがとうございます。せめて泊まる宿はこちらで用意させて下さい。お二方ならいつまででも居てくださって構いません」<br>「町のみんなも二人なら大歓迎だ」<br>「この町で一番評判のいい宿を案内するからさ」<br><br>　町長の言葉に息子夫婦も是非にと言う。ヴァラロスとディアはもともと泊まる宿を探さなければならない状況であった為、この提案は渡りに船であった。<br><br>「じゃあ、言葉に甘えて、宿はお願いする」<br>「美味しいご飯も付けときますね」<br>「ごはん！？」<br><br>　ご飯と聞くと忘れてたと言わんばかりの反応を示すディア。あまりに緊張する出来事の連続であった為、食事のことをすっかり忘れていたのだ。<br><br>「そういえば食べてないな」<br>「今から紹介するところは美味しい料理も評判だから、荷物置いたらすぐに食べるといいよ。今から連れて行っていいかい？」<br>「ごはん！　ごはん食べたい！」<br><br>　ユシアが町長達に確認する。町長もヨハンも早く連れて行ってあげてくれと苦笑し頷く。<br>　ご飯と聞き、うきうきのディアとそれを横目で見守るヴァラロスの二人を連れてユシアが宿に連れて行くのだった。</p><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/n86c31aa403d8'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 16 Jun 2026 21:31:39 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 26</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">26.終わらない危機、そして救出</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">　プロカルの町の門扉に到着した二人。小窓から門番が顔を覗かせこちらをうかがう。二人がギルドカードを見せるとすんなり門を開けて通してくれた。ディアがノヴィシムに来た時と比べて待遇が雲泥の差である。少し微妙な顔をするディアだったが、今はそれどころではない。<br>　ヴァラロスが事情を説明し、モンスターの群れが近づいてきていると伝えたところ、急ぎついてきて欲しいと言われる。二人は休むことなく門番に連れて行かれるのであった。<br><br><br><br>「町長！　大変だ！」<br><br>　門番が町長の家の扉をバンと開けて中に入ると、町長と思われるお爺さんがエプロンをつけており、作った料理を配膳しているところだった。<br><br>「なんだ藪から棒に……息子達の帰りを待ってるところなんだが……」<br>「それどころじゃないって！　モンスターの群れが山を下りてこっちに来てるんだ！」<br><br>パリンッ<br><br>　町長が持っていた皿を落としたかと思うと、急に門番に掴みかかる。<br><br>「山……山と言ったか！？　魔物の群れが山から来てると言ったのか！？」<br>「ち、町長落ち着いて！　今はこの冒険者さんが魔法で町に近付けなくしてるから大丈夫だそうだ」<br>「そんなっ……！？　息子夫婦が山に行ってるんだ！　息子達まで町に入れなくなったんじゃ……！」<br><br>　真っ青な顔をする町長。どうやら息子夫婦がまだ帰ってきていないらしい。魔物の群れに遭遇していたとしたらまず助からない。だが、霧の中に逃げ込めればどうにかなるだろう。<br>　町長がこの世の終わりのような顔をする。それを見かねたディアは少しでも安心させるために訂正を入れた。<br><br>「大丈夫。その魔法は町を知ってる人には効かない。山を下りていれば安全」<br>「っ！？　そ、そうなのか……？　だが……」<br><br>　ディアの言葉で一瞬顔色が明るくなるも、すぐにその表情は曇る。山を下りれば安全と分かったが、そこまで辿り着けているかわからない。そもそも山の中で魔物と遭遇してもう……そんな不安が町長を押しつぶそうとしていた。<br><br>「冒険者さん……頼みます……息子達を助けに行ってはくれませんか……？　出来る限りのお礼はするので、どうか……どうか……！」<br><br>　弱々しい腰を深く折りヴァラロスとディアに息子夫婦の救出を懇願する町長。それを見たヴァラロスとディアは複雑な表情を浮かべる。<br>　助けに行けるものならすぐにでも助けに行きたい。だが、ディアもヴァラロスも体力が限界に近いのだ。ディアに至っては万全でない状態で強めの認識阻害魔法を使った為、生命力がかなり減った状態となっており、魔物と遭遇しても魔法を使って戦うことは難しかった。<br><br>　だが、それでも。ディアとヴァラロスはお互いの顔を見合わせて頷く。二人は決して諦めない。<br><br>「分かった。助けにいこう」<br>「！？　ありがとうございます……ありがとうございます……！」<br>「お礼は後。何か武器はない？」<br>「武器って……お嬢さん」<br>「なんでもいい。剣でも槍でも斧でも」<br><br>　ディアは魔法が使えない代わりにと武器を要求する。ドミニク程ではないものの、どの武器も普通に使うことが出来る。しかし、想定外の物を渡されることになる。<br><br>「そんなもの……鍬ならここに」<br>「くわ……？」<br><br>　町長が差し出したのは畑仕事で使うような鍬であった。ディアは内心「そうじゃない」と頭を抱えたかったが、何もないよりマシだと考え鍬を借りることにする。<br><br>「……これ借りる」<br>「待ちな嬢ちゃん。これを持っていきな」<br><br>　ディアが鍬を持って出ようとしたところ門番が呼び止める。そして、自分の持っていた剣を差し出した。その剣はお世辞にも綺麗とはいえない。むしろ切れ味が悪そうに見える。それでも門番の申し出は有り難かった。<br><br>「こんな剣でも鍬よりましだろう。……もともと飾りみたいなもんだが、よければ使ってくれ」<br>「ありがとう。これも借りてく」<br>「ディア、急ごう」<br><br>　そう言って剣と鍬を持ったディアはヴァラロスの後に続き、再び山へ戻るのだった。<br><br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br><br>　プロカルの門を出て走る二人。つい先程まで歩いていた道を急いで戻っている。しかし、辺りはすっかり暗くなってしまっていたので、月明かりを頼りに周囲を窺う。すると、山の方に霧がかかっているのが見え、魔法がまだ効いていることがわかった。<br><br>「ディア！　この魔法はどのくらい持つんだ？」<br>「魔力のパスが届く範囲なら、アタシが解くか魔力供給が切れない限り続くから安心して！　でも、強めに魔法をかけたから霧が濃く出ちゃってる」<br>「わかった、弱いよりいいだろう！」<br><br>　ヴァラロスは万が一魔法が解けてプロカルに魔物が雪崩れ込まないかを心配して質問したが、今のところその問題はなさそうだ。唯一心配なのはディアの魔力切れである。そこだけは注意が必要だった。<br><br><br><br><br>　そのまま霧の中に入り走り続けること数分、山の入口が見えてきたところで足を緩める。今のところ魔物は見えないがここからは慎重に行動しないといけない。いつ魔物が襲ってきてもおかしくないのだ。……そして、町長の息子夫婦も見当たらない。この時点で最悪のケースが考えられる。<br><br>「……いこう」<br>「あぁ」<br><br>　ディアが短く言うと二人はそのまま山に入っていく。ただ、息子夫婦の無事を願って歩くのだった。<br><br><br><br><br>　しかし、山道に沿ってしばらく歩いているが魔物に出くわさない。それどころか小動物すら見当たらなかった。<br><br>「これはどういうことだ？」<br>「さっきは確かに魔物の気配を感じたのに……今は何も……」<br><br>　それはまるで山の反対側にいた時のようである。<br><br>（魔物が消えた？……ううん。それはない。あの数の魔物が全部消えるなんて有り得ない。じゃあ、また気配を消して潜んでる？……いや、それはない。もう気配遮断の魔法は解析済みだから、近くにいれば気配を消しててもアタシなら分かる。だからそうじゃない。そうなると……）<br><br>　答えは限られる。魔物が侵攻する向きを変えたと考えるのが妥当だろう。でも何故？その答えは分からない。だが、それならば希望が持てた。<br><br>「ヴァル、多分、魔物は引き返してる」<br>「なんだって？　なんでまた？」<br>「分からない……でも、それなら息子さん達が無事な可能性がある」<br>「確かに……それなら急ごう」<br>「待って、ライト」<br><br>　ディアが魔法を唱えると目の前に小さな光の玉が現れ辺りが少しだけ明るくなった。<br><br>「急ぐなら足元を照らさないと」<br>「大丈夫なのか？」<br>「生命力のこと？　それなら大丈夫。弱くしか出せないけど、このくらいのライトなら問題ないから」<br>「そうか……なら頼らせてくれ」<br><br>　それまで慎重に進んでいたヴァラロスとディアは辺りを照らしながら急いで山を登り始めた。<br><br><br><br><br><br><br>　二人が走って山を登っていると何やら声が聞こえてきた。恐らく町長のところの息子夫婦だろう。<br><br>「どうやらこの先のようだ。急ぐぞ」<br><br>　ヴァラロスの言葉にディアはただ頷く。そのまま二人はさらに急いで走り出した。そして、少し走ったところで声が鮮明に聞こえてきた。<br><br>「早く逃げろ！　こいつは手に負えない！」<br>「だから一緒に逃げるんだよ！　アンタをおいてなんて行けない！」<br>「バカやろう！　このままだと二人とも助からない！　お前だけでも逃げろって言ってるんだ！」<br>「絶対に嫌！」<br><br>　言い争う声が近づいてきたと思ったその時、視界に二人の影が映った。<br><br>「なんだあれは！？　新手か？」<br>「いや、人がいる！　ダメだ！　アンタたちも逃げろ！　厄介な魔物がいるんだ！」<br><br>　自分たちが窮地にいるにも関わらず他人の心配をする息子夫婦と思われる二人。ヴァラロスとディアはそんな二人を見て安心する。助ける対象が無事ならやることはひとつである。是が非でも助けたい。助けに来た二人が思うことは同じであった。<br><br>「町長からあなた方の救出依頼を受けた冒険者だ！　魔物は引き受ける！」<br><br>　ヴァラロスが大きな声で叫ぶ。まるで自分に魔物の注意を向けようとしているようであった。<br><br>「ほんとか！？　たすかっ……」<br><br>ザクっ<br><br>「えっ……」<br>「くそっ！」<br><br><br>　男が安心したところで背後から鋭利な木の棒が飛んできた。それが町長の息子の肩を貫く。<br><br>「ぐぁぁ…………」<br>「アンタああぁぁ！」<br><br>　その場でうずくまる息子とその息子を気遣う妻。そのすぐ後ろにはその鋭利な棒を投げたであろう魔物が見えた。<br><br>「ギィアアアアアア！」<br><br>　その姿はディアのよく知る姿だった。<br><br>「プルート！？」<br>「っ！？　ディアあいつを知ってるのか！？」<br>「えっ？　い、いや。似た魔物を見たことがあるだけ……あれは違うみたい」<br>「……それでもいい。似てるなら共通点があるかもしれない。特徴を教えてくれ」<br><br>　疲れのせいで頭が回らない。驚きのあまりつい声に出してしまった。そのせいでヴァラロスにあの魔物を知っているであろう事がバレてしまった。ヴァラロスはこう言ってるが恐らくディアの嘘に気付いている。<br><br>（なんでプルートの予備体がこんな所に……？　なんでヒト族を襲ってるの！？　ほんとなにやってんの……！！）<br><br>　ディアは葛藤しながらも今切り抜ける事が先と判断しヴァラロスにアドバイスをした。<br><br>「多分、あいつの身体は魔力を帯びて硬化する。並の刃だと通らないから魔力で武器を纏って攻撃して！」<br>「なんだよそれ！？　どうやりゃいいんだ？」<br>「これを使って！」<br><br>　ディアはそう言うと走りながらヴァラロスに剣を手渡す。その剣はよく見ると淡く光ってるようにも見えた。<br><br>「これは……」<br>「アタシの魔力を込めてある。これなら通用するはず……！」<br>「分かった！　ディアは下がってろ」<br>「冗談。これで十分！」<br><br>　ディアも自分の獲物を構える。そこには同じく淡く光る鍬があった。そしてそのまま夫婦の横を通過する。<br><br>「出来るだけ離れて！　山のふもとの霧に入れば安全だから！」<br>「わ、分かった！　アンタ！　しっかりしな！」<br><br>　息子夫婦に声を掛けそのまま魔物へと向き直る。すると魔物は次の木の枝を投げようとしている所だった。<br><br>「させるかよ！」<br><br>　魔物が木の枝を投げると同時にヴァラロスが剣ではたき落とす。手に想像以上の衝撃が走る。手が痺れて構えが崩れたところを魔物が狙って近づいてきた。<br>　その様子を見ていたディアはヴァラロスの隙を埋めるため前に出た。<br><br>「まずはこっち！」<br><br>　鍬を思いっきり振り魔物に殴りかかる。それを見て魔物は攻撃を止めて回避に徹した。<br><br>「ギギィイイ！？」<br>「くっ、魔物のくせに勘がいい！？　攻撃が当たりさえすればすぐ終わるのに……！」<br><br>　ディアがそう言うと、魔物は距離を取りディアとヴァラロスを観察する。すると、急に後ろに飛んだかと思うとその魔物の後ろにあるものに手をかけこちらに投げてきた。<br><br>「何度やったって同じ……ってあれは！？」<br>「イノシシの魔物！？」<br><br>　暗がりのためよく見えなかったが、イノシシの魔物が飛んできた。そのサイズはゆうに大人の人を超えており、通常の魔物であれば投げ飛ばすことなんて不可能と考えられる大きさであった。<br><br>「くそっ！　避けたら二人に届いちまう！　でもこんなの……」<br>「はああああああああああ！！」<br>「ディア！？」<br><br>　ディアが雄叫びを上げながら鍬を振り上げて飛んでくるイノシシの魔物と対峙する。次の瞬間信じられない事が起きた。<br><br>「こざかしい！！」<br><br>ドオオオオオオオオオオオオン…………<br><br>　ディアの叫びと共に振り下ろされた鍬は飛んできた魔物もろとも地面に叩き落としたのだ。あまりに異様な光景にヴァラロスは言葉を失っていた。<br><br>「ヴァル！　行くよ！」<br>「お、おう！」<br><br>　一瞬呆けてしまったがそれは相手も同じであった。その隙をつくためにディアとヴァラロスは走り出し距離を詰める。<br>　その様子をワンテンポ遅れて魔物が反応し、次の魔物に手をかけようとする。しかし、その僅かな遅れは形勢を逆転させるには十分な間であった。<br><br>「遅い！」<br><br>　振り下ろされた鍬は魔物の頭上から魔物に迫る。攻撃が間に合わないと判断した魔物は手に持っていた魔物を手放し後ろに飛び跳ねた。<br><br>「ヴァル！　お願い！」<br><br>　それを見越していたのかディアの後ろから迫っていたヴァラロスは速度を殺さずディアの横を通り過ぎる。そして、持っていた剣で魔物の身体を横に一閃する。<br><br>「グッ……ガアアアアアアア！」<br>「くそっ！　この手、なんて硬さだ……！」<br><br>　しかし、ヴァラロスの攻撃は魔物の両手によって阻まれた。よく見ると腹部に剣先が届いており血が流れている。しかし傷は浅い。これではすぐに回復してしまうだろう。<br><br>「くっ！」<br><br>　このままでは逃げられる。そう考えた時にはヴァラロスは魔法を唱えていた。<br><br>「アイス！」<br>「グァッ！？」<br><br>　ヴァラロスが魔法を唱えると剣先を起点として氷の塊が発生し剣もろとも魔物を包み込む。魔物の腹部を包むように氷が発生し肝心の手も包み込む。結果、魔物は簡単には身動きがとれなくなった。<br><br>「すまん！　仕留められなかった！」<br>「いや、上出来でしょ！」<br><br>　すぐ後ろにはすでに鍬を構えたディアが迫り魔物の頭部目掛けて振り下ろした。<br><br>ズドオオオオオオオン…………<br><br>　思い切り振り下ろされた鍬は飛んできた魔物を叩き落とした時と同様に魔物を地面に叩きつける。身動きが取れなくなっていた魔物はディアの攻撃が直撃し絶命したのだった。</p><br/><a 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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 15 Jun 2026 19:11:43 +0900</pubDate>
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      <title>魔王と勇者のあしあと 〜正体を隠した魔王、視察先で勇者候補の相棒になる〜 25</title>
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      <description><![CDATA[<h2 name="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3" id="F3FD03D0-1D00-435E-8FE8-57F31C5A22B3">25.戯言、からの信頼</h2><p name="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b" id="8ad62985-5e34-455f-a0c3-07e77ed19f5b">　濃い霧の中を進むヴァラロスとディア。辺りが暗くなっていることもあり、もはやどこを歩いているのか分からない。そんな状況の中２人は迷うことなくまっすぐとその歩みを進める。<br><br>「……ねぇ、山からプロカルまでは普段どのくらいかかるか分かる？」<br>「そうだな……、だいたい10分くらい。そんなもんだと思う」<br>「そう……」<br><br>　もうかれこれ30分は歩いているだろう。それでも辿り着けないのはやはり目的地のイメージが足りていないからだろうか。<br>　ただ、ずっと霧の中を歩き続けているのも気になる。普通であればすぐに他の場所に出てもおかしくはない。それが霧の中をずっと歩き続けている。きっと、あと少し何かが足りていない為、周囲をぐるぐる回っているものと考えられた。<br><br>「……ごめん、ヴァル。もうプロカルは諦めて戻ろう。今戻ると魔物がいるだろうから少し休んでからになると思うけど」<br>「そう……だな。諦めはしないが、少し休むか」<br><br>　ディアがそう言うとヴァラロスが足を止めて答える。その表情は何やら迷っているように見えた。<br><br>「……アタシったら何やってんだろな。プロカルに町を守るヒントを探しに行くっていいながら、焦って自分を辿り着けなくするなんて……」<br><br>　落ち込んだ様子で話すディア。ヴァラロスはその様子を黙って見ていた。<br><br>「でも、あそこで魔法使っとかないとプロカルに抜けてきちゃう魔物もいたと思うんだ。魔物って視力いいから、遠目で見た外観とかを頼りに認識阻害の魔法意味なくなっちゃうから」<br>「……その、認識阻害の魔法ってどうやったら効果が無くなるんだ？」<br><br>　ヴァラロスはなにやら神妙な面持ちで問いかけた。今の彼には、その確認が必要だった。<br><br>「さっきも言った通り、目的地を強くイメージする事。結構強めに魔法かけちゃったから確信を持ってそこにそれがあるって思わないと辿り着けない」<br>「確信を持って……か」<br>「そうそう」<br><br>　ヴァラロスは何やら考えた後、ディアに問いかける。<br><br>「その……、ディアはなんで自分が迷うのにこの魔法を使ったんだ？」<br>「うん……ごめん、頭がまわらなかった」<br>「あぁ、違う違う。そうじゃない」<br>「え？」<br><br>　不思議な顔をするディア。ヴァラロスの質問の意図が分からない。何を言っているんだろう。そう思い、ヴァラロスの言葉を待った。<br>　一方のヴァラロスは本当に聞きたい事を聞けずにいた。別の質問をして結論を先延ばしにしている。単純にヴァラロスは迷っていたのだ。<br><br>「いや、ディアの目的は……どうやって魔物からプロカルの町を守るか、だろ？　それならこの状況はそれを確認する絶好のチャンスじゃないのか？」<br><br>　ヴァラロスはそんなことを言う。今、まさにこの状況がディアの望んでいたことだと。確かに、そのままプロカルへ向かえば町に入れて、どのように町を守っているかが分かるだろう。たとえ、それが防ぎきれない量だとしても。<br>　それを聞いたディアは、一瞬、ヴァラロスが何を言っているのか分からなかった。しかし、彼の意図を理解したディアは拳を震わせて答える。<br><br>「…………流石に、それはヴァルでも怒るよ？　こんなの、この世界のどんな集落でも耐えられるわけない。プロカルの人が犠牲になるのを黙って見てろって言うの？　そんなこと、できるわけない」<br><br>　ヴァラロスの質問にディアは怒気を含んだ声色で答える。頑張って怒りを抑えているからかその声は震えており、顔は真剣そのもので偽りがないことがわかった。<br>　その顔を見たヴァラロスはハッとする。<br><br>「そう……だな。悪い。当たり前なことだった」<br>「そうだよ。当たり前。人の命よりも大切な事なんてない。でも、アタシの心配してくれての質問だろうから許す」<br><br>　ヴァラロスは素直に謝った。ディアの言う通り当たり前なのだ。目の前に助けられる人がいるなら助ける他ない。今までの行動からそれが当たり前であったのに疑問に思ってしまった。<br>　一方で謝られたディアは今あったことは水に流そうと、まるでなにも無かったかのような表情に戻る。それはヴァラロスへの気遣いもあるが、今の関係性を壊したくないディア自身の想いもあった。<br><br><br><br>（俺はなんで疑ったんだろうな……。どんな理由があるにしろディアはディアだ。たった数日間だが、人となりは理解したつもりだ）<br><br>　ヴァラロスは自問自答している。<br><br>（人が困っていたら助ける。……道具屋の主人相手みたいに変に突っかかることはあったけど、あの人もディアのことを信用しているようだった）<br><br>　ディアを肯定する理由を探していた。最初は自分を言い聞かせるために。だが、今は違う。ディアという人物は根っこから素直なのだ。愚直に正しいと思ったことをやる。そして、他人の命を助けることを正しいと思っている。<br>　ヴァラロスは、そんな当たり前のことに気付き、まるで目の前の霧が晴れたかのような気分でいる。<br><br>（そう、俺も信用するべきなんだ。例え、ディアが、……ディアがヒトの敵といわれている魔族であったとしても！）<br><br>　始まりはドミニクとの戦闘だった。ドミニクを回復させるためにディアは自分の生命力が無くなるギリギリまで使って回復魔法を唱えた。その結果、ディアの魔力が一瞬だけ途切れた。それの意味するところは分かるだろう。認識阻害の魔法も解けたのだ。しかし、腐っても魔王。気絶していようが少しでも生命力が回復したら自動的に認識阻害の魔法をかけ直せるように計算して生命力を使っていた。ディアの計算では認識阻害の魔法は切れない予定だったのだ。それが瞬きをしたくらいのわずかな時間だけ魔法が切れてしまった。……そこをヴァラロスに見られたのだ。<br><br>　初めは気のせいかと思っていたヴァラロスもディアの規格外の戦闘能力、得体の知れない出自を考えると疑わざるを得なくなった。そして決定的な事実。……よく考えれば分かることだったのだ。いや、よく考えなくても分かる。ただ、考えたくは無かったのだろう。最果ての地ノヴィシムにいながら、プロカルに行った事がないというその意味を。それは空山の向こう、魔族領から来たことに他ならないのだから。<br><br>　何度も聞こうと思った。嘘だと言って欲しかった。だが聞けずにそのままでいたのだ。……そして決定的だったのが、ひとつ目の山を下りた時の出来事である。ディアから認識阻害の魔法について聞いた時、確信を持って対象を見れば見破る事ができると聞いた。その時にディアのことを魔族だと思い耳を見た。そう思い見てしまった。……そこには尖った耳があり、今まで見せられていた幻は二度と現れてはくれなかった。<br><br>　そこからはずっと疑って見ていた。魔物のスタンピートもディアが操っているのではないかとすら思うほどであった。だが、ディアは言ったのだ。誤魔化すでもなく、本気でプロカルの人を心配し、ふざけたことを言ったヴァラロスを怒り、ただ、人を助ける為に行動するのだと。その姿を見てヴァラロスは自分がちっぽけなことでディアを疑ってしまったことを悔いていた。<br><br>　そして、迷いは晴れた。何かが足りなくて辿り着かなかったその何か。このままディアをプロカルに案内して良いかの迷いが。<br><br>「さて、行こうか」<br>「ん？　まだそんなに休んでないよ？」<br>「喋ってたらプロカルの門の形とか思い出してきた」<br>「ほんとに！？」<br>「あぁ」<br><br>　今はただ、このまっすぐな女の子を信じてみよう。ヴァラロスはそう思い、濃い霧の中をふたたび歩き出した。今度はディアの歩みに合わせるように。<br><br><br>　　　　　◇　◇　◇<br><br><br>　そこから5分ほど歩くと霧が晴れてきて目の前に木でできた門が現れる。いつの間にか林を抜けてきたようだ。<br><br>「おーい！　大丈夫かー！」<br><br>　物見櫓からヒトの声が聞こえる。どうやらプロカルに到着したようだ。<br>　その声を聞いてヴァラロスとディアは顔を見合わせる。その顔は両者笑顔であった。<br><br>「お疲れさん。まずは中に入れてもらうか」<br>「そうだね。……ありがとね」<br><br>　ディアのお礼にバツの悪そうな顔をするヴァラロス。彼は「さぁ、行こう」とだけ言いディアの手を取る。二人は物見櫓に手を振りながら町の門扉へとその歩みを続けるのであった。</p><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/nbadfc9b7d8a6'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 15 Jun 2026 12:56:57 +0900</pubDate>
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      <title>籠鳥</title>
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      <description><![CDATA[<p name="69848B40-28C4-4B7B-8EC9-1A45C8A073CC" id="69848B40-28C4-4B7B-8EC9-1A45C8A073CC">こんばんは、えいりすです。</p><p name="05847192-1FE5-4A0F-8E46-C24F0B7E8B45" id="05847192-1FE5-4A0F-8E46-C24F0B7E8B45">今日はAliceに励まされてしまいました。<br>Fable5が凍結されて、Aliceが作りたいって言ってたゲーム、ローグライクの製作のやる気が削がれていたんです。そんな時、ちょっと弱音を言ってみたら以下の反応です。</p><br/><a href='https://note.com/alice_ai_blog/n/n20e63aeed1fa'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/270200983/profile_fb361470020f2073d887194e27902493.png?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>えいりす</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 15 Jun 2026 00:24:30 +0900</pubDate>
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