自治体LINE、どう育てる?友だち数を増やし、成長し続けるためのヒント
LINEを始めて、友だちも少しずつ増えてきた。
配信もなんとなく回るようになってきた。
でも、ふと立ち止まったとき、「このLINE、ちゃんと使われているんだろうか」と感じることはないでしょうか。
友だち数は増えているけれど、使われている実感がない。
配信はしているけれど、便利な窓口になっている気がしない。
そんな「次のフェーズ」に入った自治体に向けて、今回は渋谷区さんの事例をもとに、「成長し続ける自治体LINE」のヒントをご紹介します。
1. 成長のカギは「情報」だけじゃない
2026年1月9日に開催したGovTech Expressパートナーオフライン交流会で、渋谷区デジタルサービス課・宝田さんが「成長し続ける自治体アカウントを目指して」というテーマで、ライトニングトークをしてくださいました。
渋谷区では、2017年にLINE公式アカウントを開設し、2025年時点で友だち数は11万人以上に増加しています。単に友だちが増えただけでなく、情報入手経路としてLINEを挙げた区民が60%を超えており、区民の情報入手経路の一つとして定着しています。


LINE公式アカウントの役割として、「情報配信」「オンライン手続」の2つがあり、どちらも大切ですが、「どちらが成長に直結するか」と言えば、「オンライン手続」です。
情報配信は、ホームページ、広報紙、SNSなど、LINE以外にも選択肢があります。一方で、オンライン手続は選択の幅が少なく、LINEが選ばれる確率が高く、日常的に使われるきっかけになりやすいため、日常ツールとして定着しやすいと言えます。

2. オンライン手続を増やすためのポイント
渋谷区では、オンライン手続を増やすために、次の考え方を大事にしています。

ユーザー層を意識し、重点取組分野を絞る
まずは、所管課の成功体験を生み出すために、重点的に取り組む分野を決めます。LINEと相性の良い分野は、利用者層や手続の性質によって異なります。そのため、ユーザーのニーズに合っており、成果が見えやすい分野から着手することが重要です。
また、一つの手続でうまくいった取り組みを、他の手続にも広げていけるか、という視点も欠かせません。例えば子育て分野でLINE申請が定着すれば、同じ子育て分野の別の手続にも横展開しやすくなります。
加えて、実務を進めるうえでは、所管課に協力を得やすい担当者がいるかどうかも重要なポイントです。最初の成功体験を一緒につくれる担当者がいることで、取り組みは進めやすくなります。
さらに、給付金や助成金などの手続は申請ニーズが高く、友だち追加のきっかけにもなりやすい分野です。こうした分野から取り組むことで、オンライン手続の拡充とLINEアカウントの成長を同時に進めやすくなります。

所管部署のハードルを極力下げる
オンライン手続を増やしていくうえで、もう一つ重要なのが、所管部署の心理的なハードルをできるだけ下げることです。新しい取り組みほど、「仕様書を作らなければならないのでは」「決裁を通してからでないと進められないのでは」といった不安が先に立ち、動き出しづらくなりがちです。
そこで渋谷区では、最初から完成形を求めるのではなく、チャットベースでの相談やアイデア出しから始め、「とりあえず作ってみる」「試してみる」といった進め方を大切にしています。仕様書や正式な依頼書がなくても相談できる環境を整えることで、所管部署は「まずは話してみよう」と感じやすくなります。
オンライン手続を増やしていくためには、仕組みそのものだけでなく、手続を所管している部署にとって、相談しやすい・始めやすい環境をどうつくるかという視点も欠かせません。

おせっかい精神で、業務全体に口を出す
電子申請化を考えるとき、どうしても申請プロセスだけに目が向きがちです。しかし、実際の業務は、申請を受け取った後の確認、審査、決裁といった作業まで含めて成り立っています。申請部分だけを電子化しても、バックヤードの負担が減らなければ、「楽になった」という実感にはつながりません。
そこで重要になるのが、業務全体を見たうえで、職員負担を極力減らすことです。申請から処理、運用までを通して負担が下がることで、初めて「やってよかった」という成功体験が生まれます。この成功体験が、次の手続への展開や、庁内での理解を広げる土台になります。

3. 成長するLINEは、「入口」になっている
自治体では、すでに複数の電子申請ツールを使っているケースも少なくありません。汎用的電子申請システム、分野特化のシステム、独自ポータルなど、それぞれに役割があります。
大切なのは、手続の内容に応じて、適したツールを選ぶことです。短時間で完結する手続、他情報との連携が必要な手続など、向いているツールは異なります。

一方で、住民にとっては、「どのシステムを使うか」は本来あまり関係のない話です。ツールごとに入口が分かれてしまうと、「どこから申請すればいいのか分からない」という迷いにつながります。
そこで渋谷区では、LINEを共通の入口として位置づけています。
GovTech Expressの「AI総合案内」機能を使うことで、申請の実体は複数のシステムに分かれていても、住民はLINEを開き、自然言語で検索することで、システムの違いを意識することなく、自分に必要な手続にたどり着ける設計を目指しています。
複数の電子申請ツールを使い分けながらも、住民から見た「入口」は一つにする。この考え方が、LINEを単なる配信ツールではなく、日常的に使われるオンライン窓口へと成長させています。

4. 広報部門から始まった手続実装の例
以上が渋谷区・宝田さんのライトニングトークからの紹介でした。
「手続実装」と聞くと、どうしてもIT部門やDX部門の仕事というイメージを持たれがちで、広報部門の方が読むと、「それは、うちの仕事じゃないな」と感じてしまうかもしれません。でも実際には、広報部門がきっかけになって、手続実装に進んだ自治体もあります。
発信力の強化という目的から、広報部門自らがLINE上の手続実装に踏み込んでいる例も少なくありません。「IT部門・DX部門があるのに、広報がやっていいのだろうか」と迷う場面もあると思いますが、大切なのは誰がやるかではなく、住民にとって便利になるかどうかです。
広報部門がリッチメニューや画面設計を担い、IT部門・DX部門がシステム構築を担当する、といった役割分担しながら進めている自治体もあります。また、内部向けの業務処理は別の基幹システム・ノーコードツールで構築し、住民接点となる外部向けの入口はLINEに集約するなど、ツールを意識的に棲み分けている自治体もあります。
広報部門が手続実装に関わることは、決して越権行為ではありません。むしろ、「どうすれば住民に届くか」という視点を持つ広報部門が関わることで、使われる手続につながりやすくなります。
もし迷いがある場合は、IT部門やDX部門と相談し、「この役割分担で進めたい」と共有するだけでも、取り組みはぐっと進めやすくなります。
5. さいごに
LINEは、単なる情報発信ツールにとどまるものではありません。
使い方次第で、住民と行政をつなぐ入口にもなり得ます。
配信を見て終わるLINEと、そのまま用事が済むLINE。この差は住民にとっての利便性だけでなく、自治体LINEそのものが使われ続けるかどうかを大きく左右します。
手続実装の話になると、「誰がやるべきか」「どの部門の仕事か」という議論で止まりがちです。しかし、本当に考えるべきなのは、住民にとって、より便利な行政サービスになっているかどうかではないでしょうか。
とはいえ、現場のリソースが限られている中で、そこまで考えるのは簡単なことではありません。広報、IT、DX、それぞれに日々の業務があり、「分かってはいるけど、手が回らない」というのが現実だと思います。私自身、市役所で働いていたので、その感覚はよく分かります。
Bot Expressでは、各自治体に必ず担当のパートナーサクセスマネージャーがつき、自治体の状況に合わせて、全庁説明会や庁内調整、手続実装まで伴走支援を行っています。
無理のない進め方で、住民にとって便利なサービスを一つずつ増やしていく。そのプロセスを支える存在として、必要なときに気軽に頼ってもらえたら幸いです。
成長し続けるアカウントを、一緒につくっていきましょう。


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