【滋賀県大津市】LINEを活用した国勢調査DX。指導員・調査員間の連絡や事務局への問合せをLINEに集約し、優先順位をつけて対応できる体制へ
2025年は、5年に一度の国勢調査の実施年度でした。
現場ではどのような連絡手段が使われていたでしょうか。
指導員・調査員間のやり取りや事務局への問合せが電話中心という自治体も、少なくなかったのではないかと思います。電話連絡の場合、事務局の回線が塞がってしまう、取り次ぎに時間がかかる、といった課題もよく耳にします。
こうした中、滋賀県大津市では、指導員・調査員間の連絡、事務局への問合せ、不足物品の追加依頼など、国勢調査に関する連絡・報告・問合せをLINEに集約。現場のコミュニケーションの在り方を見直しました。
本記事では、大津市が取り組んだ国勢調査DXの全容をご紹介します。

1. 自治体概要
人口:342,997人(2026年3月1日時点)(大津市HPより)
友だち登録者数:95,325人(2026年3月31日時点)
主な機能:水道の開閉栓申請、集団健診予約、国勢調査連絡機能など
LINE ID:@otsu_city
2. 取り組み
大津市では、これまでの国勢調査における連絡手段は電話または郵送が中心で、事務局は膨大な問合せを電話3台で受け付けていました。調査期間中は、平日の時間外や土日も職員が待機し、次々に寄せられる電話への対応に追われる状況でした。
こうした状況の中、大津市は既に広く市民に利用されている連絡ツールであるLINEに着目。
指導員・調査員間の連絡、事務局への問合せ、不足物品の追加依頼など、国勢調査に関する連絡・報告・問合せをLINEに集約することで、連絡にかかる負担を軽減することを目指しました。
3. 実装した機能
3-1.国勢調査専用リッチメニュー
指導員・調査員それぞれに専用のリッチメニューを用意しました。調査員証の裏面に印刷されたQRコードを読み取ることで、役割に応じたリッチメニューが起動します。
国勢調査に関する機能をすべてリッチメニューに集約することで、分かりやすい導線を目指しました。

3-2.指導員・調査員間の双方向連絡
指導員・調査員間の連絡をLINE上で行う機能を実装しました。
事務局において事前に、どの指導員にどの調査員が紐づくかを登録しているため、自分の担当の指導員・調査員にのみ連絡が可能です。指導員は「担当する調査員への一斉配信」と「特定の調査員個人への配信」が選択できます。
全て自治体のLINE公式アカウント上で行うので、個人のLINEアカウントや電話番号を交換する必要がないのも特徴です。


3-3.事務局からの一斉連絡
指導員・調査員間の連絡に加え、事務局から指導員・調査員全体への一斉配信も可能としました。
調査期間中に発生する重要なお知らせや運用変更について、対象者全員に迅速かつ確実に情報を届けることができました。

3-4.自動応答チャットボット
問い合わせの中でも特に多い質問については、自己解決できるよう自動応答チャットボットを用意しました。定型的な質問への対応をLINE上で完結させることで、事務局への問い合わせ削減を目指しました。

よくある質問の検索も可能です。
3-5.事務局への直接連絡
チャットボットで解決しない内容については、LINEから事務局へ直接連絡することも可能としました。事務局側もフォローアップ機能を活用し、LINE上でそのまま回答・連絡が可能です。
電話と異なり、時間帯や相手の状況に左右されず、内容を整理したうえで送信できるほか、やり取りの履歴も残ります。「いつ・誰と・何をやり取りしたか」が分かりやすく、対応漏れの防止にもつながっています。

3-6.不足物品の追加依頼
事務局への連絡の中でも件数が多い不足物品の追加依頼については、専用のアンケートを用意しました。依頼内容を選択式で入力できるため、電話や自由記述に比べて確認の手間を減らしています。
また、対象となる調査区・単位区については、自分が担当している区のみが選択肢として表示されるよう制御。これにより、誤った調査区・単位区の選択を防いでいます。

3-7.口座登録
報酬支払いに必要な口座情報の登録についても、LINE上で対応できるようにしました。通帳やキャッシュカードの写真も添付可能です。

3-8.説明会の日程変更
説明会の日程変更については、LINE上で変更申請を受け付ける仕組みを整えました。
事前に会場ごとの日付・定員を登録しておくことで、空きのある会場・日程だけ選べるようになります。

3-9.報酬明細
報酬情報をあらかじめシステムに登録しておくことで、指導員・調査員はLINE上から自分の報酬明細を確認できるようにしました。
これまで紙で印刷・郵送していた明細も、LINEでの確認に切り替えることで、印刷や発送にかかる手間やコストを削減できます。

4. 結果
期間中の利用件数は以下のとおりとなりました。
指導員数:登録280人/対象285人
調査員数:登録1,009人/対象1,226人
指導員・調査員間の双方向連絡:6,455件
チャットボット起動回数:2,531件
事務局への直接連絡:1,129件
不足物品の追加依頼:1,310件
説明会の日程変更:480件
合計:11,905件
これらのやり取りが、すべて従来どおり電話で行われていたと仮定すると、1件あたり5分として、5分 × 11,905件 = 59,525分(約992時間)に相当します。
実際には電話件数そのものが大きく減少したわけではありませんが、LINEに集約したことで、これまで電話が集中した際に取りこぼしていた問い合わせにも対応できる状態となりました。
また、やり取りがテキストとして蓄積されることで、緊急度や内容に応じて対応の優先順位を整理しながら業務を進めることが可能となり、事務局は電話対応に追われる場面はありつつも、都度の着信に振り回されるのではなく、内容を整理しながら対応できる状態へと変化しました。
利用した指導員からは、以下のような声が寄せられています。
以前は調査員からの電話連絡がいつ来るかと電話を握りしめており、調査員との連絡が負担となっていました。今回LINEで連絡がとれるようになったことで、調査員指導員双方が任意のタイミングで連絡をとれるようになったため、かなり楽になりました。
5. 大津市様コメント

今回の新しい取り組みは手探りからのスタートでしたが、課内やパートナーサクセスマネージャーの新倉さんと協議を重ね、より良いフォーマットを作り上げることができました。
LINEは世代を問わず多くの方が日常的に利用しているため、導入へのハードルが低いという利点がありました。その結果、我々の想定を上回る、約85%の指導員・調査員にこのLINEシステムを利用いただくことができました。
システム導入の最大のメリットは、問い合わせ対応の効率化です。これまで電話で受けていた、用品の追加連絡や調査方法に関する質問などをLINEに集約したことで、「電話がつながらず要望を伝えられない」といった調査員の悩みを解消できました。また、それによって生まれた時間を、これまで十分に対応しきれなかった住民の方からの問い合わせに充てることが可能になりました。
一方で、実際に運用する中で改善すべき点も多く見つかりました。フォーマットの内容はもちろん、システムを活用して事務効率をさらに高めるための運用方法についても、事前に検討を深めるべきだったと振り返ります。
フォーマット作成や運用面で課題は残るものの、今回の「国勢調査×LINE」という試みは、業務効率化への挑戦における大きな一歩になりました。
6. さいごに
私が市役所で働いていた頃、指導員と調査員のやり取りは、ほとんどが電話でした。当時まだ若手だった私は、自然と外線一番電話の前の席。調査員から指導員への電話は各所属の外線電話にかかってくるため、課内の指導員の諸先輩方に、ひたすら取次ぎをしていた記憶があります。
「そういうものだ」と思い、特に疑問も持たずに取り次いでいましたが、そんな「当たり前」を見直した大津市の取り組みは、素晴らしいことだと思います。LINEを使うことで、誰かが間に入って取り次ぐ必要がなくなり、電話による「その場で出なければならない」という時間の拘束も軽減されます。
この仕組みは、パッケージ化して他の自治体にも展開できる形にし、多くの自治体でご活用いただきました。「令和8年度の経済センサスでも使いたい」という声もすでに上がっており、国勢調査にとどまらず、調査事務そのもののやり方が変わっていく手応えを感じています。
調査事務は、毎年のように発生する業務です。次の調査では、調査事務のあり方を一度見直してみませんか。「当たり前」になっている負担を、一緒に変えていきましょう。


<関連記事>
