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【宮城県山元町】LINEからの申請率が70%超に。決済までLINE上で完結する「行かない」施設予約を実現した運用法

公共施設の予約に関して、システム化を検討しているが、どう進めればいいのかわからない。もしくは、導入しているが、決済までは完結できていない。このような悩みを持つ自治体も多いのではないでしょうか。

宮城県山元町では、2025年7月から、公民館や体育館・グラウンドなど全10全施設の予約をLINEで申請し、決済まで完結できる仕組みを導入しました。開始から4ヶ月経過し、全予約の約70%がLINEでの申請に切り替わり、電子決済も107件実施されるなど、住民、職員ともに活用が進んでいます。

そんな順調に見えるシステム導入ですが、裏では条例改正含む庁内調整、決済を見据えた複雑な金額計算の試行錯誤、そして住民に知ってもらうための広報活動など、様々な苦労があった中で、段階的に進めた結果、成果が現れています。

本記事では、そんな山元町の取り組みを紹介します。

山元町LINE公式アカウント

1. 自治体概要

人口:11,270人(2025年11月末時点) (山元町HPより)
友だち登録者数:1,839人(2025年12月18日時点)
主な機能:施設予約、住民票・印鑑登録証明書・戸籍・税証明の請求、通報機能など
LINE ID:@yamamoto_town

2. 取り組み

システム導入前の公共施設予約は、電話で空き状況を確認し、別途窓口で予約から決済まで行う運用となっており、住民は役場が開庁している時間内に、何度も窓口に行く必要がありました。
システム導入後は、空き状況の確認から予約、そして決済までLINE上で完結することで、住民はいつでもどこでも施設予約と決済が可能となり、職員も電話と窓口対応の負担を軽減することができています。

予約と決済の流れ

  1. 山元町のLINE公式アカウントを友だち追加し、リッチメニューの施設予約をタップ

  2. 予約したい施設を選択

  3. 一問一答形式で必要事項を入力、支払い方法がオンライン決済の場合、LINE上で決済

3. 公開までの工夫・特徴

山元町の成功要因として、「庁内調整」「オンライン決済導入と条例改正」「広報戦略」の3点を推進できたことが挙げられます。
以下では具体的にどう進められたのか、工夫した点や特徴などをインタビューも交えて紹介します。

左からデジタル政策推進課・武藤様、山下地域交流センター担当・清野様
デジタル政策推進課・杉山様

3-1.庁内調整

デジタル部門が中心となり、月2回程度、施設所管課5〜10名を巻き込み、打合せを実施されています。Bot Expressのパートナーサクセスマネージャーも現状運用のヒアリングから実装や操作方法の説明などの打ち合わせに参加し、機能公開まで伴走しました。

日々の打ち合わせイメージ


庁内調整で苦労した点と意識した点
<デジタル推進課・杉山様>
DX推進全体に言えることですが、新しいものを導入したり、これまでのやり方を変えるという場合には、不安や抵抗感が生まれるものだと思います。その中で、所管課に対して、現状の運用方法や仕様について時間をかけても丁寧に議論すること意識しました。システムを導入したことで、逆にこれまでよりも事務作業の負担が増加してしまう、あるいは煩雑化してしまうということがないようにすることが大切だったと思います。

<山下地域交流センター担当・清野様>
最初はやはり実際にどう動作するのか、という不安感がありました。振り返ればもう少し早い段階で他自治体で運用しているLINE公式アカウントを確認し、施設予約のイメージがつけられるとより議論がしやすかったかもしれません。

3-2.オンライン決済導入と条例改正

山元町では、現金払いによる窓口の事務負担も課題と考え、LINE上でのオンライン決済まで導入されています。それに伴い、デジタル手続条例にオンライン決済やマイナンバーカードを用いた公的個人認証に関する規定が存在しなかったため、条例改正を実施しました。

山元町のオンライン決済の特徴
利用条件および各施設ごとに料金が異なりますが、予約時の質問回答により、金額計算まで完結し、そのままLINE上でオンライン決済できる一連の流れとしています。

団体登録の管理画面
データはCSVでの一括登録も可能


条例改正は具体的にどのように進められましたか。
<デジタル推進課・杉山様>
担当者が条例改正について経験がなかっため、先行自治体の事例を参考にし、実際に該当自治体に電話するなど、進め方などの相談を行いました。また条例について生成AIに解説してもらうなど、調査工程も効率化しながら進めるなどの工夫をしました。

3-3.広報戦略

山元町では、施設予約以外の手続き含め、住民公開前の6月から10月まで全5回にわたり広報紙でLINEによる手続き公開を案内しています。
6月:LINE手続き開始の事前周知
7月:LINE手続きの機能紹介と友だち登録方法
8月:LINEで施設予約する場合の使い方
9月:LINEで証明書発行する場合の使い方
10月:LINEで住民通報する場合の使い方

広報やまもと令和7年7月号から引用

また山元町ホームページのトップ画面にもLINEの友だち登録の周知を載せるなど、徹底した広報戦略を実施されています。

山元町ホームページより

広報誌の案内で意識された点を教えてください。
<デジタル推進課・武藤様>
1回目の広報で「導入予定」を告知し、数回にわたり段階的な情報提供を行うことで、なるべく住民の目に触れてもらえるよう工夫しました。高齢者については、広報紙を保管しておく傾向が強いので、マニュアルとしても利用してもらえる構成とする点を工夫しています。またスマホ教室の記事を近くに掲載することで高齢者層の不安を少しでも払しょくできるよう配慮しました。

4. 結果

4-1.LINE利用率

導入から4か月間(2025年7月〜10月末)の予約数は4,031件。
そのうちLINE経由は2,647件で、全体の約66%を占め、普及が進んでいます。
また、運用開始直後の7月はLINE利用率が43.1%と半数以下でしたが、8月以降は70%以上に向上しており、広報活動によって住民への周知が進んだことが推察されます。

4-2.利用者数の前年度比増加

LINEで手続き開始以降、主要施設の一つである「山下地域交流センター」では、前年度比の利用者数が約20%増加してます。特に学生を含む若年層から「LINEで手続きできるようになり、利用しやすくなった」という声もいただいたことから、より手軽に住民の方が利用している状況が伺えます。

5. 山元町様コメント

「3. 公開までの工夫・特徴」でもインタビューをご紹介しましたが、今後構築にチャレンジする自治体様へのアドバイスや山元町が力を入れたい手続き、施策などの展望を伺いました。

デジタル政策推進課・武藤様

デジタル部門が中心となりつつも、やはり実際に住民と対峙するのは担当課となるので、各課ひとりひとりに対して取り組みを理解いただけるように丁寧に協議を重ねることが重要ではないでしょうか。また、広報においても単に周知するだけでなく、どう住民に媒体を活用してもらうかといったその先の部分も想像することは大切だと思います。
今後としては、災害に関わるメニューを拡充し、住民に提供できるように進めていきたいと考えています。

デジタル政策推進課・杉山様

デジタル部門目線では、担当課にどう自分事として捉えて参画してもらうか、という点は重要だと思います。また機能実装という面では、例えば施設予約の場合、オンライン決済まで導入しないと窓口業務が効率化されないという点で、調整を含めやり切れたというのも大切でした。
今後は、子育て関係、健康、公共交通に関する手続き拡張とリッチメニューの動線策定を行うべく動き始めています。

山下地域交流センター担当・清野様

担当課目線だと、LINE手続きを入れたから終わりではなく、常に進化する、カスタマイズを考えて、デジタル部門と協力しつつ、運用課題の改善に取り組むという目線は重要だと考えています。
施設予約の手続きを公開してから数ヶ月が経過しますが、いくつか課題も見えてきたので具体的な協議もしながら解決に取り組みたいと思います。

6. さいごに

山元町様へのインタビューを通して、単に手続きを実装するだけではなく、庁内の担当課との調整や住民に対する広報など全ての取り組みを丁寧に進められ、まさに「デジタル部門・担当課・住民」の三方よしを体現されている自治体だと改めて感じました。

特に印象に残っているのは、デジタル政策推進課・杉山さんの庁内での動き。実は地域活性化起業人としての派遣ですが、自治体の業務ルールや文化を早期に理解して、積極的に取り組まれる姿は民間出身とは思えないと、上長にあたる武藤さんも高く評価されておりました。
今後も山元町様では、三方よしを体現した様々な行政サービスのアップデートが期待されるところです。

Bot Expressでは、このような自治体様の想いに応え、機能実装の支援だけに留まらず、全庁に対する説明会や各課ニーズ調査などパートナーとして伴走させていただきます。
全庁的なDXを進めていきたいけどどうすればいいか、そんな悩みがありましたら、ぜひ担当のパートナーサクセスマネージャーまでご相談ください。


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