手続き円滑化、研究の遅れ防ぐ…管理人材のキャリア確立重要に
過剰な書類や意思決定の遅滞を抑えるためにマネジメント人材のキャリア確立が重要になっている。国の研究開発プロジェクトでは立案者の官僚が2年単位で交代していく。そのため資金配分機関や研究機関に所属する事務方が制度の成り立ちや不備を把握して官僚主義を抑える役割を担う。ただ立場は弱い。公的資金の副作用を抑える価値を可視化する必要がある。
「研究者でURA(リサーチ・アドミニストレーター)になりたいと思う人はいないだろう」―。ある国立大学の理事はため息をつく。本来URAは研究者のプロデュースや管理、運営を担う人材を指す。日本では研究支援や事務職も含み、大学や部局によって実態はさまざまだ。研究者の中には研究で成果を出せなかった人間のセカンドキャリアと見る向きもある。
民間企業も同様だ。国の研究開発プロジェクトの管理業務を長く務め、つぶしが利かなくなるケースもある。電力や防衛などの政府対応の専門部署を抱える企業ではキャリアの一つとして認められているが、民生品主体の企業では行き場が少なく、国プロが終わると大学や国立研究機関、資金配分機関などに転職する例が多い。
URAは官民両方の考え方に通じ、現場で官僚主義を抑える役割を担う。書類や手続きの手戻りを最少化し、研究の遅滞を防ぐ。だが研究者にその価値が認められているとは言い難い。元々の書類が多く、煩雑なためだ。例えばベンチャー経営者が書類仕事に追われると、資金調達や営業に支障が出る。こうした機会損失を低減しても、その価値を見積もることは難しい。
そしてURAが論文を書くわけでも、外部資金を獲得してくるわけでもない。部局に課せられたノルマに貢献せず、競争的資金の獲得後に配置されるため、現場からは“天下り”のように受けとられることもある。役職者として雇用されても肩身が狭く、大半は任期制のため流動性は高い。組織に管理ノウハウが定着しない要因になっている。結果として、本当に必要なのか誰も分からない書類や管理手続きが積み上がっていく悪循環が起きている。この原因は産学官にある。
文部科学省は2040年を目標に博士号取得者数を3倍に増やす計画だ。民間の博士人材の需要は限られるため、URAなどの研究マネジメント職が受け皿として期待されている。政策研究大学院大学の林隆之教授は「マネジメント職も博士人材や高度人材がけん引する形に作り直す必要がある」と指摘する。
第7期基本計画では経済安全保障関連研究などへの民間企業の動員が拡大すると見込まれる。基礎研究とビジネスが近接化し、産学で技術開発と並行して事業化を考える必要があるためだ。ただ現在の管理構造のまま規模を拡大しても隘路(あいろ)にはまる可能性がある。貴重な人材を消費しないためには、公的資金による副作用や機会損失をマネジメントする専門職としてURAのキャリアを確立する必要がある。