三菱電機が自然関連情報開示、気づかせた重要事項
空調・家電・セミコンで依存大
三菱電機は事業と自然との関係を整理した「TNFDレポート」を発刊した。電機メーカーは自然に大きな影響を与える事業は少ないが、分析してみると水資源に大きく依存していると分かった。拠点によっては渇水のリスクがあり、対策が求められる。TNFDレポートは開示が目的となりがちだが、経営にとっての重要事項を気づかせてくれた。
TNFDレポートは事業活動が自然に与えている影響を明らかにし、その影響を回避、最小化する対策を開示する。国際組織「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」が開示ガイドラインを公開しており、レポートを発刊する企業が増えている。
三菱電機は生物多様性への取り組みを公開してきたが、サステナビリティマネジメント部の藤原実希主任は「我流ではなく、ガイドラインに沿って他社との横並びで評価されるべきだと考えた」とレポートを作成した理由を語る。
レポートでは、TNFDが推奨するツールを使って自社と自然との関係を評価した。どの製品も製造で水資源を使うが、空調・冷熱、家電、セミコンダクター・デバイスの各事業は取水量が多く、水資源への依存が大きいと分かった。
さらにグループの166拠点も評価してみると「タイ以外にイタリア、トルコでリスクがあった」(藤原主任)。タイは洪水を経験したことからリスクを認識して対策をとってきた。一方のイタリアとトルコは水不足に陥る可能性があった。どちらにも空調・冷熱事業の拠点があり、水を使用できなくなると生産に支障が出ることから、対策を検討することにした。
生態系の破壊や規制が強化された社会を想定し、将来の事業リスクを検証するシナリオ分析も実施した。すると政策によって水の利用が制限されると「中―大」の影響が出ると評価された。ただ「財務影響として表現することが難しい」(同)という。気候変動の影響は売上高や利益の減少額として評価できるが、自然分野では先行例が少ないためだ。
ただ、シナリオ分析によって水資源の安定使用につながる技術開発がビジネスチャンスになることも見えた。平山哲也マネージャーは「サステナビリティ・イノベーション本部を新設し、新しい事業に挑戦する活動をしていた。水のビジネス機会も社内に働きかけていきたい」と語る。
また発刊後、社内からTNFDについて教えてほしいというリクエストが来るようになった。各工場で敷地内の緑化や生物多様性の向上に取り組んでいる。TNFDレポートを通じて社外からも注目されることで「担当者のモチベーションになる」(平山マネージャー)と期待する。
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