地方から新しい半導体チップ産業の形をつくる、東北大発ベンチャーの挑戦
地方から新しい半導体チップ産業の形をつくる―。東北大学発ベンチャーのTokyo Artisan Intelligence(TAI、横浜市港北区、中原啓貴最高経営責任者〈CEO〉)は、東北大との連携を軸に、エッジAI(人工知能)向けのFPGA(演算回路が自由に書き換えられる半導体)チップの開発・製造に乗り出す。早ければ2026年度に試作チップを開発し、27年度末に量産向けチップの製造を目指す。(仙台・大矢修一)
TAIと東北大は10月に「Reconfigurable AI―Chip共創研究所」を同大青葉山キャンパス(仙台市青葉区)内に設置した。4日に東北大で開いたキックオフシンポジウムで、中原CEOは「微細化競争ではなく、用途特化・再構成可能なチップで勝負していく」とし、新たな視点での日本の半導体チップ産業形成を強調した。
20年設立のTAIは、機器側で画像認識などのAI処理を行う産業向けエッジAIの開発、鉄道保守分野などへの実装を進めている。中原CEOは東北大教授も兼任する。両者が手を組む今回の共創研究所は、TAIが持つAI応用・産業設計力と、東北大がこれまで培ってきた半導体・デバイス研究やアナログ回路・材料・実装技術を融合することにある。リアルタイム処理に伴うチップの発熱による冷却問題など多様な課題解決を進め、一段の社会実装を促す。
TAIはエッジAI向け半導体チップ開発を通じて、日本発ファブレス半導体企業への成長をビジョンに掲げる。構想では“アジア3極連携”を進める方針。東北大との共創研究所を置く仙台を設計・研究の中核とし、製造で台湾・聯華電子(UMC)、設計支援でマレーシア・OPPSTERと手を組む。
開発するエッジ向けAI半導体チップは、消費電力を従来の半分となる10ワット程度に抑えることを目標にする。これまでTAIは、鉄道会社などと連携して車両にエッジコンピューターを搭載し、軌道検査の省力システムなどに実装してきた。今後は新たに開発したFPGAチップを自社開発のコンピューティングボックス「SEASIDE」に搭載し、社会インフラをはじめ生産現場の自動化などへの活用を見込む。
中原CEOは「柔軟性を持つFPGAは、さまざまな分野で活躍できる」とみる。量産化を計画するのは「これまでの展開により、すでに『出口』が固まってきている」とみるからだ。今後は東北大キャンパスをAI―FPGA共創拠点に発展させることで、地域の産学官金と国際パートナーらが結びつく「新たな産業クラスター形成」(中原氏)をにらむ。
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パソコンやスマートフォン、自動車など現代社会のあらゆる電子機器に欠かせない「半導体」。安全保障上の戦略物資とされ、産業をめぐる国際競争は激しさを増す。その主たるプレイヤーである台湾積体電路製造(TSMC)やラピダス、キオクシアなどの動きや最先端の研究開発の動向を追う。
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