深海8000mの謎に迫る…海洋機構が開発、無人探査機「うらしま8000」の全容
高耐圧改良、地震調査にも応用
日本は島国であり、周囲に広がる海に関する生物や環境などの研究を盛んに行ってきた。ただ深海の調査は技術的に難しく、未解明なことは多い。海洋研究開発機構では、無人の深海巡航探査機(AUV)の開発を進める中で、深度8000メートルでの海洋探査を可能にする「うらしま8000」を開発。現在は潜航試験を開始し、2025年度中に深度8000メートルへの潜航に挑む。深海の謎を調べることで、新たな海の世界を広げる。(飯田真美子)
うらしま8000は全長10・7メートル×幅1・3メートル×高さ1・5メートル、重量7トンのAUVで、深度3500メートル級の従来機「うらしま」を改造して作られた。深度8000メートルでの深海調査を行えるようにするには、約82メガパスカルという超高圧に耐えられる設計が必要。そのため構成品すべての耐圧試験を実施し、強度や動作、消費電力などを調べながら開発した。また大深度化に伴う重量化などに対応すべく、設計を見直して高度計や浮力調整装置といった従来機で使っていた複数の装置を削減するといった工夫をした。
また、うらしま8000には深海を探査する研究者がさまざまな装置を積めるスペースを他の探査機よりも広く備えた。積み荷は同機内の音響装置との連動やバッテリーからの電源供給などが可能で、探査しつつリアルタイムで作動できる仕組みになっている。海洋機構の中谷武志グループリーダー代理は「研究者が積みたい実験装置をできるだけ多く搭載でき、さまざまなデータを取得できるようになった」と語る。
これまでに6回の試験航海を行い、音響通信測位や航行制御、観測の機能を確認。深度6500メートルまでの潜航や音響通信測位機能の到達可能深度が8000メートル以上となることが分かった。探査時間も長くなり、従来は潜入と浮上、探査の時間を合わせて24時間だったが、うらしま8000は探査だけで約30時間行える。25年度は2回の航海を実施し、搭載機器の動作や機能確認を行い、日本海溝で調査潜航する。26年度以降に本格運用に移行したい考えだ。
日本の深海探査において、これまでの技術では排他的経済水域(EEZ)内でも到達できない海域があり、7000メートル以深の探査能力が求められていた。そこで米国で市販している深度6000メートル級のAUVを購入し、「しんりゅう6000」として運用してきた。ただ安全保障や自国の技術力向上を進めるべく、地震調査にもつながる日本海溝最大水深の約8000メートルに合った「うらしま8000」の開発を始めた。中谷グループリーダー代理は「自立型AUVで8000メートル潜れるのは世界一だろう」と強調する。日本には有人の探査船「しんかい6500」もあり、有人と無人の探査で得られるデータを組み合わせながら新たな知見創出につなげる。