負けても、まだ前へ
ピコンッ。ピカピカピコンッ。ドーン!
『GAME OVER』
「あぁ〜!くそっ!」
俺はゲーム機を床に投げつける。
怪我をして選手生命絶たれるわ。
その後釜に入った後輩はあっさり強豪校のスカウトもらうわ。
親や先生から「進学しろ」と言われて受験勉強しても全然成績上がらないわ…。
何やってもうまくいかない。うだつの上がらない自分にも嫌気がさす。
するとコンコンとドアをノックする音が聞こえる。返事をせず黙ってるとドア越しに母さんが
「ご飯よ」と伝える。
俺は母さんを無視して、階段を降りる。
「…勉強はしてるの?」と、まるで腫れ物に触るかのようなか細い声で聞いてきた。
その態度にも言葉にもイラついて、
「あー…。」と生返事をした。
飯を食いながらボーッとテレビを見ていると、憧れの選手が勝利インタビューを受けていた。
ずっと怪我で出場出来なかったのによかったな…。
「この勝利を誰に捧げますか?」
「スポーツトレーナーの牧田さんに。彼がいなければ僕はここに立てていませんし、もちろん勝利することも出来ませんでしたから。」
普段の俺ならスルーする“スポーツトレーナー”という言葉が、この時の俺には印象的だった。
それにあまりにも清々しい彼の感謝の言葉に胸がざわついた。
それからスポーツトレーナーのことや牧田さんのことを調べ始め、ますますこの職業に興味を持った。
これなら自分にも出来るかもしれない。
今までの夢は『魅せる人』だった。
でもこれからの夢は『支える人』。
俺は新たな夢に向かって、静かに、でも確かに机に向かった。




