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二十周年のお祝い

掲載日:2026/06/14

短編です

 家に帰ってきてポストを開けると、なんだかニギニギしい色に真っ赤な字で「祝」と書かれた葉書が一枚入っていた。あて先は妻だった。

「コレ何のお祝い?」

 妻に手渡すと、彼女は迷わず封筒を開け、クスリと笑った。

 中には「祝、初恋玉砕二十周年」と書かれていた。

「私はこれかぁ」

そう言って彼女は、その封筒の下にある切り取り線に丁寧に鋏を入れて、10%オフと書かれた部分を財布に入れた。

「コレで何か美味しいモノでも食べに行こう!」

 妻はそう言って笑った。どうやら二十年間継続したものに対して送られてくる葉書の様で、送り主は妻も良く知らないという。しかし自分の周囲でも同じような葉書を貰った人はいて、その葉書に入っている料金オフクーポンは、その継続したものの内容によって%が変わるんだとか。

「あなたは、何か貰った?」

 そう聞かれ、思い出そうとしたけど、何も思い浮かばなかった。自分は飽き性で、趣味や習い事があまり長く継続できない。それこそ、高校生の頃は、軽音部に入っていたけど、大学進学と共に辞めてしまったし、仕事だって、興味のある分野が多いせいか、数年で転職してしまうから、定着率が低い。

「初恋玉砕記念とかないの?うちの弟は、中二病発症・継続二十周年が届いたって言ってたよ」

 結婚当初、確かにそんなことを言っていたことを思いだした。本当にいろいろな記念で送られてくる葉書なんだなぁと感心してしまう。

 結局妻の提案通り、その葉書の10%オフクーポンを持って、近所の何気ないイタリアンレストランに入って、いつもより少しだけ豪華なディナーを二人でこっそり楽しんだ。

 会計の時、店員さんに「おめでとうございます」と言われたけど、妻はちょっとだけ複雑な面持ちだった。


 それから娘が生まれるなどして、十年ほどが経った頃、バタバタと忙しい日々を送っていた俺の元に、同じ葉書が送られてきた。

 俺の葉書は毒を持った蛙のような色合いで、コレお祝いなんだよね?と妻に笑われてしまった。どうせなら、もっと綺麗な色のにしてほしいんだけどなぁ。

 開けてみると、中には“初恋成就二十周年記念”と書かれていた。

「へぇ、あなたそんなに一途だったんだ」

「そうみたい」

 俺たちは小さく笑いあって、あのイタリアンを三人で予約した。



——二十周年おめでとうございます——

娘にはどんな葉書が届くのかな。

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