お雛様を片付ける時に「またね」と呼びかけた少女
挿絵の画像を作成する際には、「Ainova AI」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
冬の名残を感じさせる寒さも随分と和らぐようになった三月の中頃になりますと、女の子のいる家は一段と忙しくなりますね。
冬の寒い時期からずうっと飾っていたお雛様達を、今度はお片付けしなければなりませんから。
お雛様は着物もお道具類も丁寧に作られていますから、壊したり失くしたりすると大変です。
だから出す時よりも更に気をつけて扱わなければなりませんね。
それに出す時は「これからお雛様を飾るんだ!」という楽しい気持ちになりますが、片付ける時は飾っていた間の思い出を振り返りながら手を動かすので一層に名残惜しさが募ってしまいます。
きっと皆さんも、そんな思いを感じた事はあるのではないでしょうか。
堺県堺市に住む女子小学生の枚方京花ちゃんも、そんな具合にお雛様をお片付けする女の子の一人でした。
「あーあ、せっかく飾ったのにもう片付けるんだもんなぁ。三月三日は良かったなぁ、和服を着て記念撮影したり、ひなあられを肴に甘酒を飲んだり…」
雛壇を片付ける京花ちゃんの頭の中には、雛祭りの楽しい思い出が否応なしに蘇ってきます。
普段とは段違いにお洒落をした自分が、みんなの中心になれる楽しさ。
それが色鮮やかに蘇れば、その分だけお片付けが名残惜しくなってしまうのでした。
「京花、気持ちは分かるけど片付けなければ駄目よ。このままじゃ和室が使えないし、お雛様達だってお日様の光や湿気で悪くなっちゃうわ。」
口うるさくは感じたものの、お母さんの言う事は間違っていません。
京花ちゃんは名残惜しさを感じながらも、手を動かすのでした。
そうして雪洞や桜の花を片付けた京花ちゃんは、いよいよ雛人形に手をつけたのです。
「またね、三人官女の皆さん。キチンと防虫剤を仕込んだから安心してよ。」
そう心の中で呼びかけながら、丁寧に箱へ片付けていきます。
「またね、五人囃子の皆さん。今年はみんな彼女持ちで過ごせて嬉しかった?来年もそうして飾ってあげるからね。」
京花ちゃんの中では、三人官女は五人囃子のガールフレンドという位置付けでした。
しかしそれだと五人囃子の二人があぶれてしまうので、今年は面白い工夫をしたのです。
何と京花ちゃんは、フランス人形と特撮ヒロインのアクションドールを五人囃子の残り二人の恋人候補として引き合わせたのでした。
その日の夢の中で五人囃子に御礼を言われたので、雛祭りの当日にはフランス人形とアクションドールも並べてあげたのでした。
不思議な夢も、今では良い思い出です。
「またね、男雛様に女雛様。来年の雛祭りも楽しくやろうよ。」
そうして全てのお雛様を片付けた京花ちゃんには、不思議な感覚が湧き上がっていたのでした。
祭りの後の名残惜しさと、やり遂げたという達成感。
それらが入り混じったような感覚でした。
「さて…四月からは私も五年生か。高学年としてしっかりやらなくちゃ、来年お雛様に合わす顔がないな。」
そうして伸びをする京花ちゃんの顔は、さっきより少しだけ大人っぽく見えたのでした。




