

高揚感のある爽快な楽曲はGood Neighboursのトレードマークであり、彼らのライブは一体感と仲間意識に満ちあふれている。2024年初頭に「Home」がバイラルヒットした時、Oli FoxとScott Verrillはデュオを結成してまだ1年もたっていなかった。だが、彼らはその勢いそのままに、デビューアルバム『Blue Sky Mentality』の制作に取り掛かった。 「理想を言えば、もっと時間に余裕があれば良かった。だって、僕らは実質バンドを始めてから、まだ2年くらいしかたってないからね」とFoxはApple Musicに語る。「新たに僕らをフォローしてくれた人たちのために、これまでのすべての曲を一つの素敵な作品にまとめて発表することが、僕たちにできる最低限のことだと感じたんだ。早速2作目のアルバムに取り掛かる予定だよ」。しかしその前に、この『Blue Sky Mentality』のデラックス版が、Good Neighboursが秘めていたさらなる魅力を明らかにする。そこには「Ripple」と「Home」の夢心地で意外性のあるバージョンをはじめ、アルバムを締めくくる「The Buzz」のエモーショナルな新録や、ライブバージョン、カバー曲(2025年のApple Music Sessionで披露したグレイシー・エイブラムスの「That’s So True」のカバーなど)、そして、Good Neighboursのこれまでの成功に貢献した、その他の楽曲が収録されている。 イーストロンドンにある隣同士のスタジオで働いていた時に出会ったソングライターのデュオは、その制作過程を自分たちの楽曲と同じくらいリラックスした雰囲気で語る。「数日間休みを取って曲作りをしようとしたんだけど、うまくいかなくて、結局はその場しのぎのやり方で進めたように思う」とVerrillは振り返る。「数時間ずつちょこちょこ作業したり、ボイスメモを送ったり。缶詰になって無理矢理何かを生み出すよりも、僕らにとってはこのやり方がうまくいったんだ」 その軽快なサウンドに反映されている、気楽な雰囲気の裏には、取り組むのが難しいテーマが潜んでいる。「Ripple」では悲嘆に暮れる友人に手を差し伸べようとする姿が描かれ、高揚感あふれるアンセム「Keep It Up」は、Foxにとってとりわけつらい日に書かれたものだ。「あの曲は人生の厄介な問題を少しだけ対処しやすく、少しだけ話しやすいものにしてくれる」と彼は言う。 ここでは、Good Neighboursが『Blue Sky Mentality』の収録曲を一曲ずつ解説してくれた。 Keep It Up Oli Fox(以下、OF):スタジオにいるScottのところに、コーヒーショップでの四つ目のバイトをクビになったことを愚痴りに行ったんだ。正直言って、僕は役立たずだった。生活がかかっていても、コーヒーすらまともに入れることができなかったし、豆のことなんて何も知らなかった。どうしても音楽をやりたかったんだけど、経済的に成り立たせる方法が見つからなかった。Scottがこの曲の冒頭で聞こえるピアノのコードを弾いていたので、僕はそれをスタジオに持ち込んで、マイクに向かって叫び始めた。するとすぐに、「なんとなくこれは特別なものになりそう」と僕とScottが感じられるようなヴァイブスが生まれたんだ。曲には高揚感があるんだけど、その歌詞には気骨とほんの少しの真実味がしっかり込められている。 Skipping Stones Scott Verrill(以下、SV ):この曲は最初から2人で一緒に作り始めたんだ。僕らにとって、プロダクションにしっかり踏み込む絶好のチャンスとなり、エレクトロニックな要素を少し取り入れて、音楽面でも楽しむことができた。 OF:僕らはパッション・ピットやMGMTを愛聴して育ったんだけど、彼らのことを深く掘り下げていくと、歌詞を通してすべてをさらけ出していることが分かるんだ。若い頃は、そういうことにはなかなか気づけないよね。 SV:このアルバムに取り組んでいた頃、落ち込んでいたわけではないけれど少しうんざりしていて、生活費を工面するのに苦労していた。そんな時、この曲はエキサイティングで前向きなものになって、ちょっと気分を上げてくれるものを作り出すチャンスとなった。 Ripple OF:これは、Good Neighboursがバンドになるなんてまだ思ってなかった頃に作り始めた曲。僕の友達が、僕にとっても第2の父親のような存在だった彼のお父さんの死について、なかなか話すことができずに苦しんでいた。彼は「この話題を持ち出すたびに、君まで落ち込ませてしまうような気がする」と言っていたんだけど、僕にとっては、まったく逆だった。「まあ、息抜きしたいときでいいから、話したくなったらいつでも来てよ」と伝えたのを覚えている。その言葉がきっかけで、悲しみとはまるで水中に沈んでいくような感覚であり、他のみんなは水面にいるから、誰も自分の気持ちを理解できないんだ、というイメージが頭に浮かんだ。Scottにデモを送ったら、彼がまったく新しいものに変えてくれて、まさにGood Neighboursらしいやり方で、この楽観的なフィーリングの曲に仕上げてくれた。プロダクションと曲に込められたメッセージのギャップが最高に気に入っている。 found u/me SV:アルバムを何度か聴き返してみたら、すごくエネルギッシュで、インディーっぽくて、派手な作品に感じた。だから、もう少し心に寄り添うようなオーガニックなものも試してみようと思ったんだ。これはアルバムのために最後に書いた曲で、あっという間に生まれたよ。僕らはしっくりくるならラブソングも抵抗なく作れるし、この曲はまさにそうだった。 OF:そうだね、僕らは全然恥ずかしくないんだ。みんな、恋をするのはいいことだよ。 Walk Walk Walk OF:(ブリトニー・スピアーズ、グウェン・ステファニー、ジャスティン・ビーバーのために)ありえないほど良い曲を手掛けてきたJustin Tranterと一緒に仕事をすることができて、僕らは本当にラッキーだった。2010年代以降の多くの名曲を手掛けた人だよ。ソングライターとして育った僕らにとって、あのような人と仕事をするのは夢だった。Justinは最高だったし、僕らはイェーセイヤー、MGMT、The Go! Teamのビデオで観てきたような、2000年代のカレッジパーティーのようなサウンドを作りたかったんだ。舞い上がるようなシンセサイザーのメロディを作ることは、僕らが常に目指してきたことだけど、そのためには、まずはしっかりとしたポップソングが必要だった。あれらの言葉はJustinが僕らから引き出してくれたんだ。彼のような人と仕事をしていると、学校に戻ったような気分になったけど、僕らはたった一日で本当にたくさんのことを学んだ。あの曲はライブで最高に盛り上がるんだ。 Kids Can’t Sleep SV:この曲はロサンゼルスで書いた。僕らは(2025年初頭の)山火事が発生した日に到着して、街が混沌とした最中だったから、奇妙な時期だった。山火事から身を隠し、周りで起こっているすべてのことに落ち着かない気持ちを覚えたことから生まれた曲。 OF:ネット上でメンタルヘルスについて語ろうと声を上げるたくさんの人たちを見ていたんだけど、年配の人たちは「ああ、またスノーフレーク世代か」という反応をしていて、当時はそのことに怒りを覚えていたよ。そんな中、ロサンゼルスに到着したら、文字通り世界が炎上していた。だから、コーラスではそのことを歌っている。少しでも日常を取り戻したいという叫びだよ。 Home OF:「Home」は仲間のお父さんが亡くなった頃に書いた。ロンドンに1日早く戻って、当時のガールフレンドと駅の外でハグしたら、3日ぶりに全身の力が抜けた。それで、「もしかしたら、“ホーム”とは、仲間や親友の中にあるものなのかもしれないな」と思ったんだ。それは僕にとってのひらめきだった。翌日、僕とScottがたまたまスタジオにいたとき言葉が次々と口をついて出てきたから、明らかに言わなければならないことがあったんだと思う。 SV:自分たちの曲がバイラルヒットするなんて想像したこともなかったから、不意を突かれたよ。ワイルドな出来事だった。オンラインにアップした唯一の理由は、友達からTikTokを使うように説得されたから。だから、大きな計画があったわけでなく、ただの偶然だったんだ。 Small Town SV:これは僕らにとって、具体的な物語というよりも、情景を描写したような曲。青春映画のオープニングシーンのように感じられると思う。 OF:僕にはどうしても忘れられなかった人が一人いる。ロンドンに引っ越したばかりのとき、かなり若い頃に別れた相手だ。その関係における問題は自分だと分かっていたのに、4年も遅れて気づいてしまった。初めて本格的な失恋をすると、ロンドンは突然、史上最高に小さな村となり、みんなが僕の失恋を知っているような気分になる。つまり、僕が実際に育った小さな町と、何かがうまくいかなくなったときに小さく感じられるロンドンを重ね合わせて書いたんだ。 Starry Eyed OF:フォスター・ザ・ピープルとのツアー中に書いた曲。アルバムの制作が7割ほど完了した頃で、たくさんのバンガーやハイオクな曲ができたように感じていた。それから僕らは、コラボレーターというよりは友人という存在のJoe Janiak(ルイス・キャパルディ、エリー・ゴールディング、シグリッドの楽曲を手掛けたライター/プロデューサー)と仕事をした。以前にロサンゼルスでも一緒に過ごしたことがあるんだけど、彼はナイロン弦に張り替えられた奇妙なバンジョーを持っていて、それがこの曲を通して演奏されている。Scottが最初の三つのコードを書いて、僕らがメロディ全体を書いた。「今回ばかりはレイヤーを重ねる代わりに、できるだけシンプルにして、ただ楽しいラブストーリーを伝えよう」と僕が言ったんだ。「Starry Eyed」が多くの人に響いたのは、僕たちの他の曲とは全然違うからだと思う。 People Need People OF:「People Need People」はライブでいつも好評だったので、アルバムに入れるべきだと思った。この曲がアルバム『Blue Sky Mentality』のテーマを設定する役割をしている。以前からこの曲のデモはあって、そのままにしておいたんだけど、アルバムを作ると決めた時に改めて見直してみた。 SV:コーラス部分を手掛けた時、「『FIFA』(テレビゲームのシリーズ)の曲みたいだね」と話したことを覚えている。そしたら先日、この曲が『FIFA』(FC26)に採用されていることが分かって、「最高!」と盛り上がったんだ。僕らの曲が採用されるのは2度目で(1曲目は「Daisies」)、再び依頼されるのは珍しいことだと言われた。 Left Hand Man SV:この曲はコーンウォールでの曲作りの旅で書き始めた。とりとめなく弾いていたものが、こんなに楽しい曲になり、僕らにとっては間奏のようなものとなった。アルバムの中で一息つける場所というか、ずっと大きな音に押しつぶされるような感じにならないための余白になっている。 OF:壮大な曲を作るのは間違いなく最高に楽しいことだけど、そのすべてを一つのアルバムに詰め込むと、「やばい、これは刺激が強すぎるかもしれない」と思う。だから、リスナーを現実に連れ戻すような、ささやかな瞬間を作るのも楽しかった。 Suburbs SV:僕たちは2人とも郊外出身(Foxはエセックス、Verrillはロンドン南部のクロイドン近郊)。ロンドンには音楽やアートのシーンがたくさんあるのに、自分は外側にいて参加できないというのは、なんとも奇妙な感覚だと思う。ただその輪の中に入りたいと思ってきたけど、今こうしてその輪の中にいると、自分の出自により一層感謝できるようになった。 OF:僕はかなり田舎で育ったから、夢を追い続けながら成長していくのは現実的に思えなかった。地元ではほとんどの人が地道な仕事に就いていて、「ステージで歌ったり踊ったりしたい」と言うような人にはあまり出会わない。だから今、地元に戻って、若い頃の自分が抱いていた限界を覆した気分になれるのはうれしいんだ。 Wonderful Life OF:「Home」がバイラルヒットした週、僕らはこの曲に取り組んでいた。アルバム全体を通して、人生は波乱に満ちているという考えを描いているけれど、結局のところ、僕たちがここにいること自体が何よりも幸運なことなんだ。当時、物理学者のブライアン・コックスが、僕らは地球という惑星の上にいて、厳密に言えば誰もが星屑(スターダスト)でできている、という話をしているのを見たことがあった。「それ自体が信じられないほどすごいことなんだ。これ以上、何を望むというんだ?」と彼は言っていた。バスに乗り遅れた日や仕事をクビになった日は、その瞬間こそ最悪かもしれない。でも俯瞰して見てみると、そもそもここにいること自体が非常に幸運なのだから、まったく取るに足らないことなんだ。それは自分自身への叫びであり、つらい経験をしていたすべての友人たちへの叫びでもあった。だって、彼らは素晴らしい人たちだから。 The Buzz OF:「The Buzz」を作りながら、僕らは自分たち自身に感心していたように思う。これまでは派手なキラキラしたものばかり作ってきたけれど、この曲は「ああ、僕らも実はまずまずのソングライターで、良い曲を書けるんだな」と感じさせてくれたから。だから、制作過程で過剰に作り込まずに済んでよかった。 SV:アルバムの最後の曲は、「found u/me」か「The Buzz」の間で迷ったんだ。僕たちが好きなバンドのアルバムには、いつだって必ずバラードが入っていた。でも、僕らはこれまでバラードをうまく作れていなかったと感じていたので、ぜひ取り組んでみたかった。僕たち2人とも、この曲には思い入れがある。