娘の落書きに負けたと思った瞬間
上手く描こうとしていたのは、たぶん私のほうだった
夕方、冷蔵庫に向かったとき、
マグネットに挟まれた一枚の紙が目に入りました。
娘が描いて貼った絵です。
白い紙の真ん中を、
太いクレヨンの線が横切っています。
わたしはその前で少し立ち止まりました。
なぜか目が離れなかったんです。
描こうとしていない線
もし同じ紙を渡されて、
「好きに描いてください」
って言われたら。
わたしはたぶん、
構図や余白のバランスを見ます。
どこから描き始めるかも考えます。
線を引く前に、
頭の中で完成形を探してしまいます。
でも、その絵にはそういう気配が一切ない。
線は途中で太くなったり細くなったりしていて、
迷った跡も、整えた跡もありません。
描こうとしたというより、
手が動いた結果として残った線でした。
目立っていたのは上手さではなかった
もちろん、上手な絵ではありません。
遠近感もありません。形も崩れてます。
何を描いたのか、
聞かなければ分からないかもしれません。
実際、何を描いたのか当ててみたんですが、
見事にはずしました。
それでも妙に魅力がありました。
ただ、その線には
わたしが描かないものがありました。
…違いますね。
「描けないもの」だったのかもしれません。
途中で思い出したこと
昔のわたしにも、
そんな時期があった気がします。
人にどう見えるかより先に、
面白そうだからやる。
完成度より先に、手を動かしたくなる。
そんな感覚です。
でもいつの間にか変わってました。
上手くやること。
失敗しないこと。
評価されること。
そういうものを考える時間が増えていました。
創作を続けているつもりでした。
でも実際には、
少し違うことをしていたのかもしれません。
負けたと思った理由
その絵を見たとき、
わたしは少し悔しかったんです。
創作の出発点で、負けていたからです。
「ママー!今日デザートあるー!?」
娘の期待に満ちた声で我に返りました。
慌てて冷蔵庫を開けます。
デザートはありません。
あるわけないんです。
夕飯の支度すら、まだ始まってませんでした。
魅力を作ろうとすることでも、
評価を取りにいくことでもなく、
何かを描かずにはいられないこと。
たぶん、わたしが足を止めた理由も
そこだったんだと思います。
わたしが見ていたもの
娘の落書きを通して、本当に見ていたもの。
それはいつの間にか忘れていた
自分自身だったのかもしれません。
最近、
「うまいな」と思ったものではなく、
「なぜか目が止まったもの」はありましたか?
作品でも、人でも、景色でも構いません。
もしかするとそこに、
わたしたちが置いてきてしまった何かが
隠れているのかもしれません。
最近、思わず足を止めてしまったものがあれば、
ぜひコメントで教えてください。
わたしは娘の落書きでした。
あなたは何でしたか?


