
人類史上、最も忌むべき発明のひとつとなったAI兵器から市民を守ったのは、皮肉にも同じAI兵器であった。 今やジャミング用アンドロイドは、新たな冷戦とも評される現代を生きる私たちにとって欠かせない存在だ。aimo FE2U-DR V型(通称: アイモ)は、その登場から幾度となく他の自律型致死兵器システムと比較され、法的・倫理的な議論における重要な争点として注目を集めてきた。 国連は世界各国の人権団体による声を受け、機械が自律的に人命を奪うことは道徳的にあってはならないとして、AI兵器への規制に向けた準備を進めていた。しかしウクライナを始めとした既に侵略を受けている地域やその周辺の国々では、何より早い人命の保護や自国の防衛が最優先であるとの声が高まった。 程なくしてaimoは迎撃やジャミングを行う事にのみ特化した兵器であるとして市民から期待され、その存在が受け入れられることとなる。しかし事態は一変した。イギリスとフランスへ贈呈されたaimoに特定の施設へのアクセス権が付与されていたことが、ある企業の内部告発によって判明したのだ。これが意味するものとは何か。核保有国にとって最も恐れるべき脅威はハッキングである。現時点でトップクラスのジャミング技術を誇るaimoはその性能が認められ "保安のため" イギリス・フランスの原発や軍需企業が所有する施設へ改良機が多数配備された。このことが欧州の周辺諸国から思わぬ反感を買ってしまったようだ。SNS上では、aimoに関する動画が話題となった。その内容は、aimo試作機が民間人に対して警告なく体術を仕掛ける様子や、抑止力を示すため多言語による脅迫メッセージを発声しているもの、さらには核兵器へのアクセスや使用の判断を自動で行わせているといった旨のものまで様々だ。しかしこれらは既に生成AIによるフェイク映像や、不安や憶測によるデマであったことが指摘されている。該当するaimoの試作機は現在その全てが廃棄処分されており、現存する機体や持ち出されたデータの複製は存在し得ないとし、フェイク映像に関しても事実とは異なるとの声明が公式に発表されている。“私たちaimoの存在理念は、高度な科学技術と非暴力によって、市民の安全な暮らしと積み上げられた文化を守ることです。人命を奪うAIが現れたのならば、私たちはそれを超える高度な技術を有していなくてはなりません。そして私たちは人の姿を保ち、世界の人々から親しまれる平和の象徴であり続けなくてはなりません。aimo試作機達は皆、来たる平和な未来のため十分に働き、その役目を終えました。私たちの安心安全で豊かな暮らしは、彼ら、彼女らの存在の上に成り立っているのです”