ケヅメリクガメという亀がいます。
かなり大きなリクガメです。
大人になると、
50kgを超えることもある。
さらに大きな個体では、
100kg近くになることもある。
のっそり歩く。
重そうな体。
地味な色。
見た目だけなら、
かなり鈍そうに見える。
でも、この亀には、
意外な特技があります。
穴を掘るんです。
しかも、
浅い穴ではありません。
何メートルも掘る。
深い穴を掘る。
長いトンネルのような穴を掘ることもある。
最初に知った時、
少し驚きました。
そんなに大きな体なのに
そんなに重たいのに
地面を掘るのか。
でも、
理由を知ると、
なるほどーと思いました。
ケヅメリクガメは、
アフリカの乾燥した暑い地域に暮らしています。
日差しは強い。
地面は熱い。
気温が40度を超えることもある。
外にいるだけで、
命に関わる世界です。
だから、
この亀は穴を掘る。
深く掘る。
涼しい場所を作る。
乾燥から身を守る。
自分が生き延びるために。
外の気温がものすごく高くても、
穴の中はずっと涼しくなることがあるそうです。
つまり、
この穴は、
ただの隠れ家ではない。
命を守るための場所
体温を守る場所
水分を守る場所
暑すぎる世界から、
一度逃げ込む場所
人間にも、
穴が必要な時があります。
逃げ場所
避難場所
一人になれる場所
息を整える場所
自分にもありました。
うつで休職していた頃。
正直、
かなりしんどかった。
朝が来るのが怖い。
仕事のことを考えると苦しい。
何をしても楽しくない。
未来のことを考える余裕もない。
あの頃の自分は、
ずっと地表にさらされているような感覚でした。
強い日差し
乾いた風
逃げ場のない暑さ
周りから見れば、
ただ休んでいるだけに見えたかもしれない。
でも、
中では必死でした。
心が干からびないように。
これ以上壊れないように。
なんとか今日を越えるために。
その時、
自分は色んな穴を掘っていた気がします。
朝の散歩
図書館
本
note
誰かとの会話
静かな時間
当時は、
それを逃げだと思っていました。
仕事から逃げている。
現実から逃げている。
弱いから隠れている。
でも、
ケヅメリクガメを見ていると、
少し見え方が変わったんです。
逃げるためじゃない。
生き延びるためだった。
ケヅメリクガメは、
強くないから穴を掘るわけではありません。
命を守るために掘る。
暑すぎる世界で、
生きていくために掘る。
穴があるから、
また外へ出られる。
ここが大事なんだと思います。
ずっと穴の中にいるためではない。
もう一度、
外へ出るために、
一度穴に入る。
人間も同じなんじゃないかなと思う。
休む
歩く
本を読む
誰かに話を聞いてもらう
文章を書く
静かな場所に身を置く
それは
甘えではない。
サボりでもない。
負けでもない。
もう一度、
生きるための避難かもしれない。
ただ、
穴には少し注意も必要です。
穴は、
命を守ってくれる。
でも、
穴の中にずっと閉じこもると、
外へ出る力が戻らないこともある。
自分にとって、
XやSNSもそうでした。
人とつながれる。
情報が入る。
励まされることもある。
でも、
同時に、
人と比べて落ち込むこともある。
強い言葉を浴びて、
さらに疲れることもある。
だから、
SNSは穴にもなるし、
熱い地表にもなる。
使い方を間違えると、
避難しているつもりで、
さらに消耗してしまう。
そこは、
少し気をつけたいところです。
でも、
noteやSubstackを書く時間は、
自分にとって、
かなり大事な穴でした。
誰かに勝つためではない。
すごい文章を書くためでもない。
自分の中の熱を、
少し外へ逃がすため。
苦しさに名前をつけるため。
まだ生きている自分を、
確認するため。
文章を書くことは、
自分の穴を掘ることに似ていませんか。
誰にも見えない場所で、
少しずつ土をかき出す。
苦しさを掘る。
不安を掘る。
過去を掘る。
そして、
ようやく息ができる空間を作る。
最近、
「逃げる」という言葉を、
少し雑に使いすぎていた気がします。
休む人を逃げていると言う。
距離を取る人を弱いと言う。
立ち止まる人を甘いと言う。
でも、本当にそうでしょうかね。
ケヅメリクガメは、
穴に入ります。
暑さから逃げます。
乾燥から逃げます。
危険すぎる環境から、
一度身を引きます。
でも、それは負けではなくて
生き残るための知恵です。
人間にも、そういう穴があっていい。
朝の散歩でもいい。
本でもいい。
図書館でもいい。
文章でもいい。
信頼できる人との会話でもいい。
何もしない時間でもいい。
誰かに見せるための立派な場所じゃなくていい。
ただ、
自分が少し呼吸できる場所。
心が干からびない場所。
また外へ出るために、
一度戻れる場所。
ケヅメリクガメは、
今日も大きな体で土を掘る。
勝つためではない。
目立つためではない。
強さを見せるためでもない。
ただ、生き延びるために。
人間も、たぶん同じです。
前へ進むためには、
ときどき穴がいる。
外の世界が熱すぎる時は、
いったん潜っていい。
心が干からびそうな時は、
涼しい場所を作っていい。
逃げるためじゃない。
生き延びるためだった。
そう思えるだけで、
自分が掘ってきた小さな穴たちを、
恥じなくて済む気がします。











