ラフィートカワガメという亀がいます。
アメリカ南部、
ミシシッピ州とルイジアナ州を流れる
パール川流域に暮らしています。
見た目は、
いわゆるカワガメです。
甲羅には模様がある。
顔には細い黄色い線が入る。
流木の上で甲羅干しをする。
綺麗な亀です。
でも、
この亀の面白さは、
見た目ではありません。
名前です。
正確には、
「長い間、名前がなかったこと」です。
実はこの亀、
昔は別の種類の亀だと思われていました。
近くの川に暮らす、
パスカグーラマップガメという亀。
研究者たちも、
長い間、
同じ種類として扱っていたんです。
たぶん同じ
ほぼ同じ
区別しなくてもいい
そんな存在でした。
でも、調べる人たちがいた。
甲羅を見る。
顔の模様を見る。
体の特徴を比べる。
遺伝子も調べる。
すると、
少しずつ違いが見えてきた。
そして2010年、
正式に別種として認められました。
ラフィートカワガメ。
新しい亀が突然生まれたわけではありません。
昔からいたんです。
ずっとそこにいた。
ただ、まだ見つかっていなかった。
ここ、かなり面白いなと思いました。
人間も、似たことがあります。
静かな人
冷たい人だと思われる。
人見知りな人
感じが悪い人だと思われる。
優しい人
何でも平気な人だと思われる。
でも、
本当は違うことがある。
ボクらは、
案外すぐに人を分類します。
明るい人
暗い人
真面目な人
面白い人
分かった気になる。
でも、
実際はそんなに単純じゃない。
ラフィートカワガメも、
長い間、「同じ亀」だと思われていた。
けれど、
ちゃんと見た人がいた。
時間をかけた人がいた。
細かい違いを見逃さなかった人がいた。
だから、本当の姿が見えてきた。
人間関係も、少し似ている気がします。
第一印象だけでは分からない。
肩書きだけでも分からない。
SNSだけでも分からない。
時間をかけて、
ようやく見えてくるものがある。
本当は優しい人かもしれない。
本当は苦しんでいる人かもしれない。
本当は頑張っている人かもしれない。
そして、自分自身もそうです。
自分のことは、
一番分かっているようで、
案外分かっていない。
まだ気づいていない自分がいる。
まだ名前の付いていない自分がいる。
ラフィートカワガメは、
今日もパール川の流れの中を泳いでいます。
長い間、別の亀だと思われていた亀。
でも、本当の姿は、
最初からそこにあった。
見つかっていなかっただけで。
人間もまた、そうなのかもしれません。
誰かに理解される前に
自分自身に気づく前に
本当の姿は、ずっとそこにあるのだから。









